令和7年2月12日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省
※対面・WEB会議の併用(傍聴はWEB上のみ)
五十嵐委員、石井委員、植阪委員、梅嶋委員、緒方委員、神野委員、高橋委員、中島委員、中野委員、奈須委員、西端委員、平井委員、藤村委員、堀田委員、森田委員、横尾委員(50音順)
望月初等中等教育局長、日向大臣官房学習基盤審議官、寺島学校情報基盤・教材課長/学校デジタル化PTリーダー、神谷GIGAスクール基盤チームリーダー、黄地教科書課長、木村教育DX推進室長、相原学力調査室長、渡辺学校デジタル化PTサブリーダー
中央教育審議会 初等中等教育分科会
デジタル学習基盤特別委員会(第6回)
令和7年2月12日
【堀田委員長】 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会の第6回を開催いたします。本日も御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日の会議開催方式及び資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【渡辺学校デジタル化PTサブリーダー】 本会議は、前回までと同様、対面とオンラインのハイブリッド方式にて開催させていただきます。
つきましては、ウェブ会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含めまして、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
御不便をおかけすることもあると存じますが、何とぞ御理解のほどよろしくお願いいたします。
次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、議事次第にございますとおり資料1から資料3まで、参考資料が1から7までとなっております。御不明な点等がございましたら申しつけください。
以上でございます。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
それでは議題に入ります。本日は議題が3つございまして、議題1として、デジタル教科書推進ワーキンググループにおける論点整理について、議題2として、GIGAスクール構想に係る最近の動向について、議題3として、その他となっております。
なお、本日は報道関係者と一般の方向けに、本会議の模様をZOOMウェビナーにて配信しておりますので、御承知おきください。
それでは、本日の議題に入ります。まず議題1でございますが、これはこの特別委員会の下に置かれておりますデジタル教科書推進ワーキンググループにおける議論の論点整理についてでございます。検討状況の御報告となりますが、事務局より資料の御説明をお願いいたします。
【黄地教科書課長】 教科書課でございます。資料1に基づきまして御説明申し上げます。
資料1は、1月21日に開催されましたデジタル教科書推進ワーキンググループで事務局より配付させていただいた資料の一部でございます。これまで5回御議論をいただいておりまして、次回2月14日のワーキングで中間的な取りまとめをすることになりましたので、論点を整理していただくために用意した資料でございます。
2ページを御覧ください。今後のスケジュール感の見通しでございます。あくまで仮定の見通しでございますが、このワーキングの開催趣旨といたしまして、GIGAスクール第2期の構想とともに、新しい学習指導要領を見据えた形で、それに対応するデジタル教科書の在り方を御議論いただくということでございます。新しい学習指導要領が始まる際にはそれに対応した新しい教科書が配付されるようにすべきという前提に立ってスケジュール感をまとめたものでございます。下の欄にございますように、仮に2030年度に新しい学習指導要領がスタートするとすれば、このときに新しい教科書の使用開始がなされるようにスケジュール感を組むよう逆算しますと、採択、検定、著作・編集、様々な作業がございますし、また御議論の内容によりましては制度改正も必要になりますので、その辺りをまとめたものでございます。
次に、3ページを御覧いただければと思いますが、新しい教科書の在り方を御議論いただくためには、新たな学びの姿を前提に御議論いただくということで、3ページから8ページにかけてこれまでの各会議の答申や報告あるいは論点整理などをつけさせていただいているものでございます。
特に、直近の動きといたしましては、7ページにございますように、昨年12月に諮問がなされました新しい学習指導要領の在り方についての概要でございますが、こちらの中でも、例えば7ページ丸3にございますように、デジタル学習基盤の効果的な活用ということも含めて御審議いただくことになっております。こうした内容も見据えまして、デジタル教科書の在り方についても御議論いただくということになっております。
9ページは、デジタル教科書の活用のイメージを簡単にまとめたものでございます。こちらは、令和5年2月の会議で配付させていただいた資料でございます。デジタル教科書は、学校で使用していただく質が担保された主たる教材でございますが、デジタルという特性を生かしまして、様々なデジタル教材あるいは学習支援ソフトウェアと連携が図られることによって、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ることが期待されているところでございます。
次に、10ページを御覧いただければと思います。既にデジタル教科書につきましては、英語、算数・数学を中心に国からも配付させていただいておりますが、そうした中で様々な効果が上がってきております。左の欄にございますように、例えば「いつも使う」子供たちは、授業内容がよく分かる、自分で考え、自分で取り組んでいるといった学びの姿の変容ですとか、学習上の困難の低減、あるいはデジタル教科書の様々な使いやすさなどの声が上がってきております。こうした中で学びの姿が変容して、実際に右の欄にございますように学習効果も出ております。例えば、各学力調査において向上した例などをここでは掲げさせていただいているところでございます。
こうした効果を踏まえまして、今後どうあるべきかということで、次の11ページを御覧いただければと思います。特に、前回のワーキングでは、この11ページの内容について様々な御意見を頂戴したところでございます。特に、紙の教科書との関係性が大きな検討課題になっているところでございますが、左の欄にございますように、検討の視点として、まずは新たな学びの実現に向けては、関係者の創意工夫や主体性が最大限生み出せるような環境の実現が極めて重要ではないか。そのためにも、納得や共感を得ながら、社会状況の急速な変化や様々な教育ニーズに適時・適切に対応していくための制度設計はどうあるべきか。さらには、教科書である以上は、義務教育の教科書の無償や質の保証といった大原則は堅持すべきでないか。さらには、紙、デジタル、リアルそれぞれの利点が指摘されている中で、二項対立の議論に陥ることなく、望ましい学習環境はどうあるべきか。さらには、現場によってはデジタルのみ、紙のみを使用するところがあって、どちらか選べるようにしてほしいという意見もこれまでのワーキングでいただいたところでございますが、そうした声にどう応えていくか。さらには、教科書全体の問題といたしまして、ページ数、QRコードともに大幅に増大して現場への負担も指摘される中でどう対応すべきか。さらに、これにも関連しますが、QRコード先のコンテンツの位置づけを整理すべきでないかという問題意識の下、右側にございますように、各論点について御議論いただいたところでございます。
1点目が、デジタル教科書を現行の「教科書代替教材」の取扱いから、検定・採択・無償給与などの対象となる教科書として扱うべきか否か。その際、ハイブリッドな形態の教科書も認めるべきか否か。教科書と教材の線引きを改めて明確にすべきでないか。さらには、丸3全体の分量の精選を図るべきでないか。丸4として、全国一律の対応とすべきか、それとも選択肢の拡大によって採択権者の主体的な対応にすべきでないか。丸5でございますが、対象となる学年や教科などを法令で規定すべきか、それとも柔軟に実態に応じて運用できるようにすべきか。さらには、推進方策やスケジュール感をどのようにするかといった内容が論点として御議論いただいたところでございます。特に丸1につきましては、教科書として取り扱うべき、あるいはハイブリッドな形態の教科書も認めるべきという御意見を多くいただいたところでございます。また、丸4で申し上げますと、全国一律の対応ではなく、現場によって状況が様々な中で、主体的に選択できるような環境のほうがいいのではないかという御議論が多かったところでございます。
12ページ以降は、この11ページのさらなる補足的な内容を記載させていただいておりますので、また後ほど御覧いただければと思います。
最後に、21ページでございますが、また中間の取りまとめ以降もさらに検討が必要となる論点につきましては、当面の間の推進方策をどうしていくべきか、さらには検定、採択、発行・供給、著作権の在り方、また教科用特定図書等との関係をどうすべきかについても、さらに御審議いただければと考えているところでございます。
説明は以上でございます。
【堀田委員長】 ありがとうございます。
私はこのワーキングの座長もやっておりまして、2ページの下側が現在の動きなわけですけれども、2030年になったら恐らく新しい学習指導要領がスタートすると想定され、この学習指導要領がどうあるべきかというのは、現在、教育課程の関連の検討会でいろいろ検討されているというところです。ですので、そちらの検討の状況に合わせながら教科書の在り方を検討していく必要があるということになります。それまでの間を当面の間という言い方をしているわけですけれども、これは現行の学習指導要領の下にありますので、現在の様々な法令定義の中で動いていると。ここをどうやって充実させるかということと、新しい在り方がどうなるべきかということをうまく接続させていくためには、今のうちからこういうことを論点として挙げておき、議論を進めておくべきではないかということになります。ですから、現段階では何かが決まっているわけではありませんけれども、今後決めるべきこと、改善すべきことについて検討しているという状況でございます。
この議題は報告でございまして、この後の議題2も報告ですので、その後に委員の皆様からは御質問等をいただこうと思います。また、議題3で各委員からお一人お一人、それぞれの御専門の立場からお話をいただきますので、そこに御質問等を含めていただくことも可能でございます。
それでは早速ですが、議題2に参りたいと思います。議題2は、GIGAスクール構想に係る最近の動向についての御報告でございます。事務局、よろしくお願いいたします。
【寺島学校情報基盤・教材課長/学校デジタル化PTリーダー】 ありがとうございます。学校情報基盤・教材課長の寺島でございます。前回の本特別委員会の開催から今日まで幾つか、デジタル学習基盤に関連して、幾つか進捗がございましたので、まとめて説明させていただきます。
最初に私からは3点、生成AIのガイドラインのこと、校務DXチェックリスト、それから学校のICT環境整備3か年計画、この3点についてまず私から御説明させていただきます。
まず、資料2-1でございますけれども、初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)ということでございます。生成AIの利活用に関するガイドラインにつきましては、2023年7月に暫定的なガイドラインということで策定したものがございました。それから1年以上がたちまして様々技術の進捗も見られているところでございますので、このたび有識者会議を立ち上げまして様々御議論いただいた結果、昨年の12月にこの暫定的なガイドラインを改訂する形で新しいガイドラインを策定したということでございます。
この資料の上の箱に書いてございますように、この新しいガイドラインは、教職員や教育委員会等の学校教育関係者を主たる読み手といたしまして、学校現場における生成AIの適切な利活用を実現するための参考資料となるように、生成AIの概要あるいは基本的な考え方、そして場面や主体ごとに押さえておくべきポイントをまとめたといった性格の資料でございます。
この概要は1、2、3と3章構成になっておりますけれども、1は生成AIについて、基本的な生成AIの概要をまとめたものでございます。そして左下に基本的な考え方ということでございますけれども、基本的な考え方としては、そこにありますように、一つは人間中心の利活用という考え方、そして情報活用能力の育成強化と、この2つの柱で基本的な考え方をまとめております。
1つ目の人間中心の利活用について、その丸の1つ目でありますが、生成AIを有用な道具になり得るものと捉え、出力を参考の一つとして、リスクや懸念を踏まえた上で、最終的には人間が判断し、責任を持つことが重要であるということを述べております。そして丸の2つ目、学習指導要領に定める資質・能力の育成に寄与するかどうか、また教育活動の目的を達成する観点から効果的であるかどうか、これをしっかりと吟味した上で利活用することが重要であるということ、そして、この利活用に当たっては、まさに学びの専門職としての教師の役割が一層重要であるということ、こういった基本的な考え方を示しております。
そして、基本的な考え方の2つ目の柱、情報活用能力の育成強化ということでありますけれども、この2つ目の丸にございますように、生成AIが社会生活に組み込まれていくことを念頭に、情報モラルを含む情報活用能力の育成が一層重要であるということを基本的な考え方で述べております。
そして右のほうに行きまして、3番目、学校現場において押さえておくべきポイントということでありますけれども、これは冒頭申し上げましたように、それぞれの主体や場面に応じて、こういったことを押さえておくべきではないかといった構成になっております。そして1つ目のところが、教職員が校務で利活用する場面ということでございますけれども、3つ目の丸を御覧いただきますと、教職員が校務で利活用する場面では、生成AIの仕組みや特徴を理解した上で、生成された内容の適切性を判断できる範囲内で積極的に利活用することは有用であるということでございます。前回の暫定的なガイドラインでも、校務で利用することは有用であるということは述べていたわけでありますけれども、今回のガイドラインでは、ここをより明確に、校務で使う場合には非常に有用であるということを述べているところは少し特徴的だろうと思います。
そして2つ目が、児童生徒が学習活動で利活用する場面でありますけれども、1つ目の丸にございますように、発達の段階や情報活用能力の育成状況に留意しつつ、リスクや懸念に対策を講じた上で利活用を検討すべきであり、その際、学習指導要領に定める資質・能力の育成に寄与するか、教育活動の目的を達成する観点から効果的であるかを吟味することが必要である。こういったことを吟味した上で適切に利活用をするべきであるということを述べております。
そして3つ目、教育委員会等が押さえておくべきポイントということでありますけれども、1つ目の丸にありますように、教育委員会が主導して制度設計や方向を示すことが重要であるということ、そして2つ目の丸にございますように、各学校の実態を十分に踏まえた柔軟な対応を講じることが必要であり、一律に禁止・義務づけるなどの硬直的な運用は望ましくないことを述べております。そして、3つ目の丸として、教育委員会は適切な利活用を推進する環境を整備することが必要であるということを述べております。
そして、この資料の一番下に参考資料編ということが書いてありますけれども、このガイドラインには参考資料として、各場面や主体に応じたチェックリスト、現在取り組んでいる生成AIパイロット校における先行取組事例、あるいは学校現場において活用可能な研修教材といったものもできる限り盛り込んでおります。こういったことを参考にしていただきながら、各学校、各教育委員会で適切に利活用が進むことを期待しているところでございます。
続きまして資料2-2でございます。資料2-2は、GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリストに基づく自己点検の結果でございます。
この上の箱を御覧いただきますと、昨年度令和5年度に、校務DXを推進する際に取り組むことが望ましい項目を整理いたしまして、それをGIGAスクール構想の下での校務DXチェックリストということでまとめました。そして、昨年度、このチェックリストに基づいて、各公立小中学校及び教育委員会に自己点検を依頼して、その結果を昨年の3月に公表したところでございます。今般、昨年度の自己点検から約1年が経過いたしましたので、このチェックリストに基づく取組状況のフォローアップを実施し、速報値を公表したというのが昨年の12月でございます。
今回の自己点検結果のポイントということでございますけれども、1番にございますように、昨年度からの進捗ということで申し上げますと、このチェックリストは全体として三十数項目ありますけれども、全体として進捗が見られているということが言えることでございますけれども、ここに書いてある項目が特に進捗しているところでございます。
具体的に申し上げますと、4ページ目に飛んでいただきまして、4ページ目、特に取組が進んだ項目の上位を挙げております。例えば、左上の1のところにございますように、児童生徒の欠席・遅刻・早退連絡といったものをクラウドサービスを用いてやっているといった取組でありますけれども、昨年度から見ますと17ポイント増加し、全体としても75%以上の学校でこういった取組が進んできているということでございます。
それから、その下、2でありますけれども、学校から保護者へ発信するお便り・配布物といったものをクラウドサービスを用いて一斉配信していますかという項目についても、昨年度より16ポイント増加し、半分近くの学校でこういった取組が進んできているということでございます。
以下、3、4、5、6と、昨年度に比べて特に進捗が大きかった項目をここに掲載しております。
資料の1ページに戻っていただきまして、この下の2のところに書いてございますけれども、今申し上げましたように、全体として進捗は進んでおりますし、特に大きく取組が進んだ項目もございますけれども、一方で、これは昨年度も見られたことでありますけれども、この取組の進捗状況については、学校間や学校設置者間、教育委員会の間で非常に大きな差が存在しているということも今回明らかになっているところでございます。
資料の2ページを御覧いただきまして、今回は、昨年度にはありませんでしたが、今年度初めての取組といたしまして、こういった項目に取り組んだ学校あるいは教育委員会に対して、こういうことに取り組んだことで効果がありましたかということを今回初めて聞いております。これも資料の6ページ、7ページに少しグラフ化をしております。6ページ目は、こういった項目に対して取り組んだ学校が、非常に効果があると、「とてもそう思う」という割合が高い項目を上から順に並べたものでございます。
例えば丸1のところでございますけれども、児童生徒の欠席・遅刻・早退連絡、これは取組が進んだ項目でも挙げられていた項目でありますが、こういった項目については、効果がある、「とてもそう思う」と答えた学校が52.4%、「そう思う」というところまで含めますと、97.7%の学校では非常に効果があると答えております。
同じように、丸2、丸3、保護者への調査・アンケート等をクラウドを用いてやった、あるいは保護者から学校への提出資料をクラウドを用いて行った、こういった項目についても非常に多くの学校で「とてもそう思う」と、効果があったと答えているということでございます。
それから7ページ目でありますが、実際に取り組んだ学校はそう多くはないけれども、取り組んだ学校は非常に効果があると思ったといった取組の例でございます。例えば丸1番は、保護者から学校への提出資料をクラウドサービスを用いて受け付けているか。これは、その右の円グラフのところに、取り組んだ学校は実に13.5%しかないわけでありますけれども、13.5%の学校に効果を聞いてみると、「とてもそう思う」というのが48.2%、そして「そう思う」が50%ですので、これに取り組んだ学校は、98.2%の学校で効果があったと答えているということでございます。したがいまして、今13.5%しか取り組んでいませんので、残りの86.5%の学校ではまだまだ取り組む余地があるということだろうと思いますし、86.5%の学校で取り組んでみれば、こういった効果は期待されるであろうということであります。先ほど申し上げた学校あるいは教育委員会の間で少し取組に差があるということでございましたけれども、例えばこういった項目を参考にして実際に先行的に取り組んだ事例がございますので、こういった項目から取り組んでいくことが校務DXの進捗に効果があるのではないかということでございます。
そして、戻りまして3ページですけれども、今申し上げたことも含めまして、私どもはこの結果を通知の形で各教育委員会にお示ししましたけれども、1番に書いてありますように、このチェックリストの項目のほとんどは、標準的なGIGAスクールの環境でできるものでございます。何か新しいシステムを導入する、非常にお金をかけて何かを導入するということではなくて、標準的な環境で実現できることでありますし、実際に取り組んだ学校、そして実際に効果があると言っている学校もたくさんありますので、まずはこういったところから取組を進めるということが重要ではないかと考えております。
そして2番目でありますけれども、今回このチェックリストで、学校に対して取組が進まない理由を聞いた項目もございます。その多くは「検討する時間がない」ということでした。そういった教育委員会に対しては、先ほどのような、まだ取組が少ないけれども効果があるという取組から進めてほしいと思いますし、それからもう一つ、学校現場から進まない理由として挙げられていたのが、「教育委員会において適切にルールが整備されていない」あるいは「ルールによって禁止されている」という回答も多くございました。2の「また」以下にございますけれども、そういったルールは必要に応じて見直しをしてもらう、そして不必要に禁止していることがあれば、これは改めて見直しをしてもらう必要があるのではないかといったことを2ポツで述べております。
それから最後、3ポツのところでありますけれども、こういった今すぐ足下からできる校務DXと併せて次世代校務DX環境の整備にも取り組んでいきたいと思います。令和6年度の補正予算でも計上しておりますけれども、次世代型の校務DX環境の整備も併せて進めていきたいと思いますし、そのためには教育情報セキュリティポリシーをしっかりと策定しなければいけない。まだ教育情報セキュリティポリシーを策定していないという教育委員会もございますので、このセキュリティポリシーの策定あるいは改定を促していきたいと思っております。
2-2は以上でございます。
続いて3点目、資料2-3をお願いいたします。資料2-3は、学校のICT環境整備3か年計画でございます。学校のICT環境整備に必要な費用、例えば大型提示装置でありますとか、毎月のインターネットの接続費でありますとか、あるいはセキュリティソフトの費用といったもの、学校のICT環境整備に必要な費用については、標準的に整備されるべき学校のICT環境を想定いたしまして、各自治体でその整備がなされるように、複数年の計画を立てて地方財政措置を講じてきたところでございます。これは現在も計画を立てているわけでありますけれども、現行計画というものが令和6年度末、今年度末に期限を迎えるということがございますので、令和7年度以降にどういった計画が適切であろうかということについて、この特別委員会の下にワーキンググループを設けまして、ワーキンググループで令和7年度以降の計画について御議論いただいたところであります。そのワーキンググループでの取りまとめも踏まえまして、今般、令和7年度から令和9年度までの3か年の計画として新たに計画を立てました。この資料の真ん中辺りにございますように、単年度で1,464億円の事業費を想定いたしまして、その所要の地方財政措置を講じることといたしております。
その内容については、この真ん中のところに書いてあるとおりでありますけれども、特に今回の計画で重点的に盛り込んだ部分を御説明いたしますと、1つ目の四角にある学校のネットワークでありますけれども、1つ目のポツにありますように、「当面の推奨帯域」を満たすために必要なネットワークを100%確保しようということで、これに必要となる通信費は今回の計画で重点的に盛り込んだところでございます。
それから四角の3つ目、教師の端末等というところでありますけれども、このポツが3つあります2つ目、業務用ディスプレイについて、これは職員室で先生方はノートパソコンで今は作業されておりますけれども、そのノートパソコンの画面を大きく映す業務用のディスプレイということでありますが、これは今までの計画では積算しておりませんでしたけれども、今回新たに業務用ディスプレイを1人1台整備できるようにこの計画に盛り込んでおります。
それから一番下のほうに「上記のほか」というところで少し小さな字で書いてあるところでありますけれども、充電装置は、今までは充電保管庫のみを積算しておりましたが、モバイルバッテリについても新たに積算しております。それからその隣、児童生徒用の端末のセキュリティソフト、これも1人に1つセキュリティソフトが入るように積算いたしております。それからその右、学習者支援ツール、これもこれまでは盛り込まれていませんでしたけれども、その小さい字の米印のところに例えばというところで書いてありますが、教師と児童生徒間あるいは児童生徒同士で資料の共有ができるような学習者支援ツール、あるいはその隣にございますように、児童生徒の心や体調の変化を発見するといったツール、これは各学校現場で使われておりますけれども、こういったものについても措置ができるようにこの計画に盛り込んだところでございます。
資料2-1から2-3までの説明は以上でございます。
【堀田委員長】 続いて資料2-4、学力調査室長、お願いします。
【相原学力調査室長】 それでは資料2-4をお願いいたします。全国学力・学習状況調査のCBT化に向けた工程を昨年9月に御説明しましたけれども、本日はそれに続きまして、本年4月の令和7年度調査に向けた準備状況として、4点御報告をしたいと思います。
まず2ページ目でございます。事前の予定と準備ということになりますが、令和7年度の調査では、児童生徒質問、学校質問と中学校の理科の調査をCBT・オンライン方式で実施することとしております。特に、文部科学省のCBTシステムMEXCBTで行います中学校の生徒質問と理科につきましては、4月14日から17日の間に文部科学省が指定する日に分散して実施することとしております。
また、一番下の四角の欄になりますけれども、調査当日に実施できなかった児童生徒の後日の実施につきまして、令和7年度調査では、CBT・オンライン方式の利点を生かして、中学校理科、それから児童生徒質問について、自宅、教育支援センターなど学校外での実施も可能であることを実施要領上明確化いたしました。
3ページをお願いします。次に、サンプル問題を活用した事前検証です。
令和7年度調査のCBT導入に際しまして、生徒や教師が円滑に調査を実施できるように、サンプル問題を昨年10月に、また拡大文字などの配慮版を先月公開いたしました。特に中学校には、学校のネットワークや端末の確認、MEXCBTを使用するための準備と併せまして、このサンプル問題を用いた事前検証を本年1月から3月の間に実施していただくということで、まさに今その最中ということでございます。
次に、4ページにサンプル問題の一例を御紹介しております。例えば、問題の丸5では、ルーペを用いた観察方法という動画を4種類閲覧して、その動画の方法のどれが適切かというものを選択する問題、あるいは問題の丸9ですけれども、水を加熱する実験で、沸騰が始まったグラフ上の適切な場所をクリックするという問題、このようなCBTならではの問題を用意して公開しているところでございます。
5ページをお願いします。3点目は、自動採点の活用です。CBTの導入教科では、答案が機械可読データということになってまいります。令和7年度の調査から早速、解答が一意に定まる選択式等はもとより、短答式、記述式等の問題の一部にも、この品質を担保しながら、採点工程の一部に自動採点を活用して、採点期間の短縮を図ってまいります。また、その短縮期間を生かして新たにIRTスコアの分析を行ってまいりたいと考えております。
6ページをお願いします。4点目は、質問調査の改善です。生徒質問について、令和7年度調査「中学校理科」をCBTで実施することを受けまして、質問調査の一部にもこの利点を生かしたランダム方式を試行するということで検討しております。質問調査の中で、同じカテゴリーの項目群のうち一部のみをランダムに質問するということで、全体の質問項目数を維持しつつも、より多くの質問の項目についての調査が可能となります。どの項目をランダムとするか、悉皆とするかにつきましては、中ほどのイメージにございますが、全体の傾向を把握する項目はランダム方式、一人一人に還元し、指導に生かしていくための項目は引き続き悉皆で実施していくという方針で考えております。なお、令和7年度はランダム方式の項目数は3、4項目程度ということでの導入を考えております。
令和7年度から全国学力・学習状況調査にCBTが導入されてまいりますが、来月にも地方向けの説明会を臨時に開催するなどによりまして、着実に4月に向けた準備を進めてまいりたいと思います。
説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
【堀田委員長】 ありがとうございました。いよいよ始まるという段階にあります。
それでは、資料2-5、2-6につきまして、お願いいたします。
【木村教育DX推進室長】 教育DX推進室長の木村と申します。まず、資料2-5に基づきまして説明させていただきます。こちらは昨年12月24日に公表したものとなっておりまして、詳細は参考資料6にございますが、資料2-5の概要で説明させていただきます。
教育データの利活用は様々なメリットがありますが、一方で個人情報保護等の観点から安全・安心との両立をしっかり図っていくことが重要です。文部科学省では、令和4年度末に教育データ利活用に係る留意事項第1版を、そして昨年度末に第2版を公表しまして、周知徹底を図ってまいりました。そうした中で、資料上部に調査の概要がございますが、各教育委員会において、個人情報保護法の遵守など、個人情報の取扱いについて、改めて点検していただくとともに、実態把握を目的としまして、全ての教育委員会を対象に、教育データの利活用に当たり対応が必要な項目等について対応状況を伺う調査を実施させていただきました。
資料の中段ですが、主な結果としまして、まず丸1で、取得している個人情報の利用目的の特定について、89%の教育委員会では特定していますけれども、11%の教育委員会では「まだできていない」という回答でした。
丸2につきまして、本人等への利用目的の明示について、74%が保護者のみ、児童生徒のみ、あるいは相互に明示いただいていますけれども、26%は「明示していない」という回答でした。
丸3につきまして、不要となった個人情報について、96%程度は消去いただいておりますけれども、5%ほどが「消去できていない」または「管理していない」という回答でした。
丸4、こちらは、学校教育において学習用ソフトウェア等を導入する際に、個人情報の取得・管理について、法的にどのように整理しているかということについて、「必要な個人情報を取得・管理するのは教育委員会・学校であると整理している」という回答が76%、「必要な個人情報を取得・管理するのは提供事業者であると整理している」という回答が1%、「検討したことがない、分からない」という回答が23%となっています。
行政機関等が所掌事務の遂行のために、児童生徒が一律に参加する授業などでデジタル教材等を活用することで取得する児童生徒の個人情報については、しっかりと民間事業者での取扱いも含めまして行政機関で取り扱うことが前提となります。この前提を踏まえますと、こちらの対応状況のポイントのところの2行目にも書いておりますけれども、必要な個人情報については、教育委員会・学校で取得管理をして、行政機関から民間事業者に委託することが一般であると考えられて、望ましいと考えております。
次に、丸5に戻りますけれども、個人情報の取扱いを外部に委託した場合や提供した場合に、委託先や提供先での取扱いを適切に管理しているかどうかという問いについて、82%は「管理している」、18%は「できていない」という回答でした。
次に丸6、7について、開示請求等が来た際の対応手順や漏えい等のインシデント発生時の手順の整備について、70%が「できている」、30%が「できていない」という回答でした。
この下の対応状況・今後の予定のところにございますが、特に利用目的の特定や明示などは個人情報保護法で求められており、実施しないことは法令違反になってしまいますので、改めて気をつけていただく必要がございます。こちらに書いておりますように、文部科学省としても、多様な取組により周知徹底を図ってまいるところでございます。
資料2-5の説明は以上です。
続きまして、資料2-6の説明をさせていただきます。こちらは、堀田先生に座長を務めていただいている効果的な教育データの利活用に関する有識者会議の本年度の議論をまとめたものです。
資料2-6及び参考資料7は、1月31日の本有識者会議の資料ですが、会議での御意見等の反映については現在堀田座長一任となっているところですので、これらの資料は今のところ案でありまして、今後変わり得るということに御留意いただければと思います。
まず、上の1ポツのところですけれども、教育データ利活用に関する基本的な考え方ですが、誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出すという大目的のために、教育データの利活用を進めることが重要とし、その下の記載のように、学校に求められるニーズや期待の多様化が進み、1人1台端末の整備により子供の学習や教師の指導にも影響がある中、デジタルとアナログそれぞれの強みを生かしていくことが重要としています。
次に、2ポツ、データ利活用に当たって必要となるシステム構成や機能等とその選択についてのところです。教育データ利活用のメリットや役割が最大限発揮されるためには、自治体等がそれぞれの実態やニーズに応じ、主体的に学習リソース等を選択し、活用していくことが重要としています。現在の状況として、全国学力・学習状況調査参加自治体等は、同調査で活用予定のMEXCBT、そのアクセス機能を有する学習eポータルが必要となっており、今後としては、MEXCBTや学習eポータルの基本的な位置づけは維持、引き続き、各自治体等がニーズに合わせて、必要なシステム構成や機能等について選択できることが重要としています。
次に、3ポツでございます。効果的で持続可能なデータ利活用に向けた取組について、学習リソースとの連携のハブ的機能を有する民間学習eポータルの対応によっては、自治体等の選択の幅を狭めるおそれがあるとの指摘を受けまして、今後、自治体等の選択を支えられるよう、技術・運用の両面で対応が必要としています。技術的な視点、運用的な視点のこちらで実施する内容などは、点線の中の部分を御覧ください。
4ポツ、自治体・民間企業・国それぞれが果たすべき役割・終わりにのところでございます。自治体の役割として、地域の実態やニーズを踏まえた優先順位付けを含めた適切な選択、必要なシステム構成や機能等の選択・整備など、民間企業の役割として、現場の実態やニーズを踏まえた新たなシステムや機能等の開発等、製品やサービスの特徴や標準に適合していることの見える化など、国の役割として、自治体等の主体的な選択の支援、標準・指針等の策定・更新、適合性評価の仕組みなど標準を満たしていることの見える化に向けた取組などとしています。
右下のところ、今後の展望として、優良事例を共有しつつ、中長期的な観点からの将来像の検討が必要としています。また、短期的な対応が求められる課題については、可能な限り早期の取組の具体化が必要としています。
さらに、その下でございますが、主体・データの真正性確保のための認証基盤の在り方について、デジタル庁など関係省庁が連携して検討を進めることが望ましいとしています。その中で、識別子の必要性についても委員から御意見がありましたけれども、そちらの認証基盤の検討を見据える必要があり、教育の質的向上の観点や自治体等の負担等も踏まえ、関係者の理解を得ながら検討すべきとしております。
私からの説明は以上です。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
それでは、御質問等がありましたら挙手いただければと思います。挙手は挙手ボタンでお願いしたいと思います。御意見につきましては、先ほども申し上げましたように、この後の議題3で全ての委員の方々に御意見を賜りますので、ここでは御質問と事実確認等をお願いできればと思いますが、何か御質問等がある方、いらっしゃいますようでしたらお願いいたします。
横尾委員、お願いします。
【横尾委員】 今、説明があったページですけれども、最後のページの下の方なのですが、自治体・民間企業・国それぞれが果たすべき役割ですが、この上から3つ、自治体のところの3つ目に、※マークで「基礎自治体が中心。都道府県には広域のリーダーシップを期待」となっています。これは今やっている方法とほとんど変わらないのではないかと思います。これだと、都道府県はどこまで真剣にやるかというところでちょっと疑問が残るというか、必ずしもパワフルなリードにならず、各自治体に配慮ばかりしていると、国全体としては進みが緩慢になるのではないかという危機感を持っております。その辺はいかがでしょうか。
【堀田委員長】 お答えいただけますか。
【木村教育DX推進室長】 こちらについて、おっしゃるような観点も注意点として踏まえながら、基礎自治体が中心とはなりますけれども、都道府県の広域のリーダーシップにより、例えばある程度同様のものを導入しないとデータの利活用は進まないという点などもございます。その現場の実態やニーズとリーダーシップというものをうまくバランスを取りながら進めていくものと考えております。
【横尾委員】 加えていいですか。
【堀田委員長】 どうぞ。
【横尾委員】 それをちゃんとしておかないと、例えば受験のときにICT利活用の習熟度等でギャップが出ることも考えられます。熱心にやってきたところの都道府県と市町村の場合は、なかなかスコアはいいけれども、それがすっきりしていないところではおぼつかないスコアしか取れないとなると、受験結果に響く訳ですし、将来の進路にも響きます。骨太方針の中でも国策としてのICT教育の環境整備と推進について書かれていると思いますので、ぜひ文部科学省を中心に、国としてやるという腹づもりの中で、ぜひ誰も取り残すことがないよう、お願いしたいと思います。
なぜこれをあえて申し上げるかといいますと、当時、1人1台端末の整備をもっと進めてということを文部科学省から発信された折に、当時の大臣は萩生田大臣でしたけれども、13ぐらいの自治体が非常にゆっくりだったそうで、大臣から首長に直接電話して、アクセルを踏んでくれという話をされたということをおっしゃっていました。ぜひそういった感じで引っ張っていただくことが大事だと感じております。地方の現場の感覚ということで、お伝えだけはさせていただきたいと思います。
以上です。
【堀田委員長】 ありがとうございました。今の件は教育データの利活用のことではありますが、ほかのいろいろなことでも、この中心はここに書いてあるように基礎自治体だとしても、設置者としてしっかりとやっていただかないといけないということについて、都道府県が取りまとめやリード、情報共有をするかという重要な役割になっています。横尾委員がおっしゃるとおりだと思います。
ほかに御質問はいかがでしょうか。
では、平井委員、お願いいたします。
【平井委員】 今の横尾委員の御指摘、質問とかぶるところはありますが、生成AIや校務DXなどで、やりたいと言ったとき、学校は頑張ろうとしているときに、それを自治体、特に基礎自治体が止めてしまうケースが多々あります。それに対する文部科学省からの働きかけというところで、何か手だてはありますか。
【堀田委員長】 寺島課長、お願いいたします。
【寺島学校情報基盤・教材課長/学校デジタル化PTリーダー】 ありがとうございます。先ほどの、例えば資料2-1の生成AIのところでも、教育委員会等が押さえておくべきポイントのところで、「一律に禁止・義務付けるなどの硬直的な運用は望ましくない」と記載しています。これは有識者会議の中でもそういった意見が多くありましたので、この点ははっきりと書いておりますし、それから先ほどの校務DXのチェックリストのところでも少し申し上げましたけれども、チェックリストの3ページ目のところで、教育委員会自身がルールで縛っているという、あるいは、詳しくは申し上げませんけれども、例えば特定の項目について、なぜそれはやらないんですかと聞いた回答には、慣例であるという回答も見られました。そういったことも踏まえてこの2ポツのところは書いたつもりであるんですけれども、改めて、それが本当に必要なルールなのか、必要な制限なのか、あるいはもしルールがなくて、ルールを定めなければいけないのだとして、どのように定めるべきなのか、こういったことを考えてほしいということをこの通知に込めたつもりでございますが、まだまだそこが届き切れていないのではないかという御指摘かと思いますので、引き続き取り組みたいと思っております。
【平井委員】 ありがとうございます。
【堀田委員長】 ありがとうございます。
【平井委員】 前回のガイドラインのときに暫定的と書いたものですから、「それは暫定なんだからまだやっては駄目だ」と言われた自治体があったものですから、受け止める側がそこまで深刻に考えてくれていないという現実があるのかと思います。そこをどうやるかというのは、全体として必要な手だてになるかなと思いました。ありがとうございます。
【堀田委員長】 ほかに御質問はございませんでしょうか。オンラインの方々もよろしいですか。
それでは、ここまでとさせていただきまして、続きまして議題3に参ります。
中央教育審議会は現在第12期でございまして、この第12期の任期がもうすぐ終わる段階にあります。私どものこの会議体は中央教育審議会の下にある初等中等教育分科会のさらにその下にデジタル学習基盤特別委員会として発足しておりますが、この中央教育審議会全体の任期から考えますと、本日が最終回の予定ということになります。ですので、委員の皆様全員からこの委員会を振り返ってコメントをいただくということをお願いしたいと思います。それに先立ちまして、事務局からこの特別委員会の開催状況等の御説明を簡潔にお願いしたいと思います。
【寺島学校情報基盤・教材課長/学校デジタル化PTリーダー】 ありがとうございます。資料3でございます。今、委員長からございましたように、現在の任期はもう間もなくということでございますので、これまでの今期の開催状況というものをここにまとめております。
このデジタル学習基盤特別委員会は、今期初めて設置されたものでございます。GIGAスクール構想が始まりまして、デジタル学習基盤がどんどん整えられていく中で、今日の議題2の報告でもありましたように、様々関連する分野がございますので、それを横串で見ていく委員会が必要ではないかということでこの特別委員会が立ち上げられたと承知しております。そして、本日を含めますと6回の議論を積み重ねていただいたということでございます。
それぞれの議題はそこに書いてございますとおりでありますけれども、今申し上げましたように、横串を刺しながら様々な議題を御議論いただいてきたと思っております。そして、この資料の最後、今後の課題というところで少し書きましたけれども、今、当然事務局としてこういうことがまだまだ残された課題ではないかと思っているところをここに書きました。この後、委員の先生方から様々な御発言をいただくと思いますけれども、まだこういうところが課題ではないかとか、こういったことに取り組むべきではないかということがございましたら、またぜひそういったところも御示唆をいただければと思っております。
説明は以上でございます。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様よりお言葉を頂戴したいと思いますが、時間の関係もございますので、1人2分から3分、長くても3分でお願いしたいと思います。参考資料がたくさんありまして、これが私どもの特別委員会でずっと検討してきた、ワーキングで検討してきたものでございますが、そのうちの参考資料1に委員名簿がございます。この委員名簿に従いまして、順番に御発言をいただこうと思います。また、委員長代理をお願いしています高橋委員と奈須委員につきましては、最後にコメントをいただければと思っております。五十嵐委員から順番にスタートしますが、時間厳守でよろしくお願いいたします。
では、五十嵐委員、お願いいたします。
【五十嵐委員】 ありがとうございます。合同会社かんがえるの代表、五十嵐と申します。よろしくお願いいたします。
この委員を承りまして、本当にこのICT支援員という立場でこういうところに参加させていただけたことは、本当に価値のあることだったと思っています。私たち、ミクロで普段ものを見ている人間が、マクロで見ていらっしゃる場に同席できたことで、今後もっとICT支援員の現場でこの現状というものを隅々まで届かせるという役割が恐らくできるだろうと今感じております。実際にこのお話をさせていただいている中でも、ICT支援員の地位が少し上がっていったり、認知度が上がっていったおかげで、非常に役に立っている支援員も増えてきております。また、次年度、次の予算にもつけていただけましたので、今後もこの先、私たちはこのマクロな視点のものを現場に届ける、そしてミクロな視点をちゃんと上に持っていけるようなネットワークというものをつくっていきたいなと思った次第でございます。
細かい話ですけれども、今、校務の関係に関しましても、著作権の知識というものが非常にまだまだ緩い感じがございます。細かいことですけれども、その細かいところへのサポートを、今後もちょっと頑張っていきたいなと思った次第でございます。
どうもありがとうございました。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
石井委員、お願いします。
【石井委員】 よろしくお願いいたします。
初めに、これまでの会議の開催に当たって、数多くの資料等の準備、本当にありがとうございました。また、審議した結果等についてもまとめていただいた文部科学省の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
私から、本日の議論の1点目のデジタル教科書について、まずお話しさせていただきたいと思います。現場での困り感は、教科書会社によってアカウントの管理の仕方が違うというところで、そこは非常に苦心しております。ただ、紙かデジタルの議論ということではなくて、デジタルのよさに目を向けた活用が始まっていると思っています。多様性に富んだ子供たちがたくさんいる中で、このデジタル教科書の可能性というのはまだまだたくさんあると思っておりますので、これからの活用を期待しております。
また、2点目の生成AIと校務DXについては、デジタルをどのように活用すればよいのかというところがだんだん学校現場にも見えてきた状況にあり、活用が進んできていると思っております。しかしながら、先ほどの議論にもありましたとおり、学校現場と教育委員会との温度差や、考え方の違いというところがやはり問題になっているのかなと思っております。その改善策としては、学校と教育委員会が共に共感できるような全国の事例、一緒に進めていきたいと思えるようなものをどんどん発信していただいて、そして解決していければと思っております。
私は、GIGAスクール構想導入時に教育委員会において、整備、そして研修をワンオペでやらせていただいたということを経験として今回話させていただいております。また、現場の代表としてもお話しさせていただきましたが、この会議にはデジタル学習基盤という名前がついて会議が行われているということで、日常の学習の中で1人1台端末をはじめとするデジタル機器の活用が学習基盤として認められたという非常に大事な会議であったと思っております。今後もこのデジタル学習基盤が学習の中で有効に活用されていけるように、現場の先生方に伝えることが私の使命だと思っておりますので、また実践もどんどん積み重ねてまいりたいと思っております。
皆様、これまでありがとうございました。以上です。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
植阪委員、お願いいたします。
【植阪委員】 よろしくお願いいたします。まず初めに、参加させていただきまして、多くの資料等を御準備いただきました文部科学省をはじめ先生方に感謝申し上げます。
まず、私は現場と20年ぐらい一緒に授業づくりをしている立場から参加させていただいていますけれども、飛躍的に子供たちのデジタル利用が進んだ数年に御一緒させていただいたと思っています。プレゼンの日常化であるとか、タイピング速度も急速に速くなっています。それから、デジタルでなければやらない、やれていない海外との交流などもできたり、大きく進んだ面があるかなと思っています。
今日せっかく出していただきましたデジタル教科書との兼ね合いで、少しだけお話しさせていただきたいのですが、実は教科書に関しては、残念なことに必ずしも学校現場で積極的に利用されていないという実態があります。例えば、公開研究授業に行けば、みんな教科書を閉じて授業をされます。日本文化において、実は教科書が物すごくクオリティーが高いにも関わらず、十分に使われていないということをしっかり問題として踏まえてから考えないと、紙、デジタルという議論を超えて、なかなか問題になるのではないかなと思っています。すごくクオリティーの高いものができていて、各国に本当に自慢できるようなものはある。これを使ってどこが分からないかはっきりさせて例えば授業に向かうとか、そういったことができれば、子供たちの多くの力にもなりますので、デジタル、紙はともかく、どのように教科書を学校の中で使っていくのかという議論実態把握も含めてきちんとやっていったほうがよいのではないかと思っております。
それからもう1点、海外ですと、例えばICTツールが入ってきたときに、先生方はいろいろ迷われていて、例えば水曜日の午後などは、かなり時間を取って、子供たちを帰して、先生方自身でどのように使っていくかというリッチな議論をしている国というのが各国にございます。それに比べると、日本の先生は、実際にどのような工夫を入れていこうかといったことをみんなで議論する時間が実は少ないです。ですので、これは全体のほうの議論にもなるのですが、先生方がこれから先のことを考えて、先生同士でリッチに議論する時間ということを確保すること自体が、日本における端末の活用であるとか、ひいては教育の質の向上につながるのではないかと思っていて、ぜひお願いしたいと思っているところです。
以上です。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
梅嶋委員、お願いいたします。
【梅嶋委員】 私は、今回この検討会の中で、セキュリティを中心に専門研究といったところで参画させていただきました。そのときに常に考えていたことというのは、いつでもどこでも教育情報基盤にアクセスできるということが最も大事なことであって、その上で、その前提となるのが1人1台端末、先生と児童生徒が1人1台の端末を持つということと、もう一つは、帯域に加えて、遅延の少ないインターネットアクセスがある。そして、大事なこととして、学校と、また児童生徒のみならず、多様な主体が学校教育に参画するという、3つの前提条件でどのように皆様のセキュリティをつくるのかということで関与させていただきました。そのプロセスで分かったことがいくつかありまして、皆様と共有したいと思います。
まず、私は今スイスにありますIECのほうでセキュリティの企画開発をやっておりますけれども、目的に対する不確かさといったところを見える化するというのがリスクというところでございます。このリスクというところの言葉の定義を正しくこの教育情報基盤にアクセスする全ての主体が共有するということが、最も大事なことではないかなと思います。
その上でなんですけれども、セキュリティ対策は技術のみでは対応できないということへの理解がとても重要だと思います。あえて一つだけ、ポイントを申し上げますと、軽自動車の車体に3,500ccのエンジンは載りませんということです。よくセキュリティ対策というと、よいものを載せろと言われます。様々な提案はありますが、軽自動車の車体はあくまでも660ccのエンジンしか載りません。そこに3,500ccのエンジンを載せるとどのようなことが起こるかというと、車が動かなくなります。つまり、セキュリティ対策というのは、あくまでもサービスが正常に動くのが前提というところがありますので、この設計主体というところを考えるということがとても重要ではないかなと思っております。
もう一つ、多様な主体が子供たちの情報資産を持つようになりました。生成AIのガイドラインにもありましたけれども、生成AIの活用イコールその生成AIの事業者が子供たちの情報資産を持つということでございます。その意味では、子供たちの情報資産を、学校と児童生徒のみならず、教育情報基盤にアクセスする全ての主体が責任を持って扱うという考え方の変更がとても重要ではないかと思っておりまして、これは今後の設計といったところに期待するところでございます。
特に生成AIに関しては、この運用事業者というところが国境を越えますので、国境を越えた生成AIの運用事業者が、どのような視点で、またどのようなルールに基づいて日本の子供たちの情報資産を扱うのかといったところに関しては、国際的な枠組みでの議論がとても重要だと思っております。
私がこの特別委員会に参画した最初のきっかけは、実はセキュリティではなく、遠隔授業です。私は慶應大学と前橋国際大学という2つの大学で今、教員をやらせていただいておりますが、実は一番やりたかったことは、同時双方向の遠隔授業が私のライフワークでございます。今日の議論もそうですが、今GIGAスクール構想全体の取組の中で、教材、また教科書の高度化とか、校務システムの高度化といったところの議論はとても多いのですが、授業の高度化といった視点が重要ではないかと思っております。
例えば、資料1の5ページで、学習指導要領とGIGAスクール構想の関係についてを示していただきまして、私もなるほどと思いました。例えば、そこでも記載されている、思考力、判断力、表現力といったところを高めていこうといったところが、文部科学省のまさに教育指導要領でも長年言われておりますけれども、例えばそういう学びといったところに可能性があると思います。日本においてはどうしても、大学入試とかに合格して初めて大学の先生と会えるというところがノーマルでございますけれども、そうではなくて、例えば大学の先生が、中学の教室に遠隔で授業をするというような形で、様々な大学の先生と中学校や高校の段階から普通に授業で会うということがあることによって、あくまでも次の学校に行くというところは、入試に合格するためではなくて、新しい学び、また新しい学びを探究するためであるといったところをぜひ実現してもらうことが大事ではないかなと思います。
その意味で、私はこの10年間、慶應大学でタイのトップ大学のチュラロンコン大学というところと起業家教育を毎年、遠隔授業で共有して行ってきました。そこで最近、10年ぶりに卒業生をもう一回招いて行ったんですが、学生から言われたことがありまして、10年ぶりに先生の授業に来て参画したら、自分の大学がタイの大学に、もしかすると並ばれた、もっと言うと、抜かれたかもしれないという感じを持ちましたということを言われました。その意味で、録画した形の遠隔授業ではなくて、特に同時双方向での授業は、とても深い学びを実現すると思います。コロナが終わって遠隔授業というのはあまり使われなくなってしまったということをよく聞くのですが、ぜひ新しい使い方といったところも、この情報基盤ということの中で遠隔授業にもう一度スポットライトを当てていただけるといいのではないかと思います。
すみません、少し長くなりましたけれども、私からの意見ということになります。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
緒方委員、お願いいたします。
【緒方委員】 デジタル学習基盤ということで、いろいろなデジタル教科書ですとか、情報端末ですとかネットワーク、あるいは日々生成される教育データをどう活用するか、それを安全・安心に使うためのセキュリティをどうするかということを統合して議論することは非常に大事だと思います。そういう点で、この委員会に参加させていただきまして、ありがとうございました。
個々の議論はいろいろありますが、全体として、ではどうするべきかというところがあまり見えていないような、いまだにはっきりしていないような気がします。例えばお隣の台湾ですとか、これは2022年からクラウド環境でデジタルの学習システムをクラウドで勉強して、そこに行って学んで、そこで蓄積されたデータを用いて分析して、個別最適な学習を可能としているという、そこに今データが集まって、セキュリティなどもクラウド内で考えるということをやっているわけですけれども、韓国も来年からそういったことを進めようとしています。
日本は、先に端末とネットワークは整備ということになりましたが、ほかの国に遅れているような状況があります。自治体と国が端末等を整備してきたわけですので、ほとんどの自治体は何か国に任せてもいいのではないかと思って、国は自治体任せで、だから両者がにらみ合いというか、あまりリーダーシップを取ってやっていないような気がします。やはり国全体のことですので、国がある程度、最低限必要な基盤のところは共通して提供する必要があるのではないかと私は思っております。その上で、各自治体はその状況に合わせて、その基盤の上にいろいろな機能やソフトウェアを足していくことができればいいのかなと思って聞いていました。こういった議論は、国全体でどのような方向に基盤を提供するかというのは、今後とも継続して議論していっていただければと思っております。
以上です。ありがとうございました。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
神野委員、お願いいたします。
【神野委員】 よろしくお願いします。この場を借りてあえて発信したいなと思っているのは、デジタル教科書しかり、次なる教育ということに向けた取組は待ったなしというところで、発言させていただきたいです。
今日は本当にすばらしいものをまとめていらっしゃっていて、これを本当に実現していくんだということですが、ここに書いてあることすら恐らく現在の教育委員会や学校現場や多くの国民の方々も含めて、全く理解されていないんではないかなという気がしています。そんな方々にもぜひお伝えしたいなと思うのは、この今書いていることすら1年以内に古くなるということだと思っています。つまり、今、生成AI自体がやってきている影響力というもので、それを学校教育の中にどのように取り入れていくのかというのは、今まさに研究が始まっている分野でもあるし、その中において子供たちにどのような能力を改めて身につけていってもらわなければいけないのかというところも、今後様々なキーワードが出てくるわけですけれども、今まとまっていることすらこの国の多くの人たちが理解できていないということに関して、私たちは非常に危惧しながら、一方でここを強く発信していかなければいけないというところが、私たちの責務になってくるのではないかなとは思います。
その中において、一つ提案というか、もしできるのだったらということですが、今日みたいなこの部会とか中央教育審議会などの審議というものを地方開催することはできないのかなというところです。例えばですが、これは、私は福岡県とか佐賀県辺りで学校をやったりしますから、例えば佐賀県開催する、福岡県開催するとして、県庁所在地でやることによって、県教育長とか市教育長などという方もここに交えながらこの議論をしていくということができないのかなというのはすごく思っています。
私自身、今、佐賀市の教育委員会の最高情報責任者とか宮崎市の教育委員会の最高情報責任者という立場で教育委員会のポストを持っていますが、まさにここで議論している話をその現場でするだけで、頭の中が嵐のようですという感想をいただいたりとか、目からうろこですという形でいただいたりしますが、本当に生の声を届けるだけで随分現場の空気は変わるなと思います。これを霞が関だけでしていくということは私はもったいない気がしていて、これを地方開催も含めて、このことは宮崎で決まったことですよねとか、このことは福岡で決まったことですよねと地方で審議されたことですよねという形で、みんなを巻き込みながらこういう審議ができないかというところが一つここで提案したいことになります。
もう一つ、先ほども、教育委員会と学校現場をつなぐというお話もされていましたが、今私たち東明館のほうで取り組んでいるのが、学校現場で一番恐ろしいのは危機対応、学校トラブルになります。この学校トラブルということが起きたときに、いわゆる責任者がどのようにそのトラブルに関わってくれるか。これが、例えば教育委員会と学校現場がつながる上で一番大事なことですし、文部科学省と教育委員会がつながる上でもとても大切なことではないかと思います。
なので、こういう教育改革という前に、学校現場が本当に恐れていること、ここを我々はどう捉えながらやっていくのかということが大切だと思いますが、そしてなぜこの特別部会で話しているかというと、この生成AIを含めた新たなテクノロジーというものが、学校現場が今一番恐れていることだということをみんなで分かち合えたり、もしくは適切な対処ということを全員でコンセンサスを取ることのスピードを上げるような装置になり得ると思っていて、それを今東明館では実証し始めています。そのような学校現場と我々がどうつながっていくのか、そのような意味で、このデジタル学習基盤を国としてどう考えていくのか、今後話ができたらよいと思います。
最後ですが、非常に揚げ足を取るようで大変申し訳ありませんが、資料2-6の1の教育データ利活用に関する基本的な考え方の中で、「誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出すという大目的のために」と書いてありながら、その2ポツ目に、「従来からの教師の観察や見取りとデータで可視化される情報を両立させること」と書いています。一見すると、全ての言葉が確かにと思われるのですが、「従来からの教師の観察や見取り」が、「誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出す」ための観察になっているのか、見取りになっているのかというと、私は非常に疑問です。だからこそ、この「従来」という言葉を使うときに、非常に難しい問題があるのではないかと思います。
誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの力を最大限に引き出そうと言ったら、みんなそうだねと言うのだけれども、誰一人取り残さない学校とは何ですか、誰一人取り残さない授業とは何ですか、一人一人の子供たちの力を最大限に引き出すとは何ですかというこの各論に行ったときに、イメージがずれます。そこに従来という言葉を書かれると、今までのものでいいのねという話になってしまうと思うんです。
たった一言ですけれども、という意味で、もし言葉だけで我々が何かを伝えていくことしかできないのであれば、言葉にはかなり厳密にこだわらなければいけないし、言葉に限界があるとすれば、もっとそのような場所に行って話をしたり、このような事例ですよねという形での話ということをどう現場にも含めて伝えていけるのかというのが重要なのではないかなと思いながら、私自身頑張っていこうと思っています。ありがとうございました。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
中島委員、お願いいたします。
【中島委員】 ありがとうございます。改めて、私もこの場に皆さんと参加させていただいたことを本当に光栄に思っております。
今言われてきたことは本当にどれも大事だなと思い、現場でまだまだ難しいことがあると思います。ただ、同時に、生成AIも出てきていて、いろいろなよく分からない新しいものがどんどん出てくる中で、どのようなデータをどう獲得してAIに渡すかや、まさにそれがデータについての教育、データサイエンスなわけですけれども、そうしたものが求められるようになってくるわけです。人間にとってそういう意味での創造性というか、自分がしっかり考えて動くということがより人間に求められる時代になっているのは間違いないと思います。そういう意味で、このICTがこうやって整備されてくることはすごく大事ですが、五感であるとか、身体性であるとか、そういうことも含めて大切であって、そこには創造性が大事になってくるということも何かメッセージとしてあるといいかなと思っておりました。
あわせて、質問か意見か分からなかったので、こちらで話させていただきます。そういう意味では、STEAMという言葉を使うかどうか分からなのですが、STEAMというのは、どちらかというとつくり出すこと、特にAが入ることもあって、こういうものを活用して、あなたが何をつくり出すかということが大切になる。ICT:コミュニケーションする・何かつくり出すものをシェアするというだけではない、つくり出すということにより焦点を当てても良いのではないかと。事例がシェアされたり、子供たちの探究・先生たちのさまざまな挑戦がシェアされたりということもあると思いますが、ただ同時に「つくる」ということ自体わくわくするものなので、「つくる」を応援するようなもの、あるいは予算措置、今だと、ロボットやセンサーなど、そういうものは自分たちでお金を払わない限り買えない。なので、ではそこをどうしたらよいかというのが難しいところではありますが、多様な選択肢の中から、学校や子供たちが何か選び取れるような予算措置というものが必要ではないかなと思っています。
あと、デジタル教科書もPDFや動画に代わってきているのは、デジタルならではのもの、インタラクティブなシミュレーションなど、より双方向になります。まだ一方向のものが多い中で、双方向で、子供たちが自分で試行錯誤ができる、何か創造するに当たって、より体験的な理解ができる、そういう方法がデジタルにはあるはずなので、その辺りの中身の部分ももっともっと議論がされるべきかと思っていました。
また、先ほど、海外とつながることも増えてきたということがありまして、これも本当にすばらしいことです。こういったことも含め、中身の部分により踏み込んだような議論が並行してされることで、本当にICTの整備がされてくるのではないかと思っています。
最後にもう一個だけ。日本ではなかなか話題にならないもので、もう大分前から世界で進んでいるものですが、MOOCs自体は日本でもつくられたのですが、OCWやMOOCs(Massive Open Online Courseware)などがあります。英語でいろいろな大学とか知を、無償で学べる。そういうオープンラーニングのようなものは、たくさんあります。私がいろいろな教育委員会のところへ行っても、御存じないことも多かったりしています。これは英語の壁ですよね。日本文化、日本の教育は本当に大事だと思うのですが、同時に世界では結構そういった知のシェアリングというのが進んできていて、非常に面白いものも出ている。それこそシェアしてコミュニケーションするという、ICTという意味では、世界の人と対話をすることも、今は中高生の時からできます。そのための仕組みが大分そろってきており、少しでも何かそういうものが、参考にしたり、知ってもらうところからだけでも始まってくるといいのかなと思いました。
MOOCs、OCWについては、MITやハーバードでもそういうところから始まっていますけれども、今は結構いろいろな大学でそういった学びをオンラインで見せています。AIのおかげで簡単に日本語訳もできるようになってきたので、そういう点も含め、中身も、これが答えという一律の正解を伝えるような学びではなく、何かいろいろな動きがシェアされたり、唯一解がないテーマが議論されたり、子供たちも含めた、あるいは地方も含めた議論ができるような場、先生方も、もっと増えてくるとよいと思っております。
すみません、少し長くなりました。またいろいろ皆様と議論させていただけることを楽しみにしております。よろしくお願いいたします。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
中野委員、お願いします。
【中野委員】 まず、こちらの会議で貴重な御意見を共有してくださった先生方や、本当に慎重に、かつ十分な資料を作成してくださった文部科学省の皆様に感謝しております。
デジタル教材を制作している者として参加させていただきましたけれども、今後デジタル教科書の利用が広がり、円滑に多様な教材へのアクセスができるようになるということが望まれるということでしたので、まずそこで教材の提供が滞ることがあってはならないと、強く思っています。世の中の教科書会社、教材制作会社の皆さんは、ここでの議論を受けて、より充実した教科書・教材を制作していかれることと思います。やや内向きの話ではありますが、放送法の改正に伴い、NHK for Schoolがそこに協力できないということがあってはならないと、強く決意したところでございます。
また、マスメディアに所属している人間といたしまして、同資料の有識者の意見の中にメディア・リテラシーに関する観点が記載されているということを大変うれしく思っております。AI利用であったり、大量の情報を子供たちが活用するようになったりしていく中で、情報活用能力の育成はますます重要視されていくと思いますので、この辺りがきちんと書かれているということに安心しております。
情報活用能力の育成が進まず、「AIの活用もうちの学校では難しいよね」ということになり、そして、そのまま児童生徒が社会に出ていくということが一番問題だと思っております。これほど児童生徒にとって不都合なことはございませんので、まずはそういった意識を全国に伝えていければと思っています。
先ほど神野委員もおっしゃっていましたけれども、文部科学省の皆さんは大変御苦労なさっていらっしゃいますし、我々もなるべくお伝えして回ろうと思っていますが、ここでの議論が全国の学校に伝わっているかというと、温度差が非常にあるというのが現実ではあります。
本日、地方の教育学部附属校の研修をお受けしておりましたので、私は本日オンラインで参加させていただいておりますけれども、午後の研修でも、デジタル学習基盤であったり、情報活用能力の育成の重要さだったりについてしっかりお伝えさせていただこうと思っています。こういった活動を皆さんが続けていかれるということが、新しい学びが広がることへとつながっていくと思いますので、地道に頑張っていきたいと思います。
本日はありがとうございました。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
西端委員、お願いいたします。
【西端委員】 承知いたしました。
まず、感謝の気持ちは、これからお話しする意見で示したいと思います。では、今日は3点、お話をさせてください。
まず、全般的に学校現場にいろいろなメディアが入ってきて、テレビ、インターネット、そして今という形で、今はサードインパクト的な感じを受けております。その中で、今後に向けての課題で、先ほどデジタル教科書の在り方ということをお示しいただきました。あくまで私の意見ですが、今はどうしても紙があって、そこに特別な配慮が必要な子供たちのための特別なやり方としてデジタルが入ってきている。そういう入り方をしているのですが、もう対等に、選択肢の一つとして考えていきたいと思っています。そのためには、手段と目的が逆になっているという御指摘もお受けするかもしれませんが、高校入試や大学入学共通テストでもこれからMEXCBTのようなやり方を考えていきたいと思っております。
さて2点目ですが、こちらも、私は教員養成系の大学に勤めておりますので、その観点からお話をさせてください。弊学は、いわゆるタブレット、コンピュータを配って約10年になります。この10年の間に学生は、自分が学ぶ手段もそうですが、それを使ってどう教えていくかということも自然に学ぶようになってきたと思っています。そういう意味では、今、学生の環境がそのままGIGAスクールに対応していけばいいなと思うのですが、ただ、どうしても教員採用試験のところで一部の自治体は知識を問うたり、実技試験もございます。教員の資質・能力として何が必要なのかということを、試験は都道府県マターなのは理解しておりますが、国としてそれを示すことができればと考えております。
最後なのですが、先ほど資料2-2で、校務DXチェックリストを一言で言ってしまうと、やってみたら楽になったということをお示しいただいて、そうだよねと思いながら聞いていました。ただ、その最初の一歩というのがなかなか難しいのだと思います。これは今後に向けての話なのですが、学校現場と技術という、この両輪が回っていくのも重要ですが、そこにもう一つ、我々教育研究者の役割の一つとして、議論があるのではないかと考えています。そういう意味では、パラダイムシフト、考え方を変えていくというのは、次期の学習指導要領に期待したいところではございます。
以上でございます。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
平井委員、お願いいたします。
【平井委員】 合同会社未来教育デザインの代表の平井でございます。まずもって、今回のこのデジタル学習基盤特別委員会に参加させていただきましたこと、とても感謝申し上げます。
というのは、私はデジタル化を切り口とした教育改革、学びの改革というものをライフワークにしております。そういった点で、このデジタル学習基盤特別委員会のことを、中央教育審議会という、学び、学校そのものの改革と、ICTに関するワーキンググループがたくさんあります。ここを結びつける役割というのがこの特別委員会にあるのではないかなと思っています。テクニカルな部分も含めて、ワーキンググループで議論したことをいかにまとめ、それをつないでいくのかという役割もあるかと私自身は捉えております。そういった点で非常に学ぶことの多い委員会でございました。
さて、3つほどあります。まず意見や要望も含め、デジタル教科書に関して、そもそもの今の教科書自身が探究に合っているかどうかということです。知識伝達型の授業にはとてもすばらしい資料集的な教科書の部分もあります。教材としてはすばらしい。ただ、それが探究となったときに、先ほどほかの委員からも、研究授業へ行くと、教科書は「はい、しまって」と言われる。では何のための教科書なのかということになってくる。そういった点で、中身の、教科書そのものの考え方というものが変化すべきだなと考えております。
それから、各教科の特性によっては、指導内容が陳腐化してしまう。今の情報Ⅰがまさにそうです。なぜなら教科書には生成AIは載っていないわけです。そこで、変化の激しいところに対応していくためにはデジタル化というものは不可欠なのではないかというところです。探究に対応すること、変化に対応するという点で、デジタル化はまず不可欠ということ。デジタル教科書に関しては否定的な考え方もあるかと思いますけれども、そういった方々は従来型の授業の中でのデジタル教科書というものを考えていらっしゃるのかなというのはあります。だからこそ、新しい学びをもっと社会全体に伝えていくことが必要かと思います。
それから、校務DXに関して、これは多分生成AIと重なるところがあるんですけれども、いろいろなアンケートなどを取られています。アンケートを取った。データは出てきている。よかったという意見もある。でも、それをどうやって分析するかというと、これはAIが一番ですよねということ。こういったところから活用をぜひ進めていただければと思います。
しかし、学校現場や教育委員会でこういったDXを進めていく中で、指導主事や管理職のICTに関するリテラシーが上がっていかないといけないのではないかと考えています。ICTに関するリテラシーを上げていくということ。特に教育委員会を引っ張っていく指導主事、そして学校を引っ張っていく管理職が、先を見据えた、こういったテクノロジーがあるんだということを知らなければ取り組んでくれませんから、そういったところがとても大事になるかなと思います。
最後です。今の状況を見ると、試験というのは日本の教育の中で大きな立ち位置があります。全国学力・学習状況調査のような問題が高校入試で取り上げられていく。そして、MEXCBTを使ったCBTに高校入試が変わっていく。この辺のところが、恐らく中学校までの義務教育を変えていく上でとても大きな役割を果たすのではないかという点をぜひ提案していきたいなと思います。今後とも教育DXを頑張っていきますので、よろしくお願いします。
以上です。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
藤村委員、お願いします。
【藤村委員】 まず最初に私のほうから2点述べさせていただきますが、最初、一番危惧していたのがデジタル学習基盤特別委員会という名前だったんです。といいますのも、学習系の話だけなのかというと、どうしても横串が刺せないと心配していたんですが、先ほど寺島課長、黄地課長、そして木村室長、相原室長からお話をお聞きして、ものの見事に横串を刺して、学習基盤について、そして校務系についても見事にまとめていただいたと思っています。
特にうれしいなと思ったのは、資料2-2の校務DXチェックリストで、先ほど実際に使っているところは少ないが、こういう点がクラウド活用は非常に効果的だった、これを広げたいといったお話ですとか、ICT環境整備3か年計画で、従来のものに加え、共同学習支援ツールや、子供たちの心の健康観察等に資するような、そういった子供の全人的な発達支援という点を議論していただけたのがうれしかったですし、教科書の大改革で、まさに「探究的な学び」に資するものにしていただけるというのをうれしく思いました。心から文部科学省の皆さんのこのまとめに御礼申し上げたいと思います。
2点目は、その真逆の話でありまして、先ほど横尾委員もおっしゃいましたけれども、GIGAスクールを最初にやるときに、私と堀田座長が首相官邸で協議して、教育再生実行会議でGIGAスクールを何のためにどうするんだ、ということを必死になって考えたことを思うと、全国を北海道から沖縄まで助言して歩いて、ICTの効果的活用は、先生方の御努力と教育委員会、文部科学省の御支援のおかげで大分進んできました。ただ、その使い方がどうかといったことを考えたときに、先ほどの「探究的な学び」や、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実によって「主体的・対話的で深い学び」になっているかというと、実はあまりなっていないというのが大きな問題だと思っています。
というのは、当初考えていたGIGAスクール構想の理念と理論、どういう方向を向くのかという教育哲学と、それからどうしたらそれが実現できるのかという理論の両方を伝えることの重要度が今後ますます高まるのではないかなと感じています。
その中で、特に文部科学省が方針転換していただいた中で効果的だったなと思うのは、学力観・授業観の転換だけではなくて、人材像が変わったと、変化が激しく予測困難な時代になったから、先生の言うことに素直にうなずくとか、教科書をただ覚えるとかでは駄目なんだといった、そういったところから説明させるようなアプローチを今後さらに強化していただくとともに、今日のキーワードで大事だったのは、二項対立ではなくというお話が随所にありました。デジタルかアナログかではなくて、デジタルにはデジタルのよさ、アナログにはアナログのよさがあり、さらにその教え込み、しっかりと教えること、基礎・基本を教えるべきですし、それでは変化が激しく予測困難な時代には育たない。だから、学び方をきちんと指導して、さらに探究的な子供主体の学びができるようにする。そういうベストミックスが大事だ、という点を今後も御検討いただければうれしいと思いました。
以上でございます。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
森田委員、お願いいたします。
【森田委員】 つくば市教育長の森田でございます。よろしくお願いします。
今の藤村委員の御意見と似ているのですが、教育が子供たちの未来のための営みであると。ですから、子供たちが未来社会で幸せに生きるための力をつけるという学びを保障するということが大事だと思います。ですから、教師の授業観、そして授業スタイルをそういう形で身につける。それがまさに今言った探究という形を中心とした授業だと思います。
GIGAスクール構想の目的は、ICT活用だけが目的ではなくて、授業改善とセットでなければいけないとずっと申し上げています。ですが、授業改善と、その探究にするところの押し出しといいますか、その結びつけはまだまだ弱いのではないかと思います。もっと授業改善のためのツールであって、事例も、授業デザインがいいからこの授業がよいのだと、そういった考え方を前面に出していくとよいのではないかと思います。いろいろなものがまだまだ一斉授業を前提として考えられている部分も多いのではないかと思いますので、その辺の改善をこれからお願いしたいなと思いました。
それから2点目としては、私は生成AIガイドラインの策定の委員も務めておりましたので、このことでちょっと触れたいと思います。そのときもお話ししましたが、車の運転と同じで、車の構造や交通のルールといったものも知らずにいきなり運転するということは事故につながる。生成AIはどんなものであり、メリットやリスクやデメリットは何かということを知らないでいきなり使うということは無理だと思いますので、小中学校・高校で、安全に正しく使うための基本というものは学んでいく必要があるだろうと考えます。そして、その基本は体験によらないと身につけられないのではないかと思いますので、そういう思いでガイドラインもつくってありますので、ぜひそういう趣旨を生かして、全面的に禁止するなどということのないような生成AIの活用をこれから進めてもらえればと考えております。
そして3点目、1つ目、2つ目で話したことが全ての教員の意識の中にしっかり根づいていくということが大事なのに、先ほどもありましたけれども、その周知のされ方といいますか、全体に伝わり切れていないというところが、私たちも市の教育委員会として努力はしているもののなかなか難しいと感じています。今回の中教審の諮問や、生成AIガイドラインなども、全ての先生の意識に結びついているのだろうかというところが非常にいつも悩んでいるところです。
そういう意味では、前にもお話ししたと思いますけれども、文部科学省から専用の教師用のアプリなどがあって、そこでプッシュ通知されるとか、そういうこともないと、伝達の方式だけで、「通知が来ました。この通知をお読みください」だけではなかなか伝わらない、研修をそこまでやるのはなかなか難しい、そういった現状もあるので、その点を今後工夫していきたいなと思っているところです。
以上です。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
横尾委員、お願いいたします。
【横尾委員】 ありがとうございます。
「坂の上の雲」というものが映画にもなって、ドラマでも今放映されています。まさに明治開闢期に非常に日本が躍進したのは、ひとえに識字率の高さと、礼儀等を数百年かかって培ってきたおかげだと思います。いずれも教育が基本だと思っています。そういった意味では、大変重要な役割を文部科学省に担っていただいていることに改めて敬意を表したいと思いますし、こういう未来を見据えての特別委員会などは、大変心強く、ありがたいですし、参画させていただいて大変ありがたく思っています。
いくつか意見を申し上げます。1つは、資料1の2ページ目に今後のスケジュールが書いてありますが、未来予見が大変難しい時代の中に、4年か5年後にできる教科書のために4、5年かかって作業をすることとなっています。途中で、例えば生成AIがもっと格段に進化するなど、新たな変化がどんどん出てきますので、そういったところをキャッチできるような余地も一方で持っていたほうがいいと思いました。例えば、世界規模では今フランスで会議をやったりしていますけれども、そういったことを一つ感じました。
もう一つは、同じく生成AIですけれども、生成AIというのは、世界のデータベース上にあるコンテンツから瞬時に編集して、いろいろなことを分かりやすく教えてくれたり、編集したりしてくれるわけですけれども、片方で極めて重要なのが、クリエイティブな発想、クリエイティブな実践だと思うのです。そこをどう培っていくかというのも一方では考えていく必要があるだろうと思っています。
その上で、自分の学生時代も振り返って思うのは、先生方はもっともったいぶらずにスキルやメソッドをどんどん教えてほしいなと思います。例えば、作文にしろ、論文にしろ、そういうことを教えたほうがいいと思います。私がカナダに留学したとき、レポートを出しなさいと言われたのは最初の授業です。そのときに配られたのが十数ページの文書で、それは何かといいますと、学会の論文の書き方というものが配られ、これに準じてレポートを書きなさいと言われました。レイアウトの仕方、下の注の書き方、全てこのとおり書いてくれということを大学1年生、18歳に教えることはすごく大事だと思いました。要するに、世界に通じる、学会に通じるフォーマットをまず親しんで使って、それで拙いにしろ書くということを体験としていきますので、身につきます。これは一生使えるテクノロジーなのです。そういったことも教えたほうがいいなと思いました。
もう一つは、レファレンスがとても徹底していて、図書館利用法の学びで館内の案内に行ったときには、レファレンスコーナーや、どう活用したらよいかなど、当時はマイクロフィルムでしたけれども、どう使うかも全部教えてくれます。それで、あとはあなた、頑張りなさいという文化があると思います。日本はなかなかそこまで行っていないので、こういったことも含めた教育の充実を、幼少期あるいは就学期、そして高校、大学と進んでいきますけれども、ぜひトータルで考えていただきたいと心から願っているところです。
そして、さらに思っていますのが、こういったデジタル学習基盤のみならずICT教育については、これに習熟した精通した人材が各地にいらっしゃると思いますので、そういった方々が引き続き何か関わって発信する、あるいは改善の提案をしていただく、意見を集めていただく、そういったことも各ローカルガバメントのレベル、都道府県、市町村でもしていかなければいけないなと思いました。人事異動によってプツンと切れてしまう、あるいは継承がないというのは大変もったいないことなので、そういった取組も必要だと思います。
あといくつかの資料を見て改めて感じましたが、こういう目標のために、こんな手だてを打って、こんなことで教育委員会はやろうとしているということを首長も知っていた方がいいということです。この前提がないままに予算をいくらくれと言っても、全体が厳しいから何とかしろよと財政当局に言われて、ちょっと絞ろうかとなってはいけませんので、ポイントは首長も知っておくべきと思います。私は全国ICT教育首長協議会の会長としても活動させていただいていますが、まさにそういったことも共有できるのはとても大切だと改めて思いました。
併せて思ったのが、今日の会議の中で出ていたのですけれども、なぜICTに関する取組が進まないか。教育委員会の事務スタッフが、これは前例どおりです、ルールは変えませんという対応をされて、めげてしまうといった情報を誰かがおっしゃいました。となると、教育委員会のスタッフの啓発、あるいは新しいことを考えていくようなモチベーションをしていかないと変わらないなと思っています。
例えば教育長がいろいろ迷っている、あるいは学校指導主事がどうしようかと考えているときに、スタッフのほうから、こんなテーマがありますよとか、こんな情報があって、あそこではやっていますよとか、そういう連携をしていきながら、いいものをつくっていくということをぜひ仕組みとしてもやっていくような風土に変えていかないと、ほかの委員が言われましたように、なかなか変わらないということではあまりにももったいないと思っています。
あわせて、首長だから思いますけれども、地方財政措置はどうぞ十分に御配慮いただければと思います。最後のところで各自治体が悩んでいるのは、この財源をどうするのかということでございます。これは未来への投資として欠かせないことだと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
ほかにもいくつか意見はありますけれども、時間がありませんので、以上、簡単な気づき、そして日頃思っていることの一部を述べさせていただきました。ありがとうございました。
【堀田委員長】 ありがとうございました。首長の御理解は大変ありがたいことでごさいます。本当にありがとうございます。
それでは、高橋委員長代理、お願いいたします。
【高橋委員長代理】 ありがとうございます。堀田座長をはじめ、文部科学省、委員の皆様、本当にありがとうございました。数年前まで、こういった教育の情報化に関する会議は、ICT環境の整備が多くの話題だったように思います。もちろん、まだまだ残された必要な整備もあると思いますが、本格的な活用のためのルールづくりや基盤づくりに関することなど、本格的な活用が話題になってきたというのが本委員会の特徴だったなと振り返って感じます。
GIGAスクール等、教育の情報化に関する成果として、テストで何点上がったとか、そういったことも重要かとは思いますが、そういったことだけで考えるのは、私は今日もお話を聞いていてもったいないなと思っています。
例えば、学力調査のCBT化とか、ほかに動画での出題が始まっているなどというのは本当に画期的なことだなと思いますし、保護者との連絡でのクラウド活用といった校務DX、国際的な交流など、今までできなかった多くのことが手軽に可能になっていると、そういったことが実現可能になっているということ自体が大いに評価すべきことだなと思います。その上で、学習と校務で2つの方面から申し上げたいと思います。
平均的な成果や取組は今日の資料でもかなり分かっていると思いますので、特に学習に関しては、先進的に進んでいる学校の様子などを申し上げさせていただくと、今このデジタル学習基盤をフル活用している学校の子供たちは、教科の特性に応じた見方、考え方といったことはもちろんのこと、幅広く見方、考え方を働かせることを通して、単元そのものをしっかり学ぶことに留まらず、単元を超えて学ぶ、場合によっては学年や校種、教科なども超えて学ぶような、自分の興味・関心を学校外も含めて高めていくような子供の様子が見られる学校というのが出てきました。こうした学習に必要な情報が、本当に学んでいく間に揺れ動いていくような、そういった子供の興味・関心、学習状況、難易度や、理解度等に応じて取得可能になってきているということが、非常に大きいと思います。今まで教科書や教材は静的な止まった紙データが多かったわけですが、今の子供たちの学習の様子をみているとどちらかというと動画などの活用も多く、そこはいろいろ課題があるところかもしれませんが、子供の様々なニーズに応じて学習が進むことができるようになってきているなと思います。
クラウド上でさらに、教材だけではなくて、子供同士が高め合うような情報交換みたいなことも行われていますし、その様子を先生も把握しやすくなっているということで、教室内で流通する学習に関する情報量が格段に増えています。つまり、これまでの紙では処理し切れないほどの、デジタルならではの情報量というものが教室で見られるようになってきていると思います。まさに「個別最適な学び」と「協働的な学び」といったビジョンの共有と、そういうデジタル学習基盤みたいなことの相互の関係で、それらが行ったり来たりしながら実現していくと感じました。
このような学習基盤を培うべく推進していくことがより重要なのではないかと思いました。その際に、先ほど横尾委員も「坂の上の雲」とおっしゃっていましたが、私も本当にあれを思い浮かべることが多いです。付け加えさせていただくなら、あのドラマのセリフを見ていると、PDCAの様なセリフというよりは、ビジョンを語り合うといったことが多く、一つ一つ問題を解消していくというよりは、あるべき姿に向かっていくといった取組が非常に求められるのではないかと思っております。
ちょっと長くなりましたが、最後に校務DXについてです。私は年末の2つの諮問を結ぶ非常に重要な基盤となるものの考え方かなと思っております。校務DXチェックリストはすごく貴重で、都道府県別とか市町村別に平均値が出ていて、ここは平均値で申し訳ないんですけれども、400点台後半の県から200点台の県まで、大きな差がついています。この理解度の差がより加速度的に開く可能性があるかなと思っています。先生方がDXを体験していないから制限しようとか、使わせないようにしようみたいなことが最終的に大きな地域差を生んで、子供に不利益が及ぶような可能性があるかなと思っております。校務でも、しっかり皆さんでビジョンを共有して、デジタル基盤と行ったり来たりしながら高め合うような、そういったことができればなと願っているところです。
私からは以上です。ありがとうございました。
【堀田委員長】 奈須委員長代理、お願いします。
【奈須委員長代理】 よろしくお願いいたします。この間ずっと議論してきたデジタル学習基盤の特徴はいくつかあると思うのですが、まず授業の中で取り扱える情報量が質・量ともに圧倒的に増加するという話があると思います。大事なのは、誰がそれを教室に持ち込むのかということだろうと思います。
もう一つ考えると、デジタルの特徴というのは、個々の子供による情報へのアクセスの容易さとか迅速さとか自由度の高さということがあります。これまでは、教師が持ち込まないと質の高い学習情報というのは取得できなかったわけですけれども、それを子供が取りにいける。こうなったときに、増えてきた情報量を誰が持ち込むのか。引き続き大人が持ち込む、あるいは指導要領で細かく規定する、あるいは文部科学省が指示、差配するということにするのか、ガードレールを設けつつ、できる限り基準性を緩めて、学校現場や子供の裁量を拡大するのかというのは、大きな分かれ目だろうと思います。生成AIのガイドラインというのは典型的に後者になっています。あれはとても面白いと思います。
一方、デジタル教科書の議論も、いろいろな形で自由度が高まってきていますが、教科書というのはよくも悪くも規定性が高い。それが日本の教育の質を担保してきたわけですけれども、この辺り、デジタル学習基盤全体に関わって、政策としての原理というか、よって立つ立場がどのぐらい一貫しているかということは、そろそろどこかで吟味しないといけないかなということを思っています。
一方でデジタルで気になることや注意すべきことというのはいろいろありますよね。これにどう対応するか。一つは、今と同じですけれども、起こり得る可能性のあることは全て先回りして強く行動を制限、指示する。怖いよ、危ないよ、近寄らないほうがいいよというメッセージを発していく。経験もしていないことについていろいろ言われても、分かるのか、できるのかということです。だから、この辺はとても考えなければいけないなと思っています。
それとは逆に、いや、まずは可能性やよさを感じられるように導入する。楽しいよ、便利だよ、仲よくやってねというメッセージを出していく。その際、もちろん最大限の注意は必要なのだと思いますけれども、できるだけ細かいレベルでの行動の制限や指示をせずに、原理・原則をしっかり教えて、その中で子供の発想でまずは自由に使わせてみる。もちろん、多少怖い思いとか危ない目にも遭うわけですけれども、それを通して、これはこのように違うんだなとか、気をつけないといけないなということで、子供が実感を持って気づいていく。これは、歴史的にいうと、ルソーとかデューイの教育思想です。そういったほうに行くのかということ、これはとても大事だと思います。ルソーやデューイが言ったことでもありますけれども、本人が経験しないと、自在に活用の利くような生きた学び・力にはならないのではないかといった点をどう考えるか。幼児教育はまさにこれでやってきたわけですが、小学校以降の教育というのはあまりそういうほうに行かなかった。
もう一つ、情報活用能力という点から考えた場合に、どっちの育成方法がうまくいくのかということもしっかり考えなければいけない。デジタル学習基盤というのは、デジタルということの持ついろいろなこともありますけれども、教育の原理的な在り方に対する転換なり、重心の移動を求めていると思っています。以前、デジタル学習基盤というのは幼児教育と似ているんだという話を申し上げました。豊かな環境を整えて、その環境へのアクセスを促すようなやり方だと申し上げました。「個別最適な学び」や「探究的な学び」というのも、どちらかというとそっちですよね。割とこのところ出てきた新たな学びというのは、全部そちらに向かっている。幼児教育でいう「環境を通して行う教育」のほうに向かっている。それは、子供観や、まさにこの学習基盤、学習環境観が変わってくるんだろうと思いますけれども、このデジタルが図らずもそれを牽引していると。
学習指導要領の議論も始まりしたが、そうなったときに、教育課程の基準としての学習指導要領の基準性というのはどう考えるべきか。この会議の関係で言えば、教科書の基準性や検定というのをどう考えるべきかといことが一つ出てきますけれども、その辺りのこともまたしっかりと併せて考えていくことになるんだろうなと思いますし、そこに向けてこの委員会はいろいろな大きな示唆を与えてくださったなと思います。ありがとうございました。
【堀田委員長】 ありがとうございました。
それでは、委員長として私からも一言申し上げておきたいと思います。
12月25日に大臣から中教審に次の教育課程についての諮問がなされたところでございまして、これにつきまして、教育課程部会、これは奈須先生が部会長ですけれども、その下に教育課程企画特別部会というものができて、審議がスタートしております。この部会でこれからの学校教育の在り方から見直すような骨太の議論がされていくのではと思いますし、それを支える基盤としてのデジタル学習基盤であるべきだと考えると、現状の学校の実態とか、これを踏まえつつも、そこにとどまらない未来型の在り方もしっかりと提言し、これをつないでいくような形にしていくのが私どもの役割だと思います。
このデジタル学習基盤特別委員会というのは、中教審の中にできましたが、これは、僕は画期的なことだと思います。つまり、子供たちが学ぶ、あるいは先生たちが働く基盤が、デジタルでいろいろ変わりつつあると。その具体の一つ一つは、今日御報告いただいたようないろいろなことがありますが、これらをトータルに考えて、教育課程、教育内容、教育方法のみならず、働き方まで視野に入れたトータルなソリューションとしてこれをやっていこうとしているという国の姿勢だと思いますので、その委員会の最初の期を皆さんとともに議論できたのは大変ありがたかったと思います。
3つ申し上げておきたいんですけれども、今後の議論に向けて、学習環境としての議論、もっと言うと、子供たちがいかに学びやすくなるかということについてデジタルがどう寄与するかという議論は、大変重要だと思います。世論ではすぐ、今までがほとんど紙だったので、これのどこをデジタルにするかという議論になりがちですが、よく考えてみれば、教科書がどうかということのみならず、教材も、テストもCBT化していますし、データが蓄積され、それが評価に、あるいは次の指導に使われるという循環も当然あります。こういうものの中にデジタルがいろいろな形で機能しているわけですから、今までのやり方も含めて、もう一回見直して再構成する。それは何も、紙を全部なくして全部デジタルにするという話ではなく、どっちがいいかという単純な話でもなく、いいところをうまく組み合わせながら進めていくという話なんだと思います。これは奈須先生の下の部会で強く議論していただいて、これをデジタル学習基盤の観点から、どういう可能性があるか、どういう対応が可能かみたいなことをこのデジタルの観点で議論を今後もやっていくというのが大事なことだと思います。これが一つです。
2つ目は、いかに教育環境が新しくなろうとも、先生たちがそれによって働きやすくなるか、教えやすくなるか、子供たちに寄り添いやすくなるかとといったことが非常に大事なことだと思います。この観点では今日御報告がありましたけれども、校務DX、これは非常に重要な部分ですが、これが残念ながら、いろいろな自治体の慣例とか、校長会の横並び意識とか、いろいろなことで、頑張ろうとしているところからもできないといった現実があるということは非常に悲しいことだと思います。慣例ではなく、これからの在り方をみんなが議論して主役になって改善できるようにすべきだと考えておりまして、校務DXを強く推進するというのはこれから非常に重要なことだと思います。さきほど横尾委員がおっしゃいましたけれども、都道府県のリーダーシップというものも一段と大事になっているところかと思います。
3つ目、学校現場に入る教員を輩出するのは、教員養成大学、教員養成課程を持った大学ですけれども、ここで本当に学生たちがGIGA型の学習環境で学んだり、探究的に学んだり、個別最適に学んだりしているだろうかということです。そういう意味では、大学の教育養成の改革というのも連動して行われる必要があるし、そこに予算投下も必要かと思います。教員養成だけではなく、教員研修も同じで、教員研修が旧来型の伝達型であると、結局それを伝達するような授業がつくられる可能性もあることを考えると、ここにオンデマンドで済むようなことを在宅や在勤・在校でできる研修もあり、あるいは梅嶋委員がおっしゃったように、同時双方向だからこそできることもあり、これが距離を超えたり、自治体を超えたりする可能性があります。また、対面でないとできないということもあると思います。こういうものをどう組み合わせて、これから必要な教師の資質能力の向上のための研修にするかという問い直しが重要なのかと思っております。
皆様のおかげでこの会議で一定の取りまとめまでは行きましたが、まだまだ課題はたくさんで、これから非常に大事になることになります。第12期としては、このデジタル学習基盤特別委員会をひとまずここまでとさせていただきたいと思います。
委員の皆様、お忙しいところを本当にたくさん関わっていただきまして、ありがとうございました。ここまでとさせていただきます。どうも皆様、御協力ありがとうございました。
―― 了 ――
初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチーム