令和7年2月25日(火曜日)15時00分~17時00分
3F1特別会議室(WEB会議)
【秋田部会長】 こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第147回教員養成部会を開催いたします。
それでは、まず、事務局からの会議の開催方法と資料についての御説明をお願いいたします。
【柴田教育人材政策課課長補佐】 秋田会長、ありがとうございます。文部科学省教育人材政策課の柴田と申します。
会議の進め方等について確認をさせていただきます。本日の会議もウェブ会議と対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催をさせていただきます。
本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。Zoomを使用しておりますけれども、Zoomのチャット機能につきましては、傍聴者の方が閲覧することはできませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただく等、補助的な使用としていただきますようお願いいたします。
また、会議を円滑に行う観点から、大変恐れ入りますが、委員の皆様におかれましては、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラにつきましては、御発言時以外を含め、会議中はオンにしていただきますようお願いいたします。
御発言時でございますけれども、画面下部のリアクションボタンというボタンがあります。そちらに挙手ボタンというのがございますので、そちらを押していただきまして、併せて、部会長から指名がありましたらマイクをオンにしていただいて、御発言が終わりましたらマイクをオフにしていただくということでお願いいたします。
前回は御都合により御欠席をされておりましたけれども、本日、当部会に初めて御参加いただく委員を御紹介させていただきます。
滋賀県湖南市長の松浦加代子委員でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、諮問の検討事項である社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方について御議論いただきたいと考えておりますが、それに先立ちまして、教職課程を実際に受けられている学生の皆様から現行の教職課程について御意見発表をいただきたいと思います。
事務局より本日御発表いただく学生の皆様を御紹介させていただきます。まずは、兵庫教育大学の柏木さん、高橋さん、古本さんの3名の方に御発表いただきます。東京学芸大学からは、髙橋さんに御発表いただきます。
以上でございます。
【秋田部会長】 御説明どうもありがとうございました。学生の皆様も、御足労いただきましてありがとうございます。もしかすると緊張されているかもしれませんが、どうぞリラックスして御発言をくださればと思います。
それでは、本日の議事について申し上げます。議事は議事次第にお示ししているとおり、2点でございます。
それでは、まず、議事1に入りたいと思います。まず、事務局より、今までの主な意見や今後議論すべき内容等について御報告をお願いいたします。
【石川教員免許・研究企画室長】 教員養成・研修企画室長の石川でございます。
まず、資料7におきまして、過去の教員養成部会でいただいた主な意見を集約しているところでございますが、こちらについては、説明は省かせていただきたいと思いますので、適宜、御確認をお願いいたします。
私からは資料1について説明をさせていただきます。こちらは、諮問を踏まえ議論が必要と考えられる事項につきまして、事務局で整理、御提案したものでございまして、本日は特に諮問事項の1に係る部分、社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方に関しまして、事務局より議論が必要と考えられる事項というものについて説明をさせていただきます。
まず、(1)の教職課程の在り方でございますけれども、令和3年答申では、目指すべき教師の姿としまして、変化を前向きに受け止め教職生涯を通じて学び続ける、子供一人一人の学びを最大限に引き出す役割を果たす、子供の主体的な学びを支援する伴走者としての能力も備えているという姿が提案されました。また、令和4年答申では、新たな教師の学びの姿の実現ということが提言されたわけですが、こういった教師の姿から逆算しまして、養成、採用、研修を通じて生涯学び続ける教師としての能力形成という観点から、そのうち養成段階、特に学部で担保すべき能力はどのようなものであるべきと考えられるかという点でございます。
こうした養成段階で担保すべき能力というものを踏まえた上で、社会変化を踏まえた学習内容や現場における教育課題、例えば、特別の支援を必要とする児童・生徒への対応であるとか、質の高い探究的な学びへの対応であるとか、文理横断・文理融合的な学びへの対応であるとか、また、GIGAスクール環境を踏まえた情報活用能力の抜本的向上への対応、こういったものについて十分な能力を身につけるために、教職課程においてはどういった内容が必要と考えるかという点でございます。
そして、こうした内容を教職課程でやる中で、専門的な内容を幅広く身につける必要があるということを踏まえて、より多くの学生が教職課程を履修しやすくするためには、ICTの活用を含め、学習方法について主にどのような工夫が考えられるかという点でございます。
この際、2点目、3点目両方にも関わってまいりますけれども、本日も発表がございますが、教員養成フラッグシップ大学の取組や成果というのも勘案していただけないかと考えてございます。
そして、教員養成の質を確保しつつ、目指す教師像に向けて、教職課程のみならず、学位プログラムの内容とあいまった各大学の創意工夫を生かした柔軟な教員養成を実現するためにはどのような課題があり、どのような改善が必要と考えるかという点でございます。前回の審議におきましても、現在の教職課程において、提供側の大学、それから授業を受ける学生双方が主体的に取り組みにくいのではないかといった御意見も何人かからあったかなと考えてございます。
そして、(2)でございます。教員免許制度の在り方でございます。まず、1人でも多くの学生に教職を志してもらうためには、免許制度においてどのような課題があり、どのような改善が必要と考えられるか。机上資料にも盛り込んでおりますけれども、教職課程を履修したものの、必要な単位数が多く、全ての単位取得が難しかったとして免許取得に至らなかった学生の声というのが調査で見られたことも勘案していただければと考えてございます。
他方で、大学院段階というところでは、教職生涯を通じた能力向上への意欲を喚起するよう、特に将来学校現場において中核的な役割を担っていく教師に求められる資質・能力に照らし、現行の専修免許状についてどのような課題があり、どのような改善が必要と考えられるか。例えば、専修免許状により担保される資質・能力とはどのようなものか、あるいは、現在、専修免許状につきましては、全ての単位が大学が独自に設定する科目として充てられているところでございますが、専修免許状の取得に当たり修得が必要と考えられる内容などについて御意見を賜れればと考えてございます。
そして、免許状に限らず、子供たちの主体的・対話的で深い学びを実現する学びの高度の専門職としての教師像の実現に向けて、教職大学院での学びの充実のためにはどのような課題があり、どのような改善が必要と考えられるかという点でございます。
そして、こういった(1)、(2)を通じてというところになりますけれども、現行の二種免許状、一種免許状、専修免許状という免許種別の在り方についてどのように考えるべきかという点についての御意見を賜れればと考えてございます。
そして、教師人材の安定的な確保に向けた教員養成の在り方として、まず1点目としまして、地域に求められる教師人材の安定的な確保に向け、地域ニーズに対応したカリキュラムの構築であるとか、地域枠の活用等に関する大学と教育委員会の連携をどのように広げていくべきかという点でございます。
また、少子化が進展し、高等教育機関についても規模の縮小ということも議論されている中で、他方で、それぞれの地域で必要な教職課程というのを継続的に開設、実施できるようにするため、活用できる現行制度はあるものの、更にどのような方策が考えられるか。
現行制度としましては、共同教育課程の設置であるとか、他大学開設科目や連携開設科目を自大学開設科目の教職課程の科目とみなすことができる措置というのもございますが、これらの制度の活用、あるいは、これ以上の制度改善策、方策について御意見を賜れればと考えてございます。
もちろん、これ以外につきましても、審議事項1に関して御意見を賜れればと考えておりまして、また、審議事項1につきましては、本日のみならず、次回あるいは次々回までも見据えての議論をさせていただければと考えてございます。
事務局からは以上です。
【秋田部会長】 石川室長、御説明をどうもありがとうございました。
それでは、次に、教職課程を実際に履修している学生の皆さんから、現行の教職課程に関しての御意見をお聞きしたいというふうに思います。その後、森田委員から教職課程の在り方などにつきまして御発表をいただきます。
まず、それでは、それぞれの学生さんに御発表いただいた後、まとめて御意見や質疑応答の時間を設けますので、よろしくお願いをいたします。
まず、兵庫教育大学の皆様、御発表をお願いいたします。柏木さん、高橋さん、古本さん、どうぞよろしくお願いします。
【兵庫教育大学 高橋さん】 本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。今から兵庫教育大学の発表を始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
今回はこのような内容をお伝えいたします。
初めに、受講した教職課程について感じたことについてです。学習指導系の科目で感じたことをお伝えいたします。有益だったことは、教員としての考え方、特に子供たちと学び合う大切さ、そして、ゲスト講師の方から様々な取組や教職の魅力について学ぶことができたことです。
改善してほしいことは、理論的ではあるが理想論を学ぶことが多かったことです。活動を通して実現させるための手だてを学ぶ機会が必要であると考えています。
【兵庫教育大学 柏木さん】 次に、生徒指導論・教育相談等の授業についてです。
まず、有益だったこととしては、講師の方が経験した事例を基に講義をしてくれたことで、より具体的に学習指導面以外での子供との向き合い方や適切なコミュニケーションの取り方を学ぶことができました。また、教員経験がないカウンセラーによる講義があり、教員経験がないからこその視点でお話を聞くことができたので、今までは教員がやらなければいけないことという考え方だったのが、教員だからこそできることというように考え直すきっかけにすることができました。
一方で、改善してほしいこととしては、自分だったらどうするかというレポート課題などはあったんですが、ロールプレイングのような活動がなかったので、実際やってみる活動がもっとあればよかったなというふうに感じます。
【兵庫教育大学 古本さん】 次に、実践的・参与的要素のある授業で感じたことを、実際に私が受けてきた2つの授業を取り上げてお話しさせていただきます。
まず、社会ボランティア体験学習という授業では、イベントの企画や地域マルシェのスタッフなど、多種多様なボランティア活動を通して多くの地域の方々と交流し、周囲に頼る力を身につけることができました。分からないこと、不安なことは聞いてもいいんだということを学べたとても貴重な経験、機会となりました。
次に、外国人児童・生徒の日本語教育という授業では、近隣の小学校へ赴き、外国にルーツのある児童の取り出し授業を拝見いたしました。机上の知識では得られなかった本当の意味での困り感というものを知ることができました。
このような経験から、講義形式にとどまらず、ワークショップなども含む実践的・参与的でアクティブな学び方など、授業形式の幅が広がることで学びの幅も広がるのではないかと感じました。
【兵庫教育大学 高橋さん】 続いて、教育実習で感じたことについてです。私たちは3年次までの実習を経験しました。
有益だった点についてです。主にフレンドシップ実習からは、表情は感情を表し、よくも悪くも子供たちにすぐ伝わるということを学ぶことができました。
次に、主に小学校実習から、教員としての振る舞い方について、子供たちとどのように関係を築いていくのかということについて学ぶことができました。そして、様々な実習からの学びを毎年の実習やボランティアなどで生かすことができる環境がつくられているのがまた有益であると考えております。
【兵庫教育大学 柏木さん】 次に、改善してほしいことについてです。
私たちは実習で一番デジタル学習方法についての指導が難しいと感じました。そこには大学生のICTのリテラシーや知識・スキル不足が考えられます。
実際に実習では、ChatGPTの情報のみにしてしまっている児童への適切な声かけが分からず、見ることしかできなかったり、実習先で自分がふだん使っているMicrosoft365ではないアプリやシステムを使っていて、支援をするのに手こずってしまいました。また、スクールサポーターなどの活動も踏まえて、学校によるICTの使い方や制限の違いが多く見られ、適用するのに時間がかかったりもしました。
これらのことから、未経験の学習方法の向き合い方に対応する難しさや大切さ、授業内や演習など様々な場面で、子供たちの学習力定着も含め、状況を見てアナログとデジタルを使い分けることの必要性を実感しました。
【兵庫教育大学 古本さん】 次に、教職課程で学ぶべきと考える内容についてお話しさせていただきます。
まず1つ目は、学習者観や学習観の転換です。受験ありきの学習を継続してきた学生にとって、AIをはじめとする様々な技術などが進歩する中、人が学ぶ意義を再考することは、学びを提供する教員を目指す上では必要不可欠だと考えます。
さらに、価値観が多様しているこの社会において、単に知識を多く備えていることが学力ではなくなってきているのも現状です。この学ぶ意味と学力の変容を捉えるとともに、それを可能にする他者と考えながら学ぶ授業の作り方や、ファシリテーターとして果たすべき教員の役割についても学ぶべきだと考えます。
【兵庫教育大学 高橋さん】 次に、学校防災についてです。私たちは大災害を経験したことがなく、実際に避難した経験などもありません。しかし、実習中に災害が起こる可能性があり、避難所運営にも関わる教職を目指すに当たって、知識だけではなく対応力が重要になると考えています。そのため、経験者の方の生の声を聞くこと、実践的かつ具体的な内容、そして心構えについて学ぶ機会が必要であると感じております。
【兵庫教育大学 柏木さん】 次に、デジタル学習環境に関する学びについてです。
学校や地域によって、Microsoft365やChromebook、iPadなど異なる様々なデバイスやサービスを使っており、単一のデバイスだけでは、もし自分が使ったことのないデバイスを使わなければならないときに、自分が使うのだけに精いっぱいなってしまい、子供たちの支援などに手が回せなくなってしまうので、大学生のうちから様々なデバイスに触れておく必要があり、子供たちが使いこなせる指導方法、かつ、自分自身も使いこなせるような授業があればいいと感じました。
また、今お話しした私たちが考えるもっと学ぶべきという内容は、現在、兵庫教育大学の教員養成フラッグシップ大学のカリキュラムに取り入れられているそうで、今の1年生から実際に授業が始まっています。
【兵庫教育大学 古本さん】 その試行的実践に私たちも参加することができました。それは文理横断的で探究的な学びであるSTEAM教育の演習です。この演習で、多様な教科の学びやICTなどの技術を生かしながら、実社会での課題解決に生かす本物の問題解決型学習を体験することができました。
知る学びと作る学び、いわゆるデザイン思考を学習者の目線から得られたとともに、教員がファシリテーター的役割を担う姿を実際に大学の先生方から学ぶことができ、非常に有益な時間だったと感じております。
【兵庫教育大学 柏木さん】 次に、今回の諮問内容について審議に期待することについてお話しします。
まず、学びの意義を見いだすための教育課程についてです。メディア・生成AIリテラシーを身につけ、ICTに使われるではなく、使いこなせるようにし、デジタル中心の活用ではなく、デジタルがリアルをより豊かにする活用方法を身につける必要があると考えます。
また、指導要領との向き合い方が難しいと感じ、内容に応じた学習を実践するには、現在でも見られる知識詰め込み型の授業ではなく、アクティブラーニングに基づく授業改善を行い、主体的と受動的のバランスを見極めていく必要があると考えます。
また、教育現場は常に変化していく環境であるだけに、その変化への対応力と実践力を身につけ、また、人の学びの意義を見いだしていきたいと考えております。
【兵庫教育大学 高橋さん】 次に、日本語学習についてです。自身の経験から、日々、日本語って難しいと感じています。日本語は様々な要素があります。しかし、適切な使用はコミュニケーション能力の育成などに直結すると考えられます。そして、それらは年齢関係なく必要な力です。特に高い吸収力を持つ子供たちと接する際、教員の日々の日本語力が試されると考えています。
そのため、日本語を見詰め直し、適切な使用と指導方法について学ぶ機会が必要であると感じております。
【兵庫教育大学 古本さん】 最後に、これからの教職課程などへの期待についてお話しさせていただきます。
私たちが目指しているのは、学び続ける教員になることです。ソクラテスの「無知の知」という言葉を借りましたが、自分はまだまだ未熟で、未完で、知らないことがたくさんあるということ、だからこそ学びに終わりはないということを念頭に置き、アンテナを張り続け、様々な人と出会うことで引き出しを増やしていけたらと思っております。また、そこで得た学びを生かすためにも、今がベストだと思うのではなく、変化を受け入れる姿勢も持ちたいと思っております。
次お願いします。そして、教員を目指す学生として教育行政に切望するのは、現場でも学び続けられる環境と学んだことを生かせる環境の整備です。近年、客観的データとして示されている教員の多忙さや教員不足などが学生にとって主観的で漠然とした不安につながっており、教員になりたいという気持ちだけではどうにもできないのが現状です。
教員が学び続けるのは、ひとえにこれからの日本をつくっていく無限の可能性が広がっている子供たちのためです。そんな子供たちのためにも、子供たちと教員の実態に応じた制度の導入を強く望んでおります。
次お願いします。
これで兵庫教育大学3名からの発表を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
【秋田部会長】 柏木さん、高橋さん、古本さん、本当に率直に多くの課題と期待を御発表いただきました。本当にありがとうございます。
それでは、続きまして、東京学芸大学の髙橋さん、御発表をお願いいたします。
【東京学芸大学 髙橋さん】 それでは、続いて、私のほうから意見発表のほうをさせていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、次お願いいたします。まず初めに、軽く自己紹介をさせていただきたいと思います。東京学芸大学教育学部2年の髙橋鈴と申します。ふだんは、大学で学ぶ傍ら、課外活動として、Tokyo Education Show、通称TESという教育イベントの学生代表として活動しておりました。今回は、この縁で意見発表の場をいただけたということで、お話をさせていただければというふうに思います。
次お願いいたします。ありがとうございます。発表内容に入る前に、少し内容にも関連があるTESについて紹介させていただければというふうに思います。Tokyo Education Show、省略してTESは、教育は楽しい、かっこいいということをコンセプトに、2024年の10月に東京学芸大学で第2回を開催した教育イベントになっています。
こちらには運営で多くの学生が関わっており、参加した皆さんが教育の魅力を体感して、そして、これからの教育を共につくっていく場をつくろうということを目的としております。参加者層としては、教育に関わるあらゆるステークホルダーを対象としておりまして、今年度、TES2024では4,000人ほどの人が集まりました。
続いてお願いいたします。具体的には、こちらに表示したような企画を実施しました。1の新しい公開研究会では、日本中の現役の教員の皆さんに集まっていただいて、先端実践である授業を、少し条件に合わせてアレンジしながら行っていただきました。
そして、2の教育サミット、3の教育若者会議では、教育の様々な分野で活躍するステークホルダーや未来の教育に向けて挑戦している若者を招いてトークセッションを行いました。
そして、4のエドチャレSHOECASEでは、教育に楽しくかっこよく取り組んでいる個人や企業・団体に集まっていただいて、様々なトークセッションやワークショップ、展示などを行いました。
このどの企画にも学生が運営として関わっており、例えば、新しい公開研究会でしたら、指導案を作成する段階から学生が一緒になって考えたり、ほかの企画でも、登壇者や関係者への連絡を学生が担っていたりしました。
本日の意見発表では、私個人の視点だけでなく、学生としての視点、また、このTESに関わった身としての視点も踏まえてお話ができればというふうに思います。
それでは、続いてお願いいたします。ここからは、まず最初に、学芸大生として大学のカリキュラムをどう見るか、続いて、TESに参加した学生としてどう見るか、そしてその後に、これからの教員養成に対してこうあってくれたらいいなという思いを2点に分けてお話ししていこうと思います。
まず、学芸大生から見た大学のカリキュラムについてですが、こちらに示したように、簡単にまとめますと、実践が授業の中で少なくて不安を抱いていたりとか物足りなさを感じている学生というのが多くいるように感じます。こちらの意見は私だけでなく、まだ教育実習に行っていない2年生の同期や、この春卒業を予定している4年生の先輩にも話を聞いてまとめたものになります。
このスライド上では、教育実習前の学生、卒業前の学生という2つに分けて書かせていただきましたが、ここでのポイントは2点あると思っております。その2点というのが、授業の内容とシステムの2つです。
1つ目の授業の内容というのは、教育実習前の学生の意見のところの一番上にあるように、今の授業では自分が教員になっているイメージが持てないという意見や、卒業前の学生から出ているように、教育実習へ行くまで学級や子供へのイメージが持てていなかったというような意見が挙がっているように、今の大学で受けているだけの授業では実践に触れる機会が少なくて、具体的なイメージを持てないでずっと過ごしてしまっているというような学生が多くいるということが分かります。
実際、私もこの9月からの秋学期の間に模擬授業などを行う各教科の教育法の授業を受講していたんですけれども、元教員の先生方に教えていただくこともありつつ、実際その授業では固まった教育観を聞いているだけであったり、あとは、子供たちや学級というのが実際にはどういう姿をしているのか、そういったことになかなか触れられないような授業が多くあったなという印象を持っています。
しかし、逆に、実際に現職の教員をされながら教職大学院に通いつつ授業をしてくださった先生や、元教員でありつつも自分の教員時代のエピソードをたくさん話してくださったり、それだけじゃなくて、自分なりの子供観やクラスとはどういうものかというのを言葉にしながらたくさん伝えてくださった先生方の授業は、やはりほかの学生にとってもすごく好評で、私も含め学生のモチベーションを維持しながら、学ぶことにつなげてくださったなというふうに感じます。
そして、2点目のシステムについてです。教育実習前の学生の部分に、大学に入学してから、学芸大では教育基礎科目と呼んでいるんですけれども、教育の基礎的理解に関する科目などが多い上に、実践についてリアルに学べる機会が少ないというふうに思っている学生が多くいるように、学校の先生になりたいと思って大学に入学してきても、実際すぐに受ける授業は、現場に出ることはほとんどなく、大学の中で完結するような現場から少し離れた座学が多くなってしまっていれば、それはやっぱり自分で主体的に学んでいこうという気持ちが少し薄らいでしまうのも無理はないのかなというふうに感じました。
こういった意見から、学部1・2年生の頃からリアルな実践に関わる機会を増やしてほしいというような意見が多く出てきました。
それでは、続いてお願いいたします。続いては、TESに関わった学生の声についてです。TESに関わった学生は、特に教育のあらゆる分野で活躍されている方や教育でどんなことが話題になっているのかをまじまじと見てきた学生が多く、やはりそうした経験を踏まえると、このままで、今の大学のカリキュラムで学べないことがたくさん見られたということの裏返しに、今の大学で学んでいるだけでは物足りないんじゃないかという不安を覚えているような学生、ほかにも、様々な教育の関わり方、いろいろな立場がいることを知ったことで、自分だったらどういう教育への関わり方ができるんだろうとか、自分はどういう教師像を目指しているんだろうといったことをよくよく考えるようになった学生も多くいました。
こういったことを踏まえると、今の大学のカリキュラムに不満を覚えたということで、自分でもっと学びに行かなければと思いつつ、やっぱりどうやって学んでいけばいいのかよく分からない、学ぼうと思っても、むやみやたらにセミナーに参加してみたりだとか、ちょっとボランティアしてみたりだとか、バイトで塾講師をやってみたり、学童のアルバイトをしてみたり、学生は学生なりに頑張ってみてはいるものの、いまいち自分が学びたいものにありつけているのか、自分の考えがもっと深まっているのか分からない部分があるなというふうに感じている学生が多くいます。そして、悩んでいるときに、その悩みをなかなか共有できるような場が少ないというふうに感じているのも事実です。
それでは、続いてお願いいたします。これらの学生の声を踏まえて、私のほうから、これからの教員養成の在り方について2つお話しさせていただければと思います。
1つ目は、早期からの濃密な実践機会の充実を図ってほしいなということです。これは特に、学部1・2年生の間に学校現場に行けるような機会を増やしてほしいというふうに思います。
当たり前ですけれども、学芸大のような教育大学に入学してくる学生の大半は、教師になりたいと思って大学に入ってきたり、教育に関わりたいと思いながら大学に入ってきます。それでも、そういった学生たちは、教育を受ける側の視点で教師だったり教育というものに憧れを抱いて大学に入ってきます。それが大学で4年間過ごす中で、教育を受ける視点から教育をする側の視点に移りながら、教師のための能力を養っていきます。
ですけれども、実際の大学では、教育実習に行くまでの2年間、3年生になるまでの2年間では、なかなか、先生はどういう視点で授業をつくっているんだろうとか、学校の先生は子供たちをどのように見て、子供たちに対してどういう思いを抱いているんだろうといったことにまじまじと触れたり自分なりに考えたりするような機会というのはそんなに多くないなというふうに感じています。
なので、そういったような、こちらの具体例にも示しているような、学校に行ったり、先生とよく話をしたり、自分でも話をしたり、そういった機会をつくって、自分なりの教育観を見詰めるようなきっかけを与えてくださったらというふうに思います。
続いてお願いします。そして、2つ目は、主体的に学ぶ学生へのフォローの体制を構築してほしいということです。こちらはTESに関わった学生の声の中であったように、学びたいという気持ちを持っている学生は、TESに関わった学生以外にもたくさんいます。それでも、先ほども話したように、どうやって学んでいけばいいのか分からない、どこにアクセスすれば、どこにコンタクトを取ればいいのか分からないというのが実際の学生の現状であったりするので、そういったところに対して、意欲があったりやる気がある学生に、学生が新しく踏み出すための数歩をフォローするような体制を、こうした具体例で示したようなことをやりつつ、大学のほうでももしフォローしていただけたらというふうに思います。
もちろんこの課題については、特に学生同士の広い交流なんかはそうですが、学生たちのほうでできることもあると私は思っています。なので、こういったことは、大学のほうで制度をつくってやってくださいと言うだけでなく、学生たちが自分たちで学びたいと思って、自分たちで集まって、自分たちで話をしてというような形も目指すべきだなというふうに思っているので、私のほうでも、いろいろと仲間とともにできることやっていきたいなというふうに思っております。
最後になりますが、このように、実は大学生で学びたいと思っているけれども学び方が分からないだったり、学びたいと思っているけれども自分の将来のほうが気になるとか、そういったことが実は頭にありつつ、でも、実際、腹を割って話してみれば、もっといろいろな考えを持っているような学生もいたり、私たちのような威勢のいい学生もたくさんいます。
でも、私たちはどうしても、こういった審議の場で皆様にお願いするしかない部分もありますが、私たちももっともっと自分たちでできることはやっていきたいというふうに思っている部分がありますので、そういったことも頭の片隅に入れて、これからも議論を続けていっていただければというふうに思います。
御清聴いただきありがとうございました。私からは以上です。(拍手)
【秋田部会長】 東京学芸大学から髙橋さん、ご発表を本当にありがとうございます。学芸大学の学生としてというお立場だけではなく、Tokyo Education Showの学生代表ということで、幅広い視点から熱いメッセージを込めた御発表をいただきました。
2つの大学からの皆様の御発表、日本の希望が見えるような御発表、どうもありがとうございます。
では、委員の皆様から御意見や御質問があれば、お願いをいたします。時間は20分間取りたいと思います。なお、多くの方が挙手をされた場合は、誠に申し訳ございませんが、途中で区切らせていただき、御発言ができなかった委員の方の部分は、事務局のほうに御意見を寄せていただくという形にさせていただき、議事録には掲載させていただく形にして進めさせていただきますので、あらかじめ御了解をいただきましたらと思います
と申し上げたら、早速に皆様お手を挙げていただいて、ありがとうございます。それでは、まず、戸ヶ﨑委員、お願いをいたします。
【戸ヶ﨑委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。皆さん大変意欲的で、頼もしくて、今後のご活躍に期待しております。
両校からお話がありました、できるだけ実践的で体験的な学びを望むという考え方、は理解できる一方、この時期にこそできる座学中心の学びも大いに価値があると思います。学べるときにしっかりと理論を学んで、その上で実体験をしていくことで、まさに理論と実践の往還が生まれてくるのとも思いました。
また、ファシリテーターとしての教師の役割を考えていくということも重要なですが一方で、しっかりと指導すべきは指導するということも大切な役割であることも忘れないでほしいと思いました。学校における課題として指導と支援のバランスがあります。教育実習をこれから行うときにも、ぜひ意識してもらうといいと考えました。
さらに、教職の学び以外にも、学生時代だからこそできる、経験を積み上げて教職に就いてもらえるといいと思います。子供たちが出ていく社会は、日々変化していくため、社会の変化と同期した学びも必要です。
自ら受けてきた授業の再生をしていてはその変化にはなかなか対応できなくなります。様々な経験を生かして新しい風を吹かせる教師になっていただきたいと思いました。
また、最近、教師と子供の学びは相似形であると言われますけれども、子供たちが主体的に課題を発見して解決に向けて学びを深めるのと同様に、教師も社会的な課題解決の経験を積むことも大切だろうと思います。そのことで課題解決型の学びや探究型の学びをより説得力を持って展開できると思います。
教師としての生きがいは教師だけが持つ喜びを体験したときに起こるものであり、将来を担う子供を教育するということは、まさに未来を創ることでもあるんだろうと思います。こんなに夢とやりがいのある仕事はないと私は思います。近年、職場環境や処遇も改善されてきています。ぜひ皆さんのような意欲のある多くの学生の方々に教職を目指していただきたいと強く強く願っています。
以上、頼もしい学生の皆さんへのエールでありました。
次に、教育課程を置く大学のGIGA環境整備等について申し上げます。今、全国の学校現場がGIGA環境での学びが深まっていることを踏まえると、デジタルを活用した指導法をぜひ教員養成課程の中で、身につけてもらう必要があると思いました。この観点から、教職課程におけるICT環境整備は待ったなしで推進するべきだろうと思います。
また、お話を聞きながら、大学の教職課程を、インクルーシブ教育の考え方とか、増加するいじめや不登校に対応するための心理や福祉に関する専門性、教科横断的な学び、探究的な学習、学修者本位の授業デザインなどなど、もっと柔軟かつ実践的なものに変えていく必要があると思いました。
こういった状況を考えると、大学の教職課程は、伝統的な知識等を確実に学んでいく場であるとともに、未来の教育をつくる場であってほしいなと思います。社会の変化を積極的に取り入れて、教育のアップデートを牽引するのも大学の役割だろうと考えます。「理論と実践の往還」を更に強化しながら、学修者本位の授業デザインを取り入れた、「社会と接続し同期する学び」へと転換していく必要があります。
大学が未来の教育のモデルとなるような場であり続けるために、教職の課程そのものを変革して、学校を「未来を創る場所へ」変えていくことが教育改革のセンターピンになると思いました。
以上です。
【秋田部会長】 戸ヶ﨑委員、どうもありがとうございます。
それでは、前回御欠席でもあられましたので、ちょっと順番が変わりますが、松浦委員に先に御発言をいただけたらと思います。よろしくお願いをいたします。
【松浦委員】 ありがとうございます。滋賀県湖南市の11月7日から市長になりました。前職は教育長をしておりました。
今、お二人、2ケースの発表を聞かせていただいて、非常に心強いなと思った中で、髙橋さんに質問させていただきたいんですが。それは何かというと、TESと呼んでおられましたこれの始まったとき、誰の発案で、どういう動きでこれをされたのかというのがお聞きしたいなと思いました。
といいますのは、私は今、市長という立場で、庁舎問題がありまして、新しい庁舎をどうするのかといったときに、タウンミーティングには、ほぼ50歳からそれ以上の方は来てくださるんですが、18歳から49歳の方というのは、アンケートも25%低いですし、個別に本当に呼ばないとなかなか集まらないという状況の中で、こういった企画がどういうふうに始まったのか、それを教えていただきたいなと思いました。よろしくお願いします。
【秋田部会長】 ありがとうございます。御発言をまとめて、御質問等、後でお答えいただくようにしたいと思いますので、御容赦ください。
それでは、続きまして、内田委員、お願いします。今お手を挙げていらっしゃる方で5人おられるので、お一人2分ぐらいの気持ちで御発言いただけたらありがたいです。お願いします。
【内田委員】 4人の学生の皆様、本当にありがとうございました。非常に前向きなところについて、私も感動を覚えたところであります。
40年前、私も学生だったんですけれども、くたびれてもう既に40年の時が入って、あと、この教育に携わるのもあと僅かかなというふうに思いますけれども、頑張りたいと思います。
今の学生さん4人の御発表にもありましたけれども、大学で学ぶことも、実際の学校現場の場面を想定して非常に多いということが委員の皆様もお分かりになったのではないかなというふうに思います。
改めてお伺いして感じたのは、大学時代に学ぶことと、それから現場に出てから学べることというところは、ある程度区別をして我々も考えていく必要があるのではないかなというふうに思いました。介護体験であるとか、社会体験であるとか、非常にこういったことも増えているわけですけれども、整理していく必要、発展的な部分で考えていく場面も必要じゃないかなというふうに思いました。
4人の方にお伺いをしたいのは、教育系の大学に入られてよかったこと、面白かったこと、一番印象に残っているところをお伺いできればなというふうに思っております。というのは、教育によって、教員もそうですけれど、生徒もそうだと思いますが、モチベーション、やりがいというところを感じながら学んでいくということが非常に大切なわけで、教育系大学に入ってこれはよかったなというふうに思われることを一言ずついただければと思います。よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 内田委員、ありがとうございます。
それでは、続きまして、白水委員、お願いいたします。
【白水委員】 熱いだけではない非常にストレートなメッセージ、ありがとうございました。学生さんの目から見て、教育課程で今どんなことが起きているかを勉強させていただきました。
今回の鍵は早期からもっと実践に触れたいということだったと思うのですけれども、そこでおっしゃった「実践」というのは一体何を意味するのかを知りたく存じます。
具体例として、私は学習科学を専門にしているもので、その観点から考えたときに、次のようなことは「実践」に当たるのかをお聞きしたいです。
例えば、大学の授業の中で、今の子供たちが「主体的・対話的で深い学び」というとこんな学びをしていますよという、授業を学生の皆さんも体験してみる。次の授業では、そこで学んでいる子供たちの実際のビデオを見ながら、「子供たちってこういう対話をしながら学んでいるんですね」という見とりを行ってみる。そのうえで、行く行くは、いきなり自分が授業をつくるんじゃなくて、先生方が授業研究をしている場に参加してみる。参加してみると、「先生方ってこうやって授業を作り直しているんだ。じゃあ、私も指導案を作ろうというときに子供の学びを想定したり、一度やってみてその様子を見て次の指導案を作り直そう」と実現する。最終的には、現場の先生と一緒に指導案を作る。
そういう感じの体験というのが今の教職課程にあるかどうかと、そういう体験があると早期の実践というイメージに該当するのかを教えていただければと思います。
以上です。
【秋田部会長】 白水委員、ありがとうございます。学習科学の視点から御質問をいただきました。
それでは、続きまして、古沢委員、お願いをいたします。
【古沢委員】 ありがとうございます。読売新聞編集委員の古沢と申します。
4人の方の発表を伺って非常に勉強になり、実践を多くしたいとおっしゃっているのはとても頼もしいと思いました。いろいろな現場に行くことで教職というものを多面的に見られるようになりますし、実習先と就職した学校だけを見ているよりも視野が広がるので、とてもいいことだと思います。
実は、これまで私が見学した大学では、学芸大学も含めて、地域の学校とか附属校をサポートしたり、学生がかなり現場に入っているような印象があったので、今はちょっと違うのかなと意外に思いました。
皆さんに基本的なことをお伺いしたいんですけれども、目指す校種、どんな学校の先生、教科の先生になりたいと思われているかということと、今現在、教職に就くことについて、率直に言って迷いがあるのであれば、お友達の話でもいいんですけれども、なぜ迷いがあるのかということを改めて伺いたいと思います。
時間があればもう一点だけ。兵庫教育大の方が子供たちと教育の実態に応じた制度の導入を要望されていましたが、具体的に説明していただければと思います。
よろしくお願いいたします。
【秋田部会長】 古沢委員、ありがとうございます。
それでは、続きまして、真島委員、お願いいたします。
【真島委員】 ありがとうございます。4人の学生さんがお話ししてくださったこと、本当にそのとおりだなと、私は個人的には非常に共感して聞かせていただきました。
本学でも、4人の学生さんが希望されているような1・2年次の体験学習とか、日本語教育とか、特別支援の教育とか、いろいろなICTの活用も含めて、それぞれは非常に取り組んでいるんですが、恐らく本学において何が足りないかといったときに、一番足りないところが、学生さんを主体とする学習観の転換だと思っているんです。
教育の制度としては、本学は非常にそういったところもきめ細やかに対応しているんですが、それがまさに自分たちからの、その人の特性とかその人の強みとか思いとかを生かした形で、自分から、自ら学び取ったというような感覚、つまり、それは制度として与えられているもので、それをやりなさいとか、受けられますよみたいな、そういうラインナップをそろえてもらったり、あるいは、ここの科はこういうふうに全員で合わせてみんな一緒にやりましょうみたいな感じではなく、恐らく今日の御発表いただいた4人の学生さんは、自分たちでそれを選択し、自分たちで判断し、それが必要だと思う瞬間、つまり、それは1・2年次かもしれないし、3年次かもしれない、4年次かもしれない、あるいは学校を卒業されて教職に就いてからかもしれない。いろいろな、多分その人その人のタイミングに応じて必要な学びの在り方とか選択肢がもっともっと自由に広がっていくことが、より学生さん自身の学びたいと思う思いとか、自分に足りないところをもっと補いたいとか、もっと強みを強くしたいと思うような、きっとそういったカリキュラムがもっともっと必要なんじゃないかなということをお話を伺っていて思いました。
もう一点足りないのが、今発表してくださった学生さん自身が、もしかしたら、本学のようないろいろな教育大学とか教員養成をしている私立大学も含めてですけれども、学内だけの活動ではなく、学外との交流というんですかね、いろいろな大学との、今はZoomとかいろいろな機能が発達しているので、もちろんオンラインもいいですし、今日御紹介いただいたようなそういったかっこいい教員を目指したい、そういう人たちが集まっていろいろな全国から若い学生さんたちが、いろいろな場所で、東京はもちろん中心ですけれども、いろいろな場所でやっていく。
リレー形式でもいいですし、何か一緒に、まずは2つの大学からとか3つの大学からとかでもいいと思うんですけれども、いろいろなそういう学生さん同士のコミュニケーションを学外に広げていき、それを大学が一緒にサポートするみたいな。そういうふうに社会全体で教育のよさとか、あるいは、教師のかっこよさとか、充実というところを盛り上げていくためには、そういう、本学も学内では一生懸命やっていますし、学外にできるだけ広げていこうと言って、社会との共創ということをやっているんですが、もっともっと若い学生さん同士がつなぎ合って、それをいろいろな形でコミュニケーション、ネットワークをしていけるような環境整備が必要なんじゃないかなというふうなことを感じさせていただいたんですが、その辺りを含めて、どのように学生さん自身はお考えなのかということをお聞きしたいです。
以上です。
【秋田部会長】 真島委員、ありがとうございます。
それでは、最後に、山辺委員、お願いいたします。
【山辺委員】 私も学生の皆さんの発表はとても興味深く拝聴しました。それを受けて2点伺いたいんですけれども。
まず1つは、兵庫教育大の皆さんが最後発表でおっしゃっていた、学び続ける教師になりたいというのもすごく共感するとともに、学び続けるだけじゃなくて、つくり続ける、新しい教育とかをつくり続ける先生にもなるために学び続けてほしいというのがあって。学習観の転換というキーワードも出ていましたけれども、学習観とか教育観の転換を起こすような経験というのを大学にいる間でもすごくしてほしいという思いで座学とかもやっている部分がある。
実践の場にどんどん出ていきたいというのはすごく分かるんですけれども、ただ、そこで学んで、今自分が受けてきたような教育ができるようになるという、実践力をつけるというだけではなくて、そういう学習観・教育観の転換を起こすような経験をどこかでしてほしいなという思いがあるんですけれども。そういう経験をしたのであれば、それが実践の場だったのか、教科の中の授業の中の場だったのかというところも含めてお伺いしたいというのが1つ目です。
2つ目が、ちょっと話しにくいと思うかもしれないんですけれども、こういうことも、例えば、外国籍の子供への対応も防災もAIもというのはすごく分かるんですが、その分恐らくどこかカットしていかないと、学生の負担が増える一方になってくると思います。なので、現在の教員養成課程を受けていての負担感と、あと、ここだと言いにくいかもしれないんですが、どこをスリム化できると思っているかというのも、もし率直に学生の意見を聞けたらありがたいなと思います。
以上です。
【秋田部会長】 山辺委員、ありがとうございます。委員の先生方、貴重な御質問ありがとうございます。
それでは、今のこと全て、7人の委員の質問全てに答えようと思わなくて結構ですので、今の発言を聞いてということで、順に御発言をいただけますでしょうか。じゃあ、最初に、兵庫教育大のほうからお願いしていいですか。どなたからでも結構です。
【兵庫教育大学 高橋さん】 兵庫教育大学の高橋です。
白水様の御質問でありました現職の現場の先生との関わりについてのところなんですけれども、実際に小学校実習の際に、私たちは附属の小学校に実習に行かせていただいたのですが、1クラスに大体大学生が4人ほどつく形になっておりまして、大体1人3回授業を行うんですけれども、最終日の辺では、大学の先生でしたり、ほかの学年、ほかのクラスの先生、実習生などが見に来る特別な授業がありまして、それを学生でつくっていく際に特に感じたのですが、毎日放課後に、本当に定時ぎりぎりぐらいまで先生たちがすごく寄り添ってくださっていて、板書の取り方であったり子供たちとの接し方という部分もあるのですが、授業づくりについてとても寄り添っていただいたので、私はとても実習が楽しいと思えたり、学べる空間で、とても充実していたと感じております。
なので、それはとても、兵庫教育大学は実習の機会も多くて、どの実習もそう感じることが多かったので、これがこちらからの意見とさせていただきます。失礼いたします。
【秋田部会長】 高橋さん、ありがとうございます。残りお二人、柏木さん、古本さん。
【兵庫教育大学 柏木さん】 兵庫教育大学の柏木です。
まず、教育系大学に入ってよかったこと、印象に残っていることとしては、入学してくる人みんなが教員になることを望んで入ってくるので、周りがどういうふうに授業をつくりたいかとか、指導案を作るときに、どうしたらいいと思うというふうに周りに聞いて、より面白いというか興味深いような授業を考えていけるというのが教育大学に入ってよかったことかなというふうに感じます。
私が目指す校種としましては、中学校の英語に就くことを希望しておりまして、私は教職に就くことに、実習なども踏まえて、より教員になりたいなというふうに思ったんですが、周りでは、実際に授業をやってみて、私、教員向いていないわとか思って違う道に進もうとしている友人も見られます。
教職課程の負担感というか、今、フラッグシップ大学のカリキュラムで兵庫教育大学が、私たちが発表した学習観の転換であったり、学校防災、デジタル学習環境についての学びを取り入れているんですが、その代わりに、心理学、児童心理とかそういう15回あったのが2個あったんですけれども、それを半分にして1回の前期で受けられるようにして、新しくカリキュラムを入れたりとかいうふうにしています。
私からは以上です。
【秋田部会長】 ありがとうございます。
それでは、古本さん、お願いします。
【兵庫教育大学 古本さん】 兵庫教育大学の古本です。幾つかお答えさせていただきます。
まず、教育系の大学に入ってよかったこととしては、同じ志を持った仲間が多くいるという点です。目指す校種のところにもつながってくるんですけれども、私自身、高等学校の英語教諭を目指しておりまして、今年度、2024年度から、兵庫県は3年次で教員採用試験の1次試験を受けることができるようになって、そういった際に、教員採用試験に向けて一緒に、一般教養であったり勉学を共に、教員採用試験に向けて一緒に頑張れる仲間がいるというのは非常に心強いなというふうに感じておりました。
また、目指す校種に関して迷いがあるかということに関してなんですけれども、つい最近から、もう少し教育を広く見える業界にも目を向けてみたいなというふうに思い始めておりまして、そのきっかけというのが、日本の文部科学省さんとドイツの家庭高齢者女性青年省のほうが連携して行っております日独学生青年リーダー交流事業というものに昨年の9月に参加させていただいておりまして、そのときに広く教育について他大学の学生と意見を交わす場があって、学校現場だけにとどまらずに広く教育に携われるという道もないのかなという、前向きな方面での迷いというものがあるというのが個人的な現状です。
実態に応じたとおっしゃっていらっしゃる、申し訳ございません、名前があれですけれども、実態に応じた学びという点に関しましては、例えば、先ほど申し上げた日独学生青年リーダー交流事業で出た議題として、部活動を廃止するという意見に対して日本のほうから出た意見として、スポーツをする機会が減少してしまうのではないかという懸念が出ていたのが実際にありまして。
子供たちがスポーツであったり様々な活動、勉強以外の活動に触れる様々な経験を行う、インクルーシブのほうにもつながってくると思うんですけれども、異文化だったり異年齢間の交流といったものが行える場が部活動という場として設けられていたのも現状で、実際に学校現場を貸し出して、部活動のようなものを行うであったり、子供たちの経済的な事情で様々な経験をする場がなくなってしまうというところに懸念点を示している日本団も非常に多くおりまして。
そういった面で、多忙さという面では教員の実態というので申し上げさせていただいたんですけれども、子供たちと教員の実態に応じた制度の導入というものをお伝えさせていただきました。
私からは以上です。
【秋田部会長】 ありがとうございます。
それでは、続きまして、東京学芸大学の髙橋さん、お願いします。
【東京学芸大学 髙橋さん】 東京学芸大学の髙橋です。いただいた質問に幾つかお答えさせていただこうと思うんですけれども。
まず最初に、松浦様からいただいたTokyo Education Showの運営に関するお話ですが、このイベントは一番初めが、今回も代表を務めた田﨑智憲という1人の思いから立ち上げたというのが実際のところになります。構想を練って、それを副学長の佐々木先生や、当時は東北大にいらっしゃった堀田龍也先生にお話を持っていって、そこからだんだん話が膨れて、前回のTES2023の開催に至ったという流れがあります。
ここの仲間集めの点については、もちろん私も関わっておりまして、TES2023、第1回のときには、まずは代表の知り合いから近くの学生たちが集まって運営していて、実際にイベントを行うまでには、もっと運営の人数が必要ということで公募をかけて、SNSだったりでかけていったというのが実際のところであります。
このときに、私もその際、SNSで募集しているところにジョインしたという形になるんですけれども、参加していく我々の身としては、私は当時、大学受験成功して、長野県が地元なんですが、上京してこれから頑張るぞと思い切り意気込んでいるタイミングでの募集だったので、これはよく分からないけれども、何が何でも面白そうだからやってみようという、そういった気持ちで入っていったというのがありました。
でも、ジョインしていく中で、代表が何度も何度も思いを伝えて、どうしてこういうことをしようと思ったのか、何を目指しているのか、そういったことを何度も何度も話してくれる中で、この人についていきたい、もっと未来の教育は面白くなりそうというふうに感じて参加していったという経緯があります。
そして、続いて、白水さんのお話の中で、実際に私たちも早期の実践が必要だというような話をさせていただきましたが、具体的にどういうことかという御質問をいただきましたが、実際に大学の授業では、本を読む講読の授業だったり、ビデオを見てそれを分析したり、教授からお話しいただいたり、そういったことをもちろんしているんですけれども、私たちの感覚としては、もっと長期的にじゃないですが、継続して固定の子供たちの様子を何度も見に行ったりだとか、現役の先生と一緒に指導案を作るや、授業をつくるときにどういったことを悩んでいるのかというのを間近で見られるような機会があったらいいなというふうに思っているところがあります。
そして、真島さんの質問の中で、学習観の転換をするに当たって、自分たちで学び取った感覚が欲しいんじゃないかとか、学外生との交流も必要なんじゃないかというお話があったかと思いますが、本当に私もそのとおりだなというふうに感じている部分がありつつ、学び取った感覚が欲しいんじゃないかなという部分に対しては、それを自覚している学生というのは実は少ないなというふうに感じているのが現実です。
ただ、大学で与えられたカリキュラムだけでは、自分は勉強し切れているんだろうかというふうに不安を覚えつつも、ただ、自分で踏み出していきたいんだということに気付けている学生というのは少ないかなというふうに感じています。
どうしてこんなことを思うかというと、私自身が実は、昨年度、今年度、2024年のうちに、教育若者キャンプという自分たちで学生が集まって日本の見に行きたい教育を見に行こうよという企画をやりまして、そのうちの1つに、こちらの中教審にも関わっていらっしゃる堀田先生のお助けの下で、熊本県の天草市にある島の小学校に行かせていただいたことが経験としてあります。
【秋田部会長】 ちょっと短めにお願いします。
【東京学芸大学 髙橋さん】 分かりました。
そういったように、大学で今まで授業で見ていたものが、実際に目の前で広がっているものを見たときに、自分はこうやって学びをしたかったんだなということに気付けたというのがありました。
なので、学び取った感覚が欲しいというふうに気付いている学生は少ないなと思いつつ、実際そうやって動いている学生にどんどん集まったり、そこに共感して自分たちで学びに行くという流れが生まれてきたらいいんじゃないかなというふうに思います。
すいません。長くなりましたが、以上です。
【秋田部会長】 どうもありがとうございました。
本当は皆さんからの御質問について、いろいろ御意見を伺いたいところではあり、皆様の御質問全部に答えていただくとよろしいんですが、今日のスケジュールから4人の皆様にはここまでということで、質疑のほうは終わりにさせていただきます。続いて、森田委員からの御発表をお願いしたいと思います。森田委員、どうぞお願いいたします。
【森田委員】 立命館大学、森田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。このような機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
今後の議論に関わることで日頃私が考えていることについて、本日は発表させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。時間の関係がありますので、教職課程の課題は非常に広うございますが、ポイントを絞って発表させていただきたいと思います。
大学の教職課程の課題として、これも様々ありますけれども、1つ目にありますような学習指導要領の改訂によって子供たちの学びが変化していくことが求められているのであれば、教職課程の学びの内容・方法など自体も変化していかなければならないであろうと考えています。これは今後の議論の前提になることだと思っています。
しかしながら、現行の免許法施行規則が定めるような事項の区分、それから、教職課程コアカリキュラムがございますけれども、これらは全体を網羅する、あるいは網羅したいという、そういった原理が非常に色濃く働いているがゆえに、大学からすれば、細分化された科目を置かざるを得ないし、学生たちも学校種・教科ごとに定められた必修科目を履修モデル的に履修していかざるを得ない状況を生み出しています。
そういったことを考えますと、大学や学生の双方にとって自由度があまりにも少な過ぎることになりますので、学生は受け身の学習に陥りがちになることが多いのではないか。いわゆる教職課程の学び自体にも余白がないというような状況になっていると思っていますし、先ほども少し議論がありましたように、教職課程の学びにおいて、自らの問題意識に従って専門性を高めていくような履修が非常に難しくなっていると思います。
こういった現状において、学校現場の変化を含めまして、新しい課題が生じるために新しい事項を付け加えていく、こういった方向で教職課程を考えていくことは、もはや限界に来ているのではないかと思っています。
教職課程の内容や学修方法をしっかりと整理せずに新しいもの次々にを加えていけば、教職課程のカリキュラム・オーバーロードという実態に、より一層拍車をかけていきますし、それによって、学生の自主的な学びを妨げるとともに、教職課程の履修継続を更に困難にさせていくということにもなりかねません。
3つ目になりますが、教師としての資質・能力の育成というのは、いわゆる免許法上の必修科目を中心とした教職課程、これは言わば狭義の教員養成といってもよいかもしれませんが、そこだけ切り出して考えるのではなくて、大学全体の学び、つまり124単位全体の中で教師としての力というのは育成されていくので、そういった広義の教員養成というような視点を加味する必要があるのではないかと思います。
そして、最後になりますが、大学が今後改革を進めていけばいくほど、教職課程を設置しづらくなる制度になっていないか。この辺りも重要な検討課題になると思っています。強みや専門性を持った教師を養成するためには、現在のような学科等を基礎単位として教職課程を設置することが本当に最善の方法なのか、この点についても改めて検討が必要ではないかと考えております。
資料では、平成27年の答申を引用しましたけれども、ここでいわれているように、養成段階というのは、教師となる際に必要な最低限の基礎的・基盤的学修を行う段階である、この点は私たちも改めて意識しながら今後の方策を考える必要があるのではないかと思います。
その上で、下側の矢印部分に示しましたが、養成と研修の在り方やそれぞれの役割をどう考えていくのか。それから、学士課程と大学院の役割をどう考えていくのか。この辺りを踏まえまして、学士課程の教職課程というのは、免許を取得して教壇に立つスタート地点を保証するものだ、そういった前提に立って精選していく必要があるのではないかと考えています。
また、大学全体の学びを加味しながらも、学生が主体的に選択しながら自らの強みや専門性を伸ばすことができる教職課程にどうやって変えていくのかを考える必要があるだろうと思います。
それから、学校現場での即戦力の育成という、もちろん、その育成というのは非常に大事であるのですが、それだけに偏るのではなくて、今後、予測不可能な将来の課題に対応できるような力も教職課程で育成する必要があります。
そして最後の点になりますが、学習観、授業観、研修観、そういったものの転換を図っていくことが目指されている時代にあって、思い切った養成観の転換のようなことも図っていく必要があるのではないかと考えています。
そのために教職課程に必要な事項でありますとか到達目標の在り方を見直して、各大学が育成する教師像を明確にして、それに向かう学修内容を充実させて、効果的で体系的な授業科目を大学が主体的に設定することができるような仕組みを考えていく必要があるのではないかと考えています。
そのためにも、細分化された学科等だけではなくて、大学全体の特色を活かしながら、大学全体の教育力で支える教職課程となるような仕組みを検討する必要があるのではないかと考えています。
それから、あらかじめ決められた項目を網羅するような学びは最小限に厳選しつつ、繰り返しになりますが、自らの強みや専門性を高める領域を重点的に学ぶことができるような、それを学生が選択して学んでいくことができるような柔軟なカリキュラムに変えていったり、様々な教育課題について学術的な裏付けのある実践を構想する方法を主体的に考え、学生たちが探究していけるような科目を配置することができるようにしたりすることも必要ではないかと考えています。
そして、オンライン授業、それからオンデマンド教材なども、教員養成において効果的に活用していく方法についても考えていく必要があるだろうと考えております。
次に、教職課程を柔軟化させていくということと同時に必要になることかと思いますけれども、教職課程の質を保証・担保していくためにも、現在行われています教職課程の自己点検・評価や全学的に教職課程を実施する組織の整備などは、各大学で更に充実させていくということが不可欠だろうと考えます。
もちろん、ピアレビューでありますとか、大学間での質保証というものを行う仕組みの充実も必要であると考えています。
さらに、現在、高等教育の改革の議論の中で、大学院の課程や教育研究の質をどう担保するかということだけではなくて、学生一人一人の能力を最大限に高めていくことが求められている状況を考えますと、それでは、同じ大学の中で行われる教員養成としては、この点をどう受け止めていけばよいのかというところもしっかりと考えていく必要があるだろうと考えています。
現在は、教職課程の質保証といった場合、主に養成機関と担当教員の質を担保していくということが中心になっていると思いますけれども、それだけで果たしてよいのか。様々な方法があると思いますが、例えば、教職課程において学生の獲得した資質・能力の基礎的な部分は大学間で共通に確認する等々、免許の質を保証するための多様な方法についても検討していく必要があるのではないかと考えています。
そういったことを踏まえて、教職課程の学びの在り方について考えていく必要があると思います。先ほどからの議論にもありますようも、令和4年の中教審答申の中で、子供たちの学び、授業観・学習観、そういったものを転換していくということが提言され、新たな教師の学びの姿の実現を目指すということが指摘されています。
主体的な姿勢、継続的な学び、個別最適な学び、そして協働的な学びとして示されている新たな教師の学びの姿や、理論と実践の往還を実現していくために、教職課程の学びの在り方も考えていく必要があるのではないかと考えています。
最後の点になりますが、学びの高度専門職としての教師像を実現するためには、子供たちの学びを支援・伴走しつつ、学習目標に子供たちを到達させるための教育実践をしっかりと省察していくということが必要になりますし、そこでの客観的な事実を基によりよい授業をつくっていく、そういった力を身につけていくことが不可欠ですから、そのために教職課程はどうあるべきかという視点で検討していく必要があるのではないかと考えています。
教職課程における理論と実践の往還につきましては、御承知のとおり、教職大学院が既にキーワードとして実践に取り組み、この間実績を積んできておりますので、教職大学院の授業実践の成果や、また、教職大学院でなされている教育臨床研究、教育実践研究と言ってもよいかもしれませんが、そういった取組を参考にしながら、教職課程の学びの在り方について検討していく必要があるだろうと思っています。
その一方で、現在の教職大学院についても、やはり現在の学校組織でありますとか教育実践の課題に焦点が当たりがちという仮題がありますし、特にストレートマスターに関しては、臨床的な研究を充実させるというよりは、実践力の向上というところに重きが置かれたりするケースもあると思います。専門職大学院であるという性格は維持しながらも、目の前に起こっている実践的な課題への対処法を考えていくということだけではなくて、教職生涯を見据えて、学びの高度専門職として自ら課題を設定して、その課題解決に向けて研究し、授業等を開発していけるような探究力・研究力を更に身につけられるような、柔軟なカリキュラム編成を教職大学院にも可能にしていく必要があるのではないかと考えています。
さらに一般の研究科の専修免許状課程におきましても、ここはいろいろな議論があると思いますが、履修上の様々な負担等を勘案しながら、研究科で育成する教師像に即した教育の臨床的研究も組み入れていく必要があるのではないかと考えています。
そして、今お話ししたような教職大学院の臨床的な研究につなげていくためにも、特に教員養成学部等においては、研究基礎力を養成するような科目を更に充実していく必要があるのではないかと思いますし、既存の卒論やゼミ等の在り方が本当に今のままでよいのか検討し、必要に応じて見直していくということも必要ではないかと考えています。
また、養成大学・学部と教職大学院の5年一貫制が制度化されていますけれども、この取組をもっと推進していく必要があると思います。
最後の点になりますけれども、大学院レベルの養成を考える場合、国公私立の養成全体を俯瞰しますと、教員養成学部と一般学部、教職大学院と一般大学院、この組合せで複数のルートが存在しますので、複数のルートがあることを念頭に置きながら、それぞれのルートでどういった強み・専門性が育成できるのかというところを考えつつ、修士レベルまでを一貫して、教員を養成していく方策を考えていく必要があるのでないかと思っています。
最後のスライドになります。その他の関連する議題について、何点かあげております。1つ目は、教員免許状更新講習の発展的解消の後、特に一般大学が教員研修に組織的に関わる機会が非常に減ってきていると思います。立命館大学教職大学院も、教職員支援機構と連携させていただいて、教職員支援機構の地域センターの指定を受けていますけれども、より多くの大学が教員研修の場に関わっていくようなことも考える必要があるのではないかということです。2つ目は、養成と採用についても、どのように接続していくのかということも重要な課題になってくるのではないかと考えています。
そして、最後になりますけれども、特に大学院レベルの学修において獲得した強み・専門性というものを端的に表現できるような専修免許状の在り方についての検討が必要ではないかという点と、合わせて、二種、一種、専修免許、それぞれの性格がどういったものであり、何を担保するものなのかということを再検討する必要もあると思います。そして、養成観の転換に臨むのであれば、それを実現するための課程認定基準の在り方などについても、改めて広範な議論が必要になるのではないかと考えているところでございます。
以上、まとまらない発表となってしまいましたが、こういった視点をぜひ検討いただきたいと考えておりますので、御報告させていただきました。御静聴ありがとうございました。
以上でございます。
【秋田部会長】 森田委員、どうもありがとうございます。体系的に貴重な御発表をいただきました。ありがとうございます。
それでは、これから、今の森田委員の御発表、それから先ほどの発表についての御意見も含めて、御意見、御質問があればお願いをしたいと考えてございますけれども、今から20分強取りたいと思いますので、お一人一、二分程度で御意見をいただけたらと考えております。時間をちょっと過ぎましたらこちらで切らせていただくというような形にさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、まず、松木委員、どうぞお願いをいたします。
【松木部会長代理】 松木です。
今、森田委員さんからの話の中で、養成観の転換、これは本当に大切だなと思っております。それに絡んで3点ほど意見を述べたいと思います。
1点目は、先ほど学生さんから実践が不足しているのではないかという話がありましたが、むやみに学校任せの実習を増やせばいいというものではないことは確かです。それについて、白水委員さんのほうから、現職の先生の授業研究に参加しながら、実際に成長しているその場に立ち合うような中で実践を身につけていくということが重要ではないかというような意味での質問があったかなと思います。
それを実行していくためには、実践に強くコミットするような大学の教員がいないことには始まらないように思います。その面で見ますと、教員養成の大学の教員の育成の仕組み、それをやはりつくらなければ、これ以上教員養成の養成観の転換というのは難しいのではないかなと思っております。
同じく、実践を増やそうと思うと、次に抵抗感を示すのは事務職の皆さんです。今以上に授業の予定が複雑になり、トラブルも生じますので、教務を担当している方々の負担が増えます。ですから職員の方自身が、今教師が何を求められているのかを知り、養成観の転換ということが求められているように思います。そのためにも、教務を担当する職員が、修士課程あるいは教職大学院等へ進学できるような仕組みが必要だと思います。
2点目、養成観の転換で必要となる点についてですが、これまでの教員養成で日本が取り組んできた開放制と計画養成の両立、このよさを更に伸ばしていく意味での養成観の転換が必要だと思います。特に開放制に関して見れば、高度な専門性を持った大学院生が簡単に、より免許を取りやすいするようにするための工夫が必要ですし、計画養成に関しては、子供の発達全般、あるいは教職の使命ということについて学べるよう、複数の免許をもって小学校から高校までの子供たちの様子を描けるような、あるいは、複数免許をもつ教員の育成が求められるように思います。
3つ目として、養成観の転換をしていく意味では、少子化の中で大学も教育委員会も縮小していかなければいけないような状況です。この中で、大学と教育委員会の連携、様々な連携の仕方があるのかなと思いますが、大学と教育委員会が一体となった教師教育体制の構築を更に進めなければならないと思います。
これについては例えば、フラッグシップ大学にそういったことを期待しながら、実際それを示してくれるように求めていくことも必要ではないかと思います。
以上3点でした。
【秋田部会長】 松木委員、3点の御発言をありがとうございます。
大勢お手を挙げていただいてありがとうございます。まず先に、1巡目の方に御発言を指名させていただきます。ちょっと順が違ってすいません。佐古委員、お願いいたします。
【佐古委員】 ありがとうございます。
松木先生のお話ともかぶるところがありますし、森田先生の養成観の転換というのは非常に大事な方向性かなと思っております。これはこれまで教職課程が学生に学ばせる内容と範囲を規定するというような考え方で改善されてきたと思うのですが、学生の学びの質を取り入れて、そういうものを充実させるという方向での転換が必要だというふうに考えました。それは先ほどの学生さんのいろいろな発表の中にも出てきたことだと思います。
要するところ、学生さんが主体的で探究的な学びを教職課程で実現できるということのためにどうすればいいかということで考えていくべきかと思っております。
基本的には、教職課程の今の現行の体系の中で言うと、大学が独自に設定できる授業科目をかなり豊かに増やして、各大学がそれぞれ養成すべき教員像と、それから特にその中で主体的・探究的な学びというものを実現するような工夫を入れるような授業科目を設定していくという方向があるのではないか。
2点目は、特に教職大学院の設置、重点化以後、実践力という名のすぐに役立つものの習得にかなり重点が置かれるようになったことです。学生さんにとってみると、何でこれが必要なのか分からないままに、教師にとって必要だからということで学ばせるような状況が加速しているように思っております。
そのためには、実践研究という言葉を森田先生はお使いになりましたが、そういう課題に対する分析力であるとか課題の把握力というような研究的な能力を育成するという方向での教職課程の充実が求められるのではないか。特にこれは教職大学院レベルで、現行の教職大学院が専門職大学院になったわけで、職業的な訓練ということに重点を置かれているように思いますが、そのことと教師としての研究的な能力の育成は矛盾しないと思いますので、そういう方向での捉え直しも必要ではないかと思っております。
3点目、免許の種類です。私も教職大学院の教育に関わってまいりましたけれども、専修免許というものの意味がよく分からない。特に一種免許と何が違うのか。単にこれは学歴が違うということを免許状の種類で表示し直しているだけではないかという思いがあります。
というのは、専修免許というのは教職大学院でも取れるし、一般の専門大学の修士課程でも取れるし、一体この違いは何なのかということについてはほとんど説明がなされていない。免許状の体系からいうと、仮に一種免許状を基礎的な免許と考えたときに、恐らく基礎的な免許の上に学生さんがどのような専門性を持つかということを表示するような免許状の方向に変えていくほうが望ましい、分かりやすいと思います。
だから、専修免許よりも専門免許みたいな形にしまして、大学院で学んだことの専門性を表示できるような免許状の方向に変えることのほうが、教職大学院の教育の改善につながっていくのではないかと思っております。
以上、3点意見です。
【秋田部会長】 佐古委員、どうもありがとうございます。
それでは、続きまして、小原委員、お願いします。
【小原委員】 ありがとうございます。森田先生に特に反論するのではなくて、あえて付け加えさせていただきたい点です。
先ほど教職大学院5年一貫制というのがありましたが、それを一般の研究科でもできるような制度改正をお願いします。教職大学院は非常に運営しにくいセクションです。国立大学だから可能であって、私学が開放制でやっているにもかかわらず七大学しか手を挙げていないというのは、経営的に破綻しているからなんです。設置基準が私学には厳しいのです。
それに対して、私学は研究科を残して、そこでも免許を出すようにしたのは、30単位でできるからです。そこで、研究科でも学者養成とは別に専修免許課程のようなものを設置し、大学院科目を学部時代に先取り履修して、学士の卒業要件に参入すると同時に、大学院の科目履修の単位認定ができるようにしていただけると、比較的早く専修免許にたどり着きます。
高等学校の卒業要件の中に大学の科目を参入してもいいという制度があります。それと似たように、学士課程の卒業要件に大学院科目も参入するし、併せて進学した際には、単位認定を大学院の科目として認定する制度、これをしていただけるとより多くのストレートマスターが増えるのではないでしょうか。
結局、2年かけて専修免許を取って現場に行っても、一種免許と収入が変わらないということから、誰も2年分収入を放棄して、更に授業料を払ってまで免許は取りません。そういうのもあって、私学の教職大学院も学芸大以外は定員割れしている。ですから、教員の給与を改定するのに併せて、行って意味のある、それでしかも短い期間でということにしないと、なかなか教職志望者は増えないと思うんです。
教育委員会としては二次試験で3倍を理想としていると聞いています。現状からどうやって3倍に上げていくか、今言ったような単位数を変わらずにしても、制度上取りやすくしていただくのも一つです。改革していくのも1つではないかなというのを森田委員に付け加えさせて、述べさせていただきました。
以上です。
【秋田部会長】 小原委員、ありがとうございます。
それでは、続きまして、吉田委員、お願いをいたします。
【吉田委員】 ありがとうございます。
私ども中学・高校の立場で教員免許状というものを考えたときに、今、御承知のように教員不足ということで、いろいろな方策が取られています。先ほど兵庫県が3年生からコンピュータで文化財の二級試験を受けられるというようなお話もありましたけれども、その前に今、教員免許自体が大幅に改善されてきています。その1つに特別免許状というのもあります。
特別免許状に至っては、全く教職課程関係ない人、そういう人たちが取れてしまうような免許状もある一方で、こうやって今日御説明いただいたように、フラッグシップの大学において一生懸命検討していただいているような教育を専門とする大学で取る免許状の方と、それから開放型の大学で取る方と、そして特別免許状で取る方、じゃあ、一体どこがどう違って、何がどうなのか。
そういうときに、私は、今、教員になりたいと思う人たちもいろいろな不安が残っていると思うんです。あると思うんです。やっぱり昔と違って、先生というものが決して尊敬される立場にないという言い方は変ですけれども、モンスターペアレンツ等の対応に追われるような日々だとかブラックだとか言われている中で、先ほど学生さんたちの話にあった、子供たちと学び合うこととか接して楽しかったという話がありましたけれども、本当は楽しい仕事なんですよね。我々もいまだに、生徒たちが成長していく姿、一緒にいて楽しいんですよ。
そのために、教員として必要なものは何かという最低基準みたいなものを何か教職の中でしっかりうたって、今、極端な言い方をしたら、普通の経済学部に行って、経済の自分たちの学士号を取るためのことをやりながら、社会の先生になるために教職課程を取るといえば、また何十単位と負担が来る。じゃあ大変だからやめてしまおうと言って、せっかくいい先生になれる人もならなくなってしまうということになったら、私はもったいないと思います。
ICTの問題とか生成AIの問題とかが逆に今回は増えてくるような感覚があるかもしれませんけれども、これは私は大学、どの学部・学科を通して同じだと思うんです。社会に出たら誰だって、これから先、生成AIもICTもちゃんとできなかったら通用しない時代ですから、これは大学の中の教育の中に組み込めば済む問題であって、教師になりたい、教員になって子供たちと一緒に組んずほぐれつしながら自分が成長したいと思う人たちが先生になれるような教職課程にしていただければなという願いというか思いがありますので、よろしくお願い申し上げます。
ありがとうございました。
【秋田部会長】 吉田委員、ありがとうございます。
それでは、続きまして、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】 ありがとうございます。遅れて参りまして、失礼いたしました。学生の皆さんのお話が聞けなくて、とても残念でした。
森田先生、ありがとうございました。先生のおっしゃる養成観の転換ということについて、全く賛同いたします。1点だけ、時間がないようですので、今後の検討課題として、ぜひとも、森田先生の資料で言うと4ページにありますが、学士課程の教職課程が何をすべきかというこの辺りについて、しっかりと検討する必要があるんじゃないかなと思っています。
私は、教職に就いた方にまず必要な力というのは、大学で今やっていらっしゃる初年次教育、大学で学ぶためにはどういうことをしていく必要があるのかというような内容が、教職に就いても大変重要なことだと思っています。
実はどの仕事に就くにしても、大学での初年次教育というのは非常に有効だと思っていまして、各大学のなさっているいろいろな取組をしっかりと視野に入れながら、学士課程でどういった力をつけるのか、それは森田先生の資料にも書いておられますように、教壇に立つスタート地点をどう保証するかというところをしっかりと具体化して、そのためにどんな取組をしていくのかと考えることが、令和4年答申にもあった流れにも合致すると思っておりまして、ぜひこういったことの検討を今後お考えいただければありがたいと思っています。
以上です。ありがとうございました。
【秋田部会長】 荒瀬委員、ありがとうございます。
それでは、続きまして、橋本委員、お願いいたします。
【橋本委員】 橋本です。免許状に関して、先ほど森田先生のお話にもありましたけれども、時間的制約の緩和あるいは経済的支援等によって、高度専門職としての教職大学院修了者を増やして教育の質を高めていくということについては何の異論もないんですが、教職大学院を修了して専修免許状を取得し教師になった方がいざ学校現場に出てみて、仕事の範囲や裁量、あるいは評価や昇進等において、他の方と比べあまりメリットがないといいますか、差がないというのは、率直に申し上げてちょっとどうかなという気がしました。
私はビジネス界の人間ですので、すぐインセンティブや実質を考えてしまうのですが、これは多分、これから教師を目指す方にとっても同じような気持ちがあるんじゃないかなという気がします。
教職大学院を修了して専修免許状を取得して、高度な専門知識がその方にあるということは証明できると思いますが、それだけで教職大学院に行くことが魅力的な選択肢になっているかというと、それはちょっと難しいんじゃないかなと思います。やはり大学院に行ってレベルの高い手法を学んで、学校現場でそれを活かしていくということを確実にするためには、現場での待遇とか、あるいはキャリアパスにおいて具体的なメリットがあったほうがいいんじゃないかなという気がします。
それと、もう少し幅広く考えると、免許の在り方について、今、二種、一種、専修という3つの免許種別があるということですけれども、これも担える業務とか役割の違いというのはあまりはっきりしないというふうに伺って、これも何故なのかなということを率直な疑問として思いました。
どの免許でも同じで、あまり差がないというのであれば、私がずっとビジネスの世界でやってきたことからいうと、制度を合理化して、教育現場のニーズに応じて、よりシンプルで効果的な免許制度を構築した上で、その上で一生懸命レベルを上げていく先生について、それに応じた処遇を与えていくという方が教員の方々の職業的な成長も促進されますし、クオリティーの向上にも寄与するのではないかというふうに感じました。
これまで様々な積み重ねがあって今の制度が作られていると思いますので、乱暴な意見かもしれませんけれども、率直な感想として受け取っていただければありがたいと思います。
以上です。
【秋田部会長】 橋本委員、どうもありがとうございます。
それでは、続きまして、森山委員、お願いをいたします。
【森山委員】 まず、兵庫教育大学並びに東京学芸大学の学生の皆さん方、御意見ありがとうございました。また、森田先生におかれましては、課題2について詳細にかつ整理をしてお示しいただきまして、ありがとうございます。
私からは、教職課程の在り方を議論するに当たって、何点かベースになるところ、まず前提にしなければならない点を少し整理したいと思っています。
1点は、教員養成における大学の位置をどのように理解するのかということです。学位を扱い得る機関である唯一の機関ですから、大学においての教員養成を原則とし戦後スタートしているわけです。一方、大学においての、教員養成の現状については、それぞれいろいろな立場から批判もあろうかと思います。ここに教員養成における大学の位置を明らかにする重要な点が存在するのではないかと思います。
2点目は、社会の大きな変化の中で、教師像をどのように捉えていくのかということを真剣にまず考えなければいけないのではないかという点です。
3つ目は、教員養成における質的なものの確保と、それから量的なものの確保、この双方向から制度とかフレームをどのように描いていくのかということを検討する必要があるのではないかと思います。
それから、最後、4点目ですけれども、これは養成段階としての実践的指導力の基礎等を踏まえて、学士課程における基本的な点として、養成段階において教育の理論と実践をどのように捉えるのが必要なのか。こういう基本的な視座を的確に捉えていくことが必要になろうかと思います。
これはいずれの点におきましても、昔から言われていることを今どのように解決していくのかという、古い問題の新しい解決を探るということが根本にあるのではないかと思いました。
具体的には、このような4点を踏まえて、学生の学力と適性の関係をどのように捉えるのかとか、あるいは、教師の専門性は教員免許によるものだと捉えるわけですけれども、免許を持っているか持っていないかだけでは教員としての専門性というのが明確に示されていないのではないかと思います。
あるいは、学び続ける教師像においても、今日、山辺委員からもありましたけれども、新しいものをつくっていく教師像の基礎というのをどのように捉えて大学教育全体では生涯学習の基礎とすることが示され、大学教育全体において取り組まれていますが、これが教職課程の教育としてはどのようなものなのかということを明確にするという、こういう段取りが必要なのではないかということを切実に感じました。
以上です。ありがとうございました。
【秋田部会長】 森山委員、どうもありがとうございました。
本来であれば、今お手を挙げていただいている皆様に御発言いただくべきところなんですが、今日は幾つかまだこの後がございますので、今お手を挙げてくださっている委員の方で必要な方は、事務局までメールで御意見を寄せいただけましたら、議事録に掲載をさせていただきたいと思います。早くからお手を挙げていただきながら、誠に申し訳ありません。
【秋田部会長】 本日は、社会の変化や学習指導要領の改訂も見据えた教職課程の在り方についてということで、委員の皆様からいろいろ学生さんの御意見や森田委員の御意見を基にお話をいただきました。議論すべき点も、また、皆さんも御発言したい内容もいろいろおありだったというふうに思いますけれども、引き続き議論をしたいと思います。
発表のために御準備をいただきました森田委員と兵庫教育大学の柏木さん、高橋さん、古本さん、そして東京学芸大学の髙橋さんには、心より御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。時間の関係で十分ではなくて申し訳ありません。
それでは、続きまして、議事2についてでございます。教員養成フラッグシップ大学の3年目の評価の実施についてということで、主査でございます私のほうから御報告をさせていただきたいと思いますので、資料5のほうを御覧ください。
令和6年度は教員養成フラッグシップ大学としての指定からちょうど3年目になるため、教員養成フラッグシップ大学の推進委員会におきまして、書面評価に基づいた合議評価を行いまして評価結果及び助言等をまとめましたので、こちらに御報告をさせていただきます。
先般開催されました第145回教員養成部会において、各大学より御説明をいただいた授業科目などに加えまして、成果目標とそれから今後の展望、全国的な教員養成ネットワークの構築と成果の展開の進捗状況等について、取組状況を御報告いただきました。それを踏まえまして、委員会として、委員の総意としては、兵庫教育大学をS評価、東京学芸大学、福井大学、大阪教育大学をA評価と判定をさせていただきました。
個々の大学の評価の結果の詳細につきましては、資料の2項目めにあるとおりでございますが、簡単に3年目評価における4大学における総論につきまして、ここでは御報告をさせていただきます。
まず、4大学ともに、それぞれの計画に基づいて、状況や特徴を生かした個性あふれる教員養成フラッグシップ大学の構想をより一層明確にし、先導的・革新的な教員養成プログラムの開発、実装、評価、改善など、多種多様な取組を着実に実施して成果を出しつつあるということでございます。
そして今後、引き続き、教職課程の在り方等の検討に資するような成果発信や、それから、広くどの大学でも実装可能かどうかということの実際のこれから検証や協議が求められるということです。
そして、3点目として、全国展開に資するような共通の汎用的な部分と、それから各フラッグシップ大学の個性的な部分の両者を追求するような教員養成フラッグシップ大学を模索しつつ、展開を発信していく、成果を発信していくことを期待したいとしております。
本件につきましては、何か御質問や御意見があればお伺いいたしますが、いかがでございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
教員養成のフラッグシップ大学の皆様におかれましては、本当に御尽力を4大学にはいただきまして、誠にありがとうございました。また、本日も諮問を受けまして教員養成課程の在り方を議論していただきましたけれども、教員養成フラッグシップ大学の取組も踏まえながら、今後も検討を進めていくことが重要だと強く改めて感じているところでございます。
以上が本日準備しました議事の2でございますが、こちらを終わりにさせていただきたいと思います。
それでは、最後に、事務局よりお願いをいたします。
【石川教員免許・研究企画室長】 改めまして、教員免許・研修企画室長の石川でございます。今後の教員養成部会の進め方について説明させていただきますので、資料6を御覧ください。
教員養成部会につきましては、今後、月1回程度、場合によっては2回やる月もあろうかと思いますけれども、諮問事項の1、2、3を順番にやっていきたいと考えてございます。
本日は、諮問事項の1につきまして、この青枠で囲んであるところですけれども、2月25日として実施させていただきましたが、また次回、あるいは次々回ぐらいまでにかけて、諮問事項1については議論させていただきたいと思います。本日、時間の関係上、最後、御意見を賜れなかった先生方もいらっしゃいましたので、また次回の際に改めて御意見をいただければ幸いにございます。
そうしまして、また5月、6月あたりで諮問事項2につきまして、また、7月、8月あたりで諮問事項の3について議論させていただき、8月末ぐらい、夏が終わるぐらいまでには、主な論点と方向性の整理をこの養成部会の中でお示しさせていただければと思ってございます。
この主な論点と方向性の整理ができましたら、その内容によりましては、細かい部分あるいは深掘りが必要な部分につきましては、少し関係の委員を絞った形で幾つかのワーキンググループを設置し、更に深い制度設計等について具体的に議論を賜れればと思ってございます。
その後、またこうしたワーキンググループの報告なども踏まえて、引き続き教員養成部会で議論していき、令和8年の夏、秋頃までに答申としてまとまるというような形で進めることができればいいのかなと考えているところでございます。
私からの説明は以上になります。
また、次回の教育養成部会の日程については、こちらについて、また追って事務局より御連絡をさせていただきます。
【秋田部会長】 御説明どうもありがとうございます。
本日の議事は以上になります。本日、私の不手際で、せっかく手を挙げていただきながら発言をしていただくことができなかった皆様に、本当におわびを申し上げます。
必要なことは、本日、メールで事務局に追って送っていただきましたら議事録に残させていただきますし、また、ただいま御説明がございましたように、本内容での審議はまだしばらく継続いたしますので、また次回以降に御意見を頂戴できたらと思っております。
多分、教員養成部会で生の大学の学生さんの生の声を聞くというのは、初めての試みであったのではないかと思います。こちらも時間不足で申し訳ありませんでしたが、貴重な御発言ありがとうございました。そして、森田委員も本当にありがとうございました。
皆さん、本日は長時間にわたりまして、誠にありがとうございました。それでは、本日はこれで以上とさせていただこうと思います。皆様、お疲れさまでございました。また、オンラインの皆様もありがとうございました。これにて閉会とさせていただきます。ありがとうございます。
―― 了 ――
■会議終了後に頂戴した御意見
【内田委員】
森田委員のご発表の資料3ページ目に関して高等学校の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。
まず3つ目の項目につきまして、
教師としての資質能力の育成は、免許法上の必修科目を中心とした教職課程(狭義の教員養成)だけを切り出して考えるのではなく、大学全体の学び(広義の教員養成)でもなされるという視点も加味する必要があるのではないか
→ということについて、高等学校においては、小中学校と異なり、高大接続との関係もあり、教科専門性が大切である。そのためにも、大学全体の学びの中で、教師の資質能力の育成という視点は重要であると思います。さらに、現行の学習指導要領や次期学習指導要領でも探究や教科横断的な学びが重要視されており、大学での専門的な学びや研究は必ず学校教育の視点上重要になると思われます。また、本日の大学生での発表の中でも教育現場、学校での取り組みについてもっと知りたい、学びたいという希望がありました。例えば、学校に勤めながら再度大学での学びに取り組みたいという向学心のある教員がおり、大学院などに現職で、あるいは休職して学ぶ方も一定数いる。こうした教員経験者に各大学の教職課程でのチューターなどの役割を担ってもらい、それなりの処遇をすることによって、大学生の不安や将来への展望を拡げる機会とすることができるのではないでしょうか。本校においても、卒業生の大学生が高校生の学びや進路についての相談を行うことによって、一定の成果をあげています。
4つ目の項目につきまして、
大学が改革を進めるほど教職課程を設置しずらくなる制度になっていないか。強みや専門性をもった教師を養成するためには、学科等を基礎単位として教職課程を設置することが最善の方法なのか、改めて検討が必要ではないか
→強みや専門性をもった教師の育成は重要であると考えています。本日の小原委員のご発言にもありましたが、教職大学院設置には制約が多く、私立大学にとって経営上も負担が大きいとのことでした。実際、私立大学において教職科目を履修するために時間的な制約や学生が追加で負担する金額が大きいとの声もあります。こういった課題を解決するために、大学内での単位互換や大学間での履修の弾力化、オンライン等の活用など学びの質を担保、保障した上での新たな検討も教員の確保の上から必要ではないかと考えました。
【高橋委員】
教職に関する新たな制度設計や改善に当たっては、まず、その理念を「明確にする」「共通認識を持つ」ことが重要ではないか。例えば、「これまでの主な意見について」の冒頭にある「制度の根本に立ち返って、改めて抜本的に考える」は、「教員養成の理念に立ち返って、改めて抜本的に考える」など、もう一段か、数段の抽象化をしてはどうか。加えて、その理念の共通認識が重要ではないか。
理念を実現するための、よりよい制度になっているかの点検が必要。理念に基づき重要度を検討し、制度の各事項等について取捨選択や修正等をしていくことが必要。現状は、何に基づき判断すべきかが曖昧と思われる。
教員養成も、学校経営も、学習指導も、理念に基づいて進めていくべきと思えば、それらは相似系にあると言えるだろう。例えば、学校経営でいえば、学校の教育目標などの理念は世界的にみても高水準だと思われるが、その具体化や日常化となると、日頃から意識している教員がどれほどいるのか、と考えられる。理念と日頃の行動の乖離が大きいように思われる。管理職も教諭も理念に基づいて、各自で創意工夫して行動するというより、教育委員会等からの新規事項を、ハウツー的に次々と付け足すような行動をとることが求められ疲弊しているのではないか。そこで減じるべきとなり、各事項の善し悪しだけを個別に考え、部分的に減じたとしても、本質的な意味での改善とは言い難いだろう。似たことが教員養成でも起こっているのではないか。こうした点は森田委員の発表と重なるだろう。
複雑化する世の中や、それらに対応して複雑化した制度をより良くするには、改めてであるが、常に理念に立ち返る考え方を重視したらどうか。教員養成段階から、養成に携わる教員も、学ぶ学生も、こうした考え方を改めて徹底し、それぞれが限られた時間での密度の濃い学びとは何かと常に見直して実行していくことが重要ではないか。
理念は、教員養成に積極的にデジタルを導入する際に必須である。さもなければ、既存の制度を少しだけ改善・強化するようなデジタル化になってしまう。紙や郵送などが前提だった時代の制度をそのままに、単にデジタル化しても、作業量が増えるだけとな ってしまう場合も多い。
GIGAスクール構想など、学校教育のデジタル化に対応した学習内容や指導法を学ぶ講義等の充実も重要であるが、その前提は、教員養成そのもののデジタル化である。クラウド環境の特徴である、「非同期・分散」かつ「協働」を積極的に活用する。デジタルによって、普段から場所や時を選ばず学ぶことができ、他者から必要な助言を得て成長していくことを、教員を目指す全ての人が実感できるようにしていく。例えば、必要な基礎的な知識の習得は、動画、AIドリル・問題集などを活用して隙間の時間等で学ぶと共に、対面講義では、実技や演習、議論を中心にしていくことも可能であろう。これらにより講義の実時間を減らしたり、基礎的な知識習得の標準化を図ることもしやすいだろう。社会人も学びやすい。さらに、AIドリル等で習得が確認できていれば、教員採用試験のうち基礎的な知識を問う問題等の一部を免除し、面接や実技を重視していく方向もありうる。こうした取り組みは、既に一部の学校において子供への定期テストの回数を減らし、探究活動を重視し始めていることとも相似系である。
【岡本潤子委員】
このたびは、実際に学生さんのお話をお聞きする機会をいただきありがたく思いました。
学生さんがどのようなことを考えているのだろうと、興味深くお聞きすることができました。
中でも『理論的ではあるが「理想論」を学ぶことが多い』『実践に関わる機会を増やしたい』という言葉が印象に残り、うまく改善に結び付けることができないか考えることができました。
この二つの言葉を学校側から考え直すと、前者は『理論的な思考を積み重ねることにより、教育の理想である教師の願いや思いを生み出し、保育にあたる力を生み出すためには必要な知識と技能であること』。また後者は、教育実習生として学生さんを受け入れる際に最も感じる「経験不足」ということを今後どのように考えていくことができるのかということ。その実践力というその中身を具体化すると、教育現場は生活力が大きく影響することから、その力をどのような実践を積むことで育むことができるのか、また育むべきか、議論の余地はあるのではないかと考えております。
全国の園長の中で教員養成校に講師として関わっている方も多く、授業では現場でのエピソードを交えながら授業を進めることができるという利点があり、今、目の前で起こっている子どもの世界をリアルに伝えながら授業を組み立てている方が多いと思います。しかしそれだけでは経験力は足りない。そこで授業時間をまとめてとり、学生さんとハイキングに出かけ自然の中で共に生活するなどの機会をつくり授業展開している事例など、学生さんの実践力を育てるために工夫しておられるお話もお聞きしています。
教員は「子どもから学ぶ」ことによって、「先生」になっていく、成長していく存在ですから、養成校を卒業した段階で教員としての資質をすべて身に付けることはできなく、教員としての経験の中で徐々に教員になっていくことができる仕組づくりを丁寧に考えていきたいと思っております。一種、二種、専修というとらえ方よりも、教員になってからの研修と結び付けて、研修を積むことでグレードアップしていく方法等もよいのではないかと考えた時間でした。ご発表ありがとうございました。
【真島委員】
4人の学生の皆様と森田委員のご発表が,大変充実していて,学びの多い会議となりました。質問や意見を述べられた委員の皆様のご発言も,共感できることが多く,大変心強かったです。文部科学省の皆様方の熱意と努力のおかげさまで,意義のある会議が実現できていると思います。事前のレクチャーをはじめ,会議の企画とご準備に,心より感謝申し上げます。
森田委員のご提案の中にあった「養成観の転換」とりわけ,「学生が主体的に選択しながら,自らの強みや専門性を伸ばすことができる教職課程」の実現に向けて,橋本委員のご提案にあった「学校現場のキャリアパス,評価やメリットの明確化」は,重要な観点だと思います。
多様な専門性を有する学生が幅広く取得できる「教員となる際に必要な最低限の基礎的な学修」を基礎免許とした上で,教育学部で4年間,教職としての専門性を磨いて取得できる「専門免許」(例えば,ICT専門,日本語教育専門,特別支援教育専門,チーム学校専門,探究学習専門,教科横断専門,いじめ・不登校専門,社会参画専門などなど),さらに,教職大学院では,基礎免許がない社会人は,基礎免許の取得を目指し,基礎免許を取得している人は,専門免許をめざし,基礎免許と専門免許を取得している人は,研究免許(例えば,臨床研究,実証研究,実践研究,外国研究などなど)の取得を目指して,質の高い教職員集団を養成(または,研修)するように,免許の性質に違いを持たせていくのはいかがでしょうか。
基礎免,専門免,研究免という種類の異なる免許の取得に応じて,学校現場のキャリアパスが明確になり,給料や裁量権が増えていくように制度設計がなされれば,幅広い学部での教員免許の取得に加え,教育学部や教職大学院で学ぶ意義が個々人に応じて明確になり,モチベーションアップにつながると思います。
【青海委員】
学生さんの発表ありがとうございました。早く私たちの仲間入りを果たし、現場で共に働きたいと思いました。また、自分が大学の学部で教職課程を履修していた時のことを思い出しました。理工系の学部でしたので、昼間は学部の専門科目履修で余裕がなく、夜間に教職科目を駆使して履修し、やっとの思いで教員免許を取得しました。教員養成系大学の学生は、今でも多くが教職に就きます。一般大学の学生を、どうやって教職へ導くかが、大切な視点だと思います。私からは3点、感想や思い付きを簡潔にお話しします。
1点目は、「教壇に立つスタート地点では、どのような力が必要か」についてです。
学士過程の教育課程は、教員となる際に必要最小限の目的・基盤的な学修に限り、学生個々の余白を生み出して、自らの問題意識に従って、強みや専門性を高めることができるようになるとよいと考えています。また、現在の免許の種類は、学歴の差に過ぎず、給料や役職などに反映することなく、教員になりたい人にとっては2種免許で十分、教職に就くことだけを考えれば、あまり意味を感じないというのが正直なところです。今後、教壇に立つスタート地点では、どのような力が必要か、免許教科の専門性とか、指導法として、探究的な学びを計画・展開できる力や、デジタル機器をあらゆる場面に活用できる力など、委員の皆様のご意見を伺いながら検討していけるとよいと思います。
2点目は、「オンデマンド教材の積極的で効果的な活用」についてです。
オンライン授業、オンデマンド教材など、好きな時に、また何度でも受講できるようにするなど、基礎・基本的な知識等は、自学自習でもよいのではないかということです。学生の履修しやすさという点から、一般大学では学部の専門教科等の履修と重なったり、1日や週の授業が詰まってしまったりすることを回避できるのではないかと推察できます。
3点目は、「実践についてリアルに学べる機会の確保」についてです。
学習支援員や特別支援補助員、名称は様々ですが、などとして、学生さんに教育現場でお力をお借りすることはありますが、授業を受け持つ機会というのは、教職課程の仕上げである教育実習しかありません。以前あった仮教員免許状の趣旨とは異なりますが、例えば仮免許を与え、これまでよりも早い時期から大学在学中に学校現場で授業ができる機会を増やすのはどうかと思います。仮免許だと、受け入れた学校も活用しやすいと思います。
自動車免許を取得するときの教習所に例えると、教習所内の運転コースでだけでは、公道を運転するときの感覚をつかむことができないことから、仮免許を発行して、練習を目的に、毎回、公道に出ます。公道では緊張し、怖いが、楽しさや面白さも体験でき、さらに、個々に必要な基本的な知識や技術を身に付けさせようとするシステムです。条件は、免許を保有して一定期間以上の運転免許保有者が同乗することです。時には高速道路も運転します。仮免許は一例で、条件整理が必要ですが、現在の教育実習を前倒しして回数や期間を延長、その都度評価し、単位認定するというのはどうかと思います。これは、特別支援、不登校、いじめ、道徳、総合的な学習をはじめ、現場が直面している様々なテーマを、体感できる機会を増やすことにもなり、採用時に即戦力にもなりうるのではないかと思います。以上です。
【松田委員】
教職大学院修了者の待遇向上については、一定の専門性と実践力を身につけているという点で合理的な根拠があると考えられる。しかしながら、教職という職業の特性上、給与や待遇の差が必ずしも強力なインセンティブにならない可能性が高い。OECDのTALIS調査においても、日本の教員は給与や待遇の向上以上に、職務の充実感や自己実現、良好な職場環境を重視していることが示されている。
また、学部卒業と教職大学院修了との間で待遇に格差を設けることは、現場において不公平感や不満を生むリスクがある。学歴そのものよりも、実際の職務能力や成果、学校運営への貢献度に応じた評価制度を設計する方が、教員のモチベーション維持や教育の質向上につながると考えられる。
さらに、ストレートマスターを推奨することは、必ずしも最善の策とは言えない。現在、全国的な教員不足が問題となっている中で、現場での即戦力となる人材を迅速に育成する必要があり、実務経験のないまま教職大学院へ進むより、一定の実務経験を積んだ後に大学院へ進学する方が効果的である可能性がある。教職大学院はむしろ、20代後半~30代前半で、将来的に学校マネジメントや管理職、そして教育行政を目指す人材が、自身のキャリアパスの分岐点として活用する場所として位置付けることが望ましい。現場で教育実践を続けるトラックと、学校マネジメントに特化するトラックとのキャリア分岐を明確化し、教職大学院が後者のトラックを選択するための研修・教育機関としての役割を担う。これにより、教職大学院の存在意義が明確になり、教育現場におけるキャリア形成の多様化と、学校経営力の強化につながることが期待できる。
■会議終了後白水委員が森田委員に発表について質問を行った。
【白水委員】
先ほど荒瀬委員からも言及があった「教壇に立つスタート地点を保証する教職課程」に関する先生のお考えが、p.7の最後の箇条書きにある「子供たちの主体的・対話的で深い学びを実現した、学びの高度専門職としての教師像を実現するためには、子供たちの学びを支援・伴走しつつ、学習目標に子供たちを到達させるための教育実践をしっかりと省察し、その客観的な事実を基によりよい授業を開発していける力を身につける」と理解しましたが、それでよいでしょうか?
【森田委員】
はい。あれもこれもと増えていきがちな教職課程の中でコアになるものは何かと考えたら、ここは重要なポイントになると考えています。
【白水委員】
個人的には、この「客観的な事実」ー子供たちの学びの事実をもとに授業を開発していけることというのは大いに共感するところなのですが、一見極めて大学院(専修)レベルでもよいような高度な目標にも見えますが、それでも基礎レベルから一貫してこういう力が養えるとよいと?
【森田委員】
このような力は、大学院でいきなり身に付くものではなく、学部の基礎レベルから段階的、継続的に養っていくことが必要であると思います。