初等中等教育分科会(第146回)議事録

1.日時

令和6年11月13日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省(※対面・WEB会議の併用)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
  2. デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理について
  3. 今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会の論点整理等について
  4. その他

4.議事録

【荒瀬分科会長】  皆さん、おはようございます。それでは、定刻でございますので、ただいまから第146回中央教育審議会初等中等教育分科会を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 議題に入ります前に、前回の開催以降、委員の交代に伴う新たな委員の任命、及び事務局でも人事異動があったということでございますので、事務局の方から御説明をお願いしたいと思います。

【渡邉教育制度改革室長】  本年10月1日より、初等中等教育局初等中等教育企画課教育制度改革室長を務めております渡邉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、前回以降、新たに本分科会に御参画いただきました委員を御紹介させていただきます。本日の参考資料1として、最新の委員名簿をお配りしておりますので、併せて御覧いただければと思います。
 このたびは、浜佳葉子委員が御退任をされ、新たに坂本雅彦委員が御就任をされています。よろしければ、坂本委員、ミュートを解除いただきまして、簡単に御挨拶をいただければ幸いでございます。

【坂本委員】  10月15日に東京都教育委員会教育長、並びに、全国都道府県教育委員会連合会会長に就任いたしました、坂本でございます。何卒よろしくお願いいたします。

【渡邉教育制度改革室長】  ありがとうございます。事務局からは以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。坂本委員、どうぞよろしくお願いいたします。渡邉室長も、引き続きよろしくお願いいたします。
 本日の会議開催方式と資料につきまして、渡邉さんの方から御説明よろしくお願いいたします。

【渡邉教育制度改革室長】  本会議は、ウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催をさせていただきます。会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、委員の皆様におかれましては、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いをいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含めて、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
 なお、本日は報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料1から資料4-2まで、加えて、参考資料1から参考資料3までとなっております。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございます。今、資料の御説明がありましたけれども、その中で、参考資料3として、ウェルビーイング向上のための学校施設づくりのアイディア集というものがございます。これは学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議においてまとめられたものでありまして、本年9月に公表されました。この主査を務めておりました関係で、私は建築とかは全く門外漢でございますけれども、学校で児童生徒が学ぶ、あるいは、教職員がよりよい教師生活を送っていくといった、そういったことに関するということで主査をさせていただいておりました。
 全国の様々な学校の施設整備の事例を5つの観点、「共創」「生活」「学び」「環境」「安全」。「共創」というのは「共に創る」です。こういう観点から89のアイディアをまとめて、施設整備の実現に至るまでのプロセスを含めて掲載しているものでございます。児童生徒の豊かな学びの支援、ウェルビーイングの向上につながるようなアイディアが中心でありますけれども、被災地における学校施設の活用の在り方についても検討が行われています。もちろん教職員が心地よく働ける職場環境を整備するためのアイディアも掲載されています。学校における働き方改革にも役立つのではないかと思っております。教育委員会や学校関係者への周知も行っていただくわけでございますけれども、委員の皆様もぜひ御覧いただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題に入りたいと思います。本日は次第に記載のとおり、3つの案件について御議論いただきたいと思います。そして最後、その他ということでありますけれども、議題以外にもう1件、大変重要な報告があると伺っております。時間の関係で、いつもそうでありますけれども、全ての委員の方に御発言がいただけない可能性がございます。その場合は、大変申し訳ありませんが、会議の後に事務局宛てにメール等で御意見を頂戴できれば、議事録に掲載したいと思いますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
 それでは、議題の1でございます。議題の1は、令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果についてであります。千々岩児童生徒課長から御説明をよろしくお願いいたします。

【千々岩児童生徒課長】  よろしくお願いします。児童生徒課長でございます。
 資料1を御覧いただければと思います。こちらでございます。児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要について、御報告申し上げたいと思います。こちら、先月10月31日に発表の方をさせていただきました。
 まず、調査の中身に入る前に、調査名についてでございますが、こちらの表題ですが、「問題行動・不登校等」という形で書き分けてございます。不登校というだけでは問題行動であると受け取られないような配慮が必要であるといったことを、文科省としてもこれまでも述べてきておりますが、その考えから、「問題行動・不登校等」と書き分けているということを、まず初めに申し上げさせていただきたいと思います。その上で中身に入らせていただきたいと思います。
 まず、8ページ目を御覧いただければと思います。8ページ目、いじめの認知件数の状況でございます。左側でございますが、いじめの認知件数、総数73万2,568件となっております。過去最多の数となっております。この背景でございますが、いじめ防止対策推進法におけるいじめの定義であったり、いじめの積極的な認知に対する理解が広がったことや、アンケートや教育相談の充実などによる児童生徒に対する見取りの精緻化、あるいはSNS等のネット上のいじめの積極的な認知が進んだことなどが背景として考えられるというように考えておるところでございます。
 右側、いじめの解消状況の推移でございますが、年度末時点において解消しているもの、77.5%となっているところでございます。
 次に、12ページ目を御覧いただければと思います。12ページ目、いじめの態様別の状況でございます。こちら、まず、小中学校、それから特別支援学校におきましては、いじめの対応としては、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる。」といったものが一番多くなっております。それに続きまして、このグラフでいう上から3つ目になりますが、「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする。」というものが2番目に来ているといった状況でございます。
 高等学校は若干状況が異なりまして、一番多いのは冷やかしやからかいというところになりますが、続いて、下から2つ目、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる。」といった件数が2番目に来るといった状況となっております。パソコン、携帯電話等の件数は全体で2万4,678件となっておりまして、過去最多、増加傾向にあるといった状況でございます。
 次に、13ページ目を御覧いただければと思います。いじめの重大事態の方の件数でございます。いじめの重大事態の発生件数は1,306件となっております。過去最多でありまして、極めて憂慮すべき状況であると考えておるところでございます。この背景でございますが、増加の背景としては、いじめ防止対策推進法の理解が進んだことによる重大事態の積極的な認定や保護者の意向を尊重した対応がなされるようになった一方で、学校としていじめの兆候を見逃してしまうなどの早期発見、早期対応への課題や、個々の教員が1人で抱え込んでしまうなどの組織的な対応への課題があったことなどが考えられるというように考えておるところでございます。
 次に、15ページ目を御覧いただければと思います。いじめの重大事態のうち、重大な被害を把握する以前に、いじめを認知していたか否かといった状況のグラフでございます。こちらを御覧いただくと、右側、62.5%はいじめとして認知していた一方で、左側37.5%は重大な被害を把握する以前に、いじめとして認知していなかったといった状況がございました。この点、早期発見の観点においても特に課題であるというふうに認識をしておるところでございます。
 次に、18ページ目を御覧いただければと思います。いじめから移りまして、暴力行為の状況でございます。暴力行為につきましては、件数、10万8,987件となっております。こちら過去最多の件数となっております。この背景としては、いじめの認知に伴うものであったり、児童生徒に対する見取りの精緻化によって把握が増えたことなどが考えられるというように考えておるところでございます。
 次に、22ページ目を御覧いただければと思います。22ページ目、小・中学校における長期欠席の状況でございます。長期欠席、30日以上の欠席といった形になります。この数ですが、49万3,440人という形となっております。このうち、不登校によるものが34万6,482人となるといった形となっております。
 23ページ目、次のページを御覧いただければと思います。その観点で、不登校の方に移りますが、先ほど申し上げましたように、不登校の児童生徒数34万6,482人という形で、過去最多となっております。細かく見ますと、不登校の数の増加率は、前年度より若干低くなっております。特に中学生の新規不登校生徒数は、8年ぶりに減少するといったところもございました。この背景には現場の様々な取組があると思っておりますが、しかしながら、依然として、不登校の子供が過去最多であるということ、この状況につきましては、極めて憂慮すべき状況が継続していると認識をしているところでございます。
 次に、26ページ目を御覧いただければと思います。不登校の子供たちについて、把握した事実を聞いている内容でございます。こちら、今回から調査を改めさせていただいたものでございます。従前は教師の認識を回答していただいていましたが、今回からは当てはまる事実について、複数回答をしてもらう形としております。結果の概要でございますが、一番多かったのが、この紙の中の右から4つ目、学校生活に対してやる気が出ない等の相談があったといった点、2番目がその右、不安・抑うつの相談があったという点、それに続きまして、左になります、生活リズムの不調に関する相談があった。そして、これに続きまして、左から5つ目ですが、学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた。そして、左から3つ目、いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があったといった状況がございました。
 また、今回から新しく右側、右2つですが、障害に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった、あるいは、障害以外の個別の配慮についての求めや相談があったといったことも質問しておりまして、これについても、一定の数字があるといった状況も今回、明らかになっているところがございます。
 次に、27ページ目、御覧いただければと思います。こちら、不登校の子供たちが学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けているかどうかといった内容のものでございます。専門的な相談・指導等を受けた児童生徒は約21万2,000人ということで、昨年度に比べて約3万人増えておりますが、割合で見ると、不登校児童生徒数全体が増えている関係で、割合は若干減っているといった形となっております。
 そして、次の28ページ目でございます。28ページ目、こちらも新しい調査の取り方をしているところがございますが、まず、左側のグラフでございますが、左側のグラフの青い部分、ここが不登校の子供のうち、学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない児童生徒の状況、約38.8%ありました。青字の子供たちが、では、学校の担任等から相談・指導等は受けていたかどうかといったものを今回、新しく聞かせていただいたところでございます。これについて確認したところ、おおむね89.1%の子供たちは、担任等からは継続的な相談・指導等を受けていたといった回答がございました。トータルしますと、一番右になりますが、不登校の児童生徒のうち、学校内外の機関等や、あるいは担任等から相談・指導等を受けていた者が95.8%となるといった形が、今回新たに分かったといった状況がございます。
 次に、29ページ目、御覧いただければと思います。29ページ目は、不登校の子供たちの指導要録上の出席扱いの関係でございます。左のグラフは、学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受けて、出席扱いとした児童生徒数3万8,632人と、昨年度より増加しております。右側は、自宅におけるICT等を活用した学習活動を出席扱いとした数、1万467人と若干の増といった形となっているところでございます。
 次に、31ページ目を御覧いただければと思います。高等学校における長期欠席の状況でございます。高等学校における長期欠席は10万4,814人という形となっております。
 次のページ、32ページ目を御覧いただければと思います。そのうちの不登校の数でございますが、高等学校における不登校生徒数は6万8,770人でございます。こちらも小中と同様に、増加率は若干減少しておりますが、過去最多の数となっておるといった状況でございます。
 33ページ目、御覧いただければと思います。高校生の不登校生徒について把握した事実でございますが、おおむね、先ほど御覧いただいた小中の結果と同様の傾向でございます。若干、高校生の方が生活リズムの不調に関する相談があったという数が、割合が若干高いといった状況がございました。
 次に、35ページ目を御覧いただければと思います。高等学校における中途退学の状況でございます。中途退学者数、4万6,238人となっております。この事由ですが、下にございますように、一番多いのは進路変更による中途退学が一番多い、41.3%といった状況となっております。
 次に、37ページ目を御覧いただければと思います。自殺の状況でございます。小中高から報告のあった自殺した児童生徒数、397人となっております。こちら、極めて憂慮すべき状況であると考えてございます。
 次に、39ページ目を御覧いただければと思います。数字の概要は以上になります。今回の調査結果も踏まえまして、文科省として、各種対策に引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。特にという形で一部挙げさせていただければ、まず、上にございます、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置充実、それから下の不登校対策、COCOLOプラン関係でいきまして、丸1、学びの場の確保といった意味では、学びの多様化学校の設置促進、校内教育支援センター支援員の配置、教育支援センターのアウトリーチ機能を強化するといった内容であるとか、丸2番の観点でいきますと、保護者支援体制の強化といったものも行っていきたいと考えております。それから、丸3のところ、みんなが安心して学べる場所に学校をしますとありますが、誰もが安心して学べる魅力ある学校づくり、これをしっかりと進めていくことが大事と考えております。
 次のページ、御覧いただければと思います。いじめへの関係につきましても、こちらにございますように未然防止、早期対応、それから重大事態への対応というものに取り組んでいく。自殺対策につきましても、自殺予防教育をはじめ、取組を推進してまいりたいと考えてございます。
 駆け足で恐縮でございますが、概要の説明は以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。幾つか質問項目が変更になっているというか、付け加わっているといったようなこと、それと冒頭ありましたように、中教審でもこれまでも御指摘がありました表題の文言、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題」というのは、中黒でしっかりと分けていると、そういう発想でやっていただいているということでございました。
 また、御説明の中で、人数が度々出てまいりましたけれども、丸くしてしまうんじゃなくて、本当に1が重なって、こういう人数になっているということが分かるような、具体的な人数をしっかりと言って説明をしていただきました。ありがとうございました。
 それでは、今から時間がそんなに取れないんですけれども、約20分間、質疑応答、意見交換をしたいと思います。いつもどおりで御意見、御発言ございます場合は挙手をお願いいたします。会場にいらっしゃる方は名札を立てていただけますと分かりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、柿沼委員、よろしくお願いいたします。

【柿沼委員】  学校法人柿沼学園の柿沼です。私どもの方は、不登校の子供だったり養育支援の必要な子供だったりする児童育成支援拠点とか、子育て世帯訪問支援事業というこども家庭庁さんの事業を受託して運営していますが、最後のところにあった多様な学びの場、居場所の確保のあたりに関わる事業を行っている立場から一点、述べさせていただきたいと思います。
 不登校、特に私どもは要保護家庭、要対協にかかっているような子供たちを対象としているので、本人の問題だけではなく、家庭の問題でヤングケアラーになっていたりとか、なかなか苦しい状況、経済状況で育っていて、そこから不登校につながっているような子供たちが多いです。6歳から18歳の子供を育てているという形なんですけれども、その場では、かなり深刻な子供たちを、学習面であったり生活面であったり、または、遠足のような社会活動であったり、そういったことを行いながら、将来健康に生きてほしいと願いながらやっています。その中でも一番大事なのは、特に義務教育課程であれば、学校や教育委員会との連携だったり、協働であったり、そこのところというのが担保されないとなかなか苦しい状況になっていきます。なので、そこの辺りの連携協働を強くお願いしたいと思っています。
 また、職員の処遇も、6歳から18歳の養育状況に大きな課題をもつような子供たちを、5人の子供に対して1人の職員で見ている状況です。そして、その職員体制の中で送迎支援も行うような形でやっていますので、かなり苦しい配置や職員の処遇状況であります。不登校の子供の居場所となり学校に代わる学びの場になるのであれば、配置の人数も含めて、処遇の改善などをこども家庭庁さんにもお願いしたいと思ってはいるんですけれども、文科省さんの方でも、学校と児童育成支援拠点などとの連携協働などを、教育委員会の方からも強く働きかけていただいて、安定した子供たちの育ちにつながるような仕組みをお願いできたらうれしいなと思います。
 また、私どもの拠点のような施設が特に不登校のお子さんの居場所になっていくと、学校や先生によっては、責任感が少なくなっていくというか、こちらに任せっきりになってくるような状況があるので、この辺りの背景からも連携の強化を強くお願いしたいと思います。以上です。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。今、手を挙げていただいていますのが、渡辺委員、秋田委員、吉田信解委員、戸ヶ﨑委員、八並委員、奈須委員、今村委員でいらっしゃいます。あ、青海委員も手を挙げていただいていますね。一旦ここで区切らせていただきたいと思います。
 では、渡辺委員お願いいたします。

【渡辺委員】  日本学校保健会・日本医師会の渡辺でございます。三点、簡単に述べさせていただきます。
 一点は、こども家庭庁のいじめ調査アドバイザーをしていて気がつくことは、いまだに学校現場も教育委員会も、いじめ、並びにいじめ重大事態の認識と対応ができていないところがあるように思います。これら全てに認識不足がある地域が存在するということ自体がちょっと問題かなと思います。文科省の方も努力しておられると思いますが、いじめの認識、対処に関する、より一層の啓発を努力していただきたいと、まず思います。
 二点目は28ページ、先ほど千々岩課長が御説明されたところでございますけども、あくまで教師に対するアンケートでございますので、担任などが継続的な相談、指導を行ったものと書くべきではないかと思うんです。子供に対するアンケートであれば、受けたものというのでいいと思うんですけども、これだと教師の方が一方的に指導したけれども、子供が受けたという認識がないとか、もしくは、子供が本当に受けたかどうか、こういうと非常に失礼な答えなんですけども、そのようなこともあるかもしれない。
 もう一つは、どういう手段で指導を行ったかということも関係があると思うんです。電話でなのか、メールなのかということでも、その内容が変わってきて、それが具体的に分かれば、今後の対応の仕方が変わってくるんじゃないかと思いますので、ここの書きぶりを変えていただきたいわけではないんですけど、そこは説明を要するのではないかと思いました。
 三点目でございますけども、文部科学省が問題行動の増加に対して様々な対応をされておられることは承知しております。しかし、これまでのところ、その効果が十分表れているとは言い難いような気が若干いたします。不登校や自殺、いじめ重大事態とか、OTCのオーバードーズなど、事後措置も重要でございますけども、原因分析と防止対策をより計画的に行うべきではないかと思います。要因分析のトライをされておられるようでございますけども、より細かな調査、例えば、先ほどの不登校にしても、できれば教師の方の御意見もそうですけども、可能であれば、本人たちの意見も聴き、もしくは重大事態の報告書の分析をするなど、具体的な防止対策をぜひ積極的に行っていただきたいと思います。
 以上、三点でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。それでは、秋田委員お願いいたします。

【秋田委員】  ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。ただいまの渡辺委員とも重なるところでございますけれども、実際に発生件数を追うと同時に、例えば、不登校等で、その後、復帰が可能であったような対処事例というのでしょうか、不登校から、全てが学校に戻ることだけがよしと考えていいかどうかは別ですが、しかし、そうした不登校からの復帰事例のような事例を、既にいろいろ分析はされているとは思いますけれども、そうした事例を、より広く公開をしていただくことが今後、増えているというだけではなくて、僅かでもそれが解消していくのはどういう対応なのかということを、よりセットで発表報告いただくことが重要なのではないかと考えるところでございます。
 また、二点目としては、起こってからではなく、予備として、これは文部科学省とこども家庭庁とが連携してCOCOLOプランをつくってくださっていますが、まだまだ子供たち自身が、こうしたいじめや様々な問題に対して声を上げていいのだ、子供自身が意見表明権を持っているのだということに関する教育の機会はまだまだ少ないように考えられます。こうした長期的に見て、子供自身が自分の権利が侵されているような場合に、早期に声が上げられるように、学校として、教育の対応を考えるというような、もう少し大所高所からの長期的な予防策を考えていただくことが重要ではないかと考えます。
 そして、最後に、三点目でございますが、今回、COCOLOプランの新規事業として、校内教育支援センター、スペシャルサポートルームが、新規で予算がつけられておりますけれども、これは大変重要な観点ではないかと思います。幾つかのスペシャルサポートルームのお話を伺ったり、中教審の委員で訪問させていただいたりしたときに感じましたけれども、そうした生徒が全て授業に復帰はできなくても、多様な形で、校内で仲間とつながっていく、教師とつながっていく機会を保障するというところで、この効果検証や、今後さらに継続的にこうした取り組みを進めていただく、また、それと合わせて、ここでも予算はたくさんつけられていますが、不登校や問題を抱えた子供と同時に、その家族である保護者も大変苦労を抱えておりますので、そうした保護者の方に対しても、今、こうした取組がなされているということを周知いただくことが重要ではないかと思うところでございます。
 以上、三点でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。それでは、吉田信解委員、お時間大丈夫ですか。すみません。

【吉田(信)委員】  発言しましたら、今日は失礼させていただきます。

【荒瀬分科会長】  どうぞ。

【吉田(信)委員】  不登校に対して申し上げたいと思います。多様な生き方が推奨される世の中ということでございますので、かつては、学校に行きたくないなと言っても、もう親も社会も暗黙のルールとして学校へ行きなさいというような、ある意味、強制力が働いていた時代もあったわけでございますけども、今はそういうことをなかなかやろうという時代ではないということは、それが前提であれば、これはもういろいろな状況のお子さん方にどういうふうに対応するかということが非常に必要なってくるんだろうと私は思っています。
 現に私どもの自治体の学校でも、例えば不登校の子供のための適応指導教室もあれば、学校の中に、学校は行けるんだけど教室に行けないお子さん、かつては、そういうお子さんは保健室に行っていたんですけど、そういうお子さんを集めて、アシストルームみたいな形でケアしていくというか、学校で勉強してもらうとか、いろいろな方法が執り行われています。
 また、私立の学校が、最近、うちの地元の私学の高校が、中高の学校なんですけども、不登校の子供のためのフリースクールを開設して、県からも認可をいただきました。それから、この間、あるゲームクリエイターの方と話をしたんですけども、実はメタバースで、アバターでもって学校を仮想空間でつくって、そこに行って勉強できるような、そういう空間づくりも必要なのではないかと。多種多様な形態が私はあるべきだと思うし、要は何が大事かというと、もちろん学校に復帰できれば一番いいんですけども、そうでない子もたくさんいる。とにかくコミュニケーションの場をどうやってその子に保障していくかということが、私は非常に大事だと思っております。
 コミュニケーションの場をいろいろな形でつくっていくということは、例えば、我々の世代、40代、50代でも、例えば中学校、高校のときから不登校になってしまって、そのままずっと引き籠もってしまっているような人もたくさんいるんですよね。大人でもたくさんいるわけです。だから、小さいうちからコミュニケーションの場をどうやって保障するかと、コミュニケーションの場の保障に対して、様々な面での財政的な支援であるとか、社会の認知であるとか、そういったことを進めていくことが、ぜひともこれ必要なんじゃないかなと思っております。
 先ほど秋田先生のお話で、いろいろなケースで、いろいろなケアの場があるんだよということを、多くの困っている保護者の方々にもしっかりPRしていくということも、これも大事かなと思っております。
 私からの意見は以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】  この調査は、大変重要な調査ゆえ、毎年、教育委員会は管内の学校の状況を、学校の方は子供の状況を把握するために大きな労力をかけていると思います。長期欠席については、客観的な把握ができるわけですけれども、その内訳としての4つの分類の判断、特に不登校の回答には、毎回迷い悩みを感じていると思います。
 ここで誤解を恐れずに申し上げますと、学校や教育委員会レベルで、正直判断にずれが生じることがあって、こうした迷いや判断のずれの上に積み上げていった数字が「不登校」の数字とも言えなくはないと思います。しかし、報道や世論は、どうしても不登校の数に注目が集まりがちになっています。その結果、自治体の予算や人員を含めた学校の支援策も、長期欠席よりも不登校の視点から検討されることが多くなってきます。それはそれで大事ですが、社会的自立に向けた支援の必要性という部分で考えていくと、不登校でも、不登校以外であっても、何ら変わるものではないのではないかということで、何点か提言させていただきます。
 一つは、不登校だけではなくて、先ほどの大きなくくりである長期欠席という数字にも光を当てて、実態に応じた発信を行っていく必要があると思います。例えば、「不登校」は、令和4年度から5年度にかけて1.15倍ですが、「病気」については1.4倍ということで、不登校よりも大きく伸びている実態があり、少し危惧されるところです。
 二つ目が、長欠数の変化理由や経年変化を分析、活用していく必要性を感じています。教育委員会は単なる中継時点ではなくて、様々な経年変化から有効な指導、支援を分析できるようにしていくべきです。つまり、総括的評価から形成的評価の位置づけに変えていくために、まずは、当然のことながら校務のDX化を強力に進めた上で、各学校がケース会議等で、調査結果を活用できるように、日々の指導に生きる調査、オーナーシップが発揮できる調査にしていく必要があると思います。
 最後ですけれども、これは後ほどの三つ目の議題の論点整理の中に、こういう言葉があります。「多様な子供たちを一層包摂する方向で学校教育を改善する観点から、学習指導要領の在り方を検討する必要がある」と。もう一つは、「包摂的、いわゆるインクルーシブな教育環境の構築に向けて、教育課程における取扱いの在り方やそれに付随する環境整備の在り方を検討すべき」とあります。現在、設置が進んでいる学びの多様化学校での特別な教育課程の編成は、学校全体として教育課程を編成するものであって、個々の子供に着目して編成するものではありません。しかし、こうした言うなれば柔軟な教育課程は、個々の子供の学びに焦点化するためにも、全ての学校の教育活動でも行っていく必要があると強く思っています。
 僭越ながら申し上げますと、次期学習指導要領では、ぜひ「改訂のモメンタム」を生かしながら、教育課程課のみならず、初中局が総力を挙げて取り組んでいってほしいと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、八並委員、お願いいたします。

【八並委員】   日本生徒指導学会会長の八並です。私からは三点あります。
 第一はお願いです。いじめに関しては、先ほど御説明あったように、73万件と過去最多です。この点は、マスコミでも注目されています。しかし、いじめの認知件数を引き上げている校種はどこかというと、小学校です。小学校で全体の8割を占めています。これを学年別に見ると、小1から小4までで約44万件、全体の60%を占めています。その後、学年進行とともに減数していくという傾向性を持っています。この傾向性を踏まえると、小学校の低学年でのいじめ防止策を検討すべきだと個人的には思います。
 また、小学校1年から10万件を超えているということから、文部科学省、あるいは国立教育政策研究所、あるいは、こども家庭庁が連携して、特に幼稚園、保育園での幼児の社会性に関する実態把握も必要だと思っています。いじめ防止対策推進法では、小学校以前の幼児は対象外です。ですが、この数値を見ると、幼児期の基本的な社会性の未定着があるように少し感じます。なお、小学生によるGIGAスクールのタブレット端末を使ったいじめ事案があるように、ネット、あるいはSNS、情報機器の適正使用に関する新たな情報モラル教育も、小学校低学年から必要だと思います。
 さらに関連して、小学校の暴力行為も過去最多です。これは要注意で、最近の傾向性として、性的いじめ、あるいは性暴力被害もかなり多いです。その点も予防策という観点で重要だと思っています。
 第二は、助言です。重大事態については、今年8月30日付で、文部科学省がいじめの重大事態の調査に関するガイドライン改訂版を公表しました。私は、国のいじめ防止対策協議会委員とこども家庭庁のいじめ調査アドバイザーを拝命しております。改訂版は、学校教育に関連する方々にぜひ熟読していただきたいと思います。先頃の旭川の重大事態の第三者委員会による再調査報告書が公表されました。あのような凄惨な悲劇を繰り返さないためにも、教職員や教育委員会の方々に改訂版を熟読していただいて、渡辺先生も指摘されたように、初期対応でのつまずきを防いでいただければと思います。
 特に、今回のガイドラインでは、未然防止という観点から、第2章の「いじめ重大事態に対する平時からの構え」を新設しています。ぜひ読んでいただければと思います。重大事態は起きないようにするのが肝心です。さらに、初期段階でより深刻化させないようにすることが大切です。また、その章でも記載されていますが、2022年に刊行した文部科学省の『生徒指導提要』、これはデジタルテキストで公開していますが、本書の第4章「いじめ」と第10章「不登校」を読むことを、ぜひ教職員の方々にも徹底していただいて、いじめや不登校の基礎知識の修得をしていただければと思います。
 学校も多様な人材で構成されていますから、学年当初の全教職員参加の校内研修を開催して、自校の学校いじめ防止基本方針も含めた確認を行うだけでも、組織対応の構えができると思います。「いじめ自死ゼロ、重大事態ゼロ」を願っております。
 第三は感想です。不登校に関しては、今年の8月29日に、不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について、文部科学省から通知が発出されました。不登校の子供たちが問題になるのは、指導要録上での出席扱いと並んで、教育機会確保法の下では多様な学びの場での学習成果をどのように指導要録に反映していくかという点です。進学問題でも重要になってきますから、今後の課題として、指導要録上での学習成果の反映をどうやっていくかというのが課題になるだろうと思います。
 以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。それでは、奈須委員、お願いいたします。

【奈須分科会長代理】  上智の奈須です。よろしくお願いいたします。
 不登校の件ですけれども、不登校は様々な原因で起こっているんだろうと思います。今回26ページの方で新しい調査の方式でいろいろなデータを出してくださっています。不登校というと、一つイメージされるのは、いじめとか友人関係が原因だということですが、案外、ここのデータを見ると、もちろんそれも一定数ありますけど、そんなに一番高いというわけではない。今回、私が思いましたのは、学校生活に対してやる気が出ない、それから不安、抑うつというのが一番高くなっています。もちろんこれも対人関係からそういうことが起きているということもあるんでしょうけれども、もっと学校生活全般について、やる気、あるいは、不安、抑うつが起こるようなことがあるのかなと。
 これ、心理学の立場でいうと、感情障害とか動機付け障害と呼ばれるものです。まず、こういった状況について、これ最近、報道等でもあるんですけど、何か子供の性格や根性のような問題として、この無気力ということを語ろうという意図の記事を見ますが、それは心理学的には間違いです。学習性無力感というような概念もありますけれども、大人のうつや不安と同じで、主に環境要因によって起こる。だから学校の学習環境、生活環境が原因となって、逆に言えばそこが改善すれば解消するというようなことが、こういうことにあるのだと。つまり、やる気のなさや不安、うつといった状態を、すべて本人のせいにしないという考え方がまず、大事だろうと思います。
 そう考えたときに、学校生活で一番大きいのは授業だろうと思います。先般の令和4年の文科省の調査で、小学校4年生、授業内容が難し過ぎるというのが27.3%、逆に簡単過ぎるというのが28.2%、それを差引きしますと、授業内容が自分に合っていると感じる子供は44.5%、半分いないという計算になる。これは多様性が拡大する中で、伝統的な授業のやり方、一斉指導の在り方というのが、もはや限界に来ているんだろうなあということも思うわけです。
 つまり、不登校はいろいろな原因があると思うんですが、一つには授業が分からない、つまらない、やっていられない。頑張っても、頑張ってもうまくいかない。無気力というのは、自分が正当な努力をしても報われないというときに一番起きるんです。そこからうつというのも起きる。これは大人のうつ病も同じですが、そう考えると、授業が分からない、つまらないので学校に行けなくなるというようなこともあるんじゃないか。すると、従来、不登校は主に生徒指導問題の一環として考えてきましたが、学習指導問題である場合もあるんじゃないかとも考えられるかなと。逆に言えば、授業改善とかカリキュラム改善によって不登校が解消されていくとか、学校に来られるようになるという事例を私はたくさん見ています。
 それから、面白かったのは先般、中学校の校長さんが、ずっと不登校だった子が急に修学旅行だけは行くといって、来たんだそうです。修学旅行5日間、とても楽しく、人間関係も問題なく過ごして、また、翌日から授業にはぱったり来なくなったという、つまり、従来の不登校のイメージとは違うタイプの不登校がどうもあるような私は気がしていて、何かタイプの違う不登校です。つまり、それは学習指導面、そして先ほど吉田先生もおっしゃったように、いろいろなパスが出てきましたので、必ずしも学校に行かなくても人生を生きていけるという見通しもあるし、保護者や社会もそう思っていると。
 その辺り、不登校ということの、僕らがどうイメージするかということをもっと広げていくとか、少しずらして考える必要があるかなと。私自身は、学習指導問題として考える、その意味でも個別最適な学び、協働的な学び、あるいは主体的・対話的で深い学びということを今、推進していますけれども、そちらを進めていくことが不登校の一定の改善、解消にもつながるかなということも考えておりました。
 以上です。ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、今村委員、お願いいたします。

【今村委員】  発言させていただきます。今回、調査名を変更されたり、名称変更に加え、不登校理由の分析の在り方、質問の取り方を変更されたりと、本当にたくさんの御努力をなさっているということに大変敬意を持ちました。
 その上で、新しく今回見えてきている28ページの学校内外で相談、指導を受けていない児童生徒の13万4,368名のうちの11万9,000人、約12万人が、担任等から継続的な相談、指導を受けていたということが分かったというところが今回、明記されていたんですけれども、今の奈須先生のお話に大変共感するところでして、これは、この後の議論の学校の教員の予算のところも入ってくると思うんですけれども、結局、不登校になった子たちが属するという前提の中で、担任の先生が毎日のように電話をなさったり家庭訪問をなさったりするということの時間の確保が、もしかしたら新規で不登校になるかもしれない子たちの未然予防になるような授業づくりとか、新しくみんなが行きたいと思える学校に変えていくための学習集団のつくり方、柔軟な教育課程の在り方、自由進度学習とか、そういったことに時間を注ぐための努力の時間を、実は逼迫させているんじゃないかというところが少し気になりました。
 もちろん不登校になったら、クラスから見放せばいいということを言いたいわけじゃないんですけれども、でも個別対応するということはそれだけの時間の確保も必要ですし、学校の電話回線もまだそんなに多くないというところも多い中で、先生方が放課後、そこに時間を取られるということは、次の日の授業づくりの時間がなくなってしまうということだと思います。その意味でも、今回の重点施策の様々な予算の配置は全て大切で、ありがたい、どんどんやった方がいいと思うものが多いんですけど、特にスクールソーシャルワーカーの方が、もしかすると大切になってくるんじゃないか、保護者の支援を含めて、その方々が不登校になったら担任とも連携しながらも、できれば、その方々がもっともっと回り込んだ支援を不登校の子たちに対してしていくということにしていくとか、あと、学校外でワークしている方々と重点的な対応、手のつなぎ方を模索するとか、そういったことで、とにかく担任の先生の仕事から一旦軽くしてあげる、これは議論が分かれるところだと思うんですけれども、そういったことをしないと、担任の先生が全部見ていたからよかったというふうにこのデータを見てしまうと、大変なことになってしまうんじゃないかなと思ったので、もっともっと担任以外の方が努力できるリソースを確保していくということ、そして、それを推奨していくということがとても重要なんじゃないかなと思いました。
 私からは一旦、以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、青海先生、お願いいたします。

【青海委員】  千々岩課長、ありがとうございました。全日中の青海でございます。不登校については、大変憂慮しているところです。現場から要望したいと思っていることは二点です。
 一点目は、不安定な家庭環境とか保護者を支援するスクールソーシャルワーカーなどの専門家など支援スタッフのさらなる充実です。これについては、専門相談機関につなげられないとか、保護者との連絡が取りにくいなどのケースの場合、家庭環境や保護者への支援が必要な場合が多いように感じています。不安定な環境では、生徒が安心して学校に通うことが大変難しくなり、不登校のリスクが高まります。生徒に働きかける以前に、家庭環境に働きかける福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカー、そのほか、専門家支援スタッフのさらなる充実を要望したいと思います。
 二点目は、生徒指導、不登校などを担当する教員、教員定数充実のための財政措置です。不登校生徒の状況は一人一人異なるため、学校では、毎週、校内委員会といいまして、校内のケース会議などを開催しています。このメンバーは、担任、生徒指導や教育相談担当者、スクールカウンセラー、養護教諭、管理職などです。具体的に個々の生徒について、その当該生徒の対応のこれまでの経緯ですとか家庭環境、生徒の現状や課題を挙げて対応策を検討するのに、いつも1時間で1人がやっとのペースです。現場では、授業をやりながら不登校生徒の対応をするというのは、現実的に難しいです。専門に担当する生徒指導とか不登校担当などの教員が必要だと感じております。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。最後に、田島委員、お願いいたします。

【田島委員】  ありがとうございます。私、全国町村会副会長を務めております、佐賀県白石町長の田島でございます。
 当町でも、不登校にある児童生徒数は増加傾向にございまして、憂慮すべき事態となってございます。当町は、平成17年に3町が合併をして20年がたつわけでございますけれども、従来、八つの小学校と三つの中学校がございました。小中学校の統合を始めておりまして、不登校にある児童生徒にとっても大きな環境の変化が生じることとなるために、きめ細かな個別の支援、指導が重要となってございます。
 今年4月からは三つの中学校を統合いたしまして、新設した白石中学校におきましては、別室に不登校の生徒が登校できるような環境を整えまして、専門スタッフが必ず1名いる体制を整備しております。今後、さらなる少子化の進行に伴いまして、当町以外にも、図らずも学校の統廃合が進み、同じような状況になっていく、あるいは既になっている自治体も少なくないと思います。子供たちが安心して過ごせる居場所をつくっていくためには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の充実や、学校、家庭、関係団体との連携強化も不可欠でございますので、国におきましては、引き続き、十分な支援をお願いしていきたいと思っております。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。一々には時間の関係で申し上げられなかったんですけども、非常に多様な御意見を頂戴いたしました。御提言、さらには御要望もいただいたところであります。
 一つ言えることは、不登校を不登校だけで見るんじゃなくて、もっと学校教育全体の中から見ていく必要があるんじゃないかと、そういう御指摘が多かったのではないかと思います。全てにお答えはなかなか難しいと思うんですけれども、千々岩課長、今、委員から出ました御意見につきまして、何かコメントございましたらお願いいたします。

【千々岩児童生徒課長】  ありがとうございました。時間の関係で、全てに対してお答えすることは難しいところでございますが、いただいたコメントを踏まえまして、しっかりと我々、引き続き取組をしていきたいと思っております。
 特にいただきました御意見の中で、学校と福祉と連携していくこと、あるいはスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの力も含めて連携して取り組んでいくことの重要性であったり、あるいは、いろいろな今、取組がされています、多様な取組の場を確保するとともに、保護者等にもしっかりとその情報を周知していくこと。それから、法律やガイドライン、生徒指導提要の考え方をしっかりと周知していくことが大事じゃないかといったところの御意見もございましたので、こういうこともしっかりやっていかなくちゃいけないと思っております。
 不登校のみならず、長期欠席のようなことも含めた形、広い目で見ていくこと、あるいは、調査結果を調査結果だけに終わらせずに、実際の各学校や教育委員会における取組に生かしていくといったこと、それから、重大事態の分析も含めてより分析を深めていくこと、こういったことをトータルでしっかりとやっていきたいと思っております。今日はどうもありがとうございました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 当然のことながら分担をして仕事をしていくということが効率的であるわけですけれども、一方では分担しつつ、全体を見て、またどういう形でやっていくのかというのを常に省察しながらやっていくということも非常に大事だと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、2つ目の議題に進めたいと思います。議題の2つ目は、デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理についてでございます。まず、寺島学校情報基盤・教材課長から御説明をいただきまして、その後、この件につきまして御議論いただきました、デジタル学習基盤特別委員会の委員長でいらっしゃる、堀田分科会長代理から一言、引き続きお願いしたいと思います。では、寺島課長、よろしくお願いいたします。

【寺島学校情報基盤・教材課長】  ありがとうございます。学校情報基盤・教材課長の寺島でございます。
 資料を共有させていただきます。私から資料2に基づいて御説明をさせていただきますけれども、中身の説明に入ります前に、まず、この資料の位置づけについて簡単に触れたいと思いますけれども、この資料、タイトルにございますように、デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理というタイトルの資料でございます。GIGAスクール構想が開始をされまして、各学校に1人1台端末、それからネットワーク環境が整備をされた。多くの自治体では4年目、早い自治体では5年目、6年目を迎えるという状況でございます。この後、この端末の更新も控えているということで、第2期というような言い方をされることもありますけれども、今そういった時期に来ております。したがって、この時期に当たりまして、今のデジタル学習基盤に係る現状と課題を本分科会の下に設けられております、デジタル学習基盤特別委員会で一旦整理をしようということで、この資料をまとめられたものでございます。
 したがいまして、特定の諮問事項に対する答申案とか、あるいは、審議のまとめというような性格のものではなくて、まさに今、この時点での現状と課題を特別委員会として整理をされたと、こういった位置づけの資料ということで御理解をいただきたいと思います。
 次に、スライド番号2の目次のところを御覧いただきたいと思いますけれども、今、申し上げましたような資料の性格ということもございますので、現時点での現状でありますとか、あるいは課題、こういったことも中心に整理をしながら、そして最後に、特別委員会として、現時点での総括と、それから今後ということについて、おまとめをいただいたということでございます。
 それでは、スライド番号3番でございますけれども、まず、GIGAスクール構想前のICT環境ということで、現状を押さえております。囲みのところの一つ目の丸にございますけれども、GIGAスクール構想以前の学校の環境で申しますと、平成31年3月の時点では、教育用コンピューターは児童生徒5.4人に1台、そして普通教室の無線LANの整備率というのは41.0%という状況であったということでございます。まだ、この時点では端末、あるいはネットワークともに整備が非常に不十分であったということ、それから、都道府県によっても整備状況に非常に大きな差があったというのがGIGAスクール構想以前の状況でございました。そして、このような状況は、国際的に見ても、例えばOECDのPISAの調査などを見ても、OECD加盟国の中でも非常に最下位に近い水準であったというのがGIGAスクール構想以前の環境でございました。
 スライド飛びまして、スライドの9番でございますけれども、その後、GIGAスクール構想が令和元年度に打ち出されまして、1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するという構想が打ち出されました。丸の二つ目にございますように、令和元年度、あるいは令和2年度の補正予算において、1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークの整備に関する予算が盛り込まれまして、一気に環境の整備が加速をしたというところでございます。
 そして、三つ目の丸にございますように、いわゆる令和答申においても、個別最適な学びと協働的な学びを実現するためには、学校教育の基盤的なツールとしてICTは必要不可欠なものであると、こういった位置づけがなされたところでございます。
 スライド番号、12番に行きますけれども、このようにGIGAスクール構想以降、急速に整備が進んでまいりましたけれども、現時点で1人1台端末、あるいは高速ネットワーク通信のみならず、デジタル学習基盤として考えられるものを、この後のスライドで細かく、丸1番から丸7番で様々な要素について触れておりますけれども、その現状を触れたのが第3章ということでございます。今のページの3つ目のポツでございますけれども、3つ目のポツの2行目の後ろの方からでありますが、GIGAスクール構想第2期を迎えるに当たって、改めてデジタル学習基盤が可能とする学びの姿を整理し、示すことで、その可能性をさらに引き出す活用の在り方を考える契機となるということで、冒頭申し上げました資料の性格もここに表れているわけでございます。
 そして、次のポツにございますように、デジタル学習基盤の意義ということを現時点で整理をいたしますと、三角のところで三つ整理をされておりますけれども、特に二つ目の三角のところからでございますが、多様で大量の情報を扱うことができること、そして、時間や空間を問わずに情報をやり取りすることができること、こういうことで思考の過程や結果を共有することが容易になっているということ。こういったことを通じて個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が可能となっている。そして、三つ目の三角にございますように、多様な子供たちにとって、包摂的で主体的・対話的で深い学びの一層の充実に資する学習環境を教師にとっても持続可能な形で実現することができる、こういったことが、現時点でのデジタル学習基盤の意義であると整理できるのではないかということでございます。
 そして、その下の丸にございますように、こうした環境というのは教師の意図的な指導と合わせて、自立した学習者を育成していく上で大いに役立つものではないかということでまとめられてございます。
 そして、次のスライド、13番でございますけれども、上の丸に「なお」というところに書いてございますが、3行目のところからデジタル学習基盤はこれまでの取組と方向性を異にするものではなく、これまでの土台の上に、情報技術の特性、強みを持って学習活動における子供たちの環境をより豊かにし、全ての子供たちにその環境をより容易に提供できるという点で大きな意味があるのではないかということで、現時点でデジタル学習基盤の意義を整理されているところでございます。赤枠のところで、丸1から丸7番、端末のネットワークに限らず、様々な周辺のインフラ環境を相まって、今のデジタル学習基盤が整えられているのではないかということで、これ以降、丸1番から丸7番まで詳しく現状と課題を整理しているところでございます。
 少しスライドは飛びますけれども、73番のスライドまで飛んでいただければと思います。73番のスライドでありますけども、これ以前に資料でまとめております、丸1番から丸7番の要素で成り立っているデジタル学習基盤でございますが、このデジタル学習基盤を土台とした学びの成果というものも、少しずつ表れ始めているのではないかということで、73番以降のスライドにまとめているところでございますけれども、例えば、一つ目の丸にございますように、全国学力・学習状況調査によれば、1人1台端末をほぼ毎日、あるいは週3日以上使っていると回答している学校は、令和6年度の調査では、小学校では93.3%、中学校では90.8%まで上昇しておりまして、1人1台端末の活用というのが日常化している現状が出ているのではないかと思っております。
 そして、2つ目の丸でございますけれども、同じく全国学力・学習状況調査においては、ICT機器を活用し、主体的・対話的で深い学びに取り組む学校ほど平均正答率が高い結果ということも表れております。
 また、三つ目の丸にございますように、約9割の児童生徒が、例えば、友達と考えを共有したり比べたりしやすくなるなどの回答に対して大変肯定的に答えておりまして、子供たち自身がICT機器の活用の効力感を実感しているという状況が出てきているのではないかと考えております。そして、このページの最後の丸のところでございますけれども、先般行われました、PISA2022でございますが、これは完全にコンピューター使用型の調査、CBT調査で行われておりますけれども、この調査においても、日本は全ての分野において世界トップレベルの結果であったということが出ておりまして、こういったところにも効果があらわれているのではないかと考えております。一方で、PISA2022では、世界と比べますと、日本の各教科での授業でのICTの活用頻度というのは、OECD諸国と比べて、まだ低い状況にあるといったこと。あるいは、高校生自身が情報を集める、記録、分析、報告するなどのICTを用いた探究型の教育の頻度というものについては、OECDの他国と比べてもまだ低い水準にあるのではないかと、こういった課題も指摘をされているところでございます。
 また、少しスライド飛びまして、スライドの88番のところに飛んでいただきますと、今までのところ、子供たちの学習の基盤としてのデジタル学習基盤のところで申し上げましたけれども、88番では、それと関連をして、校務DXに関する取組についてもまとめられているところでございます。一つ目の丸にございますように、子供たちの学びの充実に資するデジタル学習基盤の整備に加え、校務DXも現在進展をしているところでございます。校務DXは、学校の働き方改革を実現する上でも極めて大きな役割を果たしているのではないかと。そして、二つ目の丸にありますように、校務DXが進むことによって、学校の職場としての魅力、あるいは教師の職業としての魅力の向上にも資するのではないかということで、第6章が取りまとめられております。
 そして、最後でありますけれども、スライド99番のところまで飛んでいただきまして、99番以降が、これまでの総括と今後ということで、特別委員会でまとめいただいたところでございますけれども、特にスライド100番を御覧いただきたいと思いますけれども、今、申し上げてきましたデジタル学習基盤の整備によってもたらされた変化ということを幾つか取り上げられております。例えば、一つ目の丸の一番後ろのところからございますように、ICT活用の特性や強みを生かすことで、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実による主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につながっていること。こういったことで、従来の学習方法では困難が見られた児童生徒への対応を含めて、今までできなかった学習活動の実施なども可能になっているのではないか。
 具体的にはということで二つ目の丸に書いてございますけれども、例えば児童生徒の学びの保障に大きな成果が上がっているのではないか、不登校や特別な支援を要する児童生徒が増加傾向にある中で、リアルタイムで教室の授業をつなぎ、参加することが可能となっていること。こういったことは、これまではなかなかできなかったことであったわけでありますけれども、こういったことが可能になることで、学びの保障に直結する取組が行われるようになっているのではないかと、こういった変化が表れているのではないかと思っております。
 そして、三つ目の丸にありますように、学びそのものについても変化が表れているのではないか。例えば、従来は教材や情報を教師が準備をして、教師が教えることが合理的、あるいは、そういった選択肢しかなかったという状況でございましたけれども、デジタル学習基盤が整備されたことで、子供たち自身が様々な教材から自らに適した教材を選択することが可能になっている、こういった変化も生まれているのではないかということでございます。
 そして、最後の下から二つ目の行にございますように、各自にとって個別最適な教材や情報と出会える可能性が向上し、学びの進化の可能性が高まっているのではないか、こういった変化が生まれているのではないかと思っております。
 それから、101番のスライドに行っていただきまして、さらにというところでございますけれども、児童生徒がクラウド環境を生かして他者参照を行うことで、丸の最後のところにありますけれども、情報の共有、共同編集、成果物の再構築などが格段に容易になることで、協働的な学びの充実も可能になっているのではないかということでございます。
 そして、102番のスライド、一番最後でございますけれども、一番最後の丸の「こうした環境は」のところでございますが、こうした環境は教師の意図的な指導と併せて自立した学習者を育成していく上で大いに役立つものであるということ。そして、最後から2行目にございますけれども、適切な指導計画や学習環境の設定、子供の丁寧な見取りと支援といった学びの専門職としての教師の役割が極めて重要であり、不可欠であるということもデジタル学習基盤と合わせて述べられておるところでございます。
 一番最後、103番のスライドでございます。一番最後の丸、「以上を踏まえると」というところでございますけれども、「以上を踏まえると」の3行目の後半のところでございますが、先ほどの議題1にもございましたけれども、各種の教育課題に向き合う際には、デジタル学習基盤特別委員会も含めて、様々な検討の場が想定されているところでございますけれども、デジタル学習基盤の存在を切り離して議論を行うことはできず、常にデジタル学習基盤からの視点を踏まえながら検討が行われるべきではないかということを最後の結論として、特別委員会でおまとめをいただいたところでございます。
 資料の説明は以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。それでは、先ほど申し上げましたように、この特別委員会の委員長でいらっしゃる堀田先生からコメントをお願いいたします。

【堀田分科会長代理】  堀田でございます。私、デジタル学習基盤特別委員会の委員長を拝命しておりまして、先ほど寺島課長から御説明いただいたように事務局とともに100ページほどの資料をまとめるということをやってまいりました。
 この趣旨は、これから学習指導要領の改訂等が動く、そういうタイミングであるということや、GIGA端末をリプレースしていく、そういうタイミングであるということを踏まえ、現状がどこまで来ているのかということを個別の委員会ではなく、一旦デジタル学習基盤という文脈で整理しておこうということでございます。
 目次のページ、スライドの2番を基にお話しします。03、デジタル学習基盤の整備というところに1から7まで書いてあります。これらはそれぞれのテーマごとに、文部科学省の各課で有識者会議を設置し、そして、検討が進められてきたものでございまして、これらそれぞれ相互に関連しているわけでありますけども、なかなか全体を通して見るということがしにくかった現実がありました。加えて、ここにはまだ掲載していませんが、今後生成AIが動いてきますので、こういう状況の中で、教育環境、あるいは教育方法、場合によっては教育内容かもしれませんけど、そこまで変化が求められていく中で学習の基盤としてデジタルをどのように用いていくか、どのように整備するかという観点で整理整頓したということになります。
 04に書いてありますように、1人1台情報端末の環境を用いて子供たちが自律的に学ぶためには情報活用能力の育成が求められるわけですけども、この実態と、今後子供たちに情報活用能力をしっかり身に付けてもらうための教育課程の在り方、教育方法の在り方についても整理したところです。
 また、05にありますが、個別の学校の努力によって様々な形で1人1台の情報端末を活用した学びの成果は出ています。実は、たくさんあったんですけど、そういう個別のケースの話は一旦、全部落としまして、今回は全国学力・学習状況調査等ではっきりと出ている傾向のみを掲載してございます。一言で言えば、個別の教科の学力のみならず、子供たちが自律的に学ぶ、学び方とか学びに向かう力とか、この辺りにデジタル学習基盤が寄与していることが見てとれます。
 また、06にありますが、校務DX、これは先生方の働き方改革として極めて重要であり、文部科学省としても強く推進しているわけですけども、個別の自治体によって整備の仕方に課題があったり、ルールが昔のままだったりして、なかなか先生方の働き方改革まで影響しきれていないという実態も見てとれるのではないかと。これはセカンドGIGAで、新しい端末環境を用意するこれからのタイミングにおいて、校務も視野に入れて検討していただきたいと思っているところでございます。
 私からの付け足しは以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。いろいろと議論されてきたことをこういう形で全体まとめて、現状と課題ということで整理をしていただきました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問、おありの方お願いいたします。渡辺委員、ではお願いいたします。

【渡辺委員】  日本学校保健会・日本医師会の渡辺でございます。簡単に四点、意見を述べさせていただきます。
 一つはスライドでいうと21ですけども、文科省も認識し取り組んでおられるようでございますけども、スムーズなサイトを開けるネット環境の整備は喫緊の課題と思います。自治体ごとの対応なので、文部科学省の方ができることは限られているとは思いますけれども、児童生徒の学習環境に地域差が生じていることは放置できないと思います。より一層の強い介入を御検討いただくとともに、文部科学省単独ではなく、政府全体のDXの取組として推進していただきたいと希望いたします。
 スライド55番でございますけども、情報活用能力の育成は今後のデジタル情報社会において必須の能力だと思います。単に小学校から学年が進むにつれて高校まで向上していくということだけではなく、どういう能力を、どの時期にどの程度育成するかという目標設定と評価が必要と思います。正しく情報活用能力を育成する教育ができているかどうかを検証していただきたいと思います。
 三点目、84のスライドでございますが、調査の結果をデジタル学習の評価とされているようでございます。デジタル教材を用いるメリットとして、文部科学省は個別最適な学びができるということをおっしゃっておられたと思います。発達障害とか身体障害者、障害児、もしくは、アナログの教材では学びにくさがあったような児童生徒が、この教材によってどのように改善したかというデータもお示しいただきたいと思います。
 最後でございますけども、校務DXのプランを読ませていただきますと、文部科学省は児童生徒の情報と学校管理を校務支援ソフトで一元管理をされるように思われます。その場合、PHRの構想においても、校務支援ソフトのデータベース管理で対応しようとしているのかどうかが理解できないのですが、もしそうであれば、管理情報は何年ぐらい保存するのか、情報量はどのくらいなのか、保存期間後は、そのデータをマイナポータルとして保護者が管理しないと、原本は消滅してしまうのか。さっき堀田先生がおっしゃったように、自治体の対応で多少異なるとは思いますけども、自治体間の差がないようにしていく必要があるのではないかと思います。この点に関しましては、御回答大変だと思いますので、後で結構でございますので御教示いただきたいと思います。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、今、手を挙げてくださっているのが、阿部委員、吉田晋委員、内田委員でございます。この順番で、内田委員までとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、阿部委員、どうぞ。

【阿部委員】  全国公立小中学校事務職員研究会の阿部と申します。お世話になっております。よろしくお願いいたします。
 学校のICT環境の整備の状況につきましては、ここ数年でかなり状況がよくなっているのかなと出ているところなんですけれども、私たち全事研の方でも、令和3年と本年令和6年に、事務職員目線ではありますけれども調査を行っております。本会が行っている調査から出てきた課題と思われるところについて触れながら、少しお話をさせていただきたいと思います。
 先ほど来のお話にもちらっと出ていましたけれども、自治体の格差によるICT環境の整備というのは大きな開きが出てきているのではないかなと感じているところです。先生方は、それぞれ人事異動で市町村をまたいで移動する場合もありますけれども、自治体によって使えるソフト、アプリが違ったりということになると、また、教材を一からつくり直したり、前の環境ではとてもいい状況でデジタル教材を使って授業していたんだけれども、新しい移動した先ではそういったものが使えなくなってしまったりというような現状も起きていて、先生方の授業効率というのも、準備にかける時間というのもまた新たに生み出しているのではないかなというような現状も起きていると感じているところです。
 また、教育委員会との連携だったりICT支援員さんとのサポートなどというのもまだまだ十分ではないというようなことだったり、データ管理やセキュリティーに関して、まだ不安を抱えているというような状況も耳にするところです。
 また、先生方を含め、事務職員も含めてですけれども、ICTへのまだ苦手意識だったり、そういったものとか知識不足、研修不足というのもまだまだ否めないのかなというところがアンケートから見えてきているところです。
 また、本日の校務のDX化のところで、次世代のDXのところまでお話もいただいておりますけれども、先ほどお話しした自治体の財力の環境によって、まだまだ校務のDX化の充実というのは図られていないのかなと。自治体ごとに差がありますし、こういう校務のDXに事務職員の役割等も、これまでのいろいろな議論の中で期待いただいているところもありまして、私たちも頑張って関わりたいなと思っているところなんですけれども、事務職員はパソコン、先生方と同じネットワークに入れない状況にあったりとか、権限が制限されているような状況もあったりして、一緒に校務のDX化を推進したり、働き方改革に向けて取り組んでいくというところに取り組めないでいるような状況も中にはございます。
 そういったことも含め、各自治体の財力に関わり、影響が出ることなく、全国の学校のDX化が進むような状況をつくっていく必要があるのかなと感じているところです。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、吉田晋委員、お願いいたします。

【吉田(晋)委員】  ありがとうございます。まず、最初にお尋ねしたいのですけれども、今回の現状と課題の整理というのは、あくまでも公立学校だけを中心に考えていらっしゃるのでしょうか。それを最初に聞きたいのですけれど。

【寺島学校情報基盤・教材課長】  ありがとうございます。もちろん私立学校も含めてということでございます。中に出てくるデータは公立のものしかないものもございますので、少しそこを挙げているところがございますが、私立学校を含めた全体の学習基盤の整備という文脈で整理をしたものでございます。

【吉田(晋)委員】  そのような場合、先ほど、最初に、GIGAスクールによって端末の普及が100%になったようなお話が出ていますけれど、はっきり言って現状では、中高は私立中高、小学校も含めて100%普及とは言えないのではないかと。それは、11番のスライドですが、GIGAスクール構想のところを見ていただいてもお分かりのように、1人1台端末一つを取っても、費用の公的負担は国公立は10分の10、私学の場合は2分の1、そして学校のネットワーク導入など、何にしても全て同様の率です。
 そういう中で、100%普及が実現できたから先に進むというお話が、私どもとしては理解できない。そして、それが各学校の努力によって今、進んでいることも事実だと思います。それで、そういう中で、例えばLAN一つ取っても、教室でのLANというのは、今、私ども私立中高でも調査したところ、普通教室では100%導入されています。ただ、LANも100%といっても、例えば全員が動画を見たりすることができるかどうか、そういうことを考えたときに、LANの通信速度によってもまた大きな費用負担となってくる。
 今、DX化によって教員の働き方改革と言いますけれど、そもそも論として、教員のパソコンは文科省では基本的に補助対象として認められておりません。それからLAN設備も、職員室や校長室は、当初は補助対象として認めてくれませんでした。私、職員室で生徒が教員に質問するのにLANを使えないのかということで、さんざん交渉して、今、廊下なども認められてきましたけれど、私は校長ですが、校長はLANを使うなということなのかというぐらい、校長室のLANを補助対象として認めてくれません。
 学校全体でデジタル学習基盤を向上させよう、それから、DX化して、校務をDX化しようとなったときに、校務DXのソフト代は一体誰がどこで払ってくれるのか。そのことはどこにも出てきません。教員のパソコンも、スペックの低いパソコンを入れても何にもなりません。それをまた教員が生徒に使わせるということになったときに、教員が新しい学習基盤に関わる中で、さらに課題を含めて更新して学習していこうとなったときに、教員に対する基盤整備をどのようにするのか。ですから、負担という部分でいったら、デジタル支援員を配置しなさいと言っても、これも補助率は2分の1。それも全国で105億円でしかない。
 このような状況で、私はこれらの課題をいかにも解決しているがごとくおっしゃられることについて非常に疑問を感じるということで、あえて言わせていただきました。よろしくお願いします。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。御発言になりますか。

【寺島学校情報基盤・教材課長】  御指摘ありがとうございました。すみません、私の説明が十分じゃなかったところがあったかもしれませんけれども、先ほどの委員の御発言中でも、公立であっても自治体の格差ということもございました。これは私学も含めてしっかりと支援、努めてまいりたいと思っております。御指摘ありがとうございます。

【荒瀬分科会長】  よろしくお願いいたします。では、内田委員、お願いいたします。

【内田委員】  ありがとうございます。非常に詳細なまとめということもありまして、高等学校教育においても活用させていただければと考えております。
 生徒に対しては、学びを面白くするツールとして、そして教員に対しては仕事を助け、楽にするツールとして、よりその役割が果たせればいいなと改めて感じたところです。今までも各委員から御指摘いただいたように、学校というのは何かツール、あるいは新しいことがありますと、それに向かって一生懸命取り組む傾向がございまして、DXが推進されることによって教員の仕事が新たに増える。あるいは、生徒の負担が新たに増えるということは避けなければいけないと考えております。積極的な導入に当たっては、デジタルサポーターとDXの推進のための人的な配慮というところも今後、よろしくお願いしたいというところであります。
 それから、サーバーであるとかネットワークについては、日本の教育環境というのは割と進んだところにおいても、かなり脆弱で、ボトルネックのような状態になっているかと思われます。1クラス40名の生徒が一斉に、かつ、全校でつないだ場合も、それがクリアできるような環境というのが求められているところもありますので、長期的に、あるいは短期的に計画立てて、推進されるということを期待しております。
 三点目です。先ほど渡辺先生からも御指摘をいただきましたけれども、生徒のアカウントというのは在籍中のアカウントということになりますので、学んだことの資料、あるいは、自分自身がつくった資料をあらかじめダウンロードすると手元に残ることになりますが、アカウント上で、サーバー上で保管されたデータについては、アカウントがなくなってしまうと消失してしまうということもあります。学んだ過程、あるいは学んだことの成果というのは手元にあるということも必要かと思いますので、こちらについても、今後考えていく必要があるのではないかなと思います。
 都内で通勤をされている方はお気づきだと思いますけれども、高校生、あるいは場合によっては、小学生もランドセルなどあるかと思いますけれども、非常に学習教材、教科書、さらにデジタル端末ということで、荷物が重くなっている現象もございます。こういったことについても、デジタル教科書なども含めて生徒の負担にならないように配慮していく必要があると感じておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。いろいろと御指摘がございましたので、文部科学省の方で受け止めていただいて、また御検討いただきたいと思います。
 それでは、残りの時間が30分になりました。あと、議題3といたしまして、今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会の論点整理等について、御説明をまず、いただきたいと思います。その後、もう1件、冒頭申しましたように、大変重要な案件がその他としてございますので、教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する論点整理につきましては、今後、教育課程部会等で中教審、初中分科会としても議論を重ねてまいりますので、とりわけ今日、ぜひとも御発言したいとおっしゃる方に限らせていただくということでよろしくお願いいたします。
 では、栗山教育課程企画室長、御説明よろしくお願いいたします。

【栗山教育課程企画室長】  失礼します。教育課程課でございます。資料3-1の概要に基づいて御説明をさせていただきます。
 現行の学習指導要領の実施状況等を踏まえつつ、教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方について、令和4年12月から令和6年9月まで議論いただいたものでございます。初中分科会からも荒瀬分科会長、奈須分科会長代理、秋田委員、貞広委員、戸ヶ﨑委員にも御参画をいただいておりました。
 上の文にございますが、性質として本論点整理は、今後検討を深めるべき具体的な論点等について、有識者としての意見をまとめたものでございまして、教育課程の改善の検討を行っていく際の基礎的な資料として活用されることを期待すると整理づけされているものでございます。
 内容については、六つの柱で整理をされてございます。1番目でございます。これからの社会像とこれまでの学習指導要領の趣旨の実現状況でございます。1ポツ、人口減少、グローバル化、生成AI等の非連続的な社会変化が予想される未来でございます。前回改訂時に、2030年頃の未来として描いていた社会像が想像以上の速さで現実化。一方で、二つ目、現場の現状へ目を転じれば、不登校、特別支援教育、あるいは外国人の児童生徒等、支援を要する子供が増加しております。多様な子供たちを学校教育の中で包摂し、豊かで幸福な人生を送ることできるようにすることが重要と指摘いただいております。現行の学習指導のコンセプト自体は、授業改善に繋がっており、おおむね妥当である一方で、学習指導要領に分かりにくい側面があることや、教師の多忙化等が課題であると。理念をさらに具体化するとともに、教育課程の実施に伴う過度な負担感が生じにくい仕組みの検討が必要と指摘していただいております。1番でございます。
 2番、これからの社会像や現状の課題を踏まえた資質・能力でございます。1ポツ目、資質・能力を「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力人間性等」の三つの柱で整理していることは基本的には妥当。一方、「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」等との関係性を含め、より分かりやすい整理、具体化が必要。二つ目、「学習基盤となる資質・能力」、言語、情報活用、問題発見・解決能力等でございますが、については重複する部分も多く、現場の具体的な実践に繋がっていない場合もあり、さらなる整理、具体化が必要。特に、情報活用能力については、教育課程全体での扱いに加え、各教科等を通じた具体的な充実方策も検討し、その際、情報活用能力の向上と探究的な学びの充実を一体的に考えるべき。三つ目、デジタル学習基盤は今後の学習者主体の学びを支える極めて重要なインフラであり、デジタル学習基盤を前提とした学びのデザインの方向性として示すべきものについて検討すべき。一方で、ICT等のツールが深い学びにつながっていない例もあることに留意が必要と指摘いただいております。四つ目、情報技術など変化の速い領域では技術の変化に即応して、最新の状況に応じた学びを確保するための方策を検討すべきといただいております。
 右側に転じて、三つ目でございます。各教科等の目標・内容、方法、評価でございます。一つ目、既存の情報から大量のアウトプットを出すことが得意な生成AIの出現なども踏まえ、深い意味理解を促すことや学ぶ意味、社会とのつながりの明確化が重要。二つ目、分かりやすく活用しやすい学習指導要領を目指し、各教科等の目標・内容について、中核的な概念や方略を中心に構造化を図る意義や具体的方法を検討すべき。また、他国の好事例を踏まえ、図表の形式を活用して示すことや、解説などを含め、一体的に確認できるようデジタル技術を活用することなど、形態の工夫を検討すべき。三つ目、「主体的・対話的で深い学び」の基本的な考え方を維持しつつも、個々の指導方法に関する制約や留意点を増やすことは避け、教師に様々な裁量が生まれるよう、目標・内容の示し方を工夫すべき。四つ目、学習評価について、現行の観点別評価は教師の授業改善に重要な役割を果たすものである一方、主体的に学習に取り組む態度をはじめ、子供の学習の改善に結びつきにくい等の課題も指摘されており、教師の力量形成・授業改善に効果的で、子供の学習改善に資する学習評価の在り方を検討すべきと指摘いただいております。
 2ページ目にいっていただきまして、4番でございます。多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂する柔軟な教育課程でございます。一つ目、子供が興味・関心や能力・特性等に応じ、自ら教材・方法・ペース等を選択できる環境を整えることなど、学習者が主体的に学ぶ中で自ら学習を調整しつつ、資質・能力を身につけることの重要性や、その中での教師が発揮すべき指導性について具体的に議論し、位置づけを検討すべき。二つ目、以下のような視点から、各学校の教育課程編成に係る教育委員会や学校の裁量拡大の在り方について検討すべき。現行の教育課程特例校や授業時数特例校といった教育課程の特例制度の在り方をさらに活用しやすくする。各教科等の標準授業時数についてどのような柔軟性を持たせられ得るか。年間の最低授業週数や単位授業時間の取扱いといったことについて指摘をいただいております。三つ目、高等学校については、全日制、定時制、通信制の3つの課程の区分の在り方や、その一体的運用の在り方を検討すべき。四つ目、不登校児童生徒など、学校が編成する一つの教育課程では包摂が難しい多様な子供のよさを伸ばしつつ、資質・能力の育成につなげていくための教育課程における取扱いの在り方や付随する環境整備の在り方についても検討すべきと指摘をいただいております。
 5番目でございます。学習指導要領の趣旨の着実な実現を担保する方策や条件整備でございます。一つ目、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合いつつ、学習指導要領や同解説の在り方に加え、教科書、入試、教師用指導書等の影響も含めた授業づくりの実態を全体として捉えながら、教育課程を実施する上での学校現場の過度な負担が生じにくい仕組みを検討すべき。その上で二つ目、総授業時数については、現在以上に増やすことがないよう検討すべき。三つ目、学年や学期といった長いスパンも念頭に、単元をベースとして授業を構想することや、必要な評価場面を精選することは指導や評価の負担感を防ぐとともに、授業づくりを通じた教師の成長を促し、資質・能力のよりよい育成や多様な子供の包摂性を高める上でも重要であり、その重要性や示し方を検討すべき。四つ目、1人1台端末で子供たちが学習材に自らアクセス可能になっている状況も踏まえ、ページ数が大幅に増えている教科書の性質や分量についても改めて検討すべき。また、五つ目、教育課程の改善、充実と教育条件整備を一体的に行っていくことが必要と指摘をいただいております。
 最後に六つ目、趣旨の実現に向けた政策形成・展開でございます。中教審等での改訂の審議の最中においても、資料を学校や教育委員会にとって徹底的に分かりやすいものとしたり、審議状況をウェブサイト、動画等で積極的に発信するなど、改訂プロセス自体を通じ、関係者を巻き込み、学校や教育委員会と趣旨や内容を共有し、浸透を図ることが重要。また、改訂後も先生方が当事者意識をもって理解できるよう、学習指導要領の趣旨を共有・浸透する方法の工夫を検討する必要があると指摘をいただいているところでございます。
 また、時期を同じくしてでございますが、幼児教育段階についても同様に、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価等の在り方に関する有識者検討会において議論が行われてまいりました。こちらの最終報告についても、画面にございますように、資料3-3、資料3-4としてお配りをしております。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 ただいま御説明いただきました、資料3-1の冒頭部分の二つ目の丸のところに、本論点整理は今後、検討を深めるべき具体的な論点等について有識者としての意見をまとめたものであり、教育課程の改善の検討を行っていく際の基礎的な資料として活用されることを期待しているものであるということで、このような形で学習指導要領が改訂されるということではもちろんございません。こういったことを基にして、学習指導要領の改訂に向けては、しかるべきときに文部科学大臣から中教審に諮問があって、具体的な検討が始まるということでございます。
 そういう段階のものであるということですけれども、非常に長い間、中教審としても大変お世話になりました、天笠千葉大名誉教授を座長として、議論を重ねてきたものでございます。今日は進行がまずくて時間がありませんので、あまり御意見をいただくことができませんが、お一人、お二人ぐらいかと思いますけれども、御意見ございましたらお願いをしたいと思います。では、渡辺委員と柿沼委員、すみません、お二人とさせていただきます。では、渡辺委員、どうぞ。

【渡辺委員】  すみません、日本学校保健会・日本医師会の渡辺です。二点だけ簡単に述べさせていただきます。
 一点は、本文、資料3-2の4ページ頃で、現行の方針に生きる力の理念や習得、活用、探究の学習を提言されております。その中に、自立的に学習を行う自信が低いという状況が見られると記載がございます。デジタル社会の過剰な情報に対する識別能力と、自らを管理し、社会に対応するレジリエンスの能力の習得、今後の生きる力を育む上で必須の能力だと思います。しかし、本文を見ますと、知的な能力の取得の記載というのは結構多いんですけれども、変化する環境に対応する能力の取得に関する記述はあまり多くないように思います。今後の学習指導要領に書かれる際に、できれば自らの健康や自己管理をするヘルスリテラシーの能力や、レジリエンス能力の向上をぜひ検討いただきたいと思います。
 二点目でございますけど、これは書き方が良いか悪いかは別なんですけども、本文の方に、学習指導要領の改訂を行うに当たって、教師の負担を減らすことが重要という記載がございますが、この文章には負担感を防ぐと書いてございます。「負担感」ではなくて、「負担」を減らすという姿勢で対応していただきたいと思いますので、文章を変えていただきたいわけではないんですけども、ぜひ教師の負担を減らすというように考えていただきたいと思います。以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、柿沼委員、お願いいたします。

【柿沼委員】  幼児教育の現場の人間から一点だけ大事な話をしたいと思います。
議題1で、子供の問題行動や不登校の点でも、八並委員の方からあったように、幼児期の社会性の未定着が学校現場における問題行動につながっているのではないかという指摘は、我々のような現場からもそのように思っています。なぜなら幼児期の子供の育ちが義務教育課程以降の子供につながるにも関わらず、幼児期に対する考え方というのが社会に、例えばこのような幼児教育の教育要領であったりとか、自由の姿であったり、非常にいいものがあるにもかかわらず、社会にそれが定着されていない、それが理解されてないような現状があります。幼児教育・保育現場においても、社会性を培うことは大変重要なことであると定義されているにも関わらず、現状ではそういったことよりも早期の教育だったり、保護者のニーズに応えるような教育だったりするものが現場で行われている、こういった背景によって、小学校以降の集団に大きな影響を与えていると考えています。
それなので、今回の改訂においては学習指導要領の改訂と同様に、幼稚園教育要領であったりとか、幼保連携型認定こども園教育・保育要領も同様に重要なものであるというように社会認知していただき、周知していただき、それが社会全体に広まることによって、現在間違ったというか、少し誤解をされた建学の精神に基づいた教育現場にも影響が起き、遊びを中心に、そして子供の発達を大事にした幼児教育が行われることを願います。なので、幼稚園教育要領も同様の周知をお願いしたいと思います。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。今の話をお聞きになって、御意見をまた重ねておっしゃりたいと思っていらっしゃる方もいらっしゃると思うんですが、誠に申し訳ありません。御発言を制限いたしまして、時間の関係で、この件、今後、議論が行われ、初中分科会でも当然のことながら、教育課程部会等での議論が紹介されて、私たちもまた議論できる機会があるということで、よろしくお願いいたします。
 それでは、その他ということですけれども、本日の3つの議題以外に、事務局から今週、11月11日、月曜日、つい先頃のことでございますけれども、開催されました財務省の財政制度等審議会の資料に関して、御説明をいただくことになっております。資料4-1、そして資料4-2ということでございますが、安井財務課長から御説明よろしくお願いいたします。

【安井財務課長】  ありがとうございます。財務課長でございます。資料4-1でございます。
 教師を取り巻く環境整備につきましては、8月に中央教育審議会から答申を頂戴いたしました。長時間勤務の縮減を図りまして、教師の方々の健康を守り、教育の質の向上を図っていくということのために、自治体ごとの在校等時間の公表を行う仕組みの構築を始めとして、働き方改革を加速いたしますとともに、小学校の教科担任制の拡大や中学校の生徒指導担当教師の配置などの教職員定数の充実をはじめとした、指導運営体制の充実についても御提言を頂戴いたしました。さらに、教職調整額の引上げなどの処遇改善等、一体的な改革を進める必要があるという答申をいただいたところでございます。
 文部科学省といたしましては、いただきました答申を踏まえて概算要求を行っているところでございますが、11月11日に財務省の財政制度等審議会におきまして、教員給与等についての議論が行われたところでございますので、その内容と文部科学省の見解につきまして、ポイントを御説明させていただきたいと思います。
 資料4-1の2ページ目をまず、御覧をいただければと思います。財政審で議論されました資料のポイントというところでございます。こちら、まず、これまで教職員定数の改善等を行っても、時間外在校等時間が減少していないという指摘を行われた上で、教師の処遇の改善につきましては、教職調整額を10%を目指して段階的に引き上げると。ただし、その際に条件を設定いたしまして、時間外在校等時間が一定の水準を下回るということを条件として、これが達成されなければ引上げは行わないということといたしまして、働き方改革のインセンティブとするとされてございます。
 一方で、働き方改革を進めていくための教職員定数の改善につきましては、示されていないというところでございます。また、さらに教職調整額が10%に達する際に、教職調整額を廃止いたしまして、所定外の勤務時間に見合う手当を支給する仕組みに移行することを検討するとされておりますけれども、この際、国が国庫負担をする水準につきましては、月20時間を上限とするとされているところでございます。
 資料1ページ目にお戻りをいただきまして、財政審におきます提案についての文部科学省の見解について、ポイントを簡潔に御説明させていただきます。
 まず、時間外在校等時間の減少につきましては、様々な教育課題が困難化する状況の中にありましても、平成28年以降、給特法の改正による上限指針の策定や教職員定数の改善、さらに学校、教育委員会の御努力もいただきまして、教師の時間外在校等時間は3割縮減を図られてきているというところでございます。当然さらに、この縮減に向けて取組をしていかなければいけないというところでございますが、そのための教職員定数等の充実のための財政措置、これが不可欠であると考えているところでございます。教職員定数等の充実につきましては、教育関係者の方々が強く求めておられることでありますし、また、子供たちの教育の充実に直結をするものであると考えております。教職員定数の充実をすることなく、学校現場の業務縮減の努力だけをもって、学校における働き方改革を進めようとする提案は、学校現場への支援というものが欠けていると考えているところでございます。
 また、学校における働き方改革を進めていくインセンティブにつきましても議論されていたというところでございます。これにつきましては、自治体ごとの在校等時間の公表を制度化するなど、長時間勤務の縮減を図っていくメカニズムの構築を行っていく必要があると文部科学省としても考えておりまして、その具体化に向けてしっかりと取組を行っていきたいと思ってございます。
 一方で、財政審の資料では、教職調整額の引上げに条件づけをしてインセンティブを高めていくということでございますけれども、現場で日々御尽力いただいている教師の方々のインセンティブが低いということではなかろうと考えてございます。いじめや不登校などの対応をはじめといたしまして、学校が対応しなければいけない課題が多く発生をして、時間外在校等時間の縮減が容易ではない地域、学校も多く存在しているところでございます。そうした状況の中で教職員定数の改善の支援も行わずに、勤務時間の縮減を給与改善の条件とするという財政審の資料の内容につきましては、子供たちのために最良の教育を目指して御尽力いただいている現場の先生方の努力に向き合ったものということは言えないのではないかと考えてございます。こういった教職員定数の支援なく無理に時間の削減をしようとすれば、子供たちに必要な教育の指導も行われなくなるなど、学校教育の質の低下ということも懸念されるところでございます。
 資料2枚目でございますが、また、さらに教職調整額が10%に達する際に、所定外の勤務時間に見合う手当移行を検討するとされているところでございますが、こちらについては、教師の裁量の低下ということも懸念されるところでございまして、教師の専門職としての裁量をいかに確保して、教育の質の向上に当たっていただくかということを中教審でも御議論を重ねてきていただいたわけでございますが、こういった観点での議論ということが欠けているのではないかというところでございます。
 また、さらに、仮にそういった制度の移行ということでありましても、残業代支給の水準につきまして、月に20時間の国庫負担の上限ということでございましたが、これは自治体に負担を転嫁することになってしまうということでございますし、また、自治体の財政力の差によりまして、教育活動の量に差が生まれていくということも考えられ、教育格差が懸念されるところだとも考えているところでございます。
 文部科学省といたしましては、中央教育審議会答申のいただいた答申の実現に向けまして、今後も政府内でしっかりと調整をしてまいりたいと考えているところでございます。
 以上、簡潔でございますが、御説明をさせていただきました。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。ただいま安井課長の方から御説明いただきました。私たちもつい先頃まで、この件に関して議論を重ねておりまして、本年の8月27日に、「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策についての答申を出したところであります。
 こういったことを踏まえて、我々としては、ぜひとも私たちの答申が実現していくことを願っているわけでありますけれども、今、安井課長の方からも御説明いただきましたことを含めまして、御意見おありの方、こちらも時間の関係で、お一人かお二人になってしまいますけれども、では、戸ヶ﨑委員と、それから特別部会でおまとめをいただきました貞広委員、吉田晋委員、3人の御発言をお願いしたいと思います。では、戸ヶ﨑委員お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】  すみません、時間のないところですけれども、黙っていられないので申し訳ございません。文科省の財務省への反論は、全くもってそのとおりでありまして、これまでの御尽力には本当に深謝申し上げたいと思います。引き続き切によろしくお願い申し上げます。
 反面、財務省の方は、教職員定数の改善や支援スタッフ拡充の必要性を認めず、まさに学校現場の困難度を理解していないと言わざるを得ない上、中教審の長きにわたる真剣な議論をむげに扱っており、学校現場を預かる立場としては到底看過できないものでございます。強調したいことはたくさんあるわけですけれども、簡潔に三つに絞って申し上げたいと思います。
 一つ目は、時間外の在校時間は、学校等の献身的な努力で着実に減少しています。「教育の質」ではなくて、「時間外勤務の多寡」と給与の関係に議論が焦点化されているのは納得がいきません。
 二つ目に、教育的ニーズが多様化・肥大化する中、学校現場の業務縮減の努力は限界に近いものがございます。重要なポイントであるところの教職員定数等の改善がなければ、これを「気合い」で乗り切れと言わんばかりかなと思っています。これでは現場の教師のモチベーションも下がりますし、優秀な学生が教職を避けて、教育の質が低下してしまうことも危惧されます。
 三点目ですが、時間外勤務手当の支給は、現場の混乱を招く可能性があります。管理職の成り手もますます減少することも明らかであります。また、先ほどお話ありました手当の国庫負担上限は、自治体の財政力の差によって格差を招くことに繋がります。教育の機会均等という国庫負担制度の本来の趣旨に明らかに反することになると思います。
 以上ですけれども、最後に一つ付け加えますと、服務監督権者として私ども市町村も、国とともに汗をかく必要があるだろうと感じています。3分類に基づく取組を強力に進めて、昨日、文科大臣が会見で言及しておりました、自治体ごとの在校等時間の公表の制度化などに真摯に向き合っていくべきだろうと思います。
 文科省の提案の全体像というのは、国が財政支出を行いつつ、国、都道府県、市町村それぞれがチームとなって、ともに汗をかいていくことを求めていると認識しております。ここに改めてしっかりと向き合う必要があると感じました。以上です。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、吉田晋委員、先にお願いします。

【吉田(晋)委員】  すみません、時間がないところ、申し訳ございません。私、私学の立場でこういうことを言ってはいけないのだと思うのですけれど、まず、基本的に今回のこの財政審の考え方が理解できないのは、子供は一体どこに行っているのか。先生方の働き方云々って、実は学校教師が担う業務に係る3分類によって、先生方の働きがすごく縛られたのですよね。本来であれば、先生がやるのは僕は当たり前じゃないかと思う。休み時間とか掃除とか給食のときに生徒と触れ合いながら子供の気持ちを感じ取ったりする、そういうこともするなとか、もっと極端な言い方をしたら、授業準備も先生がやらなくたっていいよというぐらいまで削減して、先生方の時間を確保しようという働き方改革をやっているわけです。
 その一方で、それを本当にやったら10%まで持っていくよとか、そういう感覚って、私は理解できない。やはり子供を中心に考えたときに、子供というのは残業が効くものではありません。そのときその場で何かあったときに、そのときに対応してあげなかったら、それこそ自殺の問題だって何だって起こるかもしれません。ただ、それをあえて先生たちはもう働いちゃいけないから帰るよ。先生方はそれで働かないと。働いちゃうと10%まで上がらないんだよなんて、こんなこと通用するのでしょうか。
 ここにどこにも書かれていないのは、本来家庭でやるべき業務を先生方がやっているということはないのでしょうか。基本的に学校が担うべきではないと言われていた中に、例えば通学の登下校の問題とか放課後の問題、それから補導された問題、そんなこと何で親の責任ではなくて学校がやらなくてはいけないのか。私ども私立学校も、実は約半分が公立学校の給特法の制度を人事で利用させていただいています。もっとこれも多かったのですけれども、労基が入ることによって残業手当にされて、それによって各学校、小さな私立学校でも年間2,000万、3,000万という出費が増えるような状況にもなりました。
 先生方は学校にいれば勤務なのか、今、在宅勤務がさんざん言われている中で、家庭のある先生などは家に持って帰って、子供の面倒見ながら教案を作ったりしていいじゃないですか。それが本来の在宅勤務じゃないですか。それまで全部をどう管理していくのか。それこそ管理職の先生方の仕事は大変なことになってくる。そういう部分で考えたら、やはり人とお金なのです。
 人に関して、今、支援員を増やせばと言っていますけど、私はその前に、教員を増やせばいいのではないのかと、支援員は使わなくていいぐらい教員を増やすべきなのではないかと。人が集まらないから、教員が集まらないから支援員というならまだ分かるんですけど、教員だと高いから安い支援員でカバーしようよというのではおかしくないですかと。
 実は、我々私立学校、東京都の補助金の場合は、標準運営費制度といって公立学校の3年前の実際にかかった教育費から算出されるのです。ですから、東京都はほかの県と比べて特殊なのですけれど、例えば今、補助項目で、学校割、学級割、生徒割、先生割というのがあって、教員の場合、教員1人当たり中学校ですと約410万ぐらい、高校で440万ぐらいが補助されるのですが、それが標準教職員数内だと全額交付されますが、学校の教育環境向上のために教員を増やすと、標準教職員数を超えた人数分の補助金は0となります。それから学級数を増やせば増やすほど、1クラスに対する手当が1000万くらい増えてくるという形で、教育条件をよくすると少しでもカバーしてもらえるという体制ができています。
 ただ、そこに教員の人件費が、残業代だ、何だって働いてはいけないよという形にすることはとてもできないし、教員を増やせるような方策をしないと、これは公立がしっかりやらなくては私立もできないと思いますので、ぜひ財政審の皆さんには、今の教育現場の苦しさ、時間を今減らしたって、3割削減、縮減したというのは、私は本来理解できません。今はもっともっと本当はかけなくてはいけないのだと思う。
 それをかけないから、不登校だ、いじめだというのも増えているのかもしれないなという気もするので、あえて言わせていただきましたので、オフレコでも結構ですので、よろしくお願いいたします。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。では、貞広委員、お願いいたします。

【貞広委員】  ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。時間のない中、申し訳ありません。ここで発言をするために今日、議題三つ全部発言を我慢してきましたので、少しお時間をいただければと思います。
 今回、取り上げられている件は、令和5年度の6月から中教審の中でも特別部会で皆様から議論をいただいてきたところでございます。また、それに先立ちまして、調査研究会というものの中でも議論をしておりまして、こちらは令和4年度の12月から、つまり、2年間にわたって、各界の専門の先生方から丁寧な議論をいただいてきたところでございます。
 でも、私は公共政策が専門の研究者でございますので、政策選択においては様々な価値の優先順位のつけ方があり、今回の財政審の御意見も、お立場による御提案かとも思うところがないわけではもちろんないんですけれども、ただ、これまで2年間しっかり丁寧に議論していただいた、この議論の本質に目を向けず、特に処遇改善について、現場の対応力や働きがいにひずみをもたらしかねない、そういう成果、つまり時短とか時短ハラスメントみたいな感じですけれども、これに依存する御提案については落胆と失望といいますか、もっと本能的にしょんぼり、がっかりという感じであります。
 その一方、今回は本当に文科省さんの側から出していただいた見解というのは本当に心から肯首できるものであって、ぜひこうした形で、社会の方々にも御理解をいただきたいと思っていますし、何よりも財政審の方々にも、日々思いもよらぬ事態に学びの専門職として対応されている教師に敬意を払っていただきたい。そして、教師が関わっている子供たちを尊重していただきたい。もう一度立ち止まって、再考していただきたいと強く思っているところでございます。
 整いませんが、以上とさせていただきます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。時間が過ぎてしまいまして、申し訳ございません。もう少しだけ御一緒させていただければと思います。
 改めて今、お三方おっしゃっていただきまして、ほかの方も御発言になりたい方はたくさんいらっしゃると思うんですけれども、もう一度、私たち、改めてこの間の議論を思い出す中で、8月27日の答申の「おわりに」を読み返す必要があるのではないかと思います。今それを私がするわけではございませんけれども、抜本改革は待ったなしであると。その抜本改革とは何のためにやるのかというと、今も縷々御説明がありましたように、子供たちの未来のためであって、子供たちの未来のないところにこの国の未来がどうしてつくれるのかということを、この間ずっと真摯に議論してきたことが思い出されます。これがぜひとも、伝わらなければ駄目なので、私たちも伝える努力をしっかりと重ねてまいりたいと思っております。
 今日は矢野文部科学審議官、それから望月初等中等教育局長にも御出席いただいております。最後に、矢野文部科学審議官から、お話をいただきたいと思います。

【矢野文部科学審議官】  ありがとうございます。もう既に私ども申し上げたいこと、先生方が全て代弁していただいておりますので、私からは一点だけ、今回、50年ぶりの大改革ということで、産みの苦しみを今、味わっているわけですが、何度も繰り返し申しますとおり、給特法だけに焦点が当たりがちになるのでありますけれども、定数改善、学校指導運営体制の充実と、あと働き方改革、それと処遇の改善、これ三位一体で進めないといけない。それは、今は座長、荒瀬先生からお話があったとおり、時短が決して目的ではなくて、子供たちの将来をどう保障していくんだというところが全てあるわけであります。
 これも貞広先生からさっきありましたけれども、大変残念ながら、学校や教師の役割、その働きに対しての理解がまだ十分得られてないのかな。もっと言うと、それに対するリスペクトが感じられない、そこが我々一番失望しているところでございます。日本の社会を安定的な社会、私は欧米でおりましたので、いかに日本の学校教育が安定した社会をもたらしているかというのを、もうつぶさに非常に実感して感じております。
 その働きが水や空気のように、なかなか見えにくいんだけれども、なくなったら大変なことになるということを、文部科学省としてもしっかりと各方面に働きかけ、説明していきたいと思っております。教師の役割は単に教科指導だけじゃなくて、まさに子供たちの全人格に関わる、将来に関わる役割を果たしているんだということを申し上げたい。機械的に、ここからここまでは仕事で、ここからここまでは仕事じゃないというような割り切りということができない。そういったところを丁寧に御説明申し上げたいと思っております。ぜひ先生方の引き続きの御指導をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、10分ほど延長しましたが、これで終了にしたいと思います。
 次回の予定につきまして、渡邉室長からお願いいたします。

【渡邉教育制度改革室長】  次回の会議につきましては、追って事務局から御連絡させていただきます。

【荒瀬分科会長】  ありがとうございました。
 それでは、終了いたします。御意見おありの方は、ぜひ事務局の方にメール等で御連絡いただければと思います。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

■会議中にチャット機能で頂戴した御意見
 
【吉田信解委員】
 本日は全国市長会の会議があるためこれで失礼いたします。なおこの後給特法をめぐる報道に関するお話もあるかと思いますが、中教審にて現場の改善を考えたうえで打ち出した指針について、なぜ残業手当でなく調整額なのかという、その背景を考慮しないで、単に調整額、給特法をやり玉に挙げる一方的な意見に憤りを感じていることを申し添えておきます。
 
■会議終了後に頂戴した御意見
 
【岩本委員】
1.議題(1)の不登校生徒と、議題(2)のデジタル学習基盤についてです。
 たとえ不登校となっても、学びや社会と切り離されずにつながり続けられるようにしていくこと、それを担任等の「教員」の頑張りや負担に過度に依存するのではなく、「環境」として整備していくことが重要かと思います。
 そのためには、コミュニティ・スクールをはじめ地域学校協働本部やコンソーシアムといった学校と関係機関や地域・社会と連携・協働していく体制の構築とコーディネートする人材の配置をより一層進めていくことが重要かと思います。また、一人一台端末をはじめとしたデジタル基盤が整備されてきていますので、この基盤を活用し、たとえ不登校となっても児童生徒が学びや社会とつながり学習を継続できるようにすること。それを、教員や学校の努力や頑張りに任せるのではなく、市町村に加え、デジタル基盤の活用に関しては特に都道府県や国として、不登校となっても誰一人取り残されず社会的に包摂され学びを継続できる仕組みと体制づくりに取り組む必要があるのではないかと思います。
 いずれにしろ、これからは学校や教育課程が「社会に開かれる」だけではなく、子供が「社会とつながる」教育環境をつくっていくことが肝要かと思います。「社会に開かれた教育課程」の理念は素晴らしいですが、「社会に開かれた」という用語は、子供が主語とならず、教育課程や学校が主語となる受動的な表現ですし、社会に開かれた結果、子供がどうするか、どうなるかは放任、自己責任といったニュアンスに感じられなくもない用語かもしれません。今後は、多様な子供が誰一人取り残されず社会的に包摂されていくこと、学校と地域・社会の連携・協働、そして学びや社会とつながるデジタル学習基盤を踏まえた学びの在り方といったことなどがより一層重要となってきますので、次期学習指導要領の改訂の議論の際には、「社会に開かれた教育課程」の基本的な理念・方向性は維持しつつ、「社会とつながる」(例えば「社会とつながる教育環境」など)といった側面についてご検討いただくと良いのではないかと思います。
 
2.議題(3)今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会の論点整理等について、そのなかの特に「協働的な学び」についてです。
 この論点整理に書かれているように、「主体的・対話的で深い学び」と「個別最適な学びと協働的な学び」等の「学び」に関するコンセプトと用語は関係性を整理するとともに、次期学習指導要領においては、学びに関する用語を複雑化・煩雑化させず統一し、教員はもとより、学びの創り手となる子供が理解し活用できるぐらいシンプルに分かりやすくできれば良いのではないかと思います。
 そのうえで、特に学習指導要領上の位置づけにおいて「協働的な学び」を明確化することが必要だと考えます。令和答申では、「協働的な学び」に関しても定義(「探究的な学習や体験活動などを通じ、子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する」)はなされたものの、学習指導要領上の位置づけは整理されていません。「協働的な学び」こそが、コロナ禍で改めて見直された、学校の本質的な役割である全人的な発達・成長や他者と安全・安心につながるといった役割においても、日本の子供たちの協調的ウェルビーイングの向上といった観点においても、ネットや家庭で個別に学習するだけでなく、学校に来る必要性や重要性を考えるにあたっても、学校の存在意義の中核をなす非常に重要なものだと思います。自分のよさや可能性を認識し、他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら、持続可能な社会の創り手になるために求められる「協働的な学び」の在り方について、次の学習指導要領の改訂に向けて、しっかりと議論し、整理いただくことを切に願っています。
 
3.議題(3)今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会の論点整理等について、そのなかの特に「柔軟な教育課程」についてです。
 小中学校における単位授業時間等の規定の弾力化や柔軟な取り扱いについて言及されていますが、高等学校についてはあまり言及されていないように見えます。高等学校においても、教育課程の柔軟性と学校の裁量、生徒の選択肢の幅をより一層確保し、多様な生徒の多様な学びのニーズにより弾力的に対応できるよう、高等学校における柔軟な教育課程に向けた検討もあわせてお願いできればと思います。
  
【岡本委員】
 議題(1)令和5年度児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
私は高校の校長もしておりますので、生徒の問題行動にも日々向き合いながら過ごす一人でございます。これらの諸課題の解決に向けての根本的な事項の一つに、子どもたちとソーシャルメディアとの関係性を考えることが必要であると思います。
私共の時代には、父親や母親が社会から持ち帰った情報を子どもたちに話して聞かせることにより、子どもは情報を受け取る時代であり、そこに親に対する敬意もあった時代でしたが、現代は子どもが直接情報をとることができ、親や教師の助言が入らず子どもの内側に入り込んでしまう時代です。
当校の問題行動のそのすべての発端、そしてその過程がソーシャルメディアによるものであり、教員も生徒を守ることが難しい状況にあります。オーストラリア政府が16歳未満のソーシャルメディア利用を禁じる法案を提出する予定であることや、アメリカ、フランス、スウェーデンにおいても利用を禁止または制限をかけている現実があることからもわかるように、子どもたちにとってソーシャルメディアの存在は、決してよいとは言えない状況にあります。私たち大人は、子どもの健やかな成長のために、この問題を考えていくべきではないかと思います。
 
議題(3)今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会の論点整理等について
 幼児教育の重要性については、世界各国がそれを認め、様々な施策に反映しており、日本においても、こどもがまんなかの意識が高まり、子どもの権利や健やかな成長などに関し、こども基本法において整備がなされているところですが、幼児教育の振興に関しての法令などの整備にまで至ってはおりません。資料3-4の22ページの記載のとおり、国として幼児教育の振興のための法令などに明確に位置付けることの必要性を感じております。全体園児の8割を私学が受け入れておりますので、私共も研究研修を通して幼児教育の質向上のために努力してはおりますが、法の整備により、さらなる幼児教育の振興に期待するものです。
 
【澤田委員】
 資料3-1、3-2論点まとめについて、大きく頷きながら拝見しました。希望を感じましたし、学校現場や保護者がこれを知れば、いますぐにでも活力になると思いました。
その上で、今後の議論に加えていただきたい論点についてお伝えします。
子どもたちの不登校や教員の休職の状況を見ても、実際の毎日の学校での安心感には切実な現状があります。実際に全国の学校を回ったり保護者と話したりすると、子どもたちの学校生活の土台であるはずの安心感が後回しになっていないかなと気になることがよくあります。
教員を辞めた人たちと話すと少なからず出てくる意見として、「教員当時は自覚していなかったけれど、当時は笑顔も忘れて、成長ばかりに注力して、まずはその子らしさを受け入れるという当たり前のことを後回しにしていたと思う。」というのがあります。「異常なまでの責任感と真面目さ」だったと表現した元先生もいました。
こうしたことを聞くにつけ、見るにつけ、一見問題なさそうに学校に行っていて休みがちでもないけれども、本人も無自覚に、心に麻酔を打ちながら学校に行っているようなことが、子どもにも教員にも起きていないかを危惧しています。
 ここで言う安心感とは、子どもたちが活躍できる機会を作ることや、トラブルが起きたから対応するという目に見えやすくわかりやすいことではなく、もっと手前のことであり、特別な事情がある子についてだけのことでもありません。
 まず、すべての子どもたちの日常的な安心が決して損なわれることがないようにすることです。これは基本的人権にも関わる最重要事項だと考えます。
つまり、本来なら学校や教員に求められて称賛されるべき「真面目さ」、「頑張らせること」、「量の充実」という良さも、バランスを欠いて行き過ぎれば人を追いつめるものになり逆効果ですし、絶対的に正しい価値観だと思うことは危険です。
 不登校や休職の増加の現状を見ても、そうしたアンバランスを防ぐような、「緩めることの良さ」や、「少ないことの豊かさ」という視点が、今の多くの学校に足りていないと思われます。
 こうした新しい視点も、学校にとってわかりやすく明示して、学校現場や各教室で柔軟にバランスを取りやすくすることも論点に加えることが必要だと考えます。
 現行の学習指導要領を見ると、「児童の負担過重となることのないようにしなければならない。」といった表現が、子どもの安心を守るための表現に近いかと思いました。
 ただ、これは指導を上乗せする際に関してのものが主でしたので、それだけではない日常的な通常の学校生活での安心感に配慮することについても踏み込んだ考え方も検討していただきたいと思いました。
 次に、部活動についてです。教育課程外であり、今回の資料には部活動についての言及はなかったのでずれてしまうかもしれませんが、発言の機会が今後いつあるのかわからなかったのでご容赦ください。
 学習指導要領が、将来の学校教育や社会の在りようを指し示すものであることや改定の頻度も踏まえると、「部活動」という言葉を残すこと自体を検討していくべきだと思っています。
 すでに地域によっては「部活動は完全に学校からなくなります」と宣言して期限を決めて具体的に動いていることを踏まえると、そうした動きはこれから全国で増えるでしょうし、次期学習指導要領に「部活動」があれば、その時点での現状と合わなくなっていると考えます。
 
【白井委員】
 今般、学校教育法施行規則が改正され、不登校児童生徒について成績評価を行うにあたっては、学校の判断で不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を考慮することができることが法令上明確化されました。これは、不登校児童生徒の中には、学校外の機関や自宅等において相談・指導を受け、社会的な自立に向けて懸命の努力を続けている者がおり、このような児童生徒の努力を学校として評価し、支援することは重要であり、自立を支援する上で意義が大きいためです。
 こうした省令改正の趣旨を踏まえると、経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対する必要な援助である就学援助制度の対象にフリースクール等の民間施設における学習も加えることで、経済的背景に関わらずに不登校児童生徒の自立支援を達成することを担保することが適当であると考えます。
 さらに、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」の基本理念として第3条第2項に「不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること」と示されていること、および「子どもの権利条約」第28条第1項aにおいて「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」という趣旨に鑑みても義務教育段階における不登校児童生徒の経済的支援は国の責務であると考えられます。
 以上の理由により、今般の省令改正を受けて、就学援助制度の対象範囲についても適切に見直すべきであると考えます。
 
【宮原委員】
 時間の制限もあり、特に議題4、財政審に対する考え方について、下記、意見を申し述べます。ご査収いただけると幸いです。
1)教員への適切な報酬を鑑み、今回、文科省がご提案された調整額増額の方針には賛同しています
2)文科省で議論されている論点に加え、多くの自治体において、教員を目指す若い世代にとって、魅力的な職場、職種にしてくことが重要であるという点を追加いただきたく思います。
● 現実論として、定数ぎりぎりの倍率の教員採用の状況であること、また、教員のメンタルによる休職などの増加それに伴う負担増、離職者も増加傾向であると認識。
● 一般企業に比べて、働き方、報酬、働き甲斐、教員への物的・精神的支援体制など、総合的に、多くの若い世代が、教員という職種に対する魅力を感じていないのではないかと危惧
● 次の世代を担う子供たちの教育ということを考えると、教員の質の向上、確保は非常に重要
3)一方、働き方については引き続き継続的に見直し、特に校務 DX などの活用もさらに強力に推進し、学校現場の意識変革も求めていく必要があると、合わせて申し添えます。
 

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