学術分科会(第93回) 議事録

1.日時

令和6年11月14日(木曜日)16時00分~18時05分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 学術の振興に係る論点について
  2. 令和7年度概算要求について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
大野分科会長、五十嵐委員、白波瀬委員、鷹野委員、仲委員、原田委員、観山委員、尾辻委員、加藤委員、神谷委員、北本委員、城山委員、関沢委員、戸田山委員、長谷部委員、松岡委員、水本委員、安田委員、山本委員

(科学官)
松田科学官、北野科学官、染谷科学官、北川科学官、原田科学官、藤森科学官、本橋科学官、杉岡科学官、外田科学官、安原科学官

文部科学省

塩見研究振興局長、松浦大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、生田振興企画課長、柳澤大学研究基盤整備課長、田畑学術研究推進課長、小川大学研究基盤整備課大学研究力強化室長、松本学術研究推進課企画室長、原田基礎・基盤研究課専門官、柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官、熊谷大学研究基盤整備課長補佐、高橋大学研究基盤整備課連携推進専門官、助川学術企画室長、林学術企画室室長補佐

5.議事録

【大野分科会長】  定刻となりましたので、ただいまより第93回科学技術・学術審議会の学術分科会を開催いたします。どうぞよろしくお願いします。
 それでは初めに、事務局より配付資料の確認及び注意事項をお願いします。
【林学術企画室室長補佐】  事務局でございます。本日の資料でございますが、事前に電子媒体でお送りさせていただいておりますけれども、議事次第に記載のとおり、資料の1から資料の2、それから参考資料1をお配りしてございます。もし資料の不足等ございましたら、事務局まで御連絡をお願いいたします。
 御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックしていただき、分科会長より指名を受けましたら、マイクをオンにしていただいて、お名前から御発言をお願いいたします。終わりましたら、ミュートにしていただければというふうに思います。もし不具合等ございましたら、事務局連絡先まで御連絡をお願いいたします。
 本日の会議でございますが、傍聴者を登録の上、公開としてございます。また、本日は事務局より、塩見研究振興局長その他関係官が参加してございます。
 事務局からは以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。それでは、早速ですが、議事に移りたいと思います。
 まず1番目の議題、学術の振興に係る論点についてです。冒頭に、本日の議論の流れや昨今の検討状況などについて事務局から説明をいただきます。
 それでは、助川室長、お願いします。
【助川学術企画室長】  学術企画室長の助川でございます。それでは、学術の振興に係る論点について御説明申し上げたいと思います。
 まず、学術の振興に係る検討状況についてございますけれども、前回、前々回の学術分科会で御議論いただきました意見でございますけれども、9月の科学審総会で大野分科会長より御報告いただいたところでございます。
 4ページにございますけれども、そのときに事務局より示された次期基本計画に向けた基本的考え方案におきましても、研究力が一つの柱として立っておりまして、学術分科会の意見の内容に沿った項目が盛り込まれているところでございます。委員の先生方におかれましては、活発な御議論いただきまして誠にありがとうございました。
 次に、5ページでございますけれども、国立大学の法人化から20年を経たことを受けまして、文部科学省の中で有識者の先生方に参画いただいて、「国立大学法人等の機能強化に向けた検討会」を開催してございます。9月30日には研究力というのをテーマに議論が行われまして、ここでは意見の中身については説明割愛させていただきますけれども、6ページ以降8ページまでに記載されているような意見があったところでございます。まず、多様で厚みのある研究大学群の形成、共同利用・共同研究体制の強化、人材の養成・確保、頭脳循環の促進、研究費、それぞれについて御意見頂戴したところでございます。
 今後、本分科会におきましては、学術分科会意見の具体化に向けた議論をいただければというふうに考えておりまして、本日はそのうちのマネジメント改革と共同利用・共同研究体制について先生方の御示唆を賜れれば幸いでございます。
 まず(2)マネジメント改革についてでございますけれども、10ページは学術分科会としての意見のうちの関係箇所を抜粋したものでございます。
 11ページ以降でマネジメント改革に関する取組などについて、まず1つ、研究に専念する時間の確保というのと、2つ目、卓越した研究成果を生み出すためのシステム改革の2つに分けて御説明申し上げます。また、この観点については、後ほど東京科学大学/Science Tokyoの江端先生から具体的な取組を発表いただくことになってございます。
 まず、研究に専念する時間の確保でございますけど、12ページと13ページにございますとおり、内閣府総合科学技術・イノベーション会議、通称CSTIにおきまして、研究時間の質・量の向上に関するガイドラインというものが取りまとめられております。令和4年に地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージというのがまとめられておりますけど、その中にも含まれているものでございます。こちらにありますような取組の切り口ですとか、大学に促したい行動変容の内容が示されているところでございます。
 また14ページでは、文部科学省の事業として、研究時間確保に資するものとして創発的研究支援事業を紹介してございます。この事業は、独立前後の研究者を対象といたしまして、最長10年間の安定した研究資金と研究に専念できる環境を一体的に提供するものでございまして、大学に対しましても研究者が研究に専念できる環境をつくるよう、環境整備の経費も同時に支援しているものでございます。
 次の15ページは、その成果の一例でございます。主な実績とありますけど、第1期生の公募が令和2年度という、結構新しい事業でございますけれども、主な実績のところにございますように、准教授の先生方の研究時間の割合が平均すると3割ぐらいであるのに対して、創発研究者の研究活動時間の割合は6割と、約2倍の研究時間の割合を確保できているところでございます。下に各機関の支援例を書いてございますけれども、例えば、研究時間確保のためには、秘書人件費の負担ですとか、委員会業務の免除などというのが挙げられてございます。
 続きまして16ページ以降が、卓越した研究成果を生み出すためのシステム改革として様々な取組が行われているところでございますけども、一例で17ページ以降の通称WPI、世界トップレベル研究拠点プログラムを御紹介いたします。
 この事業は、緑字のとおり、世界を先導する卓越研究と国際的地位の確立、国際的な研究環境と組織改革、次代を先導する価値創造、この3つのミッションを拠点に求めておりまして、さらに青字のように、具体的な要件として、世界トップレベルの主任研究者が7から10名以上、拠点の研究者のうち3割が外国人であること、能力給、トップダウンの意思決定システムなどを求めているところでございます。
 次の18ページを御覧いただくと、これは採択されている拠点の数字を出しておりますけども、例えば外国人研究者が多く入っていただいているなどがお分かりいただけるかと思います。
 1ページ飛ばしまして20ページでございますけれども、研究としての成果でございます。このグラフは、右のほうに行けば行くほど論文数が多い、上のほうに行けば行くほど論文数に占めるトップ10%補正論文数の割合が大きい、すなわち注目度の高い論文数の割合が大きいことを示してございます。WPI拠点は赤色の点で示されてございます。大学の中の一つの拠点ですので、大学全体と比べると当然論文の数は少なくなって左側に寄っているんですけれども、ただ比較的上のほうに寄っておりまして、注目度が相当高いものを成果として出してきているということが言えると考えております。
 続いて21ページは、その背景にある研究マネジメントの事例でございまして、優れた研究者を糾合させるだけではなくて、研究者をサポートする体制も拠点としてしっかり構築されているところでございます。WPIはあくまでも拠点形成に対する支援であって、研究費は外部資金等、別途獲得してくる仕組みとなっておりまして、これまで申し上げたようなシステム改革を行うことで高い成果を出しているということを申し上げたいと思います。
 続きまして22ページ以降、(3)が共同利用・共同研究体制についてでございますけれども、まず23ページが学術分科会意見の抜粋でございます。なお、本件につきましては、学術分科会の下にございます研究環境基盤部会でも先月10月に議論されまして、主な意見の概要を24ページ、25ページにまとめているところでございます。
 研究力強化に向けた施策の全体像として、26ページに書いてございますけれども、下から見ていただきますと、ベースのところに運交金等の基盤的支援や、あるいは研究者個人・チームへの支援というのがございます。さらに、中ほどのオレンジのところに先ほど御説明申し上げましたWPIなどの拠点に対する支援があって、一番上のところには、拠点でつくった成果、強みや、それを可能にするシステムを大学全体に広げるという意味での研究大学への全学的な支援というのがあります。そして、こういった各拠点、各大学のピークを伸ばす支援に対しまして、言わば横串を刺す支援として、茶色のところですけれども、組織・分野を超えた連携の強化・拡大というものがあって、これからこの部分について御紹介申し上げたいと思います。
 27ページが大学共同利用機関法人についてでございますけれども、大学の共同利用に供する法人として設置されたものでございまして、28ページにありますように、現状4つの法人、17の機関がございます。これらの機関の役割の一つとして、個々の大学では整備できない設備・資料等の提供というのがございまして、ページめくって29ページにお示ししているとおり、多くの大型のプロジェクトが行われております。
 一方、こうした共同利用というのは見えやすいのですけれども、次の30ページを御覧いただければと思います。単に設備を共用するだけではなくて、技術職員ですとかURAなどの専門人材が一つのチームとして、コンサル段階から成果の発信段階まで通して研究者をサポートし、大学の研究力強化に貢献するという機能もございまして、そうした機能を強化することも重要ではないかと考えているところでございます。
 31ページを御覧いただきますと、大学共同利用機関のうちの一つ、自然科学研究機構の例でございますけれども、10年間で機構の研究者数の6倍の若手研究者を育成している、つまり、若い段階で来た研究者が育ち巣立っていく、そういう人材輩出機能も大学共同利用機関にあるのではないか考えてございます。
 次に32ページ以降が、いわゆる共共拠点と言われていますけど、共同利用・共同研究拠点制度についてでございます。これは大学の研究施設で学術研究の発展に特に資する共同利用・共同研究の拠点を文部科学大臣が認定するというものでございます。一覧は次の33ページにございまして、また、その次の34ページのところ、こちらは平成30年度から新しく設けられた国際共同利用・共同研究拠点制度でございます。国際的にも優れた研究資源を最大限活用して、国際的に最先端の共同利用・共同研究を行う拠点を認定して重点支援を行う仕組みでございます。
 1つ飛ばしまして、その共同利用・共同研究拠点の成果のようなものを36ページにまとめておりますが、拠点を活用した研究について、論文数、学外研究者の受入れ数などの数値が上昇しているということをグラフで表しております。このように一定の成果を見せているところでございます。
 駆け足になりましたけども、事務局から導入として、私どもの施策等について御紹介申し上げました。私からは以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、大学マネジメントの実例として、東京科学大学教授の江端新吾先生から、研究時間の確保に向けた取組などについて御講演をいただきたいと思います。
 それでは、江端先生、よろしくお願いします。
【江端教授】  御紹介いただきましてありがとうございます。東京科学大学/Science Tokyoの江端と申します。それでは、僭越ながら、我々の大学の取組について御紹介させていただき、本日の議論のご参考になるような情報提供をさせていただければと思っております。このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、資料を共有させていただきます。御覧いただけていますでしょうか。「Science Tokyoにおける研究時間確保×研究環境改革を推進するための研究マネジメントのあり方」というタイトルでお話しをさせていただきます。
 先ほど助川室長から御説明いただいたとおり、研究者の研究時間の確保と研究環境改革は、こちらの図に示されておりますとおり、時間を確保するための、研究DX、研究データの管理・利活用、あるいは共用化の促進、技術職員の処遇改善、適切な配置、あるいはURAの関係、その他、多様な視点で制度改革を進めていかなければいけないと言われており、左手の4つの観点は特にオールジャパンでの連携が重要であろうということで、我々はそれらを踏まえて様々な施策を打っているところです。
 本日は、自由でフラットな人事戦略を基本とした、全構成員が活躍できる環境づくりというScience Tokyoのテーマでお話をさせていただきます。本日具体例としてお話しするような研究時間の確保等の各大学の取組とは、我々Science Tokyoだけが特別すごい取り組みをしているというようには思っておりません。各大学の特色を生かした形で、各々すばらしい取組がなされているかと思います。我々の考え方としては、まずは人ありきということが中心です。人財という大切なリソースをいかにマネジメントし、構成員にとっても幸せになるようなマネジメントの在り方を考えながら、一方でミッションである「科学の進歩と、人々の幸せと」を探究し社会とともに新しい価値を創造するべく、こちらの取組を進めてまいりました。
 そういった考え方を踏まえて、本日、取組事例を3つ御紹介させていただきます。1点目が研究者の時間の確保について若手研究者支援の観点、もう1点がトップレベル研究者の観点、主にWPI拠点の観点です。3点目が研究環境改革について、研究設備機器の共用化から始まった技術専門人財を活用する考え方、そしてその育成の在り方等を御紹介させていただきたいと思っております。
 まず旧東京工業大学で問題意識として持っていたのは、2019年の資料になりますが、人のマネジメントが、大学の経営あるいは大学全体のガバナンスを考える上でいかに重要かというところです。大学改革に関する旧東工大の特徴的な取り組みの中で特に重要な観点として、平成27年(2015年)に、学長による部局長指名、また学長直下に人事委員会を設置した点が挙げられます。このようなガバナンス体制をつくっていく大学は、これまでなかったと思っております。
 一方で、こういった人をマネジメントしていく上で、大学経営という視点から大きな課題があると考えていたのは、若手研究者が活躍できる場の形成、あるいは技術職員を含めた人材の確保、研究環境を形成していく人材の在り方・育成などが重要だということでした。我々は2019年当時にこれらを大きな経営課題として捉えていました。こちらは国立大学経営改革促進事業の令和元年度(2019年度)に採択された際のプレゼン資料になっておりまして、その当時、我々の問題意識として、このように考えていたということです。
 人という観点から、我々は人事制度の改革が、一丁目一番地ではないかと考えておりました。特に戦略的資源配分、今では多くの大学で様々な取組を検討されているかと思いますが、人の戦略的な配置にフォーカスをあて、先ほどの経営改革事業でプレゼンしていたのは、我々の大学だけだったと思っております。
技術職員のキャリアパスに関しましては、図に示しております下から3つ目の箱、青い四角でくくってあるところ、までが一般的な国立大学法人として、職階としてあったものです。それは同じ職員である事務職員と比較しても、課長クラスまでは行けないという設計でした。そのため、まずはフラットにキャリアパスを築けるようにするために、技術職員の上位職というものを赤い箱のとおり、2つ設置しました。
 また、大学全体をマネジメントしていくためには、マネジメントの専門職が必要です。これまでの大学では教員が経営あるいはマネジメントをほぼやっておりましたが、このマネジメント専門職を導入することで、新しいキャリアパスをつくっていく人事制度改革を推進しております。
 以上の取組は、現在では各大学より既に提案がなされていると思いますので、先進的な大学は少しずつ新たな制度改革を行なっておりますが,特に現時点でも我々が特徴的だと御説明できるのは、この図に事務職員が入っていることだと思っております。旧東京工業大学では「教職協働」が重要なキーワードとなっておりまして、この絵を作った当時、事務職員の方々のキャリアを同時に併せて議論することは、学内的に非常に大きな議論を生みました。そのとき議論の中で、事務職員の方でも、マネジメント職にキャリアアップできるようなパスをつくる、技術職員、URAの方も教員の方でもマネジメントに行ける、そういった制度改革、マインドセット改革を行っていくということをお話しさせていただきました。多様なキャリアパスを実現するような、フリーでフラットな戦略的な人事を実現することは、東京科学大学、Science Tokyoにおいても基本理念として引き継がれているところです。
 以上を踏まえて具体的な事例紹介に移りたいと思います。
1つ目は基礎研究機構における取組を御紹介させていただきます。本機構は、現在、理事長になりました大竹理事長がかなり強い思い入れを持って積極的に活動を行ってきた事業で、専門基礎研究塾と広域基礎研究塾という2つの塾で構成されております。ある特定の専門の分野については、大隅先生をはじめとした旧東京工業大学が誇る最先端の研究者の下に若手研究者を募って、集中して研究させる、そういった環境を整えるという塾です。広域基礎研究塾においては、特定の分野にとらわれず、個人の研究の原点をしっかりと構築していこうという趣旨の塾になります。
 こちらの塾生の募集方法は、それぞれ塾の進め方によって異なりますが、重要なポイントは、こういった塾生、塾生候補となるような若手研究者は、各部局において非常に優秀な研究者であって、自分の研究以外の時間をつくるということはなかなか難しいという点です。もっと自分の部局で一生懸命研究してほしいと皆さんが思われるような、非常にすばらしい研究者の方々が対象となります。したがって、そういった方々をうまく募集する仕組みとして、しっかりと部局長のコンセンサスを得ながら、入塾を促していくという仕組みづくりを意識して行いました。そういった意味で、冒頭に紹介しました旧東京工業大学の学長による部局長指名というガバナンスの体制が強く利いており、多くの部局長にも御理解いただきながら、若手研究者のための研究環境づくりを進めることができております。
 この結果、もともと旧東京工業大学の研究者の研究エフォートは高かったのですが、塾に参加していただいた若手研究者は、エフォート率がさらに上昇したことが示されました。引き続き、研究室の教授、准教授に広く協力いただきながら、若手研究者の研究エフォートをさらに高くしていくために改善・努力を進めているところです。
 続きまして、旧医科歯科大学の若手研究者のための研究助成の取り組みについて御紹介いたします。このスライドに示しております通り、様々な制度を大学院生からPIに至るまで、具体的な支援、研究助成を実施しております。特に本日は独立した研究スペースの整備、トップサイエンスインキュベーションスペース(TSIS)について御紹介します。本学では、TSISとして、同じ建物の同じフロアに、スライドに示すような若手研究者の独自のスペースを準備しております。
 スペースとしてはそれほど広く感じられないかもしれませんが、やはり東京の中心にあるスペースを確保するのはなかなか困難なキャンパスの建物の中に、ワンフロアしっかりとこういう形で研究者の場所を確保できるということは、やはり大学としてのガバナンスの下で、しっかりとスペースマネジメントを行ってきた結果だと思っております。
 独立の居室スペースとして、個室やミーティングルームもあり、フリーアドレスの座席、リフレッシュエリアもあります。また、実験室に関しましては、オープンラボ、培養室などの設備、機器も多くの研究者、若手研究者がシェアして使えるような環境づくりを意識して進めております。
 続きまして、トップレベル研究者、WPI拠点に関する御紹介です。
 本学のWPI拠点ELSIのミッションは、地球の起源、生命の起源に関する分野、横断的な研究を推進するために、ユニークな、国際認知度の高い世界トップレベルの研究所をつくるとともに、日本の大学における組織と運営の刷新を先頭に立って企画実行していくということです。ELSIが多様な研究分野を総合して、国際的なコミュニティーをつくって、生命の起源、あるいは地球や惑星の起源の枠組みの中で研究することを一つのビジョンとさせていただいております。
 僭越ながら、私自身、専門が宇宙化学でして、地球惑星科学専攻の卒業生なのですが、地球・惑星科学というのは、非常に多くの専門分野を融合したような分野で、そのような特徴からも、本WPI拠点においてさらに分野融合が進んでいった感というのは非常に強く持っております。研究の前では皆平等というコンセプトのもと、そういったフラットな研究組織の関係をつくるべく、所長の強力なリーダーシップの下、助教であれ教授であれ、各々研究室をしっかりと運営していく体制や、それをサポートする技術、事務関係の環境づくりを積極的に行っております。
 また、国際的な研究拠点としての環境整備、異分野融合の推進の中で、人というものを意識しながら活動しています。さらには、幸いなことにWPI拠点として新しい建物を建てることができましたので、そこのスペースをしっかりと活用しながら、スペースマネジメントと人的マネジメントを組み合わせた研究マネジメント体制を構築しております。
 WPI補助金の終了後においても、WPIアカデミーとして、関根所長の下で国際的な頭脳循環の加速、また、さらに大学院の修士・博士コースを、地球生命コースを設置し、多くの研究者あるいは学生さんに対して、本WPIのトップレベルの研究環境をフィードバックするということも積極的に行っております。
 最後に3つ目の取組事例の御紹介になります。こちらは2019年に旧東京工業大学で企画をした話になります。東工大が持っていた研究基盤をしっかりと生かし、それを活用し、イノベーション活動につなげていくための仕組みづくりが非常に重要だということを説明した図になります。
 皆様御存じのとおり、設備共用化というのは、文部科学省さんの様々な取組のおかげで、各大学、システムもしっかりできておりますし、関係者の意識も変わり、多くの大学で環境も徐々に出来上がってきたという状況ではあります。ただ、それらの予算の投資というのは、我々からすると、このグラフでいうと横軸方向の話がほとんどであったということで、設備に投資していただくのはありがたいのですが、物ばかり増えてしまって、人がそこにしっかりとついていなかった、設備と人財がセットでなかったというのは大きな問題だと我々は捉えておりました。
 そういった意味で、この横軸方向の支援をいただいたのであれば、縦軸の人財、特に我々は意識して「財」という財産の「財」を使っておりますが、こういった人財をいかにセットで配置していくのか、あるいはその人財を高度化していくための仕組みづくりがどうあるべきなのかを議論し、これらの人と物がしっかりと合わさった上で、イノベーション創出につながっていくものだと考え、この図を作成しました。
 旧東工大では、オールジャパンの人材育成システムの構築を目指し、TCカレッジ(TC:テクニカルコンダクター)という新たな事業を立ち上げ、このTC:テクニカルコンダクターという称号制度をもって、高度な技術者の評価をしっかりと上げていく、あるいは、そういった方々の立場を多くの方々にしっかりと理解していただくような位置づけにしていくことを考えております。
 このスライドはTCの人材像の4つの特徴について整理したTCカレッジパンフレットの1ページです。特徴の1つ目は、高い技術力と幅広い知識を持っている方、2つ目が、高い研究企画力を持っている方、3つ目が、高いコミュニケーション力・交渉力を持っている方、4つ目が、次世代の後継者をしっかりと育成する力がある方、そういった4点の力を持っている方をTCとして認定していく仕組みをカレッジという形で立ち上げることができました。
 技術者の高度化については大学の中だけの話ではなく、機器メーカー、あるいは民間企業にいらっしゃる技術者の育成というニーズも非常に大きいものでした。我々がTCカレッジを企画する上で、島津製作所様あるいは日本電子様に御協力いただき、民間企業との協働事業で最初からスタートできたというところが本事業を展開する上で非常に大きなポイントだったと思っております。
 こちらのスライドは設備共用のガイドラインに好事例として取り上げていただいた図を引用しておりますが、一般的な修士課程あるいは博士課程の博士号取得までの流れというものを模して、TCを取得する仕組みをつくっております。入学してからカリキュラムを受講し、TM(テクニカルマスター)に認定された後に、TC論文を書き、TC論文審査会を経てTCを取得するという流れです。これは原則3年で修了する形になっております。現在TCを取得した方々は6名いて、このTC論文審査会が大変好評で、TC論文を東京科学大学リサーチリポジトリに公開し多くの方々に見ていただいたり、6名の技術職員の方々の技術的なすばらしさを表現いただくのはもちろんのこと、それだけではなく課題をクリアするのが困難だった点等の失敗談も含めて記載をいただいており、全国の多くの技術者の方々にとって参考になるような論文になっております。
 また、我々、フリーでフラットな人財や人事戦略についてお話しさせていただきましたが、やはりまだまだ教員と技術職員の格差、意識の差、職員の方々は、どちらかというとへりくだるというか、どうしてもサポートというような立場になってしまいますし、教員の方々はそういう方々にいろいろ指示をしながら研究を進めていくというような、上下関係というところはまだまだ抜け出せないところでありまして、博士人材であればそれなりに研究のことは理解しているという点で、博士号を取得した技術職員の方々というのはそれなりに研究者に認めていただけるのですが、こういったTC論文を書くというプロセスの中で研究者の方々が、こいつはすごいなということを認めていただけるような、そのような流れが少しずつできてきたかと思っております。
 こういったTCの方々を育成するために、新たに技術者を評価する基準としてそれぞれのコースにKPIを立てさせていただいています。ここには原著論文や科研費、学会と記載されており、あたかも研究者のようなKPIになっていますが、重要なのは、論文であっても共著者が先に書いてあるということです。立ち位置として、自分が研究を引っ張っていくというよりも、研究者にとって非常に有意義なサポートというか技術提供、知識の共有、そういったことができる方々を評価する制度として、共著を非常に重視しております。
 また、科研費に関しては、奨励研究という制度があり、技術職員の方でも申請ができます。そういった企画を通して、多数の方に客観的に審査をいただけるプロセス、そういったチャレンジも評価するという意味です。学会発表はもちろんのこと、研究会でも御自身のやったことをしっかりと適切にプレゼンできる力というものが必要であり、そういった視点で評価をする制度となっております。
 大学には様々なタイプの技術職員がおりまして、それぞれやっている事業や仕事は違いますので、様々な観点をこのKPIで取り入れております。設備の仕様策定の委員会、あるいは技術審査に専門知識を持って貢献されている方、学内外で講師をやっている方、国家資格を持っている方なども含め、そういったところもしっかりと拾い上げながら、技術職員の評価基準というものをコースごとにしっかりとつくりました。
 さらに、TCカリキュラムの中身に関しましては、大学あるあるですが、このような育成プログラムを立ち上げる事業があると、各大学でオリジナルの非常にすばらしいプログラムがばんばん立ち上がっていきますが、実際に1年間にそのプログラムを受講する人は何人かというと、二、三人ですというようなことが多々あり、実際にすばらしいものができたとしても、多くの方への波及効果という意味では、一大学だけでこれを進めるのは難しいのではないかというのが我々が思っていたことです。
 そういった意味で、大学に散らばっている非常に優れたプログラムを体系化し、それらをうまく活用しながら、民間企業との共同プログラムをそこに入れ込み、さらにマネジメント研修等を入れた形でTCカレッジのカリキュラムを作成しております。
 ということで、機器メーカー等民間企業の方々と協働しつつ、国内研究機関との協働、あるいは海外研究機関、これはちょっとコロナの関係でなかなか技術者の派遣というのが進まず、課題として残っておりますが、海外との連携を見据えて、Science TokyoにおいてもTCカレッジを推進していきます。
 令和5年度は46名となっておりますが、令和6年度は60名弱ぐらいの方に参加をしていただいております。東京科学大学を中核とし、長岡技術科学大学、岡山大学、山口大学という3つのサテライト校と連携しながら、日本全国から多くの受講生が参加をしていただけるカレッジになりました。
 オールジャパンでの仕組みづくりという観点では、先ほどの図にもありましたとおり、研究機器メーカー、民間企業との協働、あるいは国内の連携校、海外との連携校等との協働も必要だと思っておりますし、もちろん国との連携も大変重要です。さらには、一般社団法人研究基盤協議会という研究基盤に関する新たな法人が、大学の連携、加えて民間企業との連携の中で令和5年(2023年)1月に立ち上がり、26大学、民間企業3社を会員としたコンソーシアムとなっております。研究基盤協議会によりさらに多くのネットワークを構築していきながら、オールジャパンの形につくり込んでいくことを想定しながら、現在Science Tokyoではさらなる挑戦的な取り組みを考えているところです。
 ただ、何度も申し上げておりますとおり、これはScience Tokyoだけでできる話ではなく、多くの大学や民間企業を巻き込んでやっていくことだと思っております。某企業の会長さんにお会いしてお話をすると、いや、江端君、日本全体でやるのはいいんだけども、やっぱりこれってグローバルな課題だよねと、技術者の育成、そういったものは海外にも通用するような、高度な技術者をつくっていくような仕組みづくりにしてくれれば、さらにこれが多くの方に認知され、活用されるのではないかという御示唆をいただいたところです。今後海外展開といった発展性を見据えながら、まずは我が国の全体のオールジャパンの仕組みづくりということを考えていきたいと思っております。
 最後になりますが、Science Tokyoが目指す研究マネジメント体制の御紹介ということで、つい最近公表されました令和6年度の経営改革促進事業の概要の資料を張りつけさせていただきました。大竹理事長、田中学長の下で、「善き生活、善き社会、善き地球をつくり上げる大学」というところがキャッチコピーとなっており、今回、研究マネジメントという意味では、この取組3の知の価値を最大化するための環境整備という、経営の3本柱の中の一つとして位置づけさせていただいておりまして、大学に関わるステークホルダー、多くの関係者の皆様と協力しながら、このマネジメント体制の下で、東京科学大学あるいは我が国を活性化するための取組を積極的に進めていきたいと考えております。
 以上となります。御清聴いただきましてありがとうございました。
【大野分科会長】  江端先生、どうもありがとうございました。大変すばらしい取組の御紹介をいただきました。
 それでは、ここで少しだけ時間を取って、今の江端先生の御説明にありました内容について質疑応答をさせていただきたいと思います。その後で、本日の論点案について説明を簡単に受けた後、意見交換をするということで、その意見交換の際にも江端先生の今の御発表に関していろいろ御質問や意見交換もさせていただければと思います。
 それでは、まず、江端先生の今回の御発表、御説明について御質問等ございましたら、よろしくお願いします。
 松岡委員、お願いいたします。
【松岡委員】  江端先生、どうも大変実質的なお話、どうもありがとうございました。大変感銘を受けて聞いておりました。3点ほどお願いしたいと思います。
 まず1つ目が、最初の前半のほうで塾、すみません、メモ取っていたのですが正確な名前がわからないのですが、塾のお話をされました。その中で、若い方の研究エフォートのパーセンテージを大きく向上させたことは、本当にすごかったと思いました。
これは、教授、准教授の方の御協力も得てエフォートを上げたというお話でした。ただ、若干懸念しますのは、業務の全量が決まってしまっていると、どなたかに、しわ寄せと言うのは良い表現ではありませんが、そういうことが起きるのではないかと少し心配になってしまいます。非研究的業務の量を減らすような取組がもしあれば、簡単に御紹介いただければと思いました。それが1点目です。
 それから2点目が、事務や技術の方のキャリアアップ、マネジメントへの参画を進めるということも、大変すばらしいなと思いました。一方で、人件費の増加を伴ってしまうのではないかと懸念されます。今、大学は人件費を削る方向に向かっていますが、その点はどのようにやっていらっしゃるか、何かよい取り組みがあれば御紹介いただきたいということです。
 それから3点目は、最後のほうで、コンソーシアムを組んでいらっしゃるというお話がありました。このようなコンソーシアムを組んでいる大学の間で、例えば、よい技術を持った方の配属替えのようなこともやっていらっしゃるのかどうか。
 3点、簡単に教えていただければと思います。よろしくお願いします。
【大野分科会長】  いかがでしょうか。
【江端教授】  御質問いただきまして、ありがとうございます。早速ですが、1点目から回答させていただきます。
 この業務を減らしていくという点につきましては、先ほど御紹介した支援人材、そういった方々の協力の下に研究者のエフォートを確保するような取組を積極的に行っております。また、旧東工大においては、特に会議を減らしていこうという流れが強くありまして、会議の調整に関しては、部局長のガバナンスの下で対応しているというところが大きなところかと思っております。
 2点目になりますが、これは非常に回答が難しいところではありますが、我々の人事制度の中では、頑張っている人たちにいいことがあるようにしたいという思いは強くあります。人勧の対応につきましては、また少し別の話になると思いますので、それは置いておきますが、頑張った方が評価され、キャリアアップできるという予算の確保については、予算の当てをしっかりとつくっておりまして、それをしっかりと充てていくという方針で戦略的な資源配分を行っていく予定となっております。
 3点目についてですが、先生の御指摘、かなり鋭い御指摘で、このコンソーシアムによって技術職員の方々の流動化を促したいというふうに理想的には思っております。ただ残念ながら、国立大学法人の人事制度をベースに考えると、構成員の流動化は非常に難しいところがあり、各大学間の技術者の異動は、ある意味事務職員の方々の異動とも似たようなところはあるかと思いますが、技術職員に対する考え方、あるいは業務の特殊性から、今課題にぶつかっている状況です。したがって、コンソーシアム、あるいは一般社団法人の活動等を通じて、そういった人材の流動化を促すような後押しができればと考えております。ぜひ引き続き御支援よろしくお願いいたします。
【松岡委員】  どうもありがとうございます。全体として大変よいバランスを取りながら進めていらっしゃるなと伺いました。ありがとうございました。
【江端教授】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは、城山委員、お願いします。
【城山委員】  興味深い御報告どうもありがとうございました。後の議論とも絡むと思うんですけども、どういった活動が大学間共同でできて、どういったものが大学内でやらなくてはいけないのかと、その辺りどういう感じかというのをお伺いしたいなと思いました。私も最初の基礎研究機構の話はすごく面白いなと思ったんですけども、まさに分野横断のことをやると同時に研究時間も増やすようなことをどうするかとか、そのために、ただ時間だけじゃなくて、インキュベーションスペースみたいなものを作るというのはすごく興味深く、重要な活動だと思うんですけども、例えばそれを大学間で連携してやるということはあり得るのか、それはやはり大学の中に閉じるのか。
 逆に後半お話しされたテクニカルコンダクターのような話というのは、流動性をどこまで確保できるか分からないけど大学間でいろいろできるのではないかと、そこはそうだろうなと思うんですけども、その辺りの区分けについて何か御感触があればお伺いできれば幸いです。よろしくお願いします。
【江端教授】  御質問いただきましてありがとうございます。大学間でやるべきことと、学内で閉じてやるべきことというのは、これまでの皆様の様々な議論の中で明確になってきているのではないかなと個人的には思っております。どういったことかと申し上げますと、まず、先ほど最後に御指摘いただきましたテクニカルコンダクターの件は、全国の技術職員の絶対的な数が全く足りていないという状況がありまして、一大学でなんとかしようとしてもなかなか難しく、育成や確保も難しいというのがあります。そういったものは大学間の連携、オールジャパンでやるべきことと考えております。
 また、大学が所有する研究設備機器、あるいはそれに関連するスペース、環境というものがどこにどれだけあるのかというのは、各大学それなりにシステムの中で公開をしているところではありますが、それはやっぱり大学の中で閉じる話ではなくて、国としてどこにどれだけの資源があるのかということを見える化すべきだと考えております。したがって、大学間での連携において、データプラットフォームの構築、あるいはそういったものの見える化は、非常に重要な仕事だと考えております。
 もう一点、基礎研究機構の話からインキュベーション施設等の話がありましたが、こういったものは今、各大学、本学の場合は土地活用(田町)など、そういった大学が持つ経営資源の活用の中から、多くの大学等に利用していただけるようなスペースの確保を行っておりまして、そういう場を通じた連携はできるかなと考えております。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、今お二人の方の手が挙がっていますので、そのお二人の方とのやり取りが終わったら、次に進みたいと思います。
 それでは、尾辻委員、お願いします。
【尾辻委員】  ありがとうございます。尾辻でございます。
 江端先生、大変貴重な御紹介ありがとうございました。それで、私、先生が4ページで御紹介いただいた技術職員の皆様の職位職級をフラット化するという話で、本当にすばらしいというか、当然あるべきことが行われていなかったのかなというのが目からうろこでした。それで、組織としてのマネジメントについてちょっとお尋ねします。
 それは、今日、江端先生から御紹介いただいた、貴学で行っておるオリジナルな基礎研究機構、そういった組織を使って横断的に人材を育てながら研究の最先端の成果を伸ばすという、ある意味、分野横断的な部分もおありなところと、それからもう一つの特徴は、この前の資料1-1で共共拠点の説明があったんですけれども、それを見て分かりましたのが、Science Tokyoさんの共共拠点のつくり方というのが、ネットワーク型の拠点が非常に多いんですね。単独の附置研としての共共拠点というのは1つか2つということで、いずれも組織横断とか機関横断とか、そういった大きな体制での取組が貴学の特徴と思いました。そのときに技術職員の方々をどのように分散させているのか、分かりやすく言うと、昔、研究室に個別の実験装置が多く保有され、装置対応で技術職員の方が張りついていたということが多かったですよね。それがセンターですとか、そういった形で集約されて、大学本部にそういった組織ができるように、東北大も含めてそういうふうになってきているんですけれども、一方で、特定の装置の専門性がなかなか継承できないとか、あるいは順番に回らなきゃいけないとか、そういった運用上の難しさの声は非常に多く聞くんです。貴学ではその辺の技術職員のマネジメントはどのようになされているのか、簡単に御紹介いただけるとありがたいと思います。
【江端教授】  御質問いただき、ありがとうございます。私は、6年ぐらい前に北大から東工大に移籍してきましたが、東工大に来て、技術職員関係のところで一番衝撃を受けたのが、平成19年の時点で技術部にしっかりと集約されていたという点です。多くの大学で技術部というのは組織としては出来上がっていたというか、最近ですと多くの大学でもやり始めておりますが、少し前までは、まとまっていますと言いつつも、先生御指摘のとおり、技官制度というものの中で研究室付の技術職員の方々が圧倒的に多くて、そういった研究者とのつながりの中で技術職員の方が活躍されていたと過去があります。
 そういった、技術職員の方々を統括する部局にしっかりと集約するということで、全学の取組に貢献できる意識をしっかりと持っていただくという取組をしたわけですが、ここで問題になったのが、先ほど先生から御指摘いただいたとおり、高度な技術が継承できなくなってきたというところがありました。
 そこで本学では、TCカレッジを通じて、改めて研究者とのつながりをしっかりと持ち、TC論文執筆には主査となる研究者の下で研さんを積み、知識をしっかりと持った上で全学の支援ができるような、そういった流れをつくりたいという思いでTC制度を立ち上げました。
 現在では、文科省の関係者の皆さんにも御理解いただいて、技術職員の組織化を進めていきましょうという流れにはなっていますが、やはり大学のガバナンスの中で、技術職員の地位がちょっと低いとか、その人たちの扱いが、明示的には言わないけど、何かちょっとおかしいということはずっとありまして、それを大きく変えて、しっかりとした組織をつくりつつ、一方で研究者とのつながりを絶たないような仕組みづくりが重要だと考えております。
 そういった意味で、共共拠点の話にもありましたが、本学、共共拠点は1つの部局に全てまとめておりまして、部局として運営していく仕組みになっておりますので、横のつながりが非常に強く取れる。また、それぞれの拠点で何をやっているかというのは各々の研究所でもよく見ておりまして、全国のネットワークに貢献するという意識も醸成されていると思っております。部局のつくり方、あるいは部局長の意識の改革というところがうまく連動して、そういったネットワークにつながっていくような仕組みづくりになっているのではないかと思っております。
【尾辻委員】  ありがとうございました。マイスター制度として、本当に技術職員の方々の地位向上、そしてその実力をいかんなく研究に発揮させる仕組みが出来上がっているように感銘を受けました。ありがとうございました。
【江端教授】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、神谷委員、お願いします。
【神谷委員】  どうも非常にインプレッシブな発表だと思います。ありがとうございました。
 それで、2点質問があるんですけど、ガバナンス改革のところ、学長が部局長指名をしていると。これ、非常にすばらしいんですけども、形骸化しては困るわけですね。要するに、部局から推薦された人をそのまま指名したって、これでは全く機能していないことになるわけです。学長がきちんと指名するためには、学長が相当の情報を持っている必要がある。多少部局の方々を知っていても、一部しか知らないとなると、本当に適切な人を指名しているかどうか、よく分からないという面があります。だから私の質問は、学長は適切な人を指名するだけの十分な情報を持って指名していて、きちんと機能しているかというのをまず第1点で伺いたいと思います。
 それからもう一点、最初のほうで投資効果とコストの話があったと思うんですけども、コストというのは、これはもうお金ですので、1次元の量的な指標です。ところが投資効果というのは、民間企業と違いまして、学問的な効果というのは、1次元ではとてもはかれない。論文数もあるし、サイテーションもあるし、そういう量的なものもあれば、あるいは何か制度をつくりましたとか、新しい研究所をつくりましたでもいいですけども、そういった質的なものもある。そうすると、私、経済学者ですが、経済学者の観点からすれば、100万円当たりの投資効果が一番大きいところに投資していくと、そういうところから投資していくということになるんですが、そういうことは非常に難しいと思うんですが、その点どのようにされているのかというのが第2の質問です。
【江端教授】  ありがとうございます。すみません、途中、御質問が聞こえないタイミングがありましたので、回答がずれていたら御指摘ください。
 1点目につきましては、これはおっしゃるとおりなんですが、旧東工大でも旧医科歯科大でも、学長が構成員の方々との対話をしていくというのは非常に重視されていたところだったと思います。各部局との対話、あるいは研究者をはじめ教職員との対話に非常に多くの時間を使っていたと感じております。学長のキャラクターにもよるのかもしれませんが、少なくとも旧東工大、旧医科歯科大においては、その構成員あるいは各部局のキーとなるような研究者の皆さんとのコミュニケーションをしっかりと取った上での適切な人事というのができていたのではないかなと思っております。
 2点目に関しましては、先生もおっしゃるとおり、非常に難しい問題で、これは一般論になってしまいますが、そういった費用対効果の部分に関しましては、学問においてどのタイミングでそれが大きな成果につながっていくのかはかれないところがあります。そういった意味で、我々は教員評価の中で、基礎的な研究を推進するような方々と、実際に産学連携、あるいは社会との接点を持って研究を推進していく方々等という視点で見える化を行っておりまして、まずは大学の中でのコスト意識というものを多くの方に持っていただく目的で、大学全体のコスト分析をプロボストオフィスの下でやっておりました。
どこにどれだけの投資がなされているのか、それによって各部局でどういった成果が上がっていくのかというところは、統合報告書の部局長の顔の横に、あなたの部局には幾ら投資しています、それによって外部資金がトータルで幾らぐらい稼ぎましたというように明示することによって、まずはマネジメントを意識していただくこと、それはマスとしてですが、そういうことを意識改革の一環としてやらせていただいています。
 だからといって、いくら稼いでいないから駄目ですと言うことは申しておりません。基本的には研究者あるいは教育者として、民間との連携、社会貢献、組織運営というところに貢献していただいている方々を、しっかりと評価することを意識してやらせていただいています。
 すみません、回答になっておりますでしょうか。
【神谷委員】  第一歩としてはよろしいかと思いますが、さらに評価の指標はこれからも練っていただければと思います。どうもありがとうございました。
【江端教授】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、次に移りたいと思います。まずはここで江端先生、一段落させてください。どうもありがとうございました。また改めて質問をさせて頂くことがあるかもしれませんので、その際はよろしくお願いします。
【江端教授】  ありがとうございます。
【大野分科会長】  それでは、本日の論点案について、助川室長より説明をいただきます。
【助川学術企画室長】  失礼いたします。学術企画室長の助川でございます。
 先ほどの資料1-1の37ページ以降が本日御議論いただきたい点でございますけれども、38ページ目を御覧ください。
 研究力強化のために、本日御紹介いたしました、例えば創発やWPI、あるいはScience Tokyoの江端先生からプレゼンいただいた取組など、好事例がございます。そして、江端先生のお話の中でも質の話、今いろいろ質問あったと思うんですけど、研究の量、研究時間の確保の話も多くありました。これら研究の質・量ともに戦略的に配分する組織としてのマネジメント改革というのがあったと思うんですけれども、これを、例えばScience Tokyoだからできるというので終わることなく、あるいは何とか拠点だからできるというので終わることなく、学内全体、あるいは大学を超えて波及させていくことが必要ではないか、ではその促進のために大学と国それぞれに期待されることは何か、こういったことについても御議論いただければ幸いでございます。その際には、今ちょっと私、申しましたように、研究時間といった量についても御議論いただければ幸いでございます。
 もう一点が共同利用・共同研究体制でございます。大学共同利用機関、共共拠点につきましては、そのユニークな機能・役割を明確化して、さらに機能の発揮度を可視化する、その上で最大化させる、そのために大学・大学共同利用機関、国に期待されることはどんなことだろうか。例えば大学共同利用機関については、設備の共用だけではなくて、専門人材も含めたチームとしての強みを生かし、研究を一気通貫で支援して、新しいサイエンスを生み出す機能を可視化・強化する。こういったことが必要ではないかということ。その役割の特殊性を踏まえた基盤的な活動に対する支援ですとか、柔軟な研究領域の設定を可能とするようなガバナンス、マネジメント、その機能拡張を支えるような多様な財源による経営基盤の強化といったことが求められるのではないか。
 また、共共拠点につきましては、大学共同利用機関ですとかWPI拠点との違いも踏まえて、研究分野の進展を踏まえたミッション、達成目標を明確化する。また、分野や地域という観点からのポートフォリオ戦略の下で、コミュニティに対する貢献度をしっかりと踏まえて、拠点に対する支援ですとか、改廃が行われる仕組みの実効性を強めていくことが求められるのではないか、こういったことについて基盤部会でも御議論いただいているところですけれども、先生方からも御議論いただければ幸いでございます。
 その他、3点目にありますけれども、その他、学術の振興に向けて必要な観点があれば御議論いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、皆様から御意見をいただきたいと思います。学術の振興全般ではありますけれども、若干御議論いただきたい点を今回は絞ってもいますので、その周りで御発言いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
 城山委員、そして観山委員、お願いします。
【城山委員】  どうもありがとうございました。若干言及していただいた国立大学法人等の機能強化に向けた検討会の意見の7ページとか、あるいは環境基盤部会のほうの議論の紹介というところの25ページ辺りにもちょっと書いてあることのある部分を、こういうところがやっぱり大事ではないかということで強調させていただくことになるかと思うんですけども、多分、共共拠点の在り方として、施設とか設備だけではなくて、それをサポートする人材、URAなり、あるいはテクニカルコンダクターも含めて大事ですよねという、基本的な方向性としてはそのとおりなんだろうと思います。ただし、それだけでできるのかというと、特に新しい分野をつくるような部分です。今日の論点のところでも、新しいサイエンスを生み出す機能を可視化・強化するためにどうしたらいいかというお話がありましたけども、そこの部分というのはやっぱりもう一歩、何か必要なんだろうなという感じがいたします。
 つまり、先ほどちょっとScience Tokyoの関係でも質問させていただきましたけども、ある種のインキュベーション機能というか、新しいものをつくっていくというところは、既存の設備をどう使っていくかだとか、それをサポートするテクニカルの人材がどうかというだけではなくて、何か新しいものを生み出していくような、ある種のいい意味での曖昧さみたいなものも必要なので、そういう空間をどうやってつくっていくかみたいなところも共共拠点に求めるのであれば、やっぱり相当工夫が必要なのかなという気がいたしました。
 ただ、先ほどのScience Tokyoさんのお話を伺っていると、例えばスペースなんかをうまく大学間共同で、インキュベーション的なこともやろうとしているんですよというお話もあったので、多分そういうこともいろいろ考えれば可能になってくるのかなと思うので、その側面に関してもぜひ十分御検討いただければなというふうに思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 それでは次、観山委員、お願いします。
【観山委員】  私は、大学共同利用機関とか共同利用・共同研究拠点、共共拠点に関する部分についてお話しさせていただきたいと思います。
 大学共同利用機関も以前はある種、附置研だった部分が大きいと思いますが、そういうシステムというのは戦後、日本がまだまだ貧しいときに、共同で施設を用意したり人員を用意したりして全体を盛り上げていくという形で、非常にいい、我が国の特色あるシステムとして成功したと思うのですね。現在、1990年代から失われた30年という形で、全体的に非常に経済的に日本がシュリンクした状況で、大学の予算全体を上げていくというのはなかなか大変でして、そういう意味で国際卓越研究大学だとか、それから地域と連携した大学というような割と拠点を絞って、大学全体としても拠点を設けるということは重要かと思います。もう一つは、やっぱり元に返って、共共拠点とか大学共同利用機関に関して、国立大学全体とか、大学全体を上げようと思ったら物すごいお金かかりますけども、そういう研究者のネットワークをしっかりとつくるという面では結構、効率というのを研究で使いたくないですけども、割と可能な部分というか、効率的部分ではないかと思います。
 そこで数点申し上げたいのですけども、1つは、やはり我が国の研究環境の中で、グローバル化というか、海外の研究者との連携というのがやっぱり少ないと思います。先ほどWPIの例が出てきましたけども、WPIではもう30%以上海外研究者が入ってくるというのが必須になっていますし、例えば東工大のELSIでいうと40%、50%近いと思います。それが実現すると多様な考え方と、それから国際的な共同研究というのが発展しますし、その分、サイテーションとか、そういう形で反映されるわけでございます。
 今はやっぱり海外の研究者、特に欧米から研究者を呼ぼうと思ったら非常にお金がかかるわけです。また、大学の中での能力給を共共拠点とか大学共同利用機関から始めるというのも一つの方法ではないかと思います。ですから人事体制、特に海外の研究者を入れるという形で、そしていろんな大学から研究者が来れば、いろんな海外の研究者とディスカッションする場が与えられるということを、やっぱりもう一回つくり上げるべきではないかと思います。大学全体でもちろんそれができれば一番よいのですけども、順番があるんのではないかと思います。       
 それから、もちろん設備の面でも、結構いい設備もあるのですけれども、老朽化している部分だとか、それから研究所によっては、この研究ですばらしい研究がこれしかないというところではなくて、大学でも結構最近、大型のものを入れられているという部分がありますので、やっぱりそういうサポートだとか、特色あるような設備を用意している、それからそれがもう一気通貫で研究者に与えられるというようなサポートシステムをしっかりと踏まえて提供するということが必要だと思います。
 3番目は、各分野の共共拠点とか大学共同利用機関というのは非常にしっかりとしてきたと思うのですが、これからはやっぱり新しいコミュニティーをつくるというか、学際的な研究にもっともっと取り組むべきだと思います。私も共同利用研におりましたので、コミュニティーがありますので、そのコミュニティーのイナーシャというのは結構大きいのです。しかし、やっぱりそればかりだと日本の発展というのはなかなか難しいと思いますので、例えば研究所間だとか、それから新たな分野との連携を共共拠点とか大学共同利用機関の評価の一つの観点として、どういう分野をつくっていくのかとか、どういう分野を支援していくのかというのも、その評価の観点にしたらどうかと思います。
 それからもう一つは、随分前からのことですけども、やっぱり研究所と学部、大学院との壁といいますか、大学院生って非常に貴重ですので、取り合いになっているわけですけども、共共拠点とか大学共同利用機関は非常にすばらしい研究者がおられて、海外の研究者とか、非常に活発に研究者が来られている。それから先端的設備もありますので、そういう環境で学生が研究するということは、非常にいい場ではないかと思います。もちろんいろんな形で研究指導はできるのですけども、しっかりとした形で学生、大学院生を指導するようなシステムをもっともっとつくるべきじゃないかと思います。先ほど例があった東工大のELSIは独立大学院をつくられて、これは非常にすばらしいことだと思っています。
 それからもう一つは、文系の研究所、共共拠点、非常に研究が活発に推進されておりますけども、これについてもグローバル化がもっともっと、国際的な連携が必要なのではないかという、5点ほど言わせていただきました。
 以上でございます。ちょっと時間取りました。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、長谷部委員、お願いします。
【長谷部委員】  ありがとうございます。先ほどの御説明で、国際卓越大学制度と地方大学の総合振興パッケージがほぼ完了いたしまして、次のステップとして、その両者を結びつけるような共同利用・共同研究体制を強化、拡大していくという、そういう施策は非常に理にかなっているかなというふうに思いました。
 私、共同利用研に25年おりまして、基礎生物学研究で、ちょうど大隅先生と同じ頃に赴任したんですけれども、この25年を考えますと、URAの導入をはじめとして、マネジメント体制の改善ですとか組織改編というのはすごくうまくいっていて、研究に専念できる時間というのは、25年前と比べたら、もうすごく増えたというふうに感じています。
 一方で問題は、予算が、文部科学省さんは随分御努力をされて、共同利用研のサポートをされているというのは存じておるんですけれども、実質的にやはり減少してしまっていて、共同利用研で先端的な研究を行うための人材が補充できない、あとは先端的な機器が安定的に整えることができない。大型科研費を取った人が買ってきて、そのお古を使うというような形はできるんですけれども、研究所として先導して先端機器を整えるということがすごく難しくなってしまっていて、ある程度エスタブリッシュした研究者は十分に研究費、研究時間ありますから科研費が取れるんですけれども、若手の研究者で、これから新しいことをやっていくという人が共同利用研で拠点的、拠点を新しくつくるというような研究をするのがすごく難しくなっているというのを肌で感じています。
 先ほど江端先生がお話しになった東工大のTCカレッジで、自然科学研究機構も加わって、東工大、先端研究大学と共同利用研でのすごくうまい協働が進んでいるなというのは非常に感心して伺っていたんですけれども、やはり今後、予算が増えるというのはなかなか難しいと思うので、国際卓越研究大学をはじめとした研究を推進する大学、そこと共同利用研、これをうまく連携をよりエンハンスして強力にするような枠組みですとか仕組みをつくるような施策というのをして、共同利用研で従来できていたような先端的な研究が行えるような基盤を整え、あるいは人材を整えるとともに、これは大学と協働すればできると思うので、それとともに、共同利用研は共同利用のノウハウは非常にいいものを持っているので、これを研究大学群でうまく利用することによって日本中の大学を連携させるようなことというのができないのかなというふうに思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、仲委員、お願いします。
【仲委員】  どうもありがとうございます。私は、スライドの39ページにある「本日御議論いただきたい点」の1,2のところで申します。
 1つ目のところは新たなサイエンスを生み出す機能、ということですけれども、先ほど観山委員が言われたことと重なるんですけれども、大型の――大型とは限らないですね――設備を共有することで、同じような研究をする人をつなぐ。そうすることで、新しい知が、研究領域が、広がらないかなということ。また、インターナショナルに設備を利用するとか、またその設備を使って研究を行う若手人材を育成していくことで、ここをハブとして研究力を高める、ということができるだろうと思いました。
 あわせて、今度2番目の、どういう支援ができるか、拠点に対する支援や改廃と書いてありますが、支援ということでいうと、当然のことながら、やっぱりアクノリッジメントをしっかりして、この設備を使った、ということを世に示していくことであるとか、もちろんその設備を維持するための人材とか経費支援というのも重要だと思います。
 先ほど、設備を共有することで論文数が上がったという御説明がありましたけれど、あと最近の動向で言えば、エコロジカルフットプリントというんでしょうか、大きな設備を造るだけですごくCO2を使うわけですし、維持するのにもCO2を使うということがあるわけですので、こういった共有をすることでどれだけエコであったか、みたいなことも評価の視点の一つに入ってくるんじゃないかなと思いました。
 もう一つ、3点目、時間を生み出すということなんですけれども、先ほどの御発表は本当に感銘を受けたところですが、比較的、頑張って頑張ってという、言葉が適切でないかもしれないですけれど、男性目線かなというふうにも思ったりしまして、ライフ、ワークをうまく調整しながら、特に女性研究者の時間を増やすというようなこともこれからますます重要になるのではないかなと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、加藤委員、お願いします。
【加藤委員】  加藤です。研究時間を確保するということに関して話してみたいと思います。研究時間を確保するということは、本学でも議論されておりますし、先ほど東工大、科学大の先生からも言及がありました。今、恐らく今、どこでも意識されていて、文科省でも検討されていることだと思います。私自身もずっと考えているんですけれども、基本的に研究時間を確保するということは、二つしかないんじゃないかと思っています。一つは、誰かに偏らせることです。研究者の中で研究時間が少ない人と多い人に、片方を多くするように偏らせる。もう一つは、研究時間以外の仕事全体を減らすことです。このどちらかにするしか、原理的にはないんじゃないかと思えます。
 ちなみにアメリカは、私は情報工学分野ですけれども、潤沢な資金を有名大学は持っているので、基本的に、教育と研究以外の仕事はスタッフがします。ファカルティースタッフと呼ばれるスタッフがするというのが当たり前になっています。情報分野でいうと、学科の計算機はもちろんのこと、研究室の計算機環境も、教員は触るなと。それはファカルティースタッフがやるので。情報学科における計算機環境すら、教員が仕様書を書いたり、マシンを買ったりすることはない。もちろん研究者のニーズに合わせて環境は整備されるわけですけれども、ネットワークをメンテナンスしたり、サーバーをメンテナンスすることはない。それは専門のスタッフがする仕事。そのスタッフの皆さんは、産業界と大学の間と横移動していて、大学にずっと留まっているわけではなくて、あるときは企業のエンジニアを務めたり、大学でそういうエンジニアの仕事をしたりする。横移動が非常にしやすい環境があるから、それができる。
 日本においての状況は恐らく、国際卓越研究大学がそれをできる可能性があって、現在、東北大学が選ばれましたけれども、資金が入ってくるとそういうことができる可能性があって、それはそれで素晴らしいことじゃないかと思います。
 仕事を偏らせるということは、例えば若手、中堅の研究者の研究時間を増やすためには、それ以外の人達がその分の仕事を引き受けなくてはいけないので、このような構造を理解してシステム作りをしていく必要があるんだろうと思います。
 我が国においては、我が国が置かれている状況の中で研究時間を確保する道を考える必要があります。先ほど申し上げたように、基本は偏らせるか全体量を減らすしかないので、文科省の政策という観点で考えると、単に研究時間を確保しましょうという掛け声というか、単にそれに集中したシステムをつくるだけでは十分ではなくて、若手の研究者か優秀な研究者か、減らした分の仕事を誰かが引き受けなくてはいけない。それは教員かもしれないし、教員以外のスタッフかもしれませんけども、それのバランスを取った総合パッケージみたいな形で政策を打ち出していく必要があると思います。日本は資金面ではかなり限られている現実が、国立でも私立でもあると思いますので、そういう総合パッケージで政策を考えていかねばならないんだろうなと考えております。
 以上でございます。
【大野分科会長】  ありがとうございます。
 次は山本委員、お願いします。
【山本委員】  ありがとうございます。山本でございます。
 38ページにあります組織マネジメントの考え方というのは、それそれで非常に合理的だと思います。それで実際、WPIとか共共拠点でいい好事例が出ているから、そういうものを展開していこうということなんだと思います。
 ただ私が見ますと、私が言うことではないと思っているんですが、やはり自然科学系にかなり傾いているというか、偏っているプランのように感じます。それ自体はそれでいいんです、全く問題ないんですけれども、好事例として挙げられているWPIとか共共拠点等でも文系のものというのは実はあまりないです。1件、2件のレベルで、しかもそれらの多くがデータサイエンス関係で、自然科学系とつなげる形でうまくやっているというような形になっています。
 これは我が国全体の、学術の全体的な、総合的な発展を考えたときに、やはりそういう自然科学系以外の部分、文系のほうでの研究力強化というのが図れるような仕組みにしておかないとやっぱりいけないのかなという気がちょっとしました。御検討いただければと思うのが1点。
 もう一つは、共同利用研についてです。これも私が言うことではないのかもしれませんが、観山先生もおっしゃっていましたけれども、やはりこれは、共同利用で装置を共有したり、あるいは共同利用のコーディネーションをするというだけではなくて、そこはその分野のある意味センターであるのが理想だと思っております。そこで人材育成するということも含めて役割を担っているものだろうというふうに思います。
 39ページに書いてあるんですけども、新たなサイエンスを生み出す機能を可視化・強化するということなんですが、それはコーディネーションでできるのではなくて、共同利用研の研究力そのものを強化していかないといけないというふうに思っていて、装置を提供するのみならず、やはりそこでの研究力強化というのが私は本質的だというふうに理解しています。
 すみません。以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、鷹野委員、お願いいたします。
【鷹野委員】  ありがとうございます。私のほうからは、参考資料に上げてくださっている部分から発言したいんですけども、ここも含めてよろしいでしょうか。
【大野分科会長】  はい。もちろん結構です。
【鷹野委員】  ページでいいますと56ページになるんですけれども、学部生のリサーチアシスタント制度という、外国の例が紹介されております。この取組を拝見しまして、国内大学への示唆ということも記載されておりますけれども、私は高校生の活動に触れる機会が最近幾つかありまして、スーパーサイエンスハイスクールや部活動等などで、高校生段階でも研究活動が活発になっているということを感じております。その際に、もう既に大学教員の指導を受けたり、大学の装置を使った研究発表なども見聞きしているところです。
 そのような状況を鑑みますと、学部生のリサーチアシスタントといった名称はともかく、そういった取組というのは現実的で、かつ効果的な取組のように思います。既に高校生から研究を経験して、学会発表や論文にもしているという例も最近出ておりますので、やる気のある若い人たち、従来でしたら、かつては大学の4年生から卒業研究ということで、研究活動は4年生から始まるということが多かったわけですけれども、低学年から研究に携わって、やる気を伸ばすといった辺りは取り入れてもよいと思いました。
 以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、関沢委員、お願いいたします。
【関沢委員】  既に今、山本委員からも御指摘がございましたけれども、今回、大学共同利用機関についての意見の、例えば39ページの上の大学共同利用機関について高度な技術職員や云々、新たなサイエンスを生み出すというところ、こういったことが、大学共同利用機関4機関あるうちの3つは自然科学系ですけれども、1つ人文系がありまして、その人文系についてこれがすぐ当てはまるかというと、もう少し人文系に焦点を当てた研究力の強化の検討がさらに必要であると思いました。国立大学法人等の機能強化に向けた検討会における主な意見、7ページの丸2でもやはり自然科学系に寄った意見が中心になっている。
 では人文系としてはどうしたらいいのかという具体的な提案というのはなかなか難しく、人社特別委員会などでもどういう検討が行われているかは分からないのですが、ただ、観山委員がおっしゃられたような学際研究ネットワークの形成とか、新しい異分野融合の研究開拓、こういったことに人文系が積極的に取り組むということを、より考えていかねばならないと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。社会科学系はそもそもそういう大学共同利用機関にないので、そこもどうしていくのかということもありますね。ありがとうございます。
 白波瀬委員、お願いします。
【白波瀬委員】  ありがとうございます。今日、いろいろ大変なことが既に起こっているということを学ぶことができたのは貴重でした。そこで、2つあります。研究時間の確保のためには、分野を超えて研究分野の職種の多様化が必要であると思います。要するに研究に集中できる環境および体制をいかに整備していくかということです。そういう意味で多様な人材の発掘と横連携が必要なのではないでしょうか。以前、北米では、Ph.D.を取得したあとアカデミックに行くのか、アドミに行くのかということもありました。学術関連の仕事が、修士号やPh.D.取得者の間で存在していて、それが全体の労働市場の中で位置している。一つの学術のマネジメント分野だと思うんですね。
 ですから、今日お配りいただいた資料は非常にきれいな図が描けておりますし、効率的な運営が想定されていますけれど、足元の人材なり職種の多様化が進んでいなくて、もっと言うと、学術分野の多様なキャリア形成がどういう形で展開できるのかというのがまだ見えてきていません。URAといったものもありまして、うまく回っているところと、そうでないところがあり、なかなか課題が多いということになるかと思います。
もう1点、今日の御報告を伺ってちょっと感じたのは、この共同利用というところでの改善が、全体の学術、日本における学術界にどれだけの効果を得るのかという、規模感がわかればありがたいと思いました。厳密でなくてもよくて、目安程度で十分です。ここで議論することが全体の中でどういう位置をしめていて、どの程度の効果をもつのかといったところを教えていただけますとありがたいです。技官というような職種自体も理系に偏っています。ただ、とても重要な職種であることは間違いないので、そういう意味で規模感が今日の議論の中で欲しいという、感想を持ちました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。それでは、皆さんの御発言が済んでから、規模感について、もし事務局ですぐに分かるようだったらば。それは技術職員という意味ですね。お調べいただければと思います。
 それでは、北本委員、お願いします。
【北本委員】  北本です。先ほどTCカレッジの御紹介があり、非常にすばらしい取組だと感じました。ただ、今日も話が出ていますように、人文系や他の分野の状況とは必ずしも対応しない部分があり、TCカレッジの成功例をどうやって一般化していくかという点が気になります。おそらくTCカレッジは、もともと共用設備の技官を人材としてどのように成長させるかという課題から出発したのではないかと思います。しかし、他の分野では様々な種類の研究サポート人材が必要で、そのような方々についても研究力などの能力を向上させるという面では共通する課題を抱えています。それがTCカレッジのような形で解決できるかというと、別の方法が必要な場合も出てくるのではないでしょうか。つまり、TCカレッジのようなモデルを他の分野にどのように一般化していくかという点に関して、何か知見が得られると非常にいい展開ができるのではと思いました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 まずは委員の皆様からの御発言をいただこうかと思いますけれども、今日御出席でまだ御発言……。
 安田委員、お願いいたします。
【安田委員】  どうもありがとうございます。江端さんのTC人材育成は非常に感銘を受けました。まさにテクニカルな技術スタッフで、学位を持っていて、そういった高度な技術を持っている人たちがあまり優遇されないというか、研究者よりも下に見られるような状況というのは良くない状況だと思っていました。むしろ一緒にそういう人たちと楽しく研究をやっていくことですばらしい成果がどんどん出ていくと思っておりますので、すごくすばらしいシステムで、よりこれは全国に広がっていくといいなと思います。あと人材流動の話も出ていましたけれども、できればそういった優秀な人材が1か所に、物理的に近い場所だけではなくて、どういう形にするか分からないですけれども、地方大学を含めた日本国内の大学の中とか研究所の中で助け合っていくことによって、かなりいいものが生まれ、今までなかったような研究とか成果が出るんじゃないかということが期待できると思いました。
 あともう一つ、東工大のお話で、すごく私は共感したというか、これこそ目指すべきだなと思ったのは、全ての構成員がとにかく幸せになること目指し、それによっていい結果を出すという点で、これはすごく重要なポイントだと思います。ただ、多様な人材の個々の能力が生かされる状況が作りだせれば、全体の生産性と構成員の幸福度はともに上がると思います。人一人なかなか見ることが難しいということを踏まえますと、コホート毎の傾向を踏まえて、例えば若手の人はマネジメントとかが少なくて、授業も少ないので、基本的にお金と技術サポートがあれば、設備があれば大体伸びるということで、その足りない部分をおぎなうことで成果につながると思います。
 逆にシニアになると時間がない状況になります。この原因の一つは、一昔前に比べると、大学が求められている役目というのが教育と研究以外のことも多く含まれるようになってすごく多様化していて、1人の研究者があれもこれもやらなきゃいけないという事態になっていています。それらがもうこれは完全に雑用ですと切り捨てられるようなものだったらいいんですけれども、やっぱり一つ一つ見ていくと、それはそれなりに大事な価値のあるものであり、やはり手がかかって時間がとられる。
 こういうときに時間をどうやってつくるかというところが、私も解がなくて、悩ましいところなんですけれども、やっぱりもう少し、相対的に重要なところと、そうでないところの切り分けし、思い切って全てのものを100%でやろうとするという姿勢を捨てなくてはいけない部分もあるのではないかと思っている次第です。
 特に、評価のための労力、申請書などの審査委員としての労力は重要ではありますが、過剰に労力と時間が割かれ過ぎているなというのは実感として感じております。
 子育て世代という意味での発言も加えさせていただきますと、RAとか女性研究者、ダイバーシティーのためのお金というのも、かなり文科省さんが割いてくださっているという資料がありました。これは本当にありがたく、今後も強化していただきたいと思います。現場のポスドククラスの大学でまだ正規の雇用になっていない人たちのライフと研究のバランスが、特に女性研究者の30代前後の方は本当に苦労されているなというのをすごく感じます。ここら辺ももう少し本当は、これもなかなかリソースが限られる中、難しいとは思うんですけれども、学び直しやキャッチアップするための時間がどうしても足りていないのではないかというのが現場を見ていて感じるところです。RA制度が今まさにそういう学びなおしを行うための時間を作ってくれる役目をしてくれているのかなと思いますが、サバティカル的な、本当にそれ以外の業務からちょっと離れて研究にキャッチアップするための時間みたいなものがあると、よりダイバーシティーの推進が進んでいくのではないかなと感じているところです。
 すみません、長くなりましたけれども、ありがとうございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。大学院生も視野に入れるべきだと思いますね、そういう点では。
 原田委員、お願いいたします。
【原田委員】  
 資料1-1の、コアファシリティ構築支援プログラムについて、42ページで、これの好事例・参考例が、先ほど江端先生から御紹介いただいた東工大のTCカレッジという認識で合っていますでしょうか。もしそうだとすると、この連携・ネットワークの強化をしながら、地方大学もぜひ巻き込んで、よりこのプログラムの好事例を増やしていただく取組をお願いしたく思います。
 それから、この支援プログラムはどちらかというと科学技術系の課題解決のための支援プログラムになっていますが、類似の支援プログラムで、よりロバストな課題を解決するような形の、人文社会系やほかの様々な分野もアプライすることができる構築支援プログラムを新たに政策として作っていただけましたら、多様な分野の取組をレベルアップしていけると考えました。具体的アイデアはまだありませんが、ロバストな課題解決型の支援プログラムにアップグレードしていただけるといいと思いました。
 それから、若手、例えば高校、中学のそういった世代の大学との結びつきも良い取り組みだと思います。ただ、スーパーサイエンスハイスクールは、ほんの一握りであること、地方の中学、高校は首都圏、都市圏との情報格差が非常に大きいため、より地方の子供たちのレベルをアップさせる取組として、トップレベルの大学と結びつける企画・政策も期待します。アウトリーチ的なプログラムなど、日本全体として、多様な世代の子供たちのレベルをアップさせていきながら、つまり裾野を拡大しながら、高みを目指す取組にもつなげていただくというのが重要ではないかなというふうに思っております。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、五十嵐委員、お願いします。
【五十嵐委員】  五十嵐です。どうもいろいろありがとうございます。
 私は産業界にいますので、今日の議論には直接加われないと思っているのですけども。感想なのですが、39ページの中段の「新たなサイエンスを生み出す機能」、観山先生をはじめ様々な先生方が、ここのところ、新たなサイエンスを生み出すためにはどういう仕組みが必要であるかを議論しています。この「新たなサイエンスを生み出す」目的が一番のポイントで、例えば今年のノーベル賞で強く感じたのですけども、ジェフリー・ヒントンもデミス・ハサビスも、人工知能の開発と応用ですよね。彼らが物理学賞と化学賞を受賞した。例えばジェフリー・ヒントンは、もう40年近く前にボルツマンマシン、熱力学のボルツマン統計からヒントを得て、新しいディープニューラルネットワークをつくってきました。ああいう学際的、分野融合的な研究、そういうことを極めないと、観山先生がおっしゃっていましたけども、これから先の高度なサイエンスに追いつけないのではないかと感じています。
 これからの新たなサイエンス領域は、学際的、分野融合的でないとつくれないと思います。今回の大学共同利用機関と共同利用・共同研究拠点の必要性や役割については、そのための議論だと思うのですが、世の中が今ものすごく大きく変化していて、学際的な領域、新たな研究領域が次々と出ているような気がしています。世界に早くキャッチアップできるよう、急ぐべきだと考えています。すみません、感想ですけども。
以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 松岡委員、お願いします。
【松岡委員】  ありがとうございます。私、さっき質問させていただいたので、1点だけお願いします。
 大学共同利用機関と大学の研究者の関係について、少し意見を述べたいと思います。私は、大学共同利用機関ではないのですが、それに準じた研究機関から5年前に大学に異動してきましたので、両者が分かる立場として意見を述べたいと思います。
 日本の大学共同利用機関は、どこも非常にすばらしい成果を上げていて、大学の研究者ともよい共同研究関係を皆さん築いている、そういう状況であると思います。ただ一方で、実際に大学共同利用機関にいる研究者も大学の教員研究者も、どちらも大変忙しくて、今日話題の研究時間の確保、これには非常に苦労している、そのような状況だと思います。ただ、両者にはそのような共通の悩みはあるのですが、研究環境という意味では多少違いがあって、一般的には、大学共同利用機関の研究者はプロジェクトに大変忙しく、大学にいる研究者や教員は教育、学務に大変忙しい、そういう状況と思います。
 現在、非常によい共同関係で研究が進んではいるのですが、お互いの環境についてより理解を進められると、お互いにとってより効率よく研究が推進できるのではないかと考えます。また、大学共同利用機関に長くいらっしゃいますと、ある分野のエキスパートとなるので、大学等に移ることは簡単ではないとは思いますが、ある程度の人事的流動性を持たせる、両機関の間である程度の人事交流がある、または、人事交流には至らなくても、お互いの研究環境、抱えている悩みを共有できると、より工夫された研究の効率化に結びつくように思います。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 水本委員は、御出席ですけれども、御発言。
【水本委員】  よろしいですか。実は挙手ボタンが表れてなくて、手が挙げられなかったのですけれど、すみません。
 今日、実は前半の江端先生の発表は、私、元いた大学なので、少し誇らしく聞いておりました。これは感想ですけれど、その中で、さらっと江端先生述べられていたんですけれど、4ページだと思いますが、事務職員、教員、それから技術職員、URA、この職階の真ん中にマネジメントする人材を育てるというパスが書いてあるんですね。私、これを書いたときに実は執行部にいたので、よく議論したので覚えているんですけれど、こういう考えが大学に限らずいろんな組織で非常に重要じゃないかなと、今でも思っています。
 それで、今日頂いた資料の1-1、これを拝見していて、それに類するのを見つけまして、67ページ、これは海外の大学の例のようですけれど、やっていることは少し違うかもしれないですけど、上のほうの2行目に「大学が期待する『全体を俯瞰できる目』を持つ学部長の育成を実現している」と書いてあるんです。こういういわゆるマネジメント層、これをそれぞれの機関の中で育成できる、あるいは機関の中でなくてもいいと思うんですけれど育成できる、そういう仕組みがやっぱり重要で、そういう人たちがそれぞれの大学なり研究機関におれば、その大学あるいは研究機関の力もだんだんついてくるし、そういう人たちがいないと逆に、何かをやろうとしてもうまくいかないというところがあるんじゃないかなと思っています。
 それが言いたいことのポイントです。関連で、たしか10年ぐらい前ですか、これは内閣府が主導したんでしょうか、私、背景はよく分かっていないんですけれど、マネジメント人材の研修プログラムみたいなのがたしかあって、大学の、当時は中堅どころの方々が1年間ぐらい研修を受けるという、そんなプログラムがあったと記憶しています。こういったプログラムが今、その後どうなっているのか、あるいはそのときに研修を受けられた方々が恐らくもう中心の執行部層になっているのではないかと思うんですけれど、そういったことをやっぱり動きとしてやることが、いわゆる研究機関、大学含めてですけれど、これを強くしていく。いろんなことを改革でやっていこうとしても、そういう力を、何というか、与えると言ったらいいのかな、発揮できる人たち、人材こそが重要ではないかなと、そんなふうに思って今日聞いていました。
 以上です。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。今の内閣府のプログラムに関しては現在も進行中だと思います。例えば、農工大の学長、千葉先生であるとか、あるいは科学大の学長の……。
【水本委員】  大竹先生も多分そうです。
【大野分科会長】  大竹先生もこのメンバー、その研修を受けていると思います。そういう意味で、あまり見えていませんけれども、そういう地道な努力の結果、人材が育成されているのはあると思います。どうもありがとうございます。
 もう1議題あるんですけれども、さっきお願いしたことは、何か事務局のほうで発言できますか。
【生田振興企画課長】  振興企画課長の生田と申します。
 その前に、大野座長おっしゃった、内閣府の事業、PEAKSの事業の中で、まさに次世代の学長を育てるということで、アメリカの執行部のところに行ったり、プログラムを受けたりとかというのは今でも続いております。
 その上で、先ほど規模感の御質問があったと思うんですけれども、まず技術職員につきましては、今、大体全体で1万9,000人ぐらい。ただ、この中で大学が1万2,000人ぐらいになっております。さらに、職階という意味では1割以下が課長級以上という形なので、なかなかやっぱり待遇という意味ではまだまだかなと思っております。また、技術職員のみならず、研究開発マネジメント人材、URAと言われるような方も多分同じような状況になっておりまして、現在大体1万人ぐらい日本の中にはいらっしゃるんですけれども、そういった方たちも、教員の下みたいな形にどうしてもなってしまうと、やはりいい人が来ない。特にPh.D.を持っているような研究の分かる人材をどうやってその職階に持ってくるかという意味において、実は次の資料2の概算要求の中で、文科省として新しく、研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業というものも来年度から立ち上げようとして、その中で、大学の中でそういうマネジメント人材をしっかりと引き上げていくような人事マネジメントとか、そういったところをやろうとしている大学に、まさに国から支援をできればいいなということで、現在、概算要求もしているところでございます。
 以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。
 あと、私からも少し発言させていただければと思いますが、やっぱり時間をつくるのは、代わりにやっていただける方がいるか、仕事を減らすか、あるいはその両方かですね。どうしても、やり方を変えるという時点においてエフォートが発生するので、それをちゃんとテークケアした支援、大学の中の工夫、あるいは文科省の施策によるなどがあり得ますが、それらをもって変わっていくということが重要だと思います。
 今日あまり議論されませんでしたけれども、教育のエフォートも考えに入れておくべきだと思います。我々は1日に24時間しかないので、教育がそのうちのどれだけあって、研究がどれだけというのは、大学全体の設計としても必要なことだと思いますし、そういったトータルで考える必要があります。これには、やっぱり投資がないと変えられないというのが現実だと思います。今、我々大変、毎日すごい業務をこなしている中で、その業務をゼロから変えようとか、じゃあもっと何かしようというときの意欲や元気はどこから出てくるか。先ほど学際研究の話もありましたけれども、それも同じことだと思います。毎日ゴムが伸び切ったような生活をしていたらば、あの人とちょっとこういうことをやってみようという意欲は減退していくのは自然の流れだと思いますので、いかに時間をつくるかというのはとても重要だと思います。
 そういう部分にたいして資源を獲得できる、あるいは文科省の予算も含めて資源を獲得するというのは非常に重要だと思います。そこで懸念点が一つあるのは、国立大学だけを取り上げると、公私の方々にはちょっと恐縮ですけれども、人事院勧告が今、3%になっています。国立の運営費交付金の内、7,000億円ぐらいが人件費ですので人事院勧告を反映すると、210億円がそこで支出されると、アディショナルに。それが5年続くと――5年ずっと景気が伸びていけばいいわけですけれども――1,000億で、それは法人になったときに10年かけて1,000億減ったわけで、そのダメージは皆さんもよく御存じだと思いますが、それが僅か半分の期間で実質的に同じことが起こるということですから、我々そういうこともちゃんと外部に発信をしていかなければいけないと思います。やはり大学はエコシステムですので、研究だけを伸ばすというわけにはいかなくて、全体の仕組みをちゃんと整えるということが重要だと思います。
 もう一つ、ちょっとここは今日の議論になかったので触れておきます。大学共同利用機関の一つの役割として、業務としてやっていただいていることに情報基盤があります。これは人文社会から生命理工全てに関わる非常に重要なものであって、これはオープンサイエンスを実行しようとか、あるいは研究インテグリティーをちゃんとしようとか、あるいはセキュリティーどうしようかとか、そういうことで全部に関わります。そこは共同利用という以上のことがあるので、これはいつまでも大学共同利用機関の一つの、今NIIが担当されていますけれども、それでいいのかということは非常に強い、大きな問題意識を持っています。
 ということで、今日は極めて重要な事項を御議論させていただきました。いろんなところでバランスを取りながら、しかし外からもちゃんとリソースを得られるような環境をつくっていかなければいけないと考えます。
 ということで、ここの部分はこれで終わりにしたいと思います。もし何かさらに論点がありましたら、事務局にメールでお願いいたします。
 お待たせしました、生田課長、議題の2、令和7年度概算要求について。予定の時間を大幅に過ぎてしまいましたので、簡単に御説明いただければと思います。
【生田振興企画課長】  資料2については、既に8月末に出して、先生方は一度は見られているかと思いますので、最初のページだけで簡単に御紹介したいと思います。
 1枚目のところ、これが文部科学省の科学技術関係の概算要求の全体像でございます。左の上に予算のポイントとございますけども、全体で1兆1,820億円プラス事項要求ということで、事項要求の部分は、毎年やっておりますが、科学技術関係の事項要求といって、国土強靱化というものが大体事項要求の中に入っているというふうに御理解いただければと思います。
 見ていただきますと、大きく4つに分かれておりまして、1つは抜本的な研究力向上と人材の育成、2つ目の柱が、イノベーション創出とそれを支える基盤の強化、3つ目として重点分野、それぞれAI、量子等々の分野の研究開発、4つ目として国民の安全・安心、フロンティアの開拓等々、宇宙、原子力、海洋といったような予算で構成されているものでございます。
 特に今年新規として出てきておりますのが、先ほど少し申し上げた研究開発マネジメント人材に絡む体制の整備ということで15億円、これが新規事業として計上されていたり、また、2つ目の柱のところではSPring-8の高度化、現状SPring-8ございますが、その2ということの部分が新たに計上されております。さらに、同様に「富岳」についても、ポスト「富岳」について着手するというものでの新規要求というもので、42億円計上させていただいているところでございます。
 右側半分に行っていただきまして、重点分野のところでは、軒並み新規が並んでおりますが、これはいずれも次世代半導体。昨今、半導体については経産省のほうでも大きな動きがあるように聞かれているかと思いますけれども、文部科学省としてもしっかり基盤の整備ですとか人材の育成、こういったところに資する予算というものを獲得していきたいというふうに思っているところでございます。
 その分野のところの一番下、医学系研究支援プログラム、これはまさに、先ほど時間の確保の議論がありましたけれども、特に医学系となりますと診療時間というものがまたさらに付加されるというような中で、どのように研究開発をしっかりしていくかというような体制整備も込みでの事業というふうになっております。
 4つ目の柱、こちらはあまり学術には関係ないんですけれども、宇宙、海洋、防災、環境エネルギー、原子力それぞれで様々な予算を計上させていただいているところでございまして、現状、経済対策のほうでも科学技術関係、様々必要なものを獲得していきたいと思っておりますので、また今後とも先生方の御指導いただければ幸いでございます。
 以上でございます。
【大野分科会長】  どうもありがとうございます。絶対にこれは質問したいということはありませんよね。
 ありがとうございます。ありましたらメールでお願いいたします。
 ということで、ちょっと延びてしまいましたけれども、本日の議題は以上となります。
 最後、事務局から連絡事項をお願いいたします。
【林学術企画室室長補佐】  事務局でございます。次回の学術分科会につきましては、年が明けた1月29日水曜日の10時から12時の予定となってございますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 また、本日の議事録につきましては、後日メールでお送りしますので、御確認をよろしくお願いいたします。
 また、先ほど分科会長からもございましたが、本日の議題に関しまして追加に御意見等ございましたら、事務局までメールでお送りいただければというふうに考えてございます。
 連絡事項は以上でございます。
【大野分科会長】  それでは、本日の学術分科会をこれにて閉じたいと思います。どうも活発な御意見ありがとうございました。
―― 了 ――

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