中央教育審議会(第142回) 議事録

1.日時

令和7年3月17日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※ハイブリッド会議

3.議題

  1. 会長の選任等について【非公開】
  2. 中央教育審議会運営規則等の制定について【非公開】
  3. 第12期中央教育審議会の審議状況及び第13期の審議事項について

4.出席者

委員

秋田委員、安孫子委員、伊藤委員、今村委員、岩本委員、清原委員、桑原委員、貞広委員、田中委員、都竹委員、戸ヶ﨑委員、奈須委員、萩原委員、橋本委員、浜田委員、廣津留委員、藤田委員、堀田委員、森委員、両角委員、山口委員、吉岡委員、吉田委員、渡辺委員、和田委員

文部科学省

武部文部科学副大臣、金城文部科学大臣政務官、藤原事務次官、矢野文部科学審議官、淵上大臣官房総括審議官、茂里総合教育政策局長、望月初等中等教育局長、日向大臣官房学習基盤審議官、江﨑大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、森友大臣官房審議官(高等教育局担当)、平野社会教育振興総括官、神山総合教育政策局政策課長、池田国立教育政策研究所長 他

5.議事録

・新しい会長について、橋本雅博委員がふさわしい旨発言があり、了承された。
・副会長については、橋本会長から吉岡委員、貞広委員の指名があった。

※事務局から説明の後、資料2-2から2-4のとおり、中央教育審議会運営規則及び中央教育審議会の公開に関する規則が了承されるとともに、中央教育審議会の会議の運営について申合せがなされた。
 
【橋本会長】   まず、第13期中央教育審議会の発足に当たりまして、武部副大臣から御挨拶をお願いいたします。
【武部副大臣】  文部科学副大臣の武部新でございます。第13期最初の総会に当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
 委員の先生方におかれましては、御就任いただきまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。この後は座ってお話をさせていただきます。
 中央教育審議会においては、社会の現状と課題を踏まえながら、我が国の将来を見据え、教育政策の大きな方向性について御審議をいただいております。今、我が国では深刻な少子高齢化による人口減少、生成AIの急速な発展など、人々の暮らしや社会の社会への大きな変化が生じています。こうした変化の激しい状況の中で、将来にわたって持続可能な社会をつくっていくためには、教育の果たす役割がますます重要となっております。文部科学省としては、これまでも教育は国の礎であり発展の原動力であるとの認識の下、教育施策の推進に取り組んでまいりました。その上で、今後更に社会が直面している複雑な課題を乗り越え、我が国が新たな時代へと進んでいくためには、より多様で先進的な視点から、教育政策の方向性をしっかりと見定めることが重要であります。
 今回の中央教育審議会では、既に諮問している初等中等教育における教育課程の基準等の在り方、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策、地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策に関して引き続き御審議をいただくほか、高等教育に関して、先般の答申を踏まえた制度の在り方などの重要課題についても御議論をいただきたいと考えております。
 今後、皆様方の知見を賜りながら、実り多い御審議をいただくことを御期待申し上げるとともに、おまとめいただく答申や提言等を踏まえて、未来への投資である教育政策の推進に全力で取り組む決意を申し上げて、私の御挨拶とさせていただきます。
 どうぞ先生方、よろしくお願いいたします。
【橋本会長】  続きまして、金城大臣政務官からも御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【金城政務官】  おはようございます。大臣政務官の金城と申します。
 本日は、委員の皆様におかれましては、第13期の中央教育審議会委員をお引受けいただきまして、誠にありがとうございます。私も着座にて御挨拶をさせていただきます。
 今期の第13期は、新しく選任委員に御就任いただいた委員が13名、引き続き勤められる委員が16名いらっしゃいますので、皆様には、これまでの審議との継続性を保ちながら、新たな視点を交えた活発な御議論をいただけるものと期待をしております。
 文部科学省が担う教育行政は、これからの未来を担う子供たちを始め、国民の人生を幸福で豊かなものとし、我が国の成長の源泉となる極めて重要な分野であると認識をしております。私もあべ大臣、武部副大臣とともに、委員の皆様方の御意見をしっかりと受け止め、教育政策の推進に努めてまいりますので、これから2年間、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。
 それでは、私からも一言御挨拶をさせていただきます。
 改めまして、会長に選任されました橋本でございます。先ほどは、過分な御推薦の言葉を頂戴し大変恐縮しております。
 皆様と力を合わせながら、中教審の議論をしっかりと前に進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私だけ立って挨拶するのもなんですので、座って話させていただきます。
 第13期の中教審のスタートに当たりまして、一言御挨拶申し上げます。
 前12期の中教審におきましては、質の高い教師の確保のための環境整備、あるいは「知の総和」向上へ向けた非常に重要な答申を荒瀬前会長の下でまとめていただき、私も副会長としてこの議論の取りまとめに参加させていただきました。
 今期は、高等教育の答申につきましては、教育内容や方法の改善、あるいは新たな質保証・向上システムの構築など、具体的な仕組みの構築に向けた議論を深めていく必要があると思います。
さらに、昨年6月には、今後の社会教育の在り方についての諮問、そして12月には教育課程の基準等の在り方についての諮問と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成についての諮問をいただいております。これらは、今後の教育の在り方を大きく左右する重要な諮問でございます。国際情勢あるいは産業・経済の状況は、大変大きな変動・変革が生じており、正に予測困難な時代が続いております。そのような中、中央教育審議会といたしましては、何十年先という未来を見据えつつ、多様な関係者の意見にも耳を傾けながら、丁寧に議論を進めてまいりたいと思っております。
 各分科会あるいは部会の審議はかなり専門的になることもございますが、この総会におきまして横串を刺しまして、それぞれの接続や連携にも留意をしたいと考えております。また、中教審での審議に広く社会の関心を持っていただくことも大変重要でございます。審議の過程、プロセスを分かりやすく発信していくことも必要かというふうに思います。
 副会長に御就任いただいた吉岡先生、貞広先生、どうぞよろしくお願いします。また、それから今回新たに任命されました13名の方につきましても、どうぞよろしくお願いします。全員で29名の委員の皆様方、そして文科省の皆様と共に、審議をしっかりと推進してまいりたいと思いますので、御協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日は第13期としての最初の総会でございますので、前期である第12期の中央教育審議会の審議状況及び第13期の審議事項について、事務局より説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【江﨑大臣官房審議官】  それでは、私の方から、資料3に基づいて御説明をしたいと思います。
 まず、1ページであります。
 第12期中央教育審議会の審議状況及び第13期の審議状況でございます。
 (1)最近の主な答申としまして、まず、中教審においてお取りまとめいただいた最近の答申などについてでございます。第12期より前になってしまいますけれども、まずは、令和の日本型学校教育答申、これを令和3年1月、第10期の中教審において取りまとめをいただいて、全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現を進めていく方向性が打ち出されております。
 2ページに参りまして、これらの答申などを踏まえまして、次期教育振興基本計画についての答申が、第11期の最後の総会で取りまとめをいただいております。2040年以降の社会を見据え、持続可能な社会の創り手の育成と日本社会に根差したウェルビーイングの向上、この2つのコンセプトの下、5つの基本的な方針、16の教育政策の目標、基本施策、指標を提言いただきました。今後5年間の教育の羅針盤となる基本計画の答申をいただいております。この答申が、令和5年度から令和9年度までの第4期の現在の教育振興基本計画になってございます。
 また、第12期におきましては、重要な2つの答申をいただいております。まず、質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策についての答申でございます。学校における働き方改革の在り方や教師の処遇改善の在り方、学校の指導・運営体制の充実の在り方について、具体的方策等を取りまとめていただいております。
 3ページにまいります。
 さらに高等教育に関して、我が国の「知の総和」向上の未来像の答申におきましては、高等教育が目指す姿としまして「知の総和」を掲げ、そのための質のさらなる高度化や規模の適正化、アクセス確保などについて御提言をいただいております。
 以上が、最近の主な答申の御報告となります。
 (2)では、第12期における報告等を記載しておりますけれども、この後の各分科会に関する部分で、併せて御説明をいたします。
 次に、6ページでございます。
 第12期における生涯学習分科会の審議の状況でございます。生涯学習分科会におきましては、第12期の議論の整理を取りまとめていただきまして、11期までの議論や、令和5年に閣議決定をいたしました第4期の教育振興基本計画を踏まえた議論を基に、おまとめをいただいております。誰もが生涯を通じて意欲的に楽しく学び続ける社会を目指すべき姿として、1番に社会人のリカレント教育、2つ目に障害者の生涯学習、3つ目に外国人の日本語の学習、4つ目に社会教育人材について、今後取り組むべき方向性をお示しいただいております。
 次に、7ページでございます。
 社会教育の在り方に関する特別部会におきましては、令和6年6月に文部科学大臣から諮問を受けまして、社会教育の在り方に関する特別部会におきまして、まずは3つありますが、社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策について、社会教育活動の推進方策について、3つ目に、国・地方公共団体における社会教育の体制等の在り方について、この3つの審議事項について審議を現在行っていただいてございます。
 8ページでございます。
 初等中等教育分科会でございますけれども、第12期期間中に教育課程部会、教員養成部会、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、質の高い教師の確保特別部会、デジタル学習基盤特別委員会におきまして、それぞれ御審議をいただいております。
 9ページに記載の質の高い教師の確保特別部会におきましては、先ほど御紹介いたしましたけれども、答申をお取りまとめいただいております。それ以外に、教育課程部会につきましては、現行学習指導要領の実施状況の把握や今後の教育課程等の検討に係る論点等について意見交換を行っております。また、昨年12月の諮問を受けまして、部会の下に教育課程企画特別部会を設置して、教育課程の基準等の在り方について議論を開始していただいております。教員養成部会におきましては、令和4年の答申を踏まえた具体的な取組について議論を行ったほか、昨年12月の諮問を受けまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について議論を開始していただいております。義務教育の在り方、高等学校教育の在り方につきましては、それぞれワーキンググループで審議まとめを取りまとめていただいてございます。
 9ページに参ります。
 デジタル学習基盤特別委員会におきましては、GIGAスクール構想の取組につきまして幅広く検討いただくとともに、特別委員会の下に、次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループを設置いたしまして、昨年7月に、令和7年度以降の新たな学校のICT環境整備の方向性を取りまとめていただいております。さらに、デジタル教科書の在り方と推進方策につきましては、特別委員会の下にデジタル教科書推進ワーキンググループを設置して検討を進めていただき、デジタル教科書の位置づけに関する制度面を中心に、中間的な取りまとめを行っていただいております。
 10ページに参ります。
 大学分科会でございます。第12期の大学分科会におきましては、5つの部会等を設けまして、高等教育に関する様々な課題について御審議をいただいております。
 高等教育の在り方に関する特別部会では、令和5年9月に諮問されました、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について検討するために、高等教育の在り方に関する特別部会を設置し御議論いただいております。大学分科会として、「我が国の「知の総和」向上未来像~高等教育システムの再構築~」を取りまとめいただき、総会での御議論をいただいた上で答申をいただいております。答申の取りまとめに当たりましては、おおむね2040年以降の社会を見据えた目指すべき高等教育の姿やそれを実現するための方策などの高等教育の在り方について、総合的に御検討をいただきました。
 大学院部会におきましては、人文科学・社会科学系大学院につきまして、令和5年12月に取りまとめをいただいた審議まとめを踏まえまして、大学院教育改革を推進し、社会に開かれた質保証を実現するための情報公表の促進につきまして御審議をいただきました。そのほか、大学院の在り方や質の高い大学院教育の推進等についても御審議をいただいております。
 法科大学院等特別委員会におきましては、法科大学院教育のさらなる改善・充実に向けて、必要となる方策について包括的に御審議をいただいておりますほか、令和元年法改正により導入された諸制度に関する状況等について把握・分析を行っております。令和7年3月に第12期の審議の取りまとめをいただいております。
 11ページには、認証評価の審査委員会、教育課程等特例制度の運営委員会においても審査等を行っていただいております。
 12ページでございます。
 以上、第12期までの審議状況を踏まえまして、今期、第13期における審議事項の予定がございます。
 まず、生涯学習分科会におきましては、生涯学習・社会教育の振興方策の具体化に向けて、地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策、日本語と日本語教育機関認定制度の着実な実施をはじめとする日本語教育の推進、リカレント教育等第12期議論の整理のフォローアップ、この3点を中心に御審議をいただきたいと考えてございます。
 次に、初等中等教育分科会におきましては、令和6年12月の諮問を受け、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について引き続き検討を行っていただくとともに、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について検討を行っていただきたいと考えてございます。また、デジタル教科書推進ワーキンググループの中間的取りまとめに基づきまして、必要な事項について引き続き検討を行っていただきたいと思います。
 大学分科会におきましては、新たな質保証・向上システムの構築、大学院制度と教育の在り方、法科大学院等の教育の改善・充実などについて御審議をいただきたいと考えてございます。特に、1つ目と2つ目につきましては、「知の総和」答申を踏まえまして、学びの質を高めるための教育内容・方法の改善や新たな質保証・向上システムの構築等について御審議をお願いしたいと考えております。
 説明は以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。第12期中教審の状況及び第13期での審議すべき状況事項について御説明いただきました。
 それでは、この後は、事務局から説明のありました事項を踏まえまして、皆様に御挨拶を兼ねまして御意見をいただくこととしたいと思います。
 私の方から御指名させていただきますので、オンラインの委員の方々から、まずお話をいただきまして、その後会場の委員の方々、そして最後に副会長のお二人にお話しいただければと思います。
 なお、時間の都合で、大変恐縮ですが、お一人様2分程度でおまとめいただければと思います。
 それでは、私の方からオンラインで御参加の委員から御指名をさせていただきます。途中退席等の御都合を踏まえましての御指名となることを御了承ください。最初に、御都合により途中退席と伺っております山口委員からお願いしたいと思います。今村委員、田中委員につきましては、会場の委員からの御発言の後に発言可能になりましてからお願いをしたいと思います。
 それでは、山口委員、よろしくお願いいたします。
【山口委員】  佐賀県知事の山口祥義です。橋本会長を始め、皆さん、よろしくお願いします。
 本日は、この後、県議会がありまして、発言順について御配慮いただきました。感謝申し上げます。
 自己紹介も兼ねて申し上げますが、私は知事に就任する前に幅広い分野に身を置いてまいりました。役人として地方税財政や過疎対策、災害現状を含めた危機管理などです。そして、民間でJTB総研や、日本で開催されましたラグビーワールドカップの委員会、また、大学院で教べんをとったこともあります。そうしたことに関連して申し上げますと、私はせんだって出されました12期の答申、我が国の「知の総和」向上の未来像の中で、大学院教育に関し触れられておりましたトランスファラブルスキルの育成について私なりに受け止め、特に共感を持ちました。1つの文脈で得たスキル、着想を、その文脈以外でも、すなわち他の分野でも活用できる、応用できるようになった、それが、私自身も財産だと思っておりますし、正にこれからの時代に必要な知の生かせる技術かなとも思っております。そして今、世界全体は不確実性、予測困難な時代であります。こうした時代に「知の総和」を増やしまして、多くの皆さんがそれを様々な場面に活用できるようにすることはとても大切なことだと私は思っています。
 併せて、佐賀県の取組も簡単に紹介します。
 まず、佐賀県の教育大綱であります。これは、知事が県の教育委員会に対して方針を示すものですが、メインメッセージを自分で自分のことを決められる子供に育てたいといたしました。いろいろな人、もちろん親だったり相談窓口だったり、どこでもいいのですけれども、相談はいっぱいしつつも、自分で考えて決めてほしいというメッセージです。そして、大綱自体は、こんな感じにコンパクトにしました。それまでは、こんな厚ぼったい冊子だったんですが、こんな感じにみんなポッケに入れられるようにしました。やはり皆が共有して議論していくってとても大事なことかなと思っております。
 また、4年後の開学に向けまして、中教審で議論されている方向性と、これは図らずも同じなのですけれども、新たに佐賀県立大学の設立準備をしております。
 これから委員の皆様方と更に議論を深めていくこと、大変楽しみにしております。よろしくお願いします。
 以上です。
【橋本会長】  山口委員、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、安孫子委員、お願いいたします。
【安孫子委員】  株式会社ニトリホールディングスの安孫子でございます。どうぞよろしくお願いします。
 企業は、本当に国の縮図だなと感じさせていただいています。企業の立場から、国の教育のために1つでも貢献できるように努めてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
【橋本会長】  安孫子委員、ありがとうございました。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
 続きまして、桑原委員、お願いいたします。
【桑原委員】  新潟県津南町町長、桑原悠と申します。
 私は、地方創生の中における教育の位置づけや関連について関心があります。現場にて人口減対応や人材育成、産業育成について真っ正面から取り組んでございます。
 私としては、1つ目に、地方における教育は都市部と異なるというふうなことを感じております。教育のチャンスがかなり限定的であると。一方、オンラインで授業を受けたり、テクノロジー的には緩和する要素も出てきているはずです。ダイバーシティーの浸透や業種の幅も広がる中で、これまでより教育の正解の定義というのは幅広くなっているはずだと感じております。特に、テストの点や偏差値の重要性以上に、個々の生活や環境に応じて学ぶことをサポートすることの重要性が増してきていると感じております。
 2つ目に、今後の地方における教育で目指すところですが、まずは徹底的な効率化かと思います。授業でのオンライン活用や事務作業などは、デジタルを最大限に活用できればと思っております。その上で、学習とコミュニティ形成は分けるとよいと思っております。学校の持つ機能を分解して再構築をする話でございまして、学校以外の機能も含めて考えていく必要があると感じております。
 3つ目は、国、自治体の役割です。制度の緩和により、現場の裁量と創意工夫の促しがもっとあってよいと感じております。また、指定の地域の学校に行くより、多少は移動に対して補助があってもよいと、物理的な制約を緩和することによって学習の幅、効率性も高まると感じております。そして最後ですけれど、学習しないことに対する補助があってもよいのかもしれないと感じております。生涯を通じて学習する前提の世の中になっております高校生起業家などのニュースも見ることがあります。大卒が当たり前の世の中からの脱却はあり得、高卒就職や中卒就職の支援を手厚くするというのは議論の余地があるそうです。産業における就労支援、リスキリング支援などを合わせた生涯学習支援の設計がよいのではないか。変動性の高い世の中でありますため、カリキュラムを提供するよりプラットフォームを提供する形の方がよいのではないかと思っております。
 今後ともよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  御紹介いただきました、戸田市教育委員会教育長の戸ヶ﨑と申します。
 私ごとですけれども、3日前は中学校の卒業式に出席して大変感動して、今日はこれから市議会の一般質問で、教育課題の質問に答弁をすることになっています。日々、こうして学校に伴走しながら、義務教育の光と影というか課題を目の当たりにしています。
 さて、12期は、文科省の並々ならぬ御労苦等によって、約50年ぶりの教職調整額の引上げや、直近20年で最大の定数改善など、今後の日本教育史に間違いなく残るであろう大きな議論等がございました。また、昨年末は、2つの大きな諮問もございました。学習指導要領が示す教育内容の実現を支えるのは、現場の教師です。学びに関する高度専門職である質の高い教師が指導することで、その理念や趣旨が徹底されて、正に質の高い学びが実現されます。大切なのは、スーパーティーチャーの登場ではなく、一人ひとりの教師が授業力や教師力を一層向上させて、質の高い教師へと成長するための環境整備をしていくことだろうと思います。質の高い教育の両輪である、質の高い学び方と、質の高い教師の在り方の議論に、学校に伴走する立場から引き続き関わらせていただきたいと思います。
 また、常々義務教育の課題として、私は3つの「つ」を感じています。
 1つ目は、「続ける」ことの難しさであります。俗人的でとがった取組は注目を浴びても、地道な継続の成果にはなかなか光が当たりにくくなっています。
 2つ目は、「つながり」の弱さであります。優れた施策があったとしても、なかなかそれが波及していかないということがあります。
 3つ目は、グッドプラクティスやデータが「使われ」ません。これらによって、GIGAの取組や授業改善、働き方改革など、学校や自治体間の格差が生じております。そもそも、困ったところというのは、困っていないところです。学校や教育委員会はとかく過去の成功体験に縛られることで既存の価値観に固執してしまう、コンピテンシートラップにはまりがちです。アンラーンと言われていますけれど、自治体も含めてうまくいかないことや困り事を知ろうとすること、どう支援できるのか知恵を出し合うことについての地道な仕掛けづくりも考えていきたいと思っております。
 引き続き、皆様方の御指導よろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、奈須委員、お願いいたします。
【奈須委員】  上智大学の奈須でございます。初等中等教育分科会を中心にお世話になるかと思います。よろしくお願いいたします。
 初中分科会の方では、先ほど来も御説明ございましたとおり、2つの大きな答申が出ております。この2つを、教育課程の問題と教員養成の問題を適切に絡めながら、今ほど戸ヶ﨑委員からもお話があったとおり、どんなふうに進めていくかということが大きな課題かと思います。
 ただ、一方で、日本の今の子供の学力はとても堅調であると。OECDのPISAの結果を見ても、そういうことが言えるかと思います。これは本当に、日本の教育関係者の皆さんの御尽力のたまものだと思います。その一方で、34万人不登校という深刻な問題もあろうかと思います。こういった様々な状況、課題を受けて、特に教育課程、学習指導要領をどんなふうに改訂していくか、なかなかに難しいところかと思います。
 もっと大きく言うと、先ほど津南町の町長さんのお話もございましたけれども、学校という場が学制以来150年を超えましたけれども、どういう場であるべきなのか。デジタルなんかも出てきたので、必ずしも学校に通わなければ学べないという時代は、ある意味で終わっています。では、学校は何をするのか、あるいは学校でしか学べないことは何なのかということを、もう一度本当に再定義、再検証する時期に来ているのかなと思います。
 難しい課題かと思いますけれども、一方でわくわくするような課題として捉えて、議論ができるといいなと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 続きまして、渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】 渡辺です。日本医師会常任理事で日本学校保健会の副会長を兼務しております。
 私は小児科医でして、診療の途中で参りましたので白衣を着たままでおります。
 長年、学校医に就業しております。また、医師会におきましても、市、県、国と学校保健業務に携わっていたことから、多くの委員の先生方とは少し異なる視点からの意見になるかと思っております。時に違和感をお感じになるかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。
 例えば、医学とか医療という視点から、個別最適な学び、GIGAスクール構想、デジタル教科書などを考えた場合に、個別最適とは個々の違いをどう評価するのか、どんな指標を使うのか、誰が判断するのか、それに対する最適な指導というのは何を根拠に行うのか、それからICT環境に対するリテラシーは誰が行って、倫理感をどう醸成するべきか。そもそもデジタル教科書はどのようにどういう対象に使うのが最も効果的かとか、効果を検証して、エビデンスを示すという発想になります。
 質の高い教師を確保するための環境整備という問題が出てまいりますと、精神疾患による休職率が高いことを問題視して、50名未満の学校を含めた教師のメンタルヘルスの実施が喫緊の課題ではないかと考えます。体が健康であって初めて事業にまい進できる、教師が健康であって初めて児童生徒に全力で指導ができると考えます。
 児童生徒が社会に出る前に、自らの健康、体について考える力を身につけていただきたい。そのためには、学校保健において健康教育は重要な課題であり、学問を学ぶ根幹であると考えております。
 現在、学習指導要領の改訂が進みつつあります。学びが学校における中心であるということは承知しておりますけれども、その土台に健康があると考えております。私は、教育という視点では、学問の学びも健康に関する学びも同じぐらい大切だと考えます。
 今後とも、委員の皆様と多少視点が異なる発言が続くかと思いますけれども、御理解いただきますようよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 オンラインの方は一旦ここで終わりまして、次に、会場参加の委員を御指名させていただきます。まず、秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】  ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。
 主に初等中等分科会の方でお世話になると思いますが、12期からの継続ということを踏まえまして、3点のことを申し上げさせていただきたいと思います。
 まず第1点は、先ほど奈須委員も言われましたが、公教育の制度ができてから153年がたちまして、今、公教育の在り方はいかにあるべきかということの問い直しがなされているところでございます。中でも、不登校34万人の子供たちの問題は、学校教育の改善の問題とともに、地域に居場所をつくるということで、実は、社会教育士などの方が支えてくださったりしているということもとても大事なことになります。これは初等中等の教育局と、それから生涯学習局の方の両方に関わる課題ともなっております。デジタル化の問題も、デジタル学習基盤や教科書の問題は、初等中等教育局の担当の問題であると同時に、公立図書館、学校図書館の連携の在り方は、総合教育政策局の方の所管となってございます。それぞれの所管の中で議論がなされますけれども、それらの議論を超えて、同時に、ウェルビーイングのためには何が必要なのかということで、先ほど橋本会長からもお話がありましたように、総会は是非横串を刺して議論することができるような機会を持つということも重要ではないかと思っております。先ほどの渡辺委員の学校保健や、体育、地域スポーツ振興なども同様ではないかと思います。
 その意味で、総会が各部会の答申を承認するだけではなく、さらに各部会をつないだりして対話をしていく機会が生まれるということを期待しております。
 そして、第2点目には、2023年にこども基本法ができまして、子供若者の参画ということが文部科学省の中でも、教育課程部会や教員養成部会の中では、実際に子供若者、当事者の方の意見を聞いて、それを政策に生かすという方向が生まれております。是非、今期におきましても、様々な部会において、有識者の委員の声と合わせて、様々なマルチステークホルダーが、生の声や参画を政策形成においてできるような形を一層実現していただきたいと思います。それがエデュケーションコモンズを形成していくことにつながると考えています。協働性、多様性、参加民主主義というものを生かした社会や教育の在り方、公教育の在り方ということが、政策審議のプロセスにつながっていくと考えます。
 ユネスコが2050年の教育を見据えた報告書の中でも述べている、「教育を公共財、共通財としてリフレーミングする」というような考え方から、学び手の人権を保障して共に参画して考えていく方向を、是非お願いしたいと思います。
 そして最後に、第3点でございます。先ほど渡辺委員からもございましたが、教育政策を是非エビデンスベースで進めていただきたいということでございます。12期に、幼児教育では、かけ橋プログラムが始まりまして、初めて19のモデル自治体について、3年間の経過で何が有効であったのか、国の施策と自治体の受入れがどのように進むことによって発展するのかということについて、大学や民間に委託して、客観的に分析をするというようなことを、ロジック分析を通して行われました。それによって、どういう政策が国と自治体の関係であったらいいのかを初めて明らかにしてきております。よく好事例の紹介というようなお話はあるわけなのですけれども、より国と自治体の中でよい連携や在り方がどうあったらいいのかということを、単に学力という側面だけではなく、ウェルビーイングの実現のためにどのようにあったらいいのかということを、是非御議論をいただけたらありがたいと思います。
 以上の3点を述べさせていただきましたが、是非ウェルビーイングの実現のために、皆様とともに総会でいろいろな対話ができたらと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 続きまして、伊藤委員、お願いいたします。
【伊藤委員】  このたび新しく委員に就任させていただきました、伊藤公平と申します。
 昨年度1年間は、大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会で臨時委員を務めさせていただきました。これからも、恐らく大学分科会を中心に活動させていただくことになると思います。
 昨年1年間、常に考え続けたことは、例えば60年前の18歳人口は250万人、ピークですね、250万人。今生まれてくるゼロ歳児は70万人ということで、日本の人口は一気にそのときと比べて4分の1まで減ってしまうということであります。このような状況において、高度成長期のモデルのまま産業が発展することはあり得ません。その中において、先ほどある委員から御説明がありましたように、OECDの中でも、日本の学力という局面においては、まだトップクラスを保っているというのは、大変な、委員会も含めた皆様の御尽力の成果だと思っております。
 その一方で、今18歳の人たちに、日本財団の調査ですけれども、自分は大人だと思うかとか、自分はボランティア活動に参加したいと思うかとか、自分は社会を変えられるかと思うかといったような質問をすると、圧倒的にイエスと答える人がいません。日本はびりです。何のために高校まで学力が高いのに勉強しているのかという目的意識を、皆でもう一度考えなければいけない。その1つには、当然のことながら、私たち大学を含めて、入学試験で通ればいいでしょうというところも1つの問題かもしれません。
 いずれにせよ、先ほど偏差値、入学試験の問題を指摘された委員もいらっしゃいましたけれども、日本には様々なまだ目に見えない、見えていることもたくさんあるのですけれど、格差があります。ハイエンド層の大学とボリュームゾーン大学との格差、設置形態、例えば国立、私立、公立による数格差、都市圏と地域の間の格差、また、先ほどの話にありましたように、34万人の不登校がいらっしゃるということですけれども、登校できる人と登校できない、様々な立場での格差、これだけ人が減っていくということは、1人でも多くの人がハッピーに社会、日本の発展に寄与しなければいけないので、これというのは、ただ上を伸ばせばいいとか、そういう問題ではなく、皆が本当にハッピーで社会に貢献していく教育をつくっていかなきゃいけないと思い、私はこの大学の中において、できるだけ努力していきたいというふうに思っているところでございます。
 今、世界においては、強い人がえらい、選挙でも1票でも多く、僅差でも勝てば官軍というような考え方があるような気がするのですけれども、その中においても、その選挙で勝った人を応援しない人にも人権があり、皆がやはり参加できるようなものをつくっていかなきゃいけないというふうに思っています。それだけでなく、今世界では、悪い人は悪いと。だから、虐げられる権利が、切り捨てられて仕方がないのだというような流れまでできているのが、私の心配しているところであります。弱い人を助けるのはなく、弱い人を悪いと決めつけるような風潮がやや出てきているところが不安であり、そのようなことが日本では絶対にないように、そのような日本が世界の中で正しい流れをつくっていける1つの国になればいいなと思っているところでございます。
 以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 続きまして、岩本委員、お願いします。
【岩本委員】  岩本です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私の方からは、この13期の、特に総会の中では、是非今まで、ほかの委員からも出ていました、各分科会では扱えない横串やつながりとかつなぐ議論に関して、是非扱っていただけないかと思います。その上で、是非橋本会長及び事務局の皆様に、今後こういった論点を扱うというところも御検討いただけないかというところは3つほどあります。
 1つ目は、接続に関するところです。つまり、初等中等教育と高等教育の接続が1つあります。これに関しては、指導要領の議論が進めば、どうしても大学入試の問題というのが出てくるというところであります。そこに関しては、初等中等教育分科会では扱い切れないところがありますので、こういった場でどう指導要領の改訂と併せて、大学入学者選抜だとかというところを、高大接続の視点を踏まえて共通テストとか2次試験の在り方というところも議論していく必要があるかと思います。また、それと同じ構造が、大学と社会の接続のところとも関係してきていると思います。大学も、今まで入り口のところで見てきたというところが、今後は出口における質保証ということが非常に重要だというふうになってきているというところです。ここにおいては、企業においての採用だとか選考の考え方というところと密接に関連してくる。大学における学習成果や学業の取組をどう本当に評価していくのか、そういったことを社会にもメッセージしていくだとか含めて、この接続の部分を一体的に議論していくというようなところも、なかなか分科会では扱えないテーマだと思いますので、こういった場での議論というところができないかというのが1点目であります。
 2点目は、教育無償化に関するところ、特に義務教育、高校教育、そして高等教育における授業料と公財政支援の在り方とか考え方、特に進め方に関してはEBPMとか、そういったところに関してです。義務教育段階では、私立に関して、特に授業料無償になっていないかと思いますけれども、高校段階では私立の授業料無償化というような話が昨今出てきておりますし、大学においては授業料をどうしていくのかと、国立大学の授業料の話だとかも出てきていると。こうした中で、国民からすると、この考え方に何か一貫性があって進んでいるようになかなか見えないという声、本当に多くの教育関係者からも聞こえてきます。やはり、今後の新たな国公立だとか私立の役割とその関係性を基に、教育の質の向上と教育機会の均等の観点から、どう、この授業料だとか公財政支援の在り方というのを考えていくのかというところ、かなり大きな視点でちゃんとここで議論をしていくということ、必要ではないかと思いますし、その際、併せて特に教育の無償化に関してはワイズスペンディング、効果的な活用の方法、そのためのエビデンスベースの施策、若しくはその仕組みの組み込みというところについて、併せて議論をしていくべきではないかと思います。昨今のこの高校無償化、給食の無償化、次、幼児教育や高等教育への支援と、この巨額な財源を使ってやっていくということに対して、私自身いいとは思いますけれど、効果的に本当に使われるのか。本来の政策目的である質の高い教育の実現と教育格差の是正という、この目的に対してこの使い方というのが本当にどれほど効果があるのかということをしっかりと見ていって、本当に政策効果があるところにこの財源を効果的に使えるようにしていくというところです。
 教育振興基本計画、今の教育基本計画の中でも、企画立案の段階から目標達成の状況に合わせた指標の設定とか……。
【橋本会長】  岩本委員、すみません、少しお時間の関係もありますので。
【岩本委員】  分かりました。3点目だけ、簡潔に。
 3つ目は、地域コミュニティの基盤としての教育の在り方です。ここに地方創生と教育の在り方というところで、社会教育に関しては議論されるというところですけれども、社会教育だけではなくて、初等中等教育や大学もコミュニティにおける重要な機能を果たすというところで、社会教育だけの話ではなく、一体的にどう考えていくのかということを、地方創生の流れなんかを踏まえて、こういったことで横串の議論ということをしていただけないかというふうに思います。
 すみません、少し長くなってしまい、大変失礼いたしました。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 続きまして、清原委員、お願いします。
【清原委員】  ありがとうございます。杏林大学客員教授、前東京都三鷹市長の清原慶子です。
 第13期は、2023年度に閣議決定された「第4期教育振興基本計画」の3年度目、4年度目となりますとともに、自治体の『教育振興基本計画』や『教育大綱』等の実行が愈々推進される時期となります。今期の開始に当たりまして、『第4期教育振興基本計画』の2つのコンセプトを踏まえて、是非留意していきたい2つの視点について発言します。
 1点目は、1つ目のコンセプト、「持続可能な社会の創り手の育成」のために、特に「学修者本位」を尊重した審議をしていきたいということです。将来の予測が困難な時代に、未来に向けて自らが社会の創り手となり、持続可能な社会を維持発展させていく人材を育てることや、特に主体性やリーダーシップ、創造力、課題設定、解決能力、チームワークなどを備えた人材の育成が必要とされています。前期には、各分科会がそれぞれの審議で期待される諮問をまとめる中で、審議過程を総会で議論した際、「学修者本位」という共通のキーワードを確認しました。例えば、初等中等教育の質の高い教員養成を担うのは高等教育であり、初等中等教育におけるコミュニティ・スクールの着実な実現のためには、地域コミュニティにおける社会教育の充実が密接に関連しています。
 私は、生涯学習分科会への諮問を受けて設置された「社会教育の在り方に関する特別部会」で座長を務めたところ、十代の大学生の委員から、自らの実践に基づいて、次のような指摘がありました。「高校の探求学習と地域の社会教育が若者の地域活動との密接な関連性を持っている」と。したがって、秋田委員も言われましたけれども、子供・若者は少子化の中で人数が少なくなるので、どうしても発言機会が少なくなるかもしれませんが、「こども基本法」にはしっかりと子供・若者の意見を聴取することだけではなくて、社会的活動を保障するということが理念として定められています。したがって、総会では、各分科会での審議を踏まえつつ、私は「学修者本位」の理念に基づいて、橋本会長も言ってくださいましたように、「分科会相互に横ぐしをさした審議」を徹底して、それを総合化する視点での審議ができれば幸いと思います。教員や教育行政に携わる人だけではなくて、それとともに、できる限り「学修者の声」を聞いていきたいと思います。
 2点目を急いでお話しします。「第4期教育資本振興基本計画」の2つ目のコンセプトである「日本社会に根ざしたウェルビーイングの向上」に関連して、私は教育行政と「地域コミュニティの視点」と「自治体の視点」を重視していきたいと思っています。子供・若者を含む多世代の人々が、自己肯定感を基盤として主体性や創造力を育み、地域における学びを通じて、人々のつながりや関わりをつくり出して、共感的、協調的な関係性に基づく地域コミュニティの基盤を形成することが重要です。このことは、もう既に何人もの委員の方が御指摘されましたことに、私も共感します。子供や学修者一人ひとりのウェルビーイングは、家庭や学校での人間関係の安定のみではなくて、地域コミュニティや社会のつながりが関連しているという視点がますます重要になっていると思います。初等中等教育では、コミュニティ・スクールの充実、特にいじめや不登校等への対応、そして安全や防災、福祉等の取組において、地方教育行政の分野での「首長部局と教育委員会の適切な連携」が必須となっています。高等教育では、地域における「地方創生」、「まちづくりのプラットフォーム」として、地方の大学・高等教育機関と自治体等との連携による機能活性化が課題とされています。生涯学習分科会では、「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策」について重点的に審議しています。こうして、教育分野での人々のウェルビーイングを実現していくためには、地方や地域の実情に応じた多様な取組を保障し、「格差」ではなくて、岩本委員の組織のお名前ですが、「地域・教育魅力化」を図らなければいけないと考えています。
 好事例はもちろん横展開を図ることが必要ですが、困難事例に目を背けることなく、解決を図ることが必要です。私は、中央教育審議会の使命としては、「教育政策の形成」だけではなくて、各自治体、地域においての「教育政策の適切な実行」に向けて、重大な役割と責任を果たすべきと考えています。今期の委員には、教育行政の現場での実践の責任を果たす知事さん、市長さん、町長さん、教育長さんが就任されていることを、市長経験者でもある私は大変に心強く思います。
 以上、今期の初めに当たりまして、「学修習者本位」や、「自治体、地域コミュニティの視点」の重要性について申し上げ、総会での議論が、そのような方向で皆様の英知が結集されることを心から願っています。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 続きまして、都竹委員、お願いします。
【都竹委員】  岐阜県飛騨市長の都竹と申します。今期初めて参加をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 全国市長会の社会文教委員長という役も拝命いたしております。自己紹介に代えまして、飛騨市の取組、当市の取組を少し御紹介して、問題意識を共有させていただきたいと思っております。
 私どもの町は2万2,000人という人口の小さい市でありまして、典型的な中山間過疎地です。高齢化率は40%を超えておりますし、全国の30年先を行くような状況というような状況でございます。私は飛騨市は人口減少先進地だということをいつも申し上げております。必ず私たちの町と同じことが全国で起こる、その未来予想図だということです。現実に、買物ができなくなる問題、今、雪が降る時期ですから、雪下ろしができない、介護施設では人材が不足する、伝統文化は担い手がいない、祭りは断絶する、防災の担い手も少ない、こうした問題に日々直面しております。それに対応しているのが市役所の仕事ということでございまして、全く答えがない状況の中で、本当に課題解決に向けて日々悪戦苦闘、七転八倒しているというのが我々の状況です。
 そういった中に身を置いておりますと、そうした未知の課題、全く予想がつかない課題というのは、世界レベルの問題ではなくて地域で現実に目の前で今起こっていることだというふうに考えておりまして、その解決策を自分の頭で考えて、チャレンジして、実践して、改善していくというサイクルを繰り返す、そういったことができる人材というのが、これからの日本社会に求められていくと、本当に強く感じております。
 私どもの町では、市内の保育園から県立高等学校までを1つの学園とみなして、積み上げ式で課題解決能力を育成していこうという、飛騨市学園構想というのを取り組みを平成30年から始めております。この流れがちょうど地域学校協働活動、それから探求学習の開始とくしくも一致したということで、今、各市内小中学校において、地域と連携した、まさしく探求活動を全面展開しております。毎年報告を聞くのですが、本当に地域の子供たちが地域の課題を自分で感じて何とかしたいと思ったところを起点にしながら、地域の大人たちと一緒に生き生きと活動している様子を見ますと、子供たちというのはまちづくりに取り組む仲間だという思いを非常に強くしておりまして、そのプロセスで彼らが得られる力というのはとてつもないものになるというふうに感じております。
 こうした活動を加速させていくということが、教育の中、日本社会にとって重要じゃないかということを思っております。
 それからもう一つ御紹介申し上げたいのが、学校作業療法という取組です。学校教育の現場に作業療法士が入る、そして子供たちの見方を変えて学習のサポートをして、なりたい自分になっていくためのアドバイスを全児童生徒に対して行うという取組を今行っております。この中で、学びでのつまずきが解消されたり、不登校の手前の行き渋りの段階で課題、原因が思わぬ形で見つかったり、家庭の環境調整に入るということも行っております。これは、もともと市役所の福祉部門の発達支援の取組を学校現場に拡大してきたものでありますけれども、ここの狙いは教師の負担を減らすということです。専門外のいろいろな困難に当たっている教師の負担を減らして、それで本来の教育に集中させるという環境を市長部局がつくるというコンセプトで始めています。その意味では、福祉とか医療というのは、教育を円滑に進めるためのサポートする役割を持っているというのが私たちの考え方でありまして、そういったことを推進しております。今まで、様々な課題を学校教育の現場に委ね過ぎたのではないかということを思っておりまして、ここは市長部局と連携をする中で、それをサポートする体制をつくるのが全国的に必要ではないかというふうに思っております。そのために、我々は市長部局、教育委員会、垣根がないのですけれども、総合教育会議を行うまでもなく、ふだんからの連携ができる体制をどうつくるかということが大事ですし、そのために、首長自らも、私自身も毎年全校全教室訪問しておりますけれども、やはり教室の学校現場に密接な関係を持つことが大事だと思います。地域クラブの問題、探求学習、地域学校協働本部、いろいろありますけれども、先ほど清原委員もおっしゃいましたけれど、基礎自治体において市長部局と教育委員会がしっかり密接な連携をとるということは非常に重要だと思っていますので、そういったことを実践しておる立場からも、この審議会でいろいろ議論をさせていただきたいと思っております。
 少し長くなりましたが、以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。
 あと15人ほどの方にお話しいただきますので、時間の方はできるだけまとめていただけたらと思います。後にご発言される委員の方に不公平になっては申し訳ないので。
 それでは、続きまして、萩原委員、お願いいたします。
【萩原委員】  では、時計を見ながら進めていきたいと思います。
 国立女性教育会館理事長の萩原なつ子と申します。12期に引き続きまして、生涯学習分科会でお世話になることになると思います。
 私、2022年3月まで立教大学におきまして、社会人を対象とした大学院で長らく教べんをとっておりました。その関係で、やはり社会人向けのリカレント、リスキリングといったものに大変関心を持っておりますし、この辺の充実は今後も必要になってくるかなというふうに思っております。また、NPOの方にも長く身を置いておりますので、今まで委員の先生方がおっしゃったように、地域におけるコミュニティにおける学習というか、そういったものを進めていくときには、NPOとの連携というのは非常に重要ではないかというふうに思っています。また、小学校5年生の孫娘を持つ祖母の立場とすると、今の小学校、本当に先生方大変だと思います。60年前の自分の小学校とは全く様相が違っております。もう本当に、孫はしっかりプレゼンも、パワーポイントをつくってやっていますし、タイピングなんかもすごく上手ですし、その中にあって質の高い教師の確保というのは、先生方もとても大変だというふうに思いますので、先生方の支援も含めて、初中局に関して、分科会では議論していただきたいなと切に願っております。
 それから、国立女性教育会館の理事長の立場とすると、やはり女性教育を通して長らく男女共同参画の社会形成に資する活動を展開してまいりました。SDGsの目標3、目標4、目標5に書かれておりますように、性別にとらわれず、誰もが様々な多様な学びの場を確保し、そしていろいろな、様々な選択肢がある、そういった生き方ができる、そういったウェルビーイングな社会形成をするためにも、教育の部分は大変重要だと思っていますので、この議論を深めていければなというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。萩原委員、引き続きよろしくお願いします。
 続きまして、浜田委員、お願いいたします。
【浜田委員】  失礼いたします、浜田でございます。
 この審議会につきましては、令和3年の令和の日本型学校教育答申の際に、外国人児童生徒の教育の充実についてというのが答申の柱になっておりまして、その関係で特別部会に加えていただいてお世話になっておりました。
 今般は、児童生徒ではなく、主に成人の日本語学習者について、令和6年度に日本語教育機関認定法が施行されまして、この成人の外国人、日本語学習者に関する施策というのが、この審議会の下で審議されるということになりましたことから、私もこの席の末席に加わらせていただいたということでございます。
 在留外国人は、昨年6月末の統計でおよそ359万人というふうになっております。外国人が居住国の言語であります日本語を学ぶということは、社会的包摂のための大前提ということでございます。言語権というのが基本的人権の1つだというふうなことも言われております。
 平成31年には日本語教育推進法という法律が施行されまして、その中でも、多様な文化が尊重され、活力ある共生社会の実現、そのために日本語教育の推進が重要であるということで、日本語教育環境の整備が国の責務としてうたわれたという経緯もございます。
 先ほどからキーワードになっております地方創生あるいはコミュニティづくりにつきましても、もはや日本語が母語でない人たちの存在を無視できないという状況になっております。日本語教育について、社会的包摂という観点から、また、全ての人が持てる力を十分に発揮し、活力ある社会を実現するという観点から施策を充実していただき、また、広く社会全体の理解を進めていただきますようお願いしたいと思います。
 以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 続きまして、廣津留委員、お願いいたします。
【廣津留委員】  このたび新しく審議委員を拝命いたしました、バイオリニストの廣津留すみれと申します。
 私は、国際教養大学と成蹊大学で教べんをとっていることもありまして、主に大学分科会でお世話になると思います。
 これまでも幾つか文科省の会議には参加させていただきましたが、人生の先輩方と御一緒させていただきまして、ただ、いつも音楽家は私1人でして、少し別の視点からもお話をさせていただければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
 各分科会の皆さんが一堂に会する機会ということで、今後の教育に期待することを早口で2点ほど述べさせていただこうと思います。
 これまでも、皆さん、教師の質の向上ですとか、質の高い教育の話がありましたけれども、まず1点目は、学力だけではなく考える力を強化するということです。私は、地元大分の公立の小中高校に通いまして、アメリカの大学と大学院に通いました。その後、やはり各国からの学生、教員とのコミュニケーションにおいて一番の大きなギャップは、やはり発言することですとか、自分の意見を持つということでした。これは、学校の教室内では皆さん御存じのとおりかと思いますけれども、私は音楽の大学院に行ったこともありまして、音楽面でもやはりそうでして、日本だと、どう弾くべきかというのを、先生に言われたことをひたすらコピーするのですけれども、海外に行くと、どんなふうに演奏したいのですかとか、このフレーズを形容詞で表すとどう表現しますかというふうに言われて、最初は今までやってきたこととは真逆のレッスンだったので、正直、最初は全く、大分の公立高校から来た私にはもう全く手が出ないところだったんですけれども、今考えると、そうやって自分の主張をはっきりさせて、いかに上手に舞台上からそれを人にプレゼンするか、それを鍛えられたことが自分の信念を持つことにつながりまして、人としても成長して、恐らく今ここに参加させている理由にもなっているかなと思います。考える力を鍛えるべきと、これだけ言われる中で、なぜ2025年になっても、まだ日本ではなかなかそれが教育に浸透しないのが本当に不思議でなりません。そのためには、カリキュラム内にディスカッションをもう少し増やすことですとか、教室がもっとオープンになることですとか、教師のファシリテーション力の強化などなど、やらなければならないことは山積していると思います。一握りの人たちだけがそのような力をつけられるのではなく、初等教育から全ての人が世界と渡り合えるような人材が育つような教育が広がって、家庭も社会も新たな視点へと変わっていくこと、これを期待しています。
 2点目は、文化芸術の強化です。AI時代になりまして、私自身、AI任せで回答できないような課題をどうやって学生に課すべきかというのも、毎学期悩むところではあるんですけれども、そんな時代だからこそ、やはり重要な鍵を握るのは文化芸術の力だと信じております。私が音楽の道に進むきっかけとなった大学の先輩であるヨーヨー・マさんというチェリストがおりますが、彼はSTEM教育に加えたAを加えたSTEAM教育の効果、効用について、コラボレーション、フレキシビリティ・柔軟性、イマジネーション・創造力とイノベーションを育てるのに一番効果的なのがパフォーミングアーツである。その4つの力があれば、バイオサイエンスであれエンジニアリングであれ、うまくできるようになるということをおっしゃっています。芸術の効用というのは数字に出にくいですので、他国でも予算を減らされたりと、苦しい局面に立たされることもあるのですけれども、生の音楽、美術に触れたり、人と協力しながら何か音楽や芸術の作品を一緒につくり上げるといった活動を家庭の経済的なバックグラウンドに関わらず、人がおしなべて体験できるというのは、やはり学校だと思います。文化芸術面については、議題に上がりにくいトピックかと思いますけれども、AI時代を生き抜くすべとして、是非文化面を含めて国として強化することで、詰め込み教育では育てることのできない人間性、これを豊かにすることができるのではないかと期待しております。
 以上です。これからどうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 続きまして、藤田委員、お願いします。
【藤田委員】  大阪教育大学の藤田と申します。
 私は、今まで初等中等教育分科会に臨時委員として参画させていただきました。今回、委員としてこの総会に参加させていただいております。私の専門は学校安全、具体的には学校における安全教育、安全管理、学校と地域、家庭との安全に関わる組織的連携について研究しております。
 私は、24年前の2001年6月に本学附属池田小学校で児童教職員が殺傷された事件の後、事件6年目の2007年から4年間、同校の学校長を併任しまして、事件後の池田小学校における安全教育、安全管理の再構築、また、事件によって被害を受けられた方々への支援に従事いたしました。この附属池田小学校校長としての経験や、また、附属池田小学校事件に係るいわゆる反省、教訓、これらを基盤とし、児童生徒や教職員にとって安全で安心な学校を構築していく取組としてのセーフティープロモーションスクール制度を提案し、現在、国の第三次学校安全の推進に関する計画や学校安全推進事業を通じて、国内外の学校への普及に取り組んでいるところです。
 我が国では、児童生徒や教職員が、学校内のみならず、登下校中に被害を受ける事件、事故、災害が数多く発生しております。このような児童生徒や教職員が、学校内のみならず、登下校中に被害を受ける事件、事故や災害の発生を予防し、たとえ事件、事故や災害が発生したとしても、その被害の程度を最小限にとどめ、また、同じような類似した事件事故や災害による被害の再発を防ぎ、児童生徒や教職員にとって安心して学べる場としての学校を持続可能な観点から保障していく多面的な取組が必要であると考えております。
 特に、学校における児童生徒への安全教育の充実や、教職員の働き方改革を踏まえた学校における安全管理の充実、さらにコミュニティ・スクールの学校運営協議会や、セーフティープロモーションスクールの学校安全委員会など、学校と家庭地域が一体となって協働する安全推進体制の在り方について検討していく必要があると考えております。次の時代の学校や地域の安全と安心を担う人材の育成を目指したこの総会での議論に参加し、学ばせていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。藤田委員、よろしくお願いいたします。
 続きまして、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】  東京学芸大学の堀田でございます。
 私の専門は、DXが進んでいったときの学校教育の在り方でございます。これまでは初等中等教育分科会に参加しておりました。学校教育に多様性、包摂性が求められる今日において、例えばGIGAスクール構想によって配付された端末を活用して、こういう要求に対応した教育をどのように授業の中に実装するか。諮問の中には、デジタルの力でリアルな学びを支えると書いてありますけれども、こういう考え方に基づいた、デジタルを十全に活用した学習環境の在り方、授業づくりについて検討してまいっております。また、先生方の働き方の改善にも、DXが機能するにはどうしていけばいいかということを検討してまいりました。
 今お話ししたのは学習環境の改善の観点ですけれども、世の中に生成AIとかフェイクニュース等があふれる時代に、子供たちにしっかりと学んでおいてもらわなければならないことがあるのではないか。どちらかというと教育内容の改善になりますけれども、こういうような部分につきまして、追加あるいは修正が必要ではないかという検討にも関わってきております。第13期は、初等中等教育分野においては重要な諮問が2つありますので、私の専門の立場から全力でお手伝いを差し上げたいと思っております。
 以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
 続きまして、森委員、お願いいたします。
【森委員】  ありがとうございます。桐蔭横浜大学の森でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 大学分科会の方で中心に議論させていただくのかなというふうに思っておりますけれども、やはり社会と直結する大学との断絶といったようなものが非常に気になっているところでございます。今圧倒的な人手不足ということでございますけれども、単なる人手ではなくて、自身と社会や経済のウェルビーイングをやはり考えていくような、そういったような人材の育成が必要なのではないかというふうに思っておりまして、その人材は、大学の4年間、又は2年間だけでなし得るものではないということであれば、やはり児童、生徒、学生の学びと成長のたゆまぬ継続性といったようなものが必要なのかなというふうに考えておりますので、ここでの議論を大変楽しみにしているところでございます。
 そこの中で、大学でございますけれども、大学進学率50%を超えてまいりました。そういう意味では、ユニバーサルアクセスと呼ばれる時代に来たというふうに思っております。この辺は、先ほどの桑原委員と若干違う意見にはなるのですけれども、みんなが大学に行く時代が来たのかなというふうに思っておりまして、そのときには、大学が大学であるゆえんというのは何なのかといったようなものを追求してまいらなければいけないというふうに思っております。そのときに、これまでのように、伊藤委員が発言されましたけれども、18歳で選抜し、そして、学術研究において社会貢献するといったようなこれまでのエリート時代の大学の在り方と大学の在り方自体、社会的機能をどんどん変えていかなければならない。そこが一番大きな人材育成という観点だったり、教育という観点だったりだろうというふうに思っております。
 ただ、私、個人的に、今小学校の校長も兼任しておりまして、1年生、2年生はあんなに喜んで勉強しているのに、どんどんどんどん目がどよんとしてきて、中学校、高校、そして大学に上がってきた際には、勉強したくないと。何で大学来ているのだって話になってしまうのです。しかし、先ほどの廣津留委員の話もありましたけれども、実はその知識だけが能力ではないというところで、大学教育はどうしていくのかといったようなものを、今後しっかりと大学部会の方で、質保証、質向上のシステムをつくり、評価をするという形で考えてまいりたいというふうに思っております。
 個人的には、伊藤委員もおっしゃいましたけれども、いわゆるハイエンド人材だけではなくて、50%超えてきたのであれば、分厚い中間層の学生たちの教育をしっかりとし、そして社会につなげていくという社会的ミッションがあるのかなというふうに思っておりますし、地方大学に着任していたときの経験を思えば、都市型と地方といったようなものの学生のモビリティーを上げていくことによって越境学習が可能なのではないかというふうに思っておりますので、是非その辺りを、今後皆様と議論してまいりたいと思います。
 以上でございます。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 続きまして、両角委員、お願いいたします。
【両角委員】  東京大学の両角と申します。
 私は、今期から委員として加わりまして、前期は大学分科会の「知の総和」向上の答申の議論に関わりました。そういった観点からも、まず、今期は、その「知の総和」の答申で議論したこと、答申では方向性を示したにすぎませんので、それを具体的にどう実現しているかといったところの議論をしていきたいと思っております。18歳人口は減りますけれど、減るからこそ知の総和を向上していかなければいけないというのは、とても大切なメッセージだと思っていまして、その実現に向けて努力したいと思います。
 また、先ほどから横串を刺したような議論をしたいというお話が出ており、私もそうした議論をしたいと思っています。今日の議論を聞いていましても、やはり目指している方向性は共通なのだなということを改めて感じました。学びの場とか教育の場というのが、もはや学校や大学とかという教育機関だけでなくなっており、社会とつながったものでありますし、社会や世界そのものが、教材でもあり学ぶ場にもなっていると思います。本日も、ウェルビーイングという言葉も何度も出てきましたが、学ぶことで個人が幸せになれる、学ぶことで社会がよくなっていく、あるいはよくなりたいと努力していくようになるという、そういった方向を目指しているという点では、どの分科会も同じ方向性を向いているのだなということを、今日改めて感じまして、これからまた、2年間一緒に議論させていただくのをとても楽しみに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】  吉田でございます。
 私は、現場、日本私立中学高等学校連合会の会長、全国の私立中高の代表としてこの会に参加させていただいております。
 そういう意味で言えば、今の教職員、そして生徒たちの現場の生の声をお伝えできるというか、意見として出せる立場として、単に机上の空論になるようなことではなく、子供たちが本当に今何を必要としているか、教員が何を必要としているか、そういったことを具体的に進めていっていただきたいと願っております。ですから、今回の高校無償化のお話も、私どもからすれば、子供たちが自分たちの行きたい学校を選べるということでは最高の方策だと思います。ただ、そこに裏にあるものは、やはりきちっとした各学校、公立私立問わず、質の保障だと思っています。やはり高校以下の中等教育というのは、社会性を身につけさせるという大切な仕事があります。そして、我が国の国民としてしっかりとした大人に育てなくてはいけません。そういう子を、大学をはじめとする高等教育や実業界に送り出さなくてはいけない。そして、大学の方も、先ほど来高大接続のお話もありましたけれども、単なる偏差値だけでなく、やはり一人一人の子供をよくしっかりと見ていただいて、適、不適ではございませんけれども、やはりきちっとした大人に育ててくれる、そういう子をしっかりマッチさせて送り出したいというのが我々の願いでございますので、この会でも、やはり子供たちの立場というものをしっかり踏まえて会議に参加させていただこうと思っております。どうぞまたよろしくお願い申し上げます。
【橋本会長】  ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
 続きまして、和田委員、お願いいたします。
【和田委員】  ありがとうございます。国立大学法人金沢大学長をしております和田隆志と申します。よろしくお願いいたします。
 このたび、第13期中央教育審議会委員として参画する機会をいただきました。ありがとうございます。これまで第12期より大学分科会大学院部会にお世話になり、教育研究の質の向上などについて学ぶ機会をいただいておりました。私自身は、もともと腎臓内科を専門とする内科医でございます。今回、先ほども御説明ございました「知の総和」に関する答申にかけましても、活力ある社会に向けて、教育研究の質の向上、さらなる高度化はとても重要だと感じています。さらに、高度専門人材の活躍というものも重要な要素だと感じています。
 私どもの地域では、昨年1月に能登半島地震を経験いたしました。その地震、そしてその後の奥能登豪雨の復旧復興の過程で、改めて教育研究の環境の重要性、また、その向上について考え続けております。特に、初等中等教育と高等教育との関わりの重要性というものも強く感じております。改めて申し上げるまでもございませんが、人こそ財産だと感じます。未来を担う人、子供たちが育つ教育研究環境においては、明るさ、希望といったものが求められていると感じています。この原点を忘れることなく議論に参加させていただければと思います。
 本審議会では、微力ではございますけれども、少しでも貢献できるように努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、途中参加のオンラインの方に御発言いただきたいと思います。まず、田中委員、お願いいたします。
【田中委員】  お世話になります。山口県立大学長を拝命しております田中でございます。
 第12期では、大学分科会において、「知の総和」答申に臨時委員として関わりを持たせていただきました。そのような議論、あるいはこれまでの中教審で行われておりました議論を拝見させていただいて、やはり人口減社会における教育の在り方ということにおいて、小中高大がつながる、あるいは接続連携ということが言われておりますけれども、そういった広い観点から考える必要があると思います。私は今、大学に身を置いておりますけれども、高等教育としてどのようになくてはならないのかというのを考えていかないといけないなというふうに思っております。学ぶ側、教える側、関わる側というところに、また地域、あるいは環境、そういったところから、多面的な議論をしていかないといけないのかなと思っています。
 そこで、とかく将来どういう能力が求められる、あるいは将来がどのように予測されるかというバックキャスティング的な考え方で、どのような人を育てなくてはいけないという1つ考え方があるかと思います。それもとても大事なことだと思うのですが、これまでの日本型教育というか、こうしたことも踏まえながら、接続・融合させ、よりよい教育ということを考えていかないといけないのかなと考えます。特に私は地方大学に身を置いておりますので、地域における財産をいかに活用しながら、未来に求められるべき人材として小中高大の最後の教育機関としてどのような形、どのような内容を検討すべきかということについて考えさせていただきたいと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 それでは、オンラインで御出席予定で、まだ入っておられない方もいらっしゃいますので、先に副会長のお二方に御発言いただきたいと思います。
 まず、貞広副会長、お願いいたします。
【貞広副会長】  改めまして、千葉大学の貞広と申します。前期より引き続きお世話になります。
 会長より副会長に御指名いただきまして、大変身の引き締まる思いでございます。
 私の方から、3点申し上げたいと思います。
 私は、高等教育機関に身を置く者ですけれども、恐らく議論としては、初等中等教育分科会の方で中心的にお世話になると思います。その観点から、今期の中央教育審議会には、昨年末既に次期学習指導要領と教員養成に関わる諮問が出ておりますけれども、まずは、この両者を連動させて検討し、より包摂性が高く、質と公正さを担保した公教育を実現していくことが重要な方向性であると考えます。とりわけ、教育課程におきましては、一部の子供や地域の学びのみが充実するのではなく、より学びたいと思う子供にも、一休みしたいと思っている子供にも、どこに住んでいる子供にも、より柔軟な学びが保障されるだけでなく、空白、立ち止まり、回り道、やり直し等があり触れた在り方として許容され、全ての子供が公教育の中で、これは学校周辺の学びも含めてということになろうかと思いますけれども、公教育の中で包摂され、社会的公正が実現されるような教育課程が必須であると考えます。
 審議会では、その実相を見据えた議論が行われることを期待しております。ただ、この実相ということを考えると、制度や政策を変えるだけでは不十分であるとも思っております。それは、受け止め側のマインドが変わらなければ、どんな政策や手立てを講じても、仕組みが動いていかないからです。例えば、少し具体的に言うと、今の学びというのは、徐々に変わってはいますけれども、学歴に閉じ込められ、場合によっては人に対して勝ち抜く学力というようなものに価値が見いだされているようなところを危惧しております。秋田委員がおっしゃっていたように、学び手の人権を保障し、共に学ぶ在り方に価値を見いだしていただけるように、社会的なマインドを反転させるような仕掛けも意識していきたいと思っています。
 2番目でございます。こうしたことを、従来のように教師の善意のみに依存して実現していく在り方からの脱却というのは必須であると思います。先ほど来申し上げていますように、包摂性が高く、質と公正さを担保した公教育の実現においては、学校の指導、内部体制の充実や教師の働き方改革、そして渡辺委員が御指摘されたメンタルヘルスの確保と関連付けながら、実装していく道筋を想定する必要がある。これも強く意識していきたいと思っています。
 最後に、3点目でございます。これら今申し上げたことは、いずれも理想と現実をつなぐ実装に困難が予測される課題であります。だからこそ、それぞれの政策の種類ごとにばらばらに議論するというのではなく、一貫した原理原則や価値の優先順位をしっかりとつけて、政策の立案や公財政の支出の在り方というものに貢献できる議論ができればと思っております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。貞広副会長、どうぞよろしくお願いします。
 今、今村委員が入られましたので、途中参加の今村委員、よろしいでしょうか。
【今村委員】  今村です。冒頭はYouTubeの方で聞いておりました。どうもありがとうございます。
 今期もお世話になります。私はカタリバというNPOを24年間運営してきまして、社会教育の立場から、学校教育にどのように協力をしていくのか、先生方の負担をどのようにクリエーティブに分担しながら子供たちにとってよい探究的な学びを届けていくのか、居場所をつくるのかということをやってきました。
 昨今感じていることなのですけれども、先ほどから話題になっています不登校34万人の子供たちの姿に対して、昨年、臨界点を超えた感覚がありまして、といいますのは、私のところに、これまで公教育の代わりにといいますか、NPOとか地域団体の方々が担ってきたフリースクールのようなところが、これまで不登校の子供たちを支えてくるような取組をしてきたのですけれども、そうではない方々が不登校の子供たちの支援に当たろうというお声がけを、昨年だけでも12件いただいています。それはどのような方々かというと、端的に言うと、学習塾の方々です。このまま、義務教育ではない場所を頼っていこうとすると、どうしても民間事業者によるサービスというもの、言ってみれば公教育の市場化が子供たちにとって受皿となっていくということが、ここから加速して進んでいくのではないかということを感じていまして、それは決して悪いことではなくて、公教育が変わるべききっかけであり示唆をいただくことにもなるとも思うのですけれども、そうなっていくと、どうしても、市場原理の中で展開されていくということは、支持されないものは淘汰されるし、やらなくてもいいことは削減されて、どうしても効率的に子供たちが今欲しい、例えば中学受験の対応のような学力というものが優先されていったりということも、今起きているかどうかは分かりませんが、予想されるところです。
 そういった中で、また次期学習指導要領の検討が始まっている中で、公教育として本当にどのように変わっていくべきか、AIがこれだけスピード早く進化している中で、今から5年後の学習指導要領を構想するということは、一体私たちはどのような議論をすればいいのか大変悩むところであります。分断がとにかく加速していて、うちに来ている周りの若者たちを見ても、誰1人新聞はとっていないというのが今のこの社会の現実なわけなのですけれども、やはり学校がこれからの共生社会をつくるための基礎となる基盤に、もう一度なり得るために、先ほど都竹委員がお話しになったような、学校教育に福祉の方々が参加していくとか、教員集団よりも、もしかしたら同数ぐらい多様な方々が学校教育のスタッフになっているというような未来もつくっていかないと、公教育が本当によいものに、選ばれるものになっていかない、もはや選ばれるかどうかというところまで来ているのじゃないかというふうにも感じています。
 私自身できることは限られているのですけれども、何とか次の審議会においても貢献していきたいと思っていますので、皆さんと議論を重ねることを楽しみにしております。よろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 それでは、吉岡副会長、お願いします。
【吉岡副会長】  ありがとうございます。日本学生支援機構の吉岡です。
 前の期では、ここにおられる何人かの委員の先生方と共に、大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会で議論を重ねて、その結果が「知の総和」答申にまとまりました。この過程で幾つもの課題が提起されたわけですが、この幾つかの課題は、大学分科会中心に、これから更に深く検討していくということになると思いますけれども、今日は総会ですので、直接のそういうアジェンダとは少し離れるかもしれませんが、この間に感じたことを2点だけ発言したいと思います。
 1点目は、正に急激な少子化に関わる問題です。大学分科会、それから特別部会では、非常に強い危機意識を持って、この議論を重ねてきましたけれども、言うまでもなく、少子化の衝撃は初等中等教育において、高等教育よりもずっと早い段階で既に先行して展開していることです。特に、初等中等教育は義務教育課程を含むわけで、少子化を教育の質の向上にいかに結びつけるかという、その方途を探り続けてきたと思います。クラスの少人数化とか、あるいは体験学習、探求学習の充実、あるいはGIGAスクール構想、そういった様々な試みがなされて、それについてのフィードバックと検証もなされてきていると思います。
 これまで、初等中等教育の議論において、少子化状況に対処するために蓄積されてきた教育についての考え方とか方法とかというものを、正にこれから本格的に少子化の波にさらされる高等教育、それから更に生涯にわたる教育学習にどのように生かしていくのかということが大事だということが1点目です。
 2点目は、これと密接に関連していることで、先ほど岩本委員の発言にもありましたけれども、初等中等教育と高等教育の接続という、これも本当に昔から言われてきている問題ですけれども、この問題は常に念頭に置いていく必要があるだろうと思います。高大接続問題というのはこれまで繰り返し議論されてきましたけれども、議論の立て方は、極端に言うと、高校までの教育というものと大学教育、あるいは高等教育という2種類の教育というものがあって、その接点をどうするかと、そういう何か議論の立て方だったというふうに思うところがあります。そしてそれは、つまるところ、大学入試をどうするかという議論に収れんしてまいりました。確かに、教育の在り方や内容というのは、高校までの教育と、それから高等教育、大学等での教育とではかなり違っていますけれども、しかし、教育を受けて勉強する生徒、学生というのは、連続した成長過程の中にいるわけでして、そこに断絶があるわけではないわけです。
 それに、既に大学における学生の受入れ、アドミッションの仕組みというのは、これはもちろん少子化の影響もありますけれども、非常に大きく変わってきています。いわゆる筆記型の学力試験による入学者というのも半数を切っているわけで、非常に大きな変化が生じているというふうに思います。
 その意味では、先ほどから何度か言葉が出てきましたけれども、学修者本位という言葉に込められた考え方というものを、初等中等教育から高等教育、さらに生涯にわたる教育まで一貫するものとして意識して、人間の成長というものを俯瞰的に捉えていくということが大切だろうと思います。
 以上でございます。副会長として力を尽くしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本会長】  ありがとうございました。吉岡副会長、どうぞよろしくお願いします。
 皆様、ありがとうございました。御意見をいただくのはここまでにしたいと思います。運営に御協力いただきまして、ありがとうございました。
 本日、多様な角度から大変すばらしい御意見をいただいたと思っております。皆様のお話を伺いまして、それぞれの委員の方々がこれまでの経験あるいは御活動の中で様々な知見を持たれていることは大変よく分かりました。また、本審議会への思いあるいは期待をお聞かせいただき、大変心強く思っております。是非、実りある議論につなげたいと考えておりますので、御協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上で、本日の会議は終了いたします。次回の総会日程等につきましては、追って事務局より御連絡申し上げます。本日は、長時間どうもありがとうございました。
 
── 了 ──

 

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