研究環境基盤部会(第118回) 議事録

1.日時

令和6年6月20日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 中規模研究設備の整備について
  2. 学際領域展開ハブ形成プログラムについて
  3. その他

4.出席者

委員

観山正見部会長、勝悦子委員、井上邦雄委員、関沢まゆみ委員、永田敬委員、中野貴志委員、長谷部光泰委員、渡辺美代子委員、森初果委員

文部科学省

塩見研究振興局長、柳澤大学研究基盤整備課長、柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官、熊谷大学研究基盤整備課課長補佐、高橋大学研究基盤整備課連携推進専門官、山本振興企画課課長補佐、その他関係者

5.議事録

【観山部会長】  ただいまより、科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会(第118回)を開催いたします。委員の先生方におかれましては、ご多忙中ご出席いただきまして誠にありがとうございます。本日の会議は、文部科学省のYouTubeチャンネルでの配信という形で公開での開催としておりますので、よろしくお願いいたします。まず事務局より、本日の委員の出欠、配布資料の確認をお願いいたします。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  おはようございます。事務局でございます。それではまず、委員の先生方の出欠状況についてご報告いたします。本日は、原田委員、井野瀬委員、治部委員、松岡委員、吉田委員がご欠席となっております。また、永田委員が途中入室、勝委員が途中退席となっております。
 また、事務局に異動がありましたのでご紹介させていただきます。本年4月1日付で、大学研究基盤整備課課長補佐に着任いたしました熊谷でございます。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  熊谷でございます。よろしくお願いいたします。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  また本日は、振興企画課課長補佐の山本も出席しております。
 
【山本振興企画課課長補佐】  よろしくお願いいたします。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  本日の資料につきましては、議事次第に記載の通り、資料1から資料4-2、参考資料1から参考資料3となっております。各委員には、事前に送りしておりますけれども、不足等ございましたら、随時チャット機能などで事務局までお知らせいただければと思います。また、音声等に不具合がある場合も、随時事務局までご連絡ください。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【観山部会長】  それでは、本日の議事に入りたいと思います。議題1「中規模研究設備の整備について」になります。中規模研究設備については、昨年6月に本部会において取りまとめを行った論点整理におきまして、最先端な研究設備と汎用性の高い先端設備の2つに区分されるとしておりますが、本日は、それらの区分ごとに関連の深い関係団体において、中規模研究設備の整備に関する検討を行い、提言を取りまとめているとのことでございますので、本部会において議論を深めるため、その内容についてご紹介いただきたいと思います。その後、事務局から中規模研究設備に関する調査結果や、中規模研究設備の整備にあたっての基本的な考え方の案について説明いただき、議論するという流れで進めていきたいと思います。それぞれの団体ごとにご説明や質疑の時間を設け、その後に事務局からの説明、それに対する議論を行いたいと思います。
 本日は、研究大学コンソーシアムから門松健治全体会議議長、那須保友全体会議副議長、井本敬二運営委員会委員長、設備サポートセンター事業等で連携協力し、長年機器共用や整備、人材に関する議論を続けてきた有志のワーキンググループである中規模機器検討ワーキンググループから、海洋研究開発機構の伊藤元雄先生にご出席いただいておりますので、よろしくお願いいたします。
 それではまず、研究大学コンソーシアムでのご議論について、門松全体会議議長からご説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【研究大学コンソーシアム(門松全体会議議長)】  どうぞよろしくお願いいたします。研究大学コンソーシアムの全体会議議長を務めております門松と申します。前回の研究環境基盤部会で中間報告を差し上げたところなのですけれども、今回まとめを行いましたので、その説明の機会をいただき、誠にありがとうございます。具体的には、この中規模研究設備の検討ワーキンググループの長であります自然科学研究機構の井本理事から説明を行わせていただきます。井本先生、よろしくお願いいたします。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  井本です。今回の中規模研究設備ワーキンググループの座長を務めました。まず、中規模研究設備に関して、本部会でアクティブにご審議いただいていることに感謝いたします。さて、3月にはワーキンググループの中間まとめを発表させていただきました。今回は最終版のまとめとして、研究大学コンソーシアムより提案いたします。内容の大筋は変わっておりませんが、考え方をより整理し、また小規模ながら調査結果を含めたところが変更点です。次をお願いします。
 中規模研究設備の定義には定まったものはありませんが、ワーキンググループでは、一人の研究者あるいは一つの組織だけでは購入・維持・運用が困難な規模であり、一方、大型プロジェクトとしては規模が小さすぎるものとしています。金額的には数億円~100億円程度となります。中規模研究設備では、その役割から「A トレンドを捉える」「B トレンドを作る」「C トレンドを支える」という観点から整理できます。
 4ページ目です。ワーキンググループでは、中規模研究設備に関する課題を整理いたしました。ここで示しましたように、単にハードウェアの設置だけの問題ではなく、マネジメント体制、技術開発、人材育成なども関係しており、複合的に日本の研究力を進める上での課題となっています。次をお願いします。
 従来、大学は法人単位で大学ごとの戦略に基づいた設備マスタープランで設備要求を行い、設備を整備してきました。しかし、中規模研究設備の特徴に即した予算スキームが必要となってきています。その一つとして考えられるのは法人の枠を超えた予算スキームの拡大です。さらに、研究動向を反映した国としての整備を行うために、新たな戦略的中規模研究設備整備枠の新設を提案いたします。次をお願いします。
 新たな予算枠の課題については、昨年の5月の本部会において、国立大学附置研究所・センター会議および、国立大学共同利用・共同研究協議会からも同様の提案があったところです。次をお願いします。
 繰り返しになりますが、研究大学コンソーシアムとしては、設備マスタープランの拡充と中規模研究設備の戦略的中長期整備・開発の推進の両方が、両輪となって基盤整備をすることが重要であると提案するものです。次をお願いします。
 今回の中規模研究設備整備の提案では、特に開発についても含めています。ここに書いてありますように、日本で唯一無二の最先端設備、マルチセクターによる開発が必要となる設備、戦略的な整備が必要となる整備、これらの条件に該当する設備を継続的に国家レベルで戦略的に実施すること、併せて、開発および高い技術力を有した人材を確保することなどの観点で整備することが必要です。次をお願いします。
 新しい予算スキームの位置付けを整理しました。先端性・汎用性を横軸に、戦略性・ニーズを縦軸にとった場合、新しい予算スキームは第一象限にあり、戦略性と開発要素が高いものが想定されます。次をお願いします。
 従来の予算枠と今回提案する新しい予算スキームの関係を示したものです。この部分は従来の予算スキームではカバーされておらず、今後の研究力強化においては必要不可欠です。次をお願いします。
 予算枠の観点から既存の予算要求枠からみても、中規模研究設備の戦略的整備は新たな枠組みが必要であることは、ご理解いただけると思います。次をお願いします。
 中規模研究設備の運用にあたっては、単に設備を設置するだけでは有効活用はできません。高度な知識と技術を必要とする設備ですから、研究コンサルテーション、実験、解析、成果発表、広報までの一体的なサポートが重要です。13ページ、14ページ目では、新たな予算要求スキームにおける具体的な方針案や整備に向けた提案から整備・開発までの案を示しています。
 15ページまで行ってください。研究大学コンソーシアムの中規模研究設備ワーキンググループでは、中規模研究設備に関するアンケートを実施し、9大学から51件の中規模研究設備の提案がありました。このアンケートは、既存の設備のみならず、今後の研究に必要な設備についても検討して提案していただいたものです。このアンケートによりますと、51件の平均は約20億円であり、10億円以上の設備が63%でした。次をお願いします。
 まとめです。最先端の研究動向を敏感に捉え、中規模研究設備をマルチセクターで開発し、全国の研究者に広く提供するためには、研究現場のニーズを捉えた中規模研究設備の整備を進めるとともに、組織の枠を超えた連携のもとに中規模研究設備を戦略的に整備・開発し、研究動向を捉えた柔軟なマネジメント体制で運用することが必要です。そのためには、ニーズと戦略性を両輪として、設備マスタープランに加えて中規模研究設備の整備・開発が必要です。従来の設備マスタープランの拡充とともに、中規模研究設備の戦略的中長期整備・開発の推進をご検討いただきますようにお願い申し上げます。私からの発表は以上です。
 続いて、研究大学コンソーシアム全体会議副議長の那須岡山大学学長より、大学の現状を踏まえて補足の発言をしていただきます。那須先生、お願いします。
 
【研究大学コンソーシアム(那須全体会議副議長)】  ありがとうございます。岡山大学の那須でございます。副議長を務めさせていただいております。私自身は高等教育機関として、このような設備を最大限に活用し、最大限の成果を創出する体制の整備を構築するための人材の育成・人材の供給、そういったものが高等教育機関としての役割があるというふうに考えております。これは、今日の資料の12ページの下段の左にありますように、単に研究者のみならず、いわゆるONEチームを構成する研究者、技術職員、URA、事務職員、こういった職員全体の高度化が必要であると考えておりまして、J-PEAKS、所謂「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」に採択された大学として、現在こういったところに取り組んでおります。
 私は特に学部生や院生が、このような中規模設備に若い時からアクセスできる垣根の低い環境を作る事が、ひいては長期的に研究の高度化、学生のキャリアパスの形成、そしてONEチームに入って行くキャリアパスの多様化に必要と考えております。そういったことで、先ほどありましたように、設備の導入に際しては、人材育成という観点を一緒に考えることが、私は重要であると考えております。私の発言は以上でございます。ありがとうございました。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。ただいまのご説明についてご質問がありましたら、どうぞお願いいたします。中野先生、お願いします。
 
【中野委員】  ご説明ありがとうございました。井本先生にご質問です。数億円~100億円という金額の枠をお示していただきましたが、アンケートの結果等を参考にすると、その過半数が10億円以上という理解でよろしいでしょうか。
 今回、戦略的な中規模施設の整備と、設備マスタープランの拡充という2本立ての提案をしていただいたと理解しているのですが、設備マスタープランの拡充については、各大学における金額的な拡充を意味するのでしょうか、それとも、大学の枠を超えたマスタープランを作成等、新しい仕組みの構築を指すのでしょうか。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  各大学が希望される中規模設備の金額というのは、アンケートの仕方によってずいぶん左右されると思います。今回のアンケートのポイントとして我々が重要だと考えているのは、10億円以上のものが結構あるということではないかと思っています。それほど全国的な調査ではありませんので、結論的なことはなかなか言えないと思いますけれども、今、大研課(大学研究基盤整備課)のほうで調査をされているのもあるので、そのあたりをまとめて、中規模的なことをどのように位置付けるかということが必要なのかなと思います。
 それから、今回の提案の中心的な部分は設備マスタープランではなくて、中規模研究設備のほうです。こういう発言をすると、設備マスタープランを潰すというようなふうに捉えられる方も結構いるわけですけれども、我々の意図は、各大学がそれぞれの戦略性、ニーズに従って設備整備をするというのは、今後も重要であるというふうに考えています。ただ、金額的にこれまでのものでよいか、複数の機関・大学から合わせて設置するようなことを柔軟性や拡充というかも併せてご検討いただければありがたいというふうな立場です。これでお答えになっておりますでしょうか。
 
【中野委員】  ありがとうございます。
 
【観山部会長】  長谷部先生、お願いします。
 
【長谷部委員】  ご説明ありがとうございました。非常にわかりやすくまとめていただいていると思います。10ページについて、中野先生と同じポイントで質問したいのですが、井本先生は生物学によく精通されていますのでおわかりのことと思いますが、生物学分野で日本の研究力が落ちているというのは、この右下の部分の設備の更新ができないということだと思います。どうしてそれができないかというと、現状で設備マスタープランを作っても結局プランだけで、予算がないので何も買えないという状況があるので、生物学は危機的な状況だと思います。今回、設備マスタープランの拡充ができればいいのですが、予算的に拡充というのはほとんどできないような気がしまして、この機会に、例えば中規模設備の中に右下までも含めるような形にしたほうが、少なくとも生物学分野あるいは関連分野においては、全体としての研究力強化によるメリットがあるのかなという気もするのですが、こういった点について、どのような議論が行われたのか教えていただけますか。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  設備マスタープランというのは、基本的に各機関を対象としたものということになっています。大学がニーズや戦略性を考えて設備要求をし、要求したところに全て設備を設置するだけのお金があればいいわけですけれども、それが実際にないとすれば共用のシステムを考えないといけません。そうすると、それをどういうふうに順位付けするかというようなことが必要になってくるという議論は行っていました。
 それとライフサイエンス系や生物学系の装置も、昔は数千万円の機械が高いと言われていましたが、今は10億円に近いものが当たり前になってきています。したがって、金額的な面でも、設備マスタープランで整備をしていくには、無理な時代になってきているという議論を行いました。ですから、今までとは違った観点で、新しい予算枠が必要だという提案をさせていただいたわけです。以上です。
 
【長谷部委員】  今のご議論だと、赤い枠を下まで伸ばしたほうが良いような議論の結果のようなふうに聞こえたのですが、そうではないのですか。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  戦略性とニーズの考え方が、もっと下のほうまであっても良いのではないかということですね。そのあたりに関しては、図としてわかりやすく書いていることもありますが、横軸に関しても、汎用性と新規性についてもいろいろと議論があったところです。ただ、各大学のニーズだけではなく、国全体として俯瞰して決めていこうという姿勢が必要ではないかという議論が強くありました。
 
【長谷部委員】  共同利用研や共共拠点などを使って、右下もカバーできるような計画になるといいのではないかと思いました。以上です。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  ありがとうございます。
 
【観山部会長】  渡辺先生、お願いいたします。
 
【渡辺委員】  ご説明が大変わかりやすくて、ありがとうございました。おっしゃっていることは、本当にその通りだと思いながら聞かせていただきました。戦略が大事で、国全体のニーズが大事だという事、人に関しても運用・マネジメント体制や人材育成が大事なのは、本当にその通りだと思うのですが、これは中規模研究設備に限らず、全てにおいて大事ではないかと思います。むしろ、中規模研究設備に特化したら「これが大事です」という部分があったら教えていただけますか。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  それは、これまでの予算枠でカバーできているか、できていないかというところが、大きな論点かと思います。これまでは実験装置を科研費で買ったり、設備マスタープランで整備されてきたわけです。ずっと大きいものは大型プロジェクトで整備する、その間の中規模設備というのは、あまり整備されていませんでした。そこが現在抜けたところなので、ここを整備しないといけないという提案です。
 
【渡辺委員】  ありがとうございます。ということは、すべての規模の設備について、同じように必要なのだけれども、今まで抜けたところを今回強化しましょうというご提案だったという理解でよろしいでしょうか。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  はい。
 
【渡辺委員】  ありがとうございました。
 
【観山部会長】  勝先生、お願いします。
 
【勝委員】  非常に魅力的な提案だと思うのですが、10ページのところで、今回のご提案というのは、新規性があって戦略的なものというところに矢印がついているということなのですが、この部会でも過去に議論があったと思うのですが、一方で汎用性のあるもの、これが足りないという研究機関・大学もかなりあるという議論もあったので、そちらのほうも重要なのではないかなと思うのですが、この点についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
 それから、6ページに、複数の大学が申請するという形になっているのですが、汎用性ということを考えた場合は、個別の大学が手を挙げられないのかという、2点について教えてください。
 一つコメントとして、これは予算の問題だと思います。内閣府の教育未来創造会議の第2次方針で、今度留学生を更に増やすとも言われています。予算の確保という意味では、留学生に対しての学費のことは、ぜひ文科省の中で考えていただいて、それと整合するような形で進めていただければと思います。以上です。
 
【観山部会長】  ありがとうございます。井本先生にお答えいただければと思うのですが、汎用性の高い先端設備に関しては、次の発表者がお話しされると思います。井本先生、汎用性の部分について、何かありますか。
 
【研究大学コンソーシアム(井本運営委員会委員長)】  汎用性のある機械が必要なのは、言うまでもないことですが、今回の提案で強調したいのは、開発の要素をもう少し一生懸命やっていかなければいけないということです。でき合いの機械を買っているだけでは、日本の科学技術は伸びることはないだろうという観点も必要だという点です。以上です。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。次に中規模機器検討ワーキンググループでのご議論について、海洋研究開発機構の伊藤先生よりご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
 
【中規模機器検討ワーキンググループ(伊藤調査役)】  ただいまご紹介にあずかりましたJAMSTEC高知コア研究所の伊藤です。資料を共有させていただきます。RUCの方々に引き続きまして、中規模について、我々は経営というよりかは、もっと現場、つまり共用事業や設備サポート、共共拠点であるとか、そういうところで本当に現場の雰囲気とか、何が問題なのかということをよく知っている研究者、URA、事務員、そこを支える事務の方々が集まって、最終的に我々の望みは皆さんと一緒で、機器や高度化、更新をどうやったら効果的に行えるのか、それが行えるのであれば、持続的な研究基盤やそれを支える環境ができて、我々の科学や技術を次につなげるような場を日本全体で持てるといいねというところで、有志の人たちが集まって検討を重ねてきました。大体半年ぐらいやっています。
 もちろん、僕らはセルフィッシュにやっているわけではなくて、アドバイザーとして基盤協議会の方々、あるいは隅蔵先生をはじめとした隅蔵プロジェクトというのが政策研究大学院大学にあるのですが、彼らとも密に協議をし、また未来工学研究所による設備調査のアンケートもちゃんと見ながら、RUCの方々ともいろいろと資料を共有させていただいて、どのようなことを経営陣の立場から考えるのか、あるいは下からどのように考えるのかというところで一番良いところを探し合いたいというふうに考えています。
 今回、資料の38ページ以降に、我々がまとめた提言がありますので、お時間のあるときにぜひお読みください。そこのポイントを今日はお示ししたいと思います。中規模研究設備というのは、カテゴリ的には1億円~100億円ぐらいと考えていますが、もちろんそのレンジには僕らも大体賛成しています。このワーキンググループだと、ざっくり言って5億円~15億円ぐらいの設備単体、あるいはパッケージとして動くようなシステムで考えています。我々にとって一番重要なのは、単に物買いだけで終わらないということです。開発であるとか運用支援が絶対に必要だということです。これは単に1大学、あるいは2つ3つの連携があったからなし得るものではありません。なので、この必要性について提言をします。
 また、機器というのは、ただ置いてあって誰か知らない人が来てポンと出るようなものではないので、改めてみんなで研究を作り上げていくような研究技術・基盤職を創設したらどうだろうというのが2つ目の提言になります。
 3つ目は、これは我々研究者も猛省しなければならないところがあるのですが、支援事業の運営体制について見直した方が良いのではないかということです。例えばファンドを取りました。取った後に、そのファンドをみんなどう使うのかというのは、基本的に裁量に任されていると思うのですが、その後にこのお金をどう使ったではなく、「このお金はこういうふうに使ったほうが、あなたの組織は伸びるのではないか、このファンドでもっとやりたいことができるのではないか」という、我々のほうにもっと寄り添った形で運営体制を作りたいと思っています。それはステークホルダーだけではなくて、ファンディングエージェンシーである文科省、JSTあるいはJSPS、そういう方々と一体となって考えないと、単に無駄な投資になる可能性が高いです。まとめると、この3つを考えることで、今のところベストに近い設備開発・運用ができるではないかと考えています。
 なぜこういうことになったかというと、基本的に共用であるとか共共拠点の関連事業からわかってきたことがあります。各拠点は言わずもがな、研究基盤として、あらゆる分野の研究を牽引する駆動力となっていることは全員知っています。ここ5、6年で機器の共用は一般化してきました。これは素晴らしいことで、みんながアクセスできる中でも、5億円~15億円ぐらいの先端機器のニーズが高いことも可視化されています。もう一つ重要なのは、単に研究をドライブするだけではなく、最先端のサイエンスで培ってきた技術やサイエンスの視点というアドバイスを産業界からもすごい必要とされているということです。この3つが非常に重要だと思っています。
 これらに基づいてどのようなことが、今後我々は取り組まなければならないのかというと、1から6にあるように、それぞれ重要ですが、利用料収入の話あるいは機器共用をもっと当たり前のシステムにしたい、効率化というのは大事だけれども、大学・研究機関と国が一体となって、この重要性というものを考えるということが重要だと考えています。
 中規模研究設備は、単に研究を進めるドライビングフォースだけではなく、新たに何かの価値を創造する研究の場というふうに位置付けています。先ほどRUCの方からもありましたように、問題点というのは既に可視化されています。一方で単に物買いだと、10年サイクルで同じような議論がおそらく起こるでしょう。今後もお金がなんとかとか、研究開発のお金がなんとかという状態になると非常に困るわけですね。また10年後に、こういうメンバーが集まってワイワイやっても、結局10年前と同じことが起こって、結局時間の無駄になる。ということを考えると、この場を使って、人材や設備の安定的な運用、そして計画的な整備計画をしっかり検討しなければなりません。このために我々がいると思っています。
 中規模設備の代表例として、汎用性の高いものを一つ紹介させてください。私は二次イオン質量分析装置というものを25年~30年使っておりまして、それについて軽くお話しします。元々これは企業と大学で開発が始まったもので、フランスの製品です。2000年代にマーケットに出てきて、大体25年ぐらい経ちます。
我々JAMSTECは2010年ぐらいにこの機械を入れたわけですが、当時5億円だったものが、今は12億円ぐらいになっています。これが現状の中規模機器の現実です。これはそれなりにパワフルで、2003年ぐらいからの分野の分布を見ると、本当に汎用的です。単に惑星科学だけではなく、バイオロジー、医学、創薬や半導体のような分野で使われています。論文もハイインパクトなものがたくさんあります。それも含めて1400本出ています。しかも、これは今後も続く傾向であろうと思っています。
 自分自身がやっていることが、30ページの下のほうに書いてありますけれども、たった1台のマシンを導入してから10年間で、アカデミアにも非常に貢献していて、それと同じくらい産業イノベーションにも貢献しているということが、この図からわかります。アカデミアで本当にやっているのかという疑問があると思うのですが、例えば、私はJAMSTECなので、地球とか惑星とか海とか生命の世界を見るというのが仕事なのですが、これができる唯一の研究機器です。例えば、左にあるようなNature、 Nature Communications 、右側は、一昨年に出した Nature Astronomy の結果なのですが、これを見てもわかるように、非常にインパクトが高く、社会的に非常に反響の良い成果がこれから出ています。これが中規模機器で、汎用的かつ最先端の分析装置だというふうに考えています。もちろん、これと同じことはクライオ電顕でもあるでしょうし、もしかしたらもうちょっと違うNMRというものもあります。ただ、ここは一例として示しただけです。
 実際にどういうものが一番良いのだろうかという案を我々で考えました。ここに示したのはあくまでも一例なので、これが全て叶えば良いというものではないのですけれども、運用や運営に対する支援のプログラムは、なるべく長期で欲しい。その間にちゃんと定常的にアウトプットができるような環境を作りたい。それと並行して拠点の機能を強化するための人材プログラムを走らせたい。この2つが合わさって初めて、中規模の設備を導入する、あるいは高度化・更新する場が整うと考えています。もちろん1番、2番があるところは、いきなり3番の整備プログラムに行っても良いと思いますが、基本的にこの3つが独立のプログラムで、かつ有機的に合わさるということが非常に重要だと考えています。
 先ほどRUCのほうからもありましたように、単に物買いだけではなくて、ちゃんと分析会社とNDAなどを結んで、次世代のバイオロジーあるいは惑星科学みたいなものに資するような分析機器を日本から出して、それを世界の標準化にしていくような考えも持っています。
 概念図としてはこういう感じで、できればプログラムをすすめて終わりだけではなくて、ある程度オーバーラップしつつ、長い年月を国として、そして組織としてサポートするようなことができれば良いのではないかと思います。
 これは人材の話なのでスキップします。最後にまとめますと、我々は今回のこの中規模設備の整備・開発・運用支援というのを、我が国の研究インパクトの低下を打破する一つの方策として考えています。本当に研究の現場を支える人々の意見や課題、要望などをちゃんと抽出して、3つの提言をまとめました。これは提言の3つ目にありますように、ステークホルダーや運営母体と一緒に作り上げていくような、長期的な視野に立った整備を行いたい。それはきっと未来に繋がるでしょう。そして、この場の議論というのはこの場で終わりではなくて、第7期の基本計画の実装に向けて、本ワーキンググループだけではなく、大学コンソーシアムあるいは基盤協議会などと協議をしながら、次の100年あるいは200年の研究力の向上モデルの礎を作っていきたいと考えています。以上です。ありがとうございました。
 
【観山部会長】  伊藤先生、どうもありがとうございました。ただいまのご説明について、ご質問を受けたいと思いますが、時間が押していますので、1~2件にして、この後、文科省のお話があった後に、また時間を取りたいと思います。森先生、お願いします。
 
【森委員】  ご説明どうもありがとうございました。結局、中規模のところは、最先端装置を開発するというところと、人材を育成するというところと、管理維持するというところがあると思うのですが、それを独立にプログラムとして運用するような提案で、設備は持っているのですが、技術職員やURAなどの人材のところを拡充すれば、中規模設備が活かせるとか、そういう独立なパッケージとしてサポートするような考え方でよろしいでしょうか。
 
【中規模機器検討ワーキンググループ(伊藤調査役)】  その通りです。いろいろな人と話していると、人がいないためにできないところ、あるいは施設が老朽化し過ぎていてできないところがたくさんあるので、そこのチョイスは各機関に任せて、提案するプログラムの中でフレキシビリティを持ってやっていくというのが今後、利活用できるシステムだと思います。
 
【森委員】  ありがとうございます。そうすると限られた予算の中でも、一部自分の持っているリソースを利用しながら、装置の利活用が十分にできるようになると感じます、設備の更新がなかなか難しいところがあるとすると、設備プログラムのところだけ応募するプログラムと解釈してよろしいですね。どうもありがとうございました。
 
【観山部会長】  長谷部さん、短くお願いします。
 
【長谷部委員】  34ページの省略された人材のところですが、技術系職員の雇用というのは大事だと思うのですが、研究教育職員と同じ階職にした理由を説明していただけますか。
 
【中規模機器検討ワーキンググループ(伊藤調査役)】  やはりモチベーションです。研究にどれだけ携わることができるか、携わることができないのかで人のモチベーションはかなり変わると思います。技術員が、研究をやって良いのか、科研費に応募して良いのかというのが、かなり制限されています。それは正しくないと思っています。
 私は国研なので教育の経験はほとんどないのですが、例えば大学に行って、どういう研究力の向上ができるのかと考えたら、研究に技術を開発するポジションがあると非常に行きやすいと思っています。特に海外の人たちの雇用も視野に入れています。ご存じのように海外の方々はソフトマネーで技術を持っている人がいっぱいいて、そういう人たちに日本に来て、いきなり教育をやれと言われても多分できません。そうした場合に研究力を確実に上げる方々を雇用できて、かつ技術員のモデルになるようなポジションがあることで、全体のモチベーションが上がると考えています。
 
【長谷部委員】  ありがとうございます。
 
【観山部会長】  中野委員、お願いします。
 
【中野委員】  感想なのです。非常に素晴らしい発表で、優れた提案だと思いました。ニーズをきちんと汲み上げて、技術的なサポートや開発を行う人材を育てていくことによって、ニーズに応えるだけではなく、先端性も見出し、それが日本の強みになるというメッセージだったと感じております。ありがとうございました。
 
【中規模機器検討ワーキンググループ(伊藤調査役)】  ありがとうございました。
 
【観山部会長】  事務局から、中規模研究設備に関する調査結果や、中規模研究設備の整備にあたっての基本的な考え方の案についてご説明をお願いします。時間が押していますので、よろしくお願いいたします。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  資料2の1ページをご覧ください。昨年6月に本部会において取りまとめをいただいた、中規模研究設備の整備等に関する論点整理におきまして、中規模研究設備の整備等に関する現状と課題を整理いただき、今後の検討の方向性についてお示しいただきました。本日は、検討の方向性でお示しいただいた、今後の、中規模研究設備の検討に向けて、我が国における中規模研究設備の整備の状況や、国際的な動向、装置開発の現状など調査を実施した点につきまして、昨年度末に弊省が実施いたしました委託調査の結果の概要をご報告させていただきます。また、その他の検討の方向性について、現在の取り組み状況についてご報告し、それに関連して、今後国が中規模研究設備の整備を行うにあたっての基本的な考え方の案を説明させていただきます。
 2ページをご覧ください。我が国における中規模研究設備の整備の状況や、国際的な動向、装置の開発の現状に関する調査につきましては、資料に記載の国が整備方針を持って整備するべき中規模研究設備に関し、研究分野ごとの種別、金額規模や、各大学等における整備状況、現存状態等の必須調査項目について委託調査を実施しました。
 3ページをご覧ください。こちらは委託先である未来工学研究所において実際に実施した調査の概要です。86の国立大学、4つの大学共同利用機関法人、1つの公立大学、3つの私立大学を対象に調査を実施し、中規模研究設備を1件以上保有していると回答した機関は、このうち58機関ございました。実際の調査についてですが、中規模研究設備を取得価格が、おおむね1億円以上、100億円未満であるものとし、複数の研究グループの利用を前提とし、人文社会科学系の研究設備も含むものとしています。これらの中規模研究設備に関し、設備リストや取得価格等の保有状況、それらの設備の利用者の範囲、利用形態等の利用情報、年間運用費と財源、稼働可能期間等の財源情報などを調査するとともに、中規模研究設備に関する政府等への期待や技術職員の現状や課題、中規模研究設備を活用した研究開発の好事例や課題等についても調査しました。また、本調査につきましては、財務担当部署等とも連携の上、金額等、資産上の情報とも突合を行った上での回答をいただいています。
 4ページをご覧ください。回答のありました各機関における中規模研究設備の保有状況についてですが、684件の中規模研究設備の整備を保有していると回答があった中で、1~2億円の設備が全体の60%を占めており、1~10億円の設備が94%となっております。一方で取得価格の積算額を比較した場合には、10億円以上の設備の積算額がおよそ1,150億円となっており、総額の約44%を占めております。これらの取得財源の状況を見ますと、2億円未満の設備においては競争的資金等の外部資金の割合が高いのに対し、より高額な設備においては、大学・機関からの概算要求を通じて国として予算措置を行っている基盤的経費の割合が高い状況となっています。ここから、より高額な設備の導入にあたりましては、大学・機関等から国への概算要求を通じて資金の投入が必要な状況が見て取れます。
 5ページをご覧ください。回答のありました中規模研究設備の研究分野ごとの状況ですが、化学・物質科学に関する設備が最も多く、次いで医学、薬学、機械・電気電子工学、生物学、数学、物理学となっております。右下の棒グラフにつきましては、当該研究設備が複数の研究分野にまたがって利用されている割合について、主な利用研究分野として選択された分野に対し、その他の分野で用いられている状況を示しており、化学・物質科学の分野の中規模研究設備については、比較的多くの研究分野でも用いられている状況がわかります。ここから基盤部会の論点整理におきまして、中規模研究設備は多様な人材を引きつけるとされてございますが、多様な研究分野の人材をも引き付けている状況が明らかとなっています。
 6ページをご覧ください。中規模研究設備の利用範囲についてですが、特定の部局、組織、機関内でのみ利用との回答は18%のみであり、8割以上の設備が機関外からも利用されている状況となっています。中規模研究設備の管理組織の状況ですが、5億円未満の設備につきましては、機器分析センターなどの部局内、または機関内の共同利用施設が管理組織となっている場合が多いようですが、高額な設備の多くについては、大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点等が管理組織となっている状況であり、高額な研究設備については大型プロジェクト等により整備されることが多く、その実施主体であるこれらの組織が管理も行っているケースが多いことが考えられます。こうした設備の管理に携わる人員につきましては、5億円未満の設備に関しては5人未満のケースが多く、人員構成については兼任の教職員が務めるなど、専門技術を持つ人員が少ないといった意見が多く寄せられました。
 7ページをご覧ください。取得価格の範囲ごとに設備の年間運用費についても調査を行いました。取得価格5億円未満の設備とそれ以外とで、年間運用費に大きな差がある状況です。10億円未満の設備については、年間運用費がおよそ1億円程度の範囲であるのに比べまして、10億円以上の高額設備につきましては、数億円の経費がかかっています。また、その財源につきましては、低額の設備では利用料収入による運用も見られるものの、高額設備ではもっぱら基盤的経費が財源となっております。中規模研究設備を運用している機関類型との関係につきまして、高額な設備には年間運用費も膨大となり、一定以上の規模および財務的体力を有する機関しか維持できないことが推察されます。
 8ページをご覧ください。今回回答のありました684件の設備につきまして、通常の保守・整備を行うことで、あと何年稼働できるのか、稼働可能期間について、10年以上稼働可能である設備が4割である一方、10年未満である設備が5割あり、これらの中規模研究設備が、今後10年以内に更新の時期を迎えていくという状況となっております。また、下の棒グラフにつきましては、設備マスタープラン等の各機関における将来的な設備整備計画に、中規模研究設備の整備・更新計画が位置付けられているのかを問うたところ、10億円以上の高額設備においては、それらの計画に明記されているケースが6割を超えている一方、10億円未満の設備では、「整備・更新計画はない」、「不明」といったケースが多数を占めています。
 9ページをご覧ください。今回の調査におきましては、中規模研究設備の管理組織より、各質問事項を置いて、設備の管理や運用に関する課題等について回答をいただきました。その上で、これらの回答について、AIによるテキストマイニングを行い、分析を行っています。
 質問事項1「中規模研究設備の整備にあたり、国内外の技術開発状況や、日本の機器開発メーカー、政府に期待すること」に対する回答として、海外、世界、維持、更新などの単語の出現頻度が高く、これらを含む回答の代表例を資料に記載してございますが、これらの状況により、研究機関側が適切なタイミングで設備を更新できる、つまり設備の国内市場が維持される財政基盤が求められている状況がわかります。
 質問事項2に対する回答といたしましては、不足、雇用、難しいなどの単語の出現頻度が高く、これらを含む回答の代表例は資料記載のとおりでございますが、こうした状況より、技術支援人材の高度化は近年政策等でも提唱されており、これを実現する場として、中規模研究設備における人員の確保・育成の仕組みを整備していくことが重要であることが示唆されます。
 10ページをご覧ください。質問事項3につきましては、ネットワーク、連携、共用、共同などの単語の出現頻度が高く、これらを含む回答の代表例は記載のとおりでございますが、こうした状況により、現場の施設間あるいは教職員間の繋がりで維持されている場合が多く、支える人材の確保は、制度面での整備を政策課題として議論することが求められていることがわかります。
 質問事項4につきましては、その他の部分でございまして、回答が多岐にわたっており、比較的、設備の共同利用、技術支援体制、維持更新計画の単語が多い状況となっておりますが、その中で、トップ10%論文の創出など、学術的な成果創出への効果、学術研究機関との共同研究、企業との産学連携や製品化・事業化への効果、若手研究者や技術職員等の人材育成効果のみならず、地域の大学や企業とのネットワーク形成にも寄与しているとの回答が挙げられていますが、中規模研究設備を集めた網羅的なサイトの整備や、機関外からの利用を拡大するための広報が課題といった回答もありました。
 11ページをご覧ください。これ以降は、本委託調査の回答データを、弊省で独自に分析を行った結果です。なお、本分析の対象といたしましては、調査回答のあった684件の設備のうち、設備価格2億円以上における中規模研究設備262件を対象としておりまして、そのおよそ9割が10億円範囲の価格となっています。また、それらの設備カテゴリ別の状況につきまして、超高圧電顕、望遠鏡・レーダー、計算機につきましては、10億円以上のものが多い状況です。
 12ページをご覧ください。これらの中規模設備の設備カテゴリ別に見た取得財源の状況についてですが、ヘリウム装置などは基盤的経費での取得が多くなされている一方、クライオ電顕については、競争的資金などの外部資金による整備がなされている状況です。
 13ページをご覧ください。こちらは設備カテゴリ別に、老朽化度がどのような状況なのかを示した一覧です。老朽化度と申しますのは、本年度の2024年度から取得年度を差し引いて耐用年数により除したものを算出した値であり、例えば10年前の2014年に取得をした耐用年数10年の設備につきましては「1」となります。今回、回答のあった2億円以上の設備につきましては、8割以上が老朽化度「1」を超えており、6割以上が老朽化度「2」を超えている状況です。また、設備カテゴリ別にみると、NMRやMRI、加速器等は、比較的老朽化度「2」以上の設備が多い状況です。
 14ページをご覧ください。こちらは設備カテゴリ別に地域ブロック別の整備状況について示したものです。ヘリウム装置等に関しましては、全国各地域ブロックに複数分布しているものの、中国・四国地域の整備状況は比較的少なく、その他の設備に関しましても、この地域の整備状況は他の地域と比較すると少ない状況が見て取れます。
 15ページから19ページにつきましては、取得価格、基盤経費の依存度と学外利用率、学外利用率・取得価格・基盤的経費の依存度と老朽化度の分布を分析した状況です。詳細は時間の都合上、割愛いたしますが、20ページにこれらの分析をまとめてございます。取得価格の高い中規模研究設備は学外利用率が高く、全国的な研究基盤としての機能を十分果たしていること、その多くが基盤的経費により整備されてきたことが伺える一方、現在、その多くの設備の老朽化が進んでおり、基盤的経費による整備が進まない状況が伺えるため、今後大学等の研究力強化に向けて、これらの設備に対する全国的な観点からの計画的な整備が必要であることが明らかとなってきていると考えております。
 21ページをご覧ください。こうした調査結果の分析を踏まえた論点整理「検討の方向性」に対する現在の取り組み状況につきましては、21ページから25ページまでに記載をしてございますが、当面の検討事項としてお示しをいただいた事項につきましては、1ポツ目、中規模研究設備の整備の仕組みにつきましては、令和7年度概算要求に向けて検討を行っているところでございまして、後述いたしますが、それに向けた整備方針の策定を今後予定してございます。また、2ポツ目につきましては、調査を実施済みでございます。3ポツ目の科研費との連携につきましては、引き続き検討を進めていまいります。
 22ページをご覧ください。一方、中長期的な検討事項としてお示しをいただきました事項について、1ポツ目に記載している中規模研究設備の整備・運用に関し、技術職員の配置や維持管理費の措置など課題について検討が必要であるという点につきましては、そうした措置を継続的に支援することが重要であるとの認識のもと、その支援の枠組みや、それらの選定方法や体制について、引き続き検討を行っているところでございます。また、3ポツ目、国において戦略的・計画的な整備方針を策定することを検討すべきとのご指摘につきましては、現在、各機関において整備されている中規模研究設備に関する状況につきましては、今回の委託調査で国として把握ができましたものの、令和7年度概算要求に向けまして、各機関からの具体的な要望を踏まえて、具体的な選定方針を定めた戦略的・計画的な整備方針の策定を行っていまいりたいと考えてございます。4ポツ目、毎年度の計画的な整備を可能とする安定的な予算枠組みについても、検討を進めることが必要とのご指摘につきましては、中規模研究設備の整備・運用を行うに際しては、研究開発・体制整備や人材育成の観点からも継続的に行うことが重要であるとの認識のもと、安定的な予算枠組みについて引き続き検討を行っていまいります。23ページ以降でお示しいただいた事項につきましても、現在、対応を行う方向で検討を行っているところです。
 26ページをご覧ください。ご説明差し上げたとおり、令和7年度概算要求に向けまして、中規模研究設備の整備の仕組みについて検討を行っているところでございまして、それらの選定方針等を定めた戦略的・計画的な整備方針の策定は今後進めていまいりますが、整備方針の策定の基となる中規模研究設備の整備に当たっての基本的な考え方について、今回、基盤部会でお取りまとめをいただきました論点整理や調査結果、これまでのご議論を踏まえ、26ページから31ページの通り、まずは案として整理をいたしました。まず「はじめに」につきましては、今ご説明差し上げました論点整理で求められている戦略的・計画的な整備方針を策定するにあたり、まずは基本的な考え方を整理することを述べてございます。
 27ページをご覧ください。「2.背景・経緯」につきましては、まず背景として1ポツ目で、大学等研究設備や教育研究を支える基盤であるとともに重要な経営資源であり、各大学等の経営戦略における明確な位置付けのもと、それらの設備を支える人材の育成、活躍推進を含めて、中長期的な設備の整備・運用に関する計画により整備・運用することが求められていること、2ポツ目で、中でも中規模研究設備については、我が国の研究力向上において、全国的な共同利用・共同研究に供され、各研究分野を超えて我が国の研究基盤を支える必要不可欠なものとして、その重要性と整備の必要性が喫緊の課題とされていること、3ポツ目で、今回の委託調査において、中規模研究設備の効果として、学術的な成果の創出への貢献のみならず、産学連携や製品化、事業化への効果、特徴的な研究設備を有していることによる国際交流や共同研究のハブ機能、それらを通じた若手研究者や技術職員等の人材育成効果が挙げられていることを記載してございます。
 28ページをご覧ください。このように中規模研究設備の整備の必要性とその効果を整理した上で、地域中核パッケージ等での議論等昨今の政府における大学の研究力強化の議論におきましても、大学や分野の枠を超えた組織間の連携の重要性が謳われているところでございまして、中規模研究設備は、それらの連携の中核の基盤としての機能をも果たしうるものであることを整理した上で、中規模研究設備の維持・整備につきましては、現行の研究マネジメントや、それに対応する予算措置の仕組みのもとでは、老朽化への対応や研究開発を伴う新規整備、さらには設備の管理運営に携わる支援人材の育成等が困難な状況であること、それが我が国の研究力低下の一因となっており、3ポツ目で、それ故に中規模研究設備については、現状やその機能を踏まえ、全国的な観点からの国としての整備方針を策定し、大学等の要望に対応するために重点的な支援を推進することが求められていることを記載してございます。
 29ページをご覧ください。ここでは重点的な支援を推進することが求められている中規模研究設備の定義を整理してございますが、これらに記載されている定義は、昨年お取りまとめをいただきました論点整理で整理をいただいた内容となっております。また、それらを支える管理、運用体制につきましても、委託調査の結果等を踏まえ、整理をいたしました。
 30ページをご覧ください。これらの中規模研究設備について、論点整理や調査の結果等を踏まえ、イメージとして、例を記載してございます。
 31ページをご覧ください。このような整理の上で、論点整理等を踏まえた基本的な整備要件につきましては、次のとおり整理をしてございます。まず、共通的な整備要件といたしまして、複数の大学等の枠を超えた連携体制のもとに運用を行うもの、各大学等の設備マスタープランに位置付けられているものであること。
さらに、最先端の研究設備の整備要件として、研究者コミュニティからの要望を踏まえた管理、運営、整備方針の策定がなされていること、中規模研究設備を整備するにあたり、研究者コミュニティからの要望を踏まえた仕様を備えるために、共同研究等調整が必要な要素が含まれるものであること。汎用性の高い先端設備の整備の要件といたしましては、共用ガイドラインにおいて定義する設備サポートセンター等、統括部局の管理・運用体制が既に整備されていること、利用料金の設定や課金につきまして、既にそれらの制度導入がなされている好事例を参考に検討がなされていること等でございます。
 本日は、こちらの基本的な考え方の案に対するご意見を中心にいただければと存じます。長くなりましたが、私からの説明は以上でございます。
 
【観山部会長】  どうもありがとうございました。非常に詳細な調査ならびに整備にあたっての基本的な考え方が表明されましたけれども、いかがでしょうか。ご自由に挙手ボタンを押していただければと思いますが。
 永田先生、お願いします。
 
【永田委員】  永田です。非常に詳細な調査をしていただいて、大変いいと思いますけれども、少しこういう観点はどうかと思っていることがあります。例えば、ここにおられる物性研の森委員とか、核物理の中野先生あたりは、結構オンリーワン的な装置を持っているので、どこからでも使いに来ると思います。例えば、もう少し規模の小さい汎用性の高い機器に関しては、どの程度のエリアの人が利用しに来る範囲になっているかということは結構大事だと思っています。例えばクライオ電顕を使いたいけれども、どれくらいの手近にあったら使いに行けるかというのがあると思います。岡山大の那須学長が、地域中核の事業でクライオ電顕を導入すると、それは中国・四国地域では唯一で、みんなに使ってもらわなければならないとお話をされています。そういう意味では、どれくらいの規模のものをどの程度の分布で入れたら、ある種インクルーシブに使いに行けるか、あるいはアクセシビリティを高められるかということが、結構大事ではないかと思っています。このような調査結果はどこかにありますか。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  ありがとうございます。重要なご指摘だと考えております。今回、資料の14ページにおきまして、設備を設置している回答をいただいた機関がどこにあるのかという観点で示したものでございますので。
 
【永田委員】  これに対して、どこから使いに来ているかということです。例えば、KEKの加速器などは、当然あそこにしかないから、全国どこからでも使いに来るわけです。けれども、そうではないもう少し汎用性の高いものについては、ここは置かれたことによって、これくらいの処の人が使えるようになりましたというのが、やっぱり必要だろうと思っていて、その観点をちょっと見たいと思いました。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  ありがとうございます。また、大学のほうからは、最近、コロナを契機といたしまして、オンラインでの共用も進んでいるというふうに聞いてございます。
 
【永田委員】  リモートの測定依頼などは受けられるようになっています。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  したがって、必ずしも、この調査結果が利用者の実態を正しく示しているものではないと当課のほうでも考えている状況でございますので、今、永田委員がおっしゃられた視点は非常に重要だと思います。今後そうした状況が把握できないかどうかというのは引き続き検討していまいりたいと存じます。
 
【永田委員】  よろしくお願いします。
 
【観山部会長】  井上先生、お願いします。
 
【井上委員】  ありがとうございます。今日は多くの中規模計画の話題について触れられたのですが、その中で少なくとも、汎用性の高いものと、研究開発を伴うものというのは、2つの種類があったかと思います。汎用性の高いものというのが、老朽化などの点で非常に問題があることは、もちろん承知の上なのですが、その分類の中で、汎用性の高いものというのは、多様な研究分野の研究者などを引き付けて人材育成に繋がっているとかというような評価があったかと思います。実際には汎用性の高いものというのは、ただ装置を買ってきて、その分析結果が欲しいだけという利用者が多く、そのものが人材育成をしているというよりは、それを使った他のプロジェクトが人材育成をしているというようなことではないかというふうに思っています。今回、汎用性の高いものについては、ある程度の対応が示されていたのですが、研究開発を伴うもののほうについて少し弱かったと思っています。研究開発を伴うものというのが、まさに技術革新を生み出すもの。ちなみに、先ほど言われたように、汎用性の高いものというのは、行けるところにあれば、あるいはリモートでもできるとなれば、どんどん集約が可能なのではないかということを付け足しておきます。研究開発を伴うものについては、逆に永続性というのが若干問題になる可能性があって、開発がうまくいけば長く続くかもしれないけど、そうならない可能性もあります。話の中で、パッケージとして、人材配置とかをしっかりしなさいというのがあったのだけれども、永続性があまりないところに人材配置をしてしまうと、それが終わったときにその人たちがどうなるのだろうかということを考えたときには、完全に、そのためだけに人材配置をしてグループを作ってしまうというのは、あまり効率性が高くなくて、流動性を担保した形で何かしらするべきかと思います。特に開発要素を伴うものというのはいろいろあると思いますが、技術的な開発もあれば、単にサイエンスを追求するような中規模なものもあって、そこが欠けているという判断だったと思いますけれども、どのように予算を取ってきて、どのような研究をして、どことチームを組んでというような効率化、シナジーを生み出すとか、予算を実際に取りやすくするとかという意味で研究マネジメント的なことが指摘されていましたけれども、これまでそういうことは、大研課がやられていたと思います。ただ、大研課というのは全体を見られているので、個々の中規模計画のそれぞれに親身になっておられないというところがあるかと思いますけれども、逆に中規模計画をやるような我々として欲しいのは、プロジェクトをよく理解して、ファンディングエージェンシーに近くて、他所とどのように組み合わせたら効率化ができてシナジーがはっきりできるかというアドバイスをしてくれるような人が欲しいと思っていまして、そういう意味での研究マネジメントを強化して、流動性を高めて、開発をしっかりと続けるというようなことにも配慮していただければと思いました。以上です。
 
【観山部会長】  重要な指摘だと思いますが、事務局から何かコメントはありますか。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  ありがとうございます。汎用性の高い研究設備についての人材育成の効果という観点でご指摘をいただいたと認識してございます。逆に、汎用性の高い研究設備につきましては、学部学生等が、実際に分析をしている現場に携わって、教育に対する効果というものがあるというふうに認識をしております。そうした意味での人材育成の効果というものはあるのではないかと考えてございます。また、その他にいただいた意見につきましては、大変貴重な意見だと考えてございますので、今後検討していまいりたいと思います。
 
【山本振興企画課課長補佐】  補足として、技術職員の話があったと思いますが、プロジェクトベースで技術者がおられる観点からしますと、我々中規模研究設備というのは、先ほど設備マスタープランの拡充がありましたが、マスタープランは金額の拡充の意味で言っているというよりは、大学単位のマネジメントの中に中規模研究設備の検討にも必要となる大学の枠を超えた組織間連携に資するような機能をしっかり位置付けることを加味して、マスタープランの課題を取り上げています。それはどういうことかと言いますと、先ほどおっしゃった技術職員といわれる方々もプロジェクトベースではなく、例えば、大学の中のマネジメント人材として位置付けた上でここに関わるという仕組みも含めて考えていかないと継続的な意味にはならないと思います。そういう意味で設備マスタープランというのを、大学の全学的なマネジメントの象徴としてあげて、そこから中規模を考えていくことを考えておりますのでご指摘は非常に重要だと思っています。以上です。
 
【観山部会長】  中野委員、お願いします。
 
【中野委員】  まず、調達価格についてのコメントです。中規模設備を調達されてから年数が経っており、その間の物価の高騰や昨今の為替の大幅な変動、あるいは機器の高度化による価格の上昇があります。これらを考慮すると、過去の調達価格だけで、新たな中規模設備の整備費用を算定するのかなり難しいと思います。
 もう一つ質問があります。山本補佐からのお話にもありましたが、整備要件に「大学等の設備マスタープランに位置付けられているもの」という項目が含まれております。この要件を入れた意図をお聞かせください。大学の設備マスタープランに位置付けられていないものは整備できないという考え方がある一方で、今回の中規模設備の整備にあたり、その重要性や大学の枠を超えたいろいろなコミュニティに対する貢献の大切さを大学に理解してもらうためにこの要件が加えられという考え方があります。いずれかお答えいただけたらと思います。以上です。
 
【観山部会長】  事務局、お願いします。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  ありがとうございます。最後に先生がおっしゃられた、大学の経営者層の方々にもぜひ中規模設備の重要性ということを理解していただきたいというのは、そのとおりだと思っております。設備マスタープランに位置付けるということを要件として入れましたのは、論点整理におきましても、設備マスタープランに位置付けるということは、皆さんに整理いただいておりますけれども、その意味といたしましては、あくまでも法人の要望を踏まえた形での整備というのが出発点になるだろうと考えてございまして、大学の枠を超えた連携に必要な設備に関しましても、整備を行う大学自体が研究の戦略や今後の計画というところに、きちんとそうしたものを位置付けて維持管理していくというような意思が、経営陣にあることを確認することが重要だと考えてございますので、それを要件としたというような趣旨でございます。以上です。
 
【中野委員】  今回、各大学に、中規模設備の照会が入っておりますが、この機会に設備マスタープランに位置付けるということで構わないということで、よろしいでしょうか。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  はい。事務連絡文書に、きちんと設備マスタープランに位置付けた上で要求をしてくださいということをお願いしてございます。
 
【中野委員】  わかりました。
 
【観山部会長】  長谷部委員、お願いします。
 
【長谷部委員】  今の中野先生の最後のポイントと同じで、31ページの設備マスタープランに位置付けるというのは非常に大事だと思っています。この設備マスタープランですが、従来は、こういう中規模研究設備の予算があるということを考えないで作られているので、この予算立てができるときには、また各大学で新しい設備マスタープランを立てて、それを元に競争していただくという形にしていただけると非常にいいのかなと思いました。以上です。
 
【観山部会長】  どうもありがとうございます。それでは、事務局において、本日の議論を踏まえて、中規模研究設備の整備に向けた検討を引き続き進めていただきたいと思います。また中規模機器検討ワーキンググループ及び研究大学コンソーシアムの皆さんにおかれましては、ご出席いただきまして、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
 それでは議題2「学際領域展開ハブ形成事業について」に移りたいと思います。本事業は、令和5年より開始しており、当事業の今後のフォローアップや事業の長期的な展開においても検討を進めていく必要があります。本日は、本部会における議論を深めるために、令和5年度採択機関の取り組みをご紹介いただくため、自然科学研究機構の川合眞紀機構長、生理学研究所の鍋倉淳一所長、東北大学金属材料研究所の佐々木孝彦所長にご出席いただいております。
 まずは事務局より事業の状況についてご説明をお願いいたします。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  事務局でございます。資料3をお願いいたします。学際領域展開ハブ形成プログラムにつきましては、これまでも基盤部会でご議論いただいておりますけれども、この事業は、これまで個々の大学の枠を超えて形成されてきた、各研究分野の中核である大学共同利用機関、共同利用共同研究拠点等をハブといたしまして、分野の枠を超えた新しい学際研究領域のネットワークを形成し、新たな学際研究領域を開拓することで、我が国における研究の厚みを大きくするとともに、次世代の人材育成にも貢献することを目的とした事業として、令和5年度から開始したものとなっております。
 本事業につきましては、基盤部会の先生方も、これまで事業の意義や重要性に対してご意見をお伺いいただいておりますけれども、共同利用・共同研究機能を担う研究機関や研究者の方々からも、これまで異分野間の連携の重要性を認識しつつも、現行体制ではなかなか進まなかった問題に対しまして、本事業は、新たな展開への後押しとなるものとして、大きな期待が寄せられているところでございます。
 令和5年度につきましては、次ページにありますとおり、48件の申請から8件の取り組みを採択してございます。一番右に事務局におきまして、関連分野等を記載しておりますけれども、このように多様な分野間での取り組みが進められてございます。また、多様な分野であることに加えまして、これまでにない構想に基づき、新しい分野融合による知の創造を目指すもの、または一定のテーマのもと、関連する多様な分野によるネットワーク形成を目指すもの。また中核となる分野を軸に、多様な分野との新たな融合を図るものなど、様々なアプローチからの取り組みが実施されております。
 令和6年度につきましては、2件採択予定となっており、現在、公募・審査を進めているところでございます。また、本事業につきましては、支援期間が最長10年間となっており、5年目終了時を目処に中間評価を行うことになっておりまして、今年10月以降に、本事業の推進委員会において、今後のフォローアップに関する検討を実施することを予定しております。
 一枚目の84ページに戻っていただきまして、本日は2機関から現状の取り組みをご説明いただきますけれども、このような状況を踏まえまして、今後、本事業を進めていくにあたりまして、事業実施機関における取り組みのフォローアップ、また分野や組織の枠を超えたネットワーク拡大のための事業の中長期的な展開につきまして、本部会におきまして、委員の皆さまからご意見をいただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。事務局からは以上になります。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。それでは、自然科学研究機構生理学研究所、東北大学金属材料研究所から、それぞれ取り組みの状況について、ご説明お願いしたいと思います。質疑については、両機関からのご説明後にまとめて時間を設けたいと思いますので、まずは自然科学研究機構、生理学研究所からご説明をお願いいたします。
 
【自然科学研究機構(川合機構長)】  自然科学研究機構長の川合眞紀でございます。どうぞよろしくお願いいたします。当機構は大学共同利用機関法人として、国内外の大学や研究所に所属する分野の先生方に共同利用や共同研究の場を提供しております。この度、当機構に所属する生理学研究所、分子科学研究所、生命創生探求センターが一丸となって、スピン生命フロンティアハブを設置いたしました。ここでは、研究機関それぞれが分野の研究を通して持つことになります、磁気共鳴測定に関する技術や常時性科学種の合成や開発研究の成果を結集いたしまして、より詳細かつ選択的な生体イメージングへ向けての研究をスタートいたしました。このコアに加えて、京大医科研、阪大蛋白研、新潟大脳研、量研機構と密に連携することで、既存の学術の枠を超えた分野統合的な新しい学術、スピン生命科学の創生を目指しております。
 私たちの自然科学研究機構は、組織や研究分野の枠を超えて、研究者同士が積極的に交流できるような基盤整備を強化し、スピン生命科学の活動を支援することを確約し、冒頭の挨拶とさせていただきます。詳細は鍋倉先生からお話いただきます。よろしくお願いします。
 
【観山部会長】  川合機構長、どうもありがとうございました。それでは鍋倉先生、よろしくお願いします。
 
【生理学研究所(鍋倉所長)】  生理学研究所の鍋倉です。磁気共鳴は、原子核のスピン状態を揃えた分子にラジオ波を照射することによって得られた信号から分子構造や生体情報を明らかにする方法論です。材料科学、物質科学、生体分子科学、神経科学及び生理学、臨床医学のそれぞれの分野で、この技術応用が進歩して、それぞれの分野の研究の発展に大きく貢献を果たしていまいりました。今回の学際ハブ、スピン生命フロンティアでは、それぞれの分野で発展してきた磁気共鳴法を融合して、学際的な共同研究を推進して、異分野連携を可能とする集約型の拠点を形成いたします。
 まずは磁気共鳴法を用いて生命科学を先導する、生命創成探究センター(ExCELLS)、材料科学の分子科学研究所、生理学と脳科学の生理学研究所が岡崎でコアを形成します。岡崎での融合研究を加速させるために、概算要求、組織整備が、今年度認められて7月から新たな融合組織「スピン生命科学コア」が発足します。このコアを中心に、分子設計や材料科学の共共拠点である、京都大学の科学研究所、生体分子の共共拠点である、大阪大学の蛋白質研究所、脳科学・臨床医学の共共拠点である新潟大学脳研究所、それに量研機構がノードとして「スピン生命フロンティアハブ」を形成して、各分野のコミュニティの研究者が異分野融合研究を行う体制を構築いたしました。これによりスピン生命科学に係る先端的な共同利用研究を推進いたします。ここでは新しい融合分野を作るだけではなく、次世代のリーダーの育成や、先端的共用研究設備の整備を目指して、新しい融合領域であるスピン生命科学の発展と学際的拠点形成を目指していまいります。
 スピン生命科学の創成を目指す背景について説明いたします。磁気共鳴画像装置はMRIですけれども、脳科学・臨床医学を中心に広く使われている手法ですが、その発展は磁場の強度の向上によって、画質の高品質化が進められていまいりました。そのために機器の大型化・高額化が進んでいます。この4月に実用の運用が始まったフランスの原子力庁のニューロスピン研究所では、ヒト用の11.7テスラが始動しましたけれども、その重量は132トンとなっており、開発経費は200億円にも及びます。しかし、いくら高磁場化しても、生体に最も多く存在している水素スピンからの信号しか画像化できません。これまで測定できなかったものを可視化するなどの新しい挑戦が必要となっています。そこで装置の大型化とは異なる軸で、MR技術を発展させることを目指す必要がございます。
 日本はケミストリーにおいて国際的な優位性があるために、材料科学とMRI技術を融合した分野を推進いたします。スピン生命科学は、新規MRI用の分子プローブの開発から、生体を対象とする磁気共鳴計測までをシームレスに行う融合研究領域です。また、融合研究で発展する技術を用いて、磁気共鳴研究の更なる発展を目指していまいります。この融合研究を推進するためには、それぞれの先端研究者が一堂に会して、分子プローブの設計、合成、評価及び生体への応用を一気通貫で研究推進する必要がございます。将来、未病医学の診断技術の開発、バイオ医薬の高度化、さらには磁気材料の開発などに貢献していくことを目指しております。
 開発の例として、癌などの特異的な環境を感受するMRIの造影剤(スピンセンサー)やフッ素などの水素以外の新規核種(スピン分子プローブ)の開発。さらには、これまで分子の解析に用いられてきた磁気共鳴計測技術を、MRI画像取得に応用することによって、画期的な画像取得技術を開発いたします。これにより、現在のMRI技術を飛躍的に発展させることによって、局所の病変の検出や病因細胞の追跡などの臨床医学ばかりではなく、新たな生命科学・生理学を構築していまいります。
 令和5年度に行ったスピン生命ハブの活動です。運営体制の構築を行いました。コア及び4つのノード機関で、これに協力する覚書を締結しました。運営事務局の強化については、専任のURAを配置しております。また、今年の1月にはキックオフシンポジウムを岡崎で開催いたしました。アカデミア及び企業から110名の多くの研究者が集結いたしました。共同研究に対しては、共同研究体制委員会を設置して、既にスピン生命の共同研究を開始いたしました。また、人材育成に関しては、学際的な若手の会というものを発足いたしました。本フロンティアハブは、3つのミッションのもとに進めていまいります。まずは、スピン生命フロンティアに、全国の研究者が参加する体制を強化することです。そのために、大学共同利用機関である自然科学研究機構及び各共共拠点が連携して推進いたします。次に、新規の融合研究を推進するために、課題設定型の公募研究をコアとノードが協力して推進いたします。この課題設定型の公募研究においては、補足資料に載っていますのでご覧ください。また、分野横断型の研究会やトレーニングコースに関しては、今年度から開催することが決定しています。人材育成としては、若手研究者が海外のスピン関連研究施設に渡航する費用を配分することにしており、既に公募中でございます。また、毎年異分野の若手研究者が合宿方式で一堂に会する機会を準備しています。今年度は9月に岡崎で開催いたします。今後は産学連携も進めていく予定です。異分野研究者が交流する場と、その取り組みを用いてスピン生命科学の創成を目指していまいります。
 最後に、スピン生命科学の発展に向けて、戦略的計画について触れておきます。シナジー促進のために、融合研究を加速させるための中規模設備の導入を計画しております。また、コアやノードにおいて、次世代を担う若手リーダーの育成を戦略的に行っていまいります。また、若手研究者をコアとノードから構成されるフロンティアハブが一体となって支援することによって、優秀な人材を国内外の大学や研究機関に配置することによって、新たなスピン生命の拠点を作り、この新規学際領域の拡大展開を目指していきます。以上です。
 
【観山部会長】  鍋倉先生、ありがとうございました。続きまして、東北大学金属材料研究所からご説明をお願いいたします。佐々木先生、お願いします。
 
【東北大学金属材料研究所(佐々木所長)】  東北大学金属材料研究所の佐々木でございます。私からは「人文科学と材料科学が紡ぐ新知創造学際領域の形成」についての現在の活動状況についてお話しさせていただきます。
 事業の概要ですが、私たちは人類の歴史や文化を探求しています人文科学、金研が持っております材料科学、特に先端的な分析技術の協働により、新たな材料・物質観を有した学術知の創造(新知創造)を目指してまいります。特に物質科学の先端研究手法を人文科学、特に自然史や考古学などの文化財に対して適用して、学際領域の展開を図ってまいりたいと思っております。この図中にありますように、金属材料研究所材料科学国際共同利用・共同研究拠点でございますが、ここをハブといたしまして、人文系の各大学やセンター、各大学やセンターから世界の人文科学研究分野のコミュニティへの発展を目指しております。
 全体計画と構想です。既にお話しいたしましたように、これまでも学際領域の融合、理工、人文科学の融合というものは、いろいろと検討されて行われてきたのですが、なかなか成功した例は日本の中ではあまりないと思います。今回、特に先端分析手法と考古学というところにフォーカスを置いて、分野の垣根を超えた総合知を創出するということを目指しております。特に、ここで示しておりますような材料科学をハブとして、人文科学、更にものづくりというところに関係を持った学際的な研究を進めていき、その中で学際研究によって人類の材料・物質観の新たな構築と共有に挑戦したいということを特徴としております。
  構成ですが、金属材料研究所をハブといたしまして、国内にあります、いくつかの人文系の研究機関、岡山大学文明動態学研究所、岩手大学平泉文化研究センター、島根大学山陰研究センター、大阪公立大学都市文化研究センター、福井県立大学恐竜学研究所、福井県年縞博物館などとタッグを組んで研究を行なっております。また、採択開始後に、新たな協力機関として、特に先端分析を行います京都大学複合原子力科学研究所、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所、日本原子力研究開発機構などと、特に量子ビームの研究・利用についての連携を開始いたしました。
 これまでの活動状況は約1年弱になりますが、これまでに行なっていまいりました活動の状況についてお話しさせていただきます。まず、体制整備についてです。我々の新知創造の学際ハブの研究は、このプロジェクト自身で特定の課題やテーマを持って研究を進めるということではございません。我々は、人文系の方々とコミュニティを作っていく、そのコミュニティ促進というのが、まず一つ大きな点がございます。そのために金属材料研究所の中に、新知創造学際領域形成推進室を置き、特にURAの方の組織などを持って運営委員会を置いて、そこでは人文系・理系の統合した委員会構成にして行なっております。約1年弱の活動になりますが、活動が始まったところから、いろいろな問い合わせや共同利用などの申込みがあります。ここでは1つの一例ですけれども、金属材料研究所で結晶成長を研究する研究者がおりますが、その結晶成長の研究者と美術大学との共同研究で、結晶成長をアートにするという試みが、面白い特筆すべき結果としてあると思います。既にアートの作品として国立新美術館などで展示しております。このように、人文系と理工系の間の垣根を超えるというところには、必ず人と人との対話の場というものを作る必要があり、特にその点に注意を払った運営をしております。現在の画面の下部に第1回目の公開ミーティング・研究会などがありますが、参画機関以外の人文系のところから多くの参加者を得ながら、またそういうことを配慮に入れながら、構成をして研究活動を進めております。反響は国内外にありまして、オンラインで行いますと、トロントやホンジュラス、ブラジルなどからも聴講者がおり、いろいろな問い合わせをいただいているところでございます。
 本年度の活動計画ですが、具体的に少しずつ進んでおります。画面左上に示していますが、これらは島根県が持っている青銅製品です。これらの考古学的な研究はこれまでも行われておりますが、更に先端的な量子ビームを使った研究を進めるように計画しております。また、右上にありますのは、福井県の年縞博物館にある年縞です。これは地球の1万年の歴史が1mmずつの縞々になったものでございます。この縞々を微細に解析することによって、1年置きにいつ地球の磁気の反転が起きたか、また気候の変化が起きたかということを解析することができます。これらに対しても量子ビームを使った解析ができないかということを進めております。また、材料科学の共同利用・共同研究拠点でございますので、一般的な課題公募のシステムの中にこれらを組み込んでいるということがございます。
 今年、実は平泉の中尊寺金色堂建立900年の年になりますが、来月には岩手県を舞台にいたしまして、同様のイベントなどを行い、なるべく人文系の方との交流の場・対面の場を作るということでございます。特に本事業で重視する観点と取り組みですが、これは人文系とのタッグを組みますが、我々、先端計測手法を持っているものにとっても非常に大きな学びがございました。非破壊で行わなければいけないような、取り扱いに注意をするという物質材料に対して、それらを量子ビーム環境に置くというときに、装置や実験手法などでのフィードバックを知ることができました。
 また、新領域の開拓や拡大については、最初にお話しいたしましたが、先端量子ビームなどの大型施設利用に関しては、組織的に連携を深めていくという活動をしております。また、一方で、人文系研究者とのタッグを組む場合には、人づてに伝わっていくということが非常に重要なポイントでございます。そこについては、人的交流による連携拡大が徐々に広がっているところでございます。また、画面中央にありますように、それらは人づてではありますが、やはり共共拠点のシステムというものがありますので、このシステムの中に組み込んだ形で体制的に進めていくということになります。
 若干我々も想定してなかった部分もあるのですが、海外との連携というものも多くあるということが、この事業を始めた後にわかりました。陶磁器や鉄器など、海外といろいろな連携がありました。また、画面右上にありますが、これらの人文系との取り組みの中で重要なのは、地域の理解です。いろいろな文化財や考古物を持っている地域との繋がりや、その理解がないと研究が進まないということがございますので、一般へのアウトリーチも含めた取り組みも進めております。これらの取り組みを進めていく上では、非常に幅広い知識を持っている方が必要です。それは必ずしも専門型ではなく、学際的にそれを取り組めるURAの方、博物館学や人類学と材料科学の両方に知見がある方をURAとして雇用をさせていただき、これらの学際ハブの取り組みを進めていっております。
 こちらで最後になります。人文科学と材料科学を紡ぐ新知創造学際領域の形成についてですが、冒頭にもお話ししましたように、人類がこれまで持っている材料物質観を更にアップデートして共有していきたい。そうすることで学術研究の厚みというところに力点を置いた活動をしていきたいと思っております。以上でございます。ありがとうございました。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。本日は両機関の取り組みを踏まえて、本事業の今後のフォローアップや中長期の事業展開についてご意見をいただきたいと思いますが、まずは、ご説明のあった2つの状況について、ご質問がありましたら挙手をお願いします。井上委員、どうぞ。
 
【井上委員】  興味深い話をありがとうございました。佐々木先生にお伺いしたいのですが、人文系への技術の波及というのは簡単に想像できましたが、フィードバックがあったというのが非常に興味深いです。素晴らしいことだと思いますが、具体的にイメージしにくいので、ご存じでしたら教えていただけませんか。
 
【東北大学金属材料研究所(佐々木所長)】  ありがとうございます。考古学は文化財ですので、非破壊で行わなければならないということがあります。我々の場合は、物をビームに置く際にどのような形でも置けますが、例えば小さい刀でも横にしてはいけないとか、立てておかなければいけないというようなこともございます。また、X線のCTでは破壊が入ってしまうということで、よりエネルギーの小さいミュオンでやらなければいけないとか、いろいろと細かいことも含みますが、気づきがございました。特に試料のハンドリングの部分については、我々も小さい試料とか微小な部分とかという取り扱いはわかっていましたが、置き方や移動の仕方も含めて、試料環境について、特に学ぶことが多かったと思います。
 
【井上委員】  ありがとうございます。
 
【観山部会長】  渡辺先生、お願いします。
 
【渡辺委員】  ありがとうございます。スピン生命フロンティアについてですが、若手の会を作って合宿もされているということで、若手の人材育成にもすごく積極的にされていると思います。若手の研究者からいろいろと提案が出てくると思いますが、その提案が尊重されるような仕組みというのを考えていらっしゃったら教えてください。
 
【生理学研究所(鍋倉所長)】  ありがとうございます。若手の方も、それぞれの分野の専門家ですので、それを融合することによってお互いの分野を知ることになり、そうすると新しい提案が出てくると思います。この事業というのは、共共拠点の体制作りですので、そこで融合研究を支援して、例えば外部資金の学術変革群などに積極的に応募してもらって、それを我々がバックアップするという形になると思います。
 
【渡辺委員】  どうもありがとうございました。
 
【観山部会長】  他によろしいでしょうか。両機関の取り組みを踏まえまして、本事業の今後のフォローアップや中長期的な事業展開のあり方について、ご意見があればお願いします。今年度の採択予定件数は2件ということですが、今までの応募総数が28件もあるということで、非常にニーズは高いという状況ですが、今後のフォローアップやどのように展開すると良いかというのは、何かご意見がありましたらお聞かせいただければと思いますが。長谷部委員、どうぞ。
 
【長谷部委員】  学際ハブとしては、共共拠点よりも規模が大きくて、広い分野をカバーしている大学共同利用機関が、ある意味で中心的な役割を果たすのかなというのを期待していたのですが、採択課題を見てみると、大学共同利用機関が一つしかありません。この理由というのは、大学共同利用機関から応募がなかったからなのでしょうか。それとも審査の過程でうまく採択されなかったからなのでしょうか。
 
【観山部会長】  事務局からお願いいたします。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  事務局でございます。令和5年度につきましては、大学の拠点からの応募が多かったというのがあります。大学共同利用機関につきましては、中核機関として提案していただいた以外に参加機関として出していただいたところもございますけれども、全体の総数として国立大学が多くなったかなという認識でございます。
 
【長谷部委員】  せっかくそういう仕組みがあるのに、大学共同利用機関が出すことが多くなかった理由というのは、事務局として分析はされているのでしょうか。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  提案されなかった理由の分析は聞いていないところですが、令和5年度も提案いただいた機関や参画機関として参加されている機関もありました。また、令和6年度につきましては状況が変わっているところもございます。
 
【長谷部委員】  ありがとうございます。
 
【観山部会長】  関沢先生、お願いします。
 
【関沢委員】  ありがとうございます。今日の中規模研究設備のことと学際ハブのことを考えますと、10年以内に中規模研究設備の更新が必要なところが非常に多いということが、アンケートの結果でわかっているところでありますが、この学際ハブにつきましても、ちょうど10年ということで、スタートしたばかりのところなので、事務局のほうで現在検討中という課題の項目にもございましたけれども、この学際ハブがうまくいくように、設備面でも支援できるような仕組みが必要ではないかと思いました。よろしくお願いします。
 
【観山部会長】  事務局、よろしくお願いします。
 
【熊谷大学研究基盤整備課課長補佐】  ご意見ありがとうございます。先ほどもご説明をしました中規模研究設備に関する、現在の検討状況につきましても、そのように回答してございますが、学際ハブで現在取り組んでおられる方々にも、そうした設備の枠というものを、なんらかの形で支援できるように、現在検討しているところでございます。
 
【観山部会長】  元々、この予算要求の中には設備も入っていたのですが、残念ながらコーディネーターを作る経費等に絞られて年間最大5千万円で10年間ということになりました。これでは設備は難しいのですが、今後とも非常にニーズが高いという状況も認識して、基本的に学際に結び付けるような設備も要求できるような形が好ましいと思います。大型設備等はなかなか難しいとは思います。中野委員、お願いします。
 
【中野委員】  今の熊谷補佐のお答えで、僕の質問はなくなってしまったのですが、非常に人気があるというのは、やはりそういうこともあるのではないかという期待が集まっているためだと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 
【観山部会長】  どうぞよろしくお願いいたします。森委員、お願いします。
 
【森委員】  今日は2つのお話を初めて詳しく伺ったのですが、非常に興味深かったです。これは学術展開ハブですので、新しい学際を作り上げることが最終目標なので、この機関だけではなく、いろいろな学術領域を巻き込むことに注力していくことが重要ではないかと思いました。
 生命系だとMRIなどで構造解析が中心ですが、我々は物質材料で磁気共鳴というと、構造だけではなく動的な電子状態といったところに興味を持って研究進めるので、それが両方融合したら素晴らしい学際研究になると思っています。そういうものがないかなと思っているとこに、今日のお話を聞いたので非常にワクワクしました。佐々木先生のほうもいろいろな研究機関から問い合わせが来たことは素晴らしいことだと思いますが、大学共同利用機関だと文系・理系など両方の共同利用機関がありますし、共共拠点も非常に多くの機関が入っておりますので、そういうところでも内容を広報して、なるべく多くの方にこういう学問があるということについて、様々な学術領域を巻き込むようなシステム・広報を考えていくのが重要ではないかと感じました。以上です。
 
【観山部会長】  どうもありがとうございました。広報というのは非常に重要で、こういう学際ハブという運動があることと、どのような成果が出てきているかということを、しっかりと発信していただいて、文系・理系・社会系との連携ができると非常に喜ばしいと思います。
 
【森委員】  大学共同利用機関や共共拠点の協議会などでは共有していると考えてもよろしいのでしょうか。
 
【観山部会長】  もちろんです。
 
【森委員】  内容も含めてですか。
 
【観山部会長】  そうですね。
 
【森委員】  それが裾野を広くするのにはどうしたらいいかということですよね。そこのところも考えていただければと思います。
 
【観山部会長】  佐々木先生は、今も確か委員長をされていますので、そういう共共拠点の中でのアピールも非常にしっかりとされていると思います。事務局から何かありますでしょうか。よろしいですか。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  大丈夫です。
 
【観山部会長】  ありがとうございました。事務局においては、本日の議論を今後の事業展開に活かしていただきたいと思います。また、自然科学研究機構の機構長並びに生理学研究所および東北大学金属材料研究所の皆さまにおかれましては、ご出席いただきまして、本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
 本日の議題は以上になります。事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。
 
【柿澤大学研究基盤整備課学術研究調整官】  事務局でございます。6月26日に学術分科会が予定されておりますけれども、こちらの分科会におきましては、各部会等における審議状況を報告することとなっております。研究環境基盤部会における進捗状況につきましては、参考資料3にあります審議状況を踏まえまして、本日の議論を踏まえた形で、観山部会長よりご報告いただくことになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、本基盤部会の次回の日程につきましては、後日に事務局より委員の皆さまにご連絡させていただきます。以上になります。
 
【観山部会長】  本日の会議は、これで終了させていただきます。ご参加いただきまして、ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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