令和7年2月21日(金曜日)10時00分~12時00分
文部科学省「第一講堂」(本省東館3階) ※ハイブリッド会議
荒瀬会長、永田副会長、橋本副会長、青海委員、秋田委員、安孫子委員、植村委員、内田隆志委員、内田由紀子委員、清原委員、後藤委員、貞広委員、清水委員、戸ヶ﨑委員、奈須委員、萩原委員、日比谷委員、古沢委員、堀田委員、湊委員、村田委員、吉岡委員、吉田委員、渡辺委員
あべ文部科学大臣、武部文部科学副大臣、金城文部科学大臣政務官、藤原事務次官、茂里総合教育政策局長、望月初等中等教育局長、伊藤高等教育局長、江﨑大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、平野社会教育振興総括官、神山総合教育政策局政策課長、池田国立教育政策研究所長 他
【荒瀬会長】 皆さん、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
本日は、あべ大臣、武部副大臣、金城政務官に御出席いただいております。
会議は前回同様、ウェブ会議方式と対面を併用して開催したいと思います。
それでは、続きまして、今日の会議の開催のことと配付資料につきまして、事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
【神山政策課長】 本日もハイブリッド会議での会議の開催とさせていただくことにしてございます。傍聴につきましてはYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
また、各議題の質疑・意見交換の際には、御意見がございます場合には、会場で参加の委員の皆様、ウェブ参加の委員の皆様ともに、挙手ボタンを押す形でお願いできればと思ってございます。また、御発言は会長の御指名の後にお願いしたいと思います。会場で参加の委員の皆様は、会長から御指名があった後、事務局がマイクをお持ちしますので、机上の端末にお顔を映しながら御発言いただければと思っております。
続きまして、本日の資料についてでございますけれども、議事次第にございますように、資料1-1から資料2までございますので、御確認の上、御不明な点がありましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
最後に、本日の出席者に関しましてですが、全体29名の委員の皆様のうち、15名が会場の参加、10名がウェブ参加ということで、合計25名の委員の皆様に御出席いただいておりますことを御報告申し上げます。
なお、本日、途中退席の委員の方もおられますので、御承知おきいただければと思っております。
以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございます。
本日の議事でございますが、議題は2つあります。議題1といたしまして、我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申案)について、次に議題の2といたしまして、第12期中央教育審議会の審議の状況について、この2件でございます。
それでは、議事に入りたいと思います。まず議題1、我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申案)について、事務局から御説明の後、大学分科会の分科会長でいらっしゃる永田委員からコメントを頂戴したいと思います。
では、まず伊藤高等教育局長からよろしくお願いいたします。
【伊藤高等教育局長】 それでは、議題1に関しまして、事務局より御説明いたします。お手元の資料1-1から資料1-4までを御覧ください。前回12月の総会におきまして、大学分科会及び高等教育の在り方に関する特別部会において議論をいただきました答申案に関し、御説明をさせていただき、御意見を頂戴したところです。その後、資料1-4にありますように、12月26日から1月15日にかけましてパブリックコメントを行い、国民の皆様から158件の御意見を頂戴いたしました。その上で、資料1-1は、前回の総会とその後の大学分科会等でいただいた意見を踏まえ、答申案としてまとめたものとなります。また、資料1-2が、前回提示した答申案から追記・修正した箇所を赤部分で明記したものとなります。本日は、この資料1-2に基づきまして、主な修正箇所のみ、ポイントを絞って御説明いたします。
まず答申案の題名ですが、これまで諮問を踏まえまして、「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」としておりましたが、永田分科会長と御相談の上、答申案の内容をより体現する題名といたしまして、「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」といたしました。
次に、1ページ目を御覧ください。「はじめに」におきまして、危機を少子化に絞って記載しておりましたが、これ以外にも様々な危機があることを明確化するために、記載の充実を図ったところです。
続いて、7ページを御覧ください。「質」、「規模」、「アクセス」の3つの価値の選択と調整について、前回、「学生や教員の意見を反映した民主主義的なプロセスで進めるべき」との御意見があったことを踏まえまして、「幅広いステークホルダーの議論を踏まえ」と追記いたしました。また、高等教育政策の目的として、「質」、「規模」、「アクセス」の3点を掲げておりますが、先ほどお示ししました題名に連動する形で、高等教育システムの再構築を行っていく旨を明記いたしました。
9ページを御覧ください。成長分野を創出・けん引する人材の育成について、デジタル・半導体、グリーン等の人類の新たな課題に挑戦していく成長分野への転換について記載してきたところでございますが、農業や観光等の地域を支える分野の振興についても、これまでの政府文書等を踏まえ、記載を追記いたしました。
15ページを御覧ください。イの題名として、「高等教育機関を核とした地方創生の推進」としていたところですが、前回、「高等教育機関は地方の人材育成の核という方が適切ではないか」との御意見があったことを踏まえ、「人材育成等を核とした地方創生の推進」と修正いたしました。また、地域の将来像について議論することに当たり、地方公共団体が更に役割を果たすことを期待する旨を追加しています。
18ページを御覧ください。教職員の能力向上に関する取組として、前回、「大学院で教育や大学運営に関するトレーニングが行き渡っている状況ではない」との御意見御があったことを踏まえまして、博士後期段階から行うプレFDや、ファカルティ・ディベロップメント、スタッフ・ディベロップメントに関する記載を追記しています。
19ページを御覧ください。大学入学者選抜について、前回、「大学入試の在り方を総合的に検討することが必要であるという問題意識に踏み込むべき」との御意見があったことを踏まえ、高校段階における文理横断的な学びの必要性の高まり、大学入学共通テストの導入、総合型・学校推薦型による入学者の増加など、在り方の議論を進めていく重要性について、その背景をより明確化しています。
20ページを御覧ください。「出口における質保証」につきまして、前回、「各大学が独自性を持った質保証ができることを強調すべき」との御意見があったことを踏まえまして、脚注66を追記してございます。
27ページを御覧ください。通信教育課程の在り方につきまして、奨学金の対象が旧来の面接授業、スクーリングに限定され、遠隔授業が対象とされていない実態を改善する観点から、学生への支援に関する視点を追記するとともに、放送大学学園法が成立した当時の国会でも附帯決議として示されていたことですが、私立大学通信教育との連携の推進についても明記しています。
43ページを御覧ください。地域のアクセス確保の観点から新たに設けることとする高等教育機関、地方公共団体、産業界、金融機関等の地域の関係者が継続的に議論を行う協議体といたしまして、これまでの案では、「地域研究教育推進プラットフォーム」としておりましたが、名称を改め、「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」とすることといたしました。
44ページを御覧ください。「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」と大学等連携推進法人の仕組みを発展させた「地域研究教育連携推進機構(仮称)」「」との関係性について明記いたしました。また、地域における担当部署の整備に関し、窓口の明確化等を追加し、具体化いたしました。
47ページを御覧ください。地域の経済・社会にとって不可欠な専門人材の育成に貢献している大学等へ配慮する観点から、高等教育の修学支援新制度における機関要件の見直しについて検討を行うことを追記いたしました。
54ページを御覧ください。国立大学の役割とし、地域の高等教育機関のけん引役となることを明確化いたしました。
55ページを御覧ください。公立大学に関する具体的方策について、見出しにも「定員規模の適正化」を明記いたしました。
64ページを御覧ください。「おわりに」におきまして、学生へのメッセージを新たに追記いたしました。
続いて、資料1-3を御覧ください。本答申の要旨として、これまでの内容に加えまして、より内容を分かりやすくする観点から、5ページ目から7ページ目までにかけて、質、規模、アクセスのそれぞれの項目に関し、今後の具体的方策のイメージを整理した資料を追加いたしました。例えば7ページ、参考3でございますけれども、先ほど名称の変更をさせていただいたところですが、「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」と「地域研究教育連携推進機構(仮称)」との関係性について、文字だけですと分かりにくい面がありましたので、その関係性について分かりやすく図示する概要も作成いたしました。
私からの説明は以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。では永田分科会長、御発言をお願いいたします。
【永田副会長】 ありがとうございます。先ほど伊藤局長からも御説明がありましたが、パブリックコメントを通じて国民の方々から多数の意見をいただきました。大変ありがとうございました。また、審議の過程では多くの有識者、各種団体からも御意見をいただきました。改めてお礼を申し上げます。それにも増して、特別部会、大学分科会、もちろん総会も含めて、多くの委員の方々からも貴重な御意見をいただきました。どうもありがとうございました。
内容については今、局長から概要説明があったところです。少子化という問題はもちろん大きな問題ですが、事の発端は、この元気のない日本を何とかしたい。そこから始まりまして、それでは一体どうしたらいいのか。経済、科学技術、どちらが先かは分かりませんが、いずれにしても、それを支えているのは人であるということで、ではその人をどう育てるかという問題になりました。しかも少子化という、先ほど申し上げた大きな課題がありました。
この中で、この国の「知の総和」については、減らすことなく、むしろ向上させていくという視点で今回の答申はできているということです。質を上げることによって、数が減っても補えます。それから、規模は縮小せざるを得ない部分もあるとしても、できる限り新しい才能を発掘して、これを活用していきます。それからアクセスは、物理的な問題、経済的な問題に配慮して、教育システムをつくっていかなければいけないだろうと考えて、答申の中に書いております。
ここで強調しておきたいのは、数字が例えば資料1-3に出ておりますとおり、2040年、46万人に激減しているわけですが、この激減のスタートは10年後からです。2040年になると、ここにある数字になりますが、それまでは緩やかに減っていくという状態で、10年後の2035年からは劇的に減少を始めます。その時点でどうしよう、こうしようと考えても、決してうまくいくわけもなく、これから10年間が基本的に最後の準備期間と考えていて、ここをいかに乗り切って、そして輝かしい未来につなげていくかということを考えたわけです。当初は、数がここまで減るという危機感というのは比較的やんわりと受け止められていましたが、やがてデータの詳(細等を説明する中で、委員共々、共有することができて、今回のまとめとなった次第であります。ちなみに、最初は少子化に云々というタイトルでしたが、ずっとこれから「少子化答申」と言われるのは嫌だという意見が出まして、ポジティブな方で、「知の総和」の向上答申と呼ばれたいということで変更しております。
いずれにしても、ここからが勝負でありまして、文科省におかれましては、政策パッケージを用意して、これを推進するということになっていると思いますが、フォローアップもしっかりとしていただいて、施策の選択をしながら、十分この厳しい課題に対応できるように、是非とも進めていただきたいと思います。また、委員の方々におかれましては、この答申が出た後が勝負ですので、諸所、いろいろな御意見をまたいただければ幸いかと思っております。この答申がまとまりまして、関係者の方々にもう一度お礼を申し上げて、挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【荒瀬会長】 永田先生、ありがとうございました。危機感の共有に基づいて、10年先、さらに先を見通したところで御議論いただいて、パブリックコメントの御意見、あるいは前回のこの会議の御意見、またこれまでの特別部会での御意見を踏まえて、題名につきましても思いを込めて新たにつけてくださったということでございます。ありがとうございました。
それでは、この件につきまして御議論いただきたいと思いますが、今も申しましたように、この件は前回12月の総会で答申案への御意見を一旦いただいております。修正が加えられたところでございますが、改めてこの答申案につきまして、委員の皆様から御意見、御質問がございましたらお願いしたいと思っております。今後の具体的方策の実行に向けたお考え、あるいは御期待等につきましても併せていただければ、先ほど永田分科会長からもそういった御趣旨の御発言もございましたけれども、よろしくお願いしたいと思います。
先ほど御連絡がありましたように、「手を挙げる」のボタンを、会場の方も含めて押していただくということで、よろしくお願いいたします。
では、渡辺委員、清原委員、戸ヶ﨑委員、安孫子委員の順でお願いいたします。まず渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】 日本学校保健会、日本医師会の渡辺でございます。1件お話をさせていただきます。
少子化が進む中で、高等教育機関全体の規模の適正化は必須かつ喫緊の課題と考えます。そのためには、新たな評価制度の創設が必要だと思っています。特に、学部・研究科を対象とした教育の質や定性的な評価は非常に大切だと思います。これがあって初めて大学を客観的に評価できますし、社会へのアカウンタビリティーが効果的に行えると考えます。社会へのアカウンタビリティーは、誰に何をどう理解していただくかという視点が必要だと思いますので、是非御検討いただきたいと思います。
また、早急に解決すべき課題は、大学の教育と研究レベルの低下ではないかと思います。大学院への進学が少ないのは、その魅力が十分感じられないことや、教育者の不足があると考えられます。大学が本来の役割を果たすためには、研究費や人材が確保できる財政的な支援が必要です。医学系を例に取れば、大学の附属病院は、働き方改革も関係し、指導者や研究者が大学から去っていき、大学病院のレベルが維持できなくなっております。大学医学部・大学病院は一体となって、本来、教育・研究を担う機関でもあるはずです。大学病院や医学部が教育や研究を持続的・安定的に担える財政面での基盤づくりが求められています。本文59ページに、大学の財政的支援の必要性が書かれています。是非文部科学省におかれましては、日本の将来のために抜本的な対応をお願いしたいと思います。
また、本期、事務局をはじめ、皆様に大変お世話になりました。最後でございますけれども、膨大な資料を準備していただいたことに感謝いたします。ただ、若干、資料が手元に届くのが直前なことが多く、来期、お忙しい委員が多いと思いますので、是非御配慮いただきますようお願いいたします。
私からは以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。今後に向けた御意見と、それから会議の資料に関してもありがとうございました。
では清原委員、お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学客員教授、前東京都三鷹市長の清原慶子です。
まず、本答申案をおまとめいただきました大学分科会及び、特別部会で議事を進めていただいた永田副会長を中心とする委員の皆様、そして伊藤高等教育局長をはじめ事務局の皆様の御尽力に、心から敬意を表し、感謝申し上げます。
また、本日御紹介されましたが、パブリックコメントも158件寄せられたということです。しかも、かなりその内容が本答申案に反映されています。委員の皆様だけではなくて国民の皆様の御意見も反映して答申案が提案されていることを本当に心強く思います。特に本答申案のタイトルに賛同し、その幅広い訴求を期待します。永田副会長が、是非「知の総和」の向上答申と呼ばれたいとおっしゃったとおりだと私は思っています。初等中等教育においては、「令和の日本型学校教育」という言葉が定着して、その実現が推進されていますが、是非「知の総和」の向上答申の中身が推進されることを願っています。
そのために、今後の政策の具体化に向けて、2点に絞って意見を申し上げます。
1点目は、本答申が示している、「目指す未来像、育成する人材像」を実現するためには、「学修者本位」で進めることと、高等教育機関の内部に閉じるのではなくて、「幅広いステークホルダーとの協働で推進する体制」が必要と考えます。協力して働くと書く、コラボレーションの「協働」です。このことについては、私のかねてのコメントを反映していただいた部分と思っていますが、本文の7ページに、「④3つの目的の関係」に、以下が挿入されました。すなわち、「幅広いステークホルダーの議論を踏まえながら検討することが重要である」と。この「幅広いステークホルダーとの議論」の必要性については、加えて64ページの「おわりに」に挿入された部分が有意義に連動します。すなわち、「本答申で提言した改革が実行されていく中において、未来の社会を支える学修者が自ら主体的・自律的に学び、多様な価値観を持つ人々と協働して、社会や世界に貢献していくための力を身に付けていくことも一層期待される」と書かれました。学修者はステークホルダーという部分もあるかもしれませんが、むしろ高等教育の主体であり、高等教育改革の主体であると私は考えます。そこで、資料1-3の項目2「今後の高等教育政策の方向性と具体的方策」の(1)「教育研究の『質』の更なる高度化」の冒頭にも、1として「学修者本位の教育の更なる推進」が位置づけられています。そのために、「出口における質保証」の促進が明記されて、「認証評価制度の見直し」が明記されています。このことは、今回の検討に通底する高等教育の社会的価値を客観化するために重要な方向性と受け止めます。その詳細のイメージは、資料1-3の5ページに示されています。
実は昨日、大学分科会法科大学院等特別委員会の今期最後の会議がありました。今年度は「法科大学院制度20年」を迎えています。そして、この20年間、法科大学院の皆様は認証評価制度についても取組を重ねてきています。令和2年6月には、本特別委員会として、「法科大学院制度改革を踏まえた認証評価の充実の方向性について」という報告も取りまとめています。このことから、本日の答申案に「認証評価制度の見直し」について記載されていることも昨日、共有されましたところ、「法科大学院の認証評価制度の20年間の取組が、学生への訴求や評価疲れを防ぎ、負担軽減を図ることを含めて、本答申案に基づく今後の取組に貢献できるのではないか」という御意見が複数の委員から出されましたことを報告いたします。是非、その具体化を推進していただければと思います。
2点目に、私は4期16年間の市長経験者であるとともに、地方での大学教員の経験もあることから、本答申が高等教育の価値と使命を果たす上で、特に「地方」や「地域」の視点から提案している内容が重要と思います。例えば資料1-3の3ページに、「今後の高等教育政策の方向性と具体的方策」の中の(3)「高等教育への『アクセス』確保」において、地理的観点からのアクセス確保については「地域連携プラットフォーム」の仕組みが提案されていて、詳しくは7ページに、先ほど局長にも紹介していただきましたけれども、かなり具体的なビジョンを図としても示していただいています。この「地域構想推進プラットフォーム(仮称)」が今後、「地域研究教育連携推進機構(仮称)」として発展していくという提起は極めて重要です。
そこで、文部科学省では、その下に赤い囲みでありますように、「地域大学振興室が新設」されるということも示されています。私は、今後の政策パッケージでは、この「地域大学振興室」がコーディネーター、マグネットとなって、是非都道府県・市区町村の自治体との連携によって、この構想を、構想にとどまらず、まさに日常的に機能する組織として推進していくことを期待します。
3ページに戻って、最後に申し上げます。「都市から地方への動きの促進等を通じた地方創生の推進」が位置づけられています。「地方創生2.0」がスタートしています。そこで、この具体的な方策のためには、例えば「地方創生を進めるための高等教育機関への支援」として、「地域の経済・社会にとって不可欠な専門人材の育成に貢献している大学等へ配慮する観点から、高等教育の修学支援、新制度における機関要件の見直しについて検討を行うこと」が提案されていますし、「放送大学において、多様なメディアを活用した、より効果的な次世代遠隔高等教育モデルの開発や他大学への普及展開を図る」だけではなく、「放送大学と私立大学通信教育との連携を推進」するということが明示されているということも、極めて重要な具体的な御提案だと思います。
ほかにも、重要な視点の明示があります。資料1-3、4ページの「設置者別の役割」の①国立大学のところです。国立大学の中で、各大学や分野ごとの状況を踏まえた再編・統合の在り方について、「地域の高等教育へのアクセス確保に十分留意しつつ検討を行う」とあります。「地域格差が生まれないようにする配慮」が記述されていること、そしてさらに、「国立大学の地域の高等教育機関のけん引役としての機能強化」についても記載されています。是非全国の地方・地域の実情に応じて、適切な高等教育機関の配置と、その機能が発揮できる条件整備を、高等教育機関のみならず、国、自治体、産業界等との連携の中で推進していく、そのような政策パッケージを編み出していただければと思います。
以上です。どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。改めて意義づけをしていただいて、さらには具体的なポイントもお示しいただきました。ありがとうございました。
それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】 戸田市教育委員会の戸ヶ﨑です。大変僭越ながら、義務教育を担う立場から今回の答申の受け止めと期待について、申し上げたいと思います。
まず初めに、15回にもわたり、幅広い観点から審議を行い、この大きな答申を取りまとめられました永田副会長並びに委員・事務局の皆様方に敬意を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
振り返ってみますと、平成30年にまとめられたグランドデザイン答申から7年がたっています。本答申は、コロナ禍や急速な少子化の進行など、社会の変化が大変大きくなっている中で、今後の高等教育の羅針盤とされる答申であると受け止めています。
今回、「知の総和」をキーワードに、高等教育の質の向上や規模の適正化、各地域におけるアクセス確保など、多角的な観点で御議論いただいたと認識しております。
私から3点ほど、期待を込めて申し上げます。
1つ目は、初等中等教育の学びの変化に合わせた、高等教育における学修者本位の教育への転換でございます。答申案に「初等中等教育との接続の強化」という言葉があるとおり、学校教育では、現行の学習指導要領の下で主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、例えば非同期型の学びの推進など学びの転換を図っているところでございます。また、GIGAスクール構想を進める中で、子供たちは1人1台端末を文具的に使いこなして、デジタルの力を効果的に活用しつつ、地域や企業とも関わりながら、様々な社会課題を自ら関心を持って問題解決を図るなど、社会との連携を意識した探究的な学びが展開されつつあります。
高等教育には、こうした学びを通して初等中等教育の段階で培った資質・能力を、更に伸ばして発展させていくことも求められていると考えています。既に学修者本位の教育への転換が進められていますが、より深く学びに向かい合えるようにしていただくことを期待してやみません。また、文科省においても高等教育機関の質の保障、教学マネジメントの確立に、今まで以上に御支援をお願いしたいと思っています。
2つ目は、各高等教育機関における情報公表の推進についてであります。生徒たちが進学先を選ぶ際に、少し辛辣な言い方で言いますと、現状として偏差値や漠とした関心分野を基準にして、行きたい大学ではなくて行ける大学を選択している場合が少なくないと思っています。また、生徒だけでなく学校や保護者も同様であることは否めないと思っています。言うまでもなく、進路選択は、教育研究の特色に加えて、地域や企業との連携、学生支援の充実、また学生の多様化対策など、様々な選択肢があってしかるべきであろうと思います。大学の入学はゴールではなくて、将来のスタートとなるはずですが、進学後に、なかなか意欲を持って学べていない学生も一定数いるのも現状だと思っています。こうした状況を踏まえますと、各高等教育機関には、入学を希望する全ての者に対する様々な情報の開示や積極的な発信をこれまで以上にお願いしたいと思っています。
最後、3点目は奨学金についてです。年々制度の充実が図られていて、大変喜ばしい限りですが、結果として、制度が大変複雑化しています。進路指導を行う教師たちは、多忙を極めている中で、様々な制度を理解しながら、保護者や生徒たちにきめ細かに対応を行っているのが現状です。しかし、奨学金の制度変更をつぶさに追っていくのは、正直なかなか難しいのが実情です。生徒や保護者が制度を知らないまま進学を断念したり、進学先を不本意に変更したりすることがないように、文科省から改めて都道府県教育委員会に働きかけていただくなど、周知の一層の強化をお願いしたいと思っています。特に強調したいのは、高校受験の段階で、一人一人の生徒がその先の学びを諦めなくてもいいと分かっているようにすべきということです。
長くなりましたけれども、終わりに、本答申の冒頭で触れられているとおり、急速な少子化が進んでいく中、我が国がゼロ成長の時代に突入して久しくなっています。次代を担う人材の育成と、各地域における知のリソースとなる高等教育機関は我が国の未来を切り開くエンジンになると思っています。日本のこれからの青写真を描く子供たちが、各高等教育機関での学びの青写真をしっかりと描きながら高等教育の門をたたいていくようになることを期待したいと思っています。これまでありがとうございました。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。義務教育を担うお立場からということで、変化しつつある初中教育において、学修者本位の学びを実現していこうとしている。それをしっかりと大学教育においても受け止めて進めていただきたいという御要望、また文部科学省には、質保証への支援、あるいは奨学金に関する周知も含めて、在り方についての御意見も頂戴したところであります。また、その元になるところの大学での情報開示についても、是非とも積極的にということでございました。ありがとうございました。
では安孫子委員、お願いいたします。
【安孫子委員】 安孫子でございます。
様々な面で、産官学三位一体で改革を行っていくべきといった文書をたくさん拝見いたします。2005年から、私たちは似鳥国際奨学財団を運営しています。留学生・大学生延べ340名、高校生・中学生420名、月8万円までの返済なしの学びのための支援を行い、ずっと続けております。互いの進捗を確認し合う、又は発表し合う行事を通して、彼らは国境を越えた学び合いの場で、母国への貢献を強く決意し学んでいる姿や、そして日本に対する信頼も強めていっております。これは、企業の奨学金支援といった形が、学びの支援だけではなく、今後の世界平和にもつながるものだなと非常に強く実感しながら運営しています。よい事例を広く知らせて、ますます企業の積極的なこういった参画を促す。これも必要な行為ではないかなと思うのが1つです。
更にもう一つ、25ページにあります社会人の学びの場の拡大の件についてです。社会人になって学ばなければいけないことがたくさん増えており、デジタル教育も待ったなしです。しかし、私たち企業が求めている、仕事にすぐ生かされる知識・技術が大学側でなかなか提供できていない現状のため、企業は自前でこの教育体系をつくっていかざるを得ません。そんな中で、30ページにあります、幅広いキャリアパス開拓の推進の中で、産業界や国際社会など幅広い社会のニーズに積極的に対応したカリキュラムにするという宣言がありますが、新しい知識・教養を早期に血肉にしていくためには、対話型、議論型、体感型、体験型の学習が非常に強く貢献するというところも、今後是非御検討いただきたいと思います。
以上2つ、意見として述べさせていただきました。ありがとうございました。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。民間で実際に行っていらっしゃる、国境を越えた学びの支援。これは先ほど戸ヶ﨑委員からありましたけれども、学びを諦めないということ、これは決して国境で線が引けるものではないという、そういったお取組についても御紹介いただきましたし、また社会人の学びということでいうと、年齢で線の引けるものでもない。立場で線の引けるものでもない。いつまでも学び続けることができる社会をつくっていくというのは、正に教育振興基本計画に描かれた内容につながっていくということを思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。
そうしましたら、答申案につきまして、大変積極的にこれを支える御意見をいただきました。また、具体的にこれが展開していく上で、どのように留意していくことが必要かといった御意見も頂戴したところでございます。
それでは、審議はここまでといたしたいと思います。いただきました貴重な御意見、それらは文部科学省において、答申の実施段階で是非御配慮をよろしくお願いしたいと思います。
それでは、答申案につきまして、答申として御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【荒瀬会長】 ありがとうございます。それでは、答申として、ただいまから、あべ文部科学大臣にお渡ししたいと思います。
(答申手交)
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
それでは、あべ大臣から御発言をお願いいたしたいと思います。
【あべ大臣】 ただいま荒瀬会長から、「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」の答申をいただきました。本件につきましては、一昨年9月の諮問以来、約1年5か月にわたりまして、大変精力的な御審議を賜りました。委員各位が英知を結集されまして、充実した内容の答申をおまとめいただきましたことに、心から深く感謝を申し上げます。
今回の答申におきましては、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方につきまして、的確に御提言をいただいていると承知しているところです。本提言をしっかりと受け止め、必要な制度改正を含め、関連施策の推進に全力で取り組んでまいります。
また、本日は第12期中央教育審議会総会の最後の回ですので、この場を借りまして、委員の皆様の2年間の御尽力に心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
また、今回の答申のほか、昨年8月の「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の答申など、今後の教育施策への重要な御示唆をいただいたところです。
これまでいただきました御意見をしっかりと受け止めながら、文部科学行政を前に進めてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
公務の関係で、ここで、あべ大臣が御退室になります。大臣、どうもありがとうございました。
【あべ大臣】 ありがとうございました。
【荒瀬会長】 それでは、続きまして議題2に入りたいと思います。本日は、ただいま、あべ大臣からも御紹介がありましたように、第12期として最後の総会でございます。今期の中教審の総括を行いたいと思います。各分科会等の審議の状況につきまして、事務局から御説明をお願いしたいと思います。生涯学習分科会、初等中等教育分科会、大学分科会の順にお願いいたします。
まず、生涯学習分科会につきましてでございます。江﨑審議官から御説明をよろしくお願いいたします。
【江﨑大臣官房審議官】 それでは、資料2の1ページを御覧いただきたいと思います。生涯学習分科会につきまして、第12期における審議の状況について御説明申し上げます。
第12期は計9回の審議を行ったほか、分科会の下に、社会教育人材部会、社会教育の在り方に関する特別部会、日本語教育部会の3つの部会を設けて、専門的・集中的に議論を行ってまいりました。「第12期議論の整理」は、11期までの議論や、令和5年に閣議決定いたしました第4期教育振興基本計画を踏まえた議論を基に、おまとめいただいております。誰もが生涯を通じて意欲的に楽しく学び続ける社会を目指すべき姿としまして、社会人のリカレント教育、障害者の生涯学習、外国人の日本語の学習、社会教育人材の4つについて今後取り組むべき方向性を示しますとともに、社会教育の新たな在り方を展望すると結んでいただいております。
次に、資料2ページでございます。社会教育人材部会では、最終まとめにおきまして、社会教育人材の裾野の拡大に伴う量的拡大・質的向上に向けた対応方策や、社会教育人材の活躍促進に向けた対応方策について整理しております。
また、令和6年6月に文部科学大臣から諮問を受け、社会教育の在り方に関する特別部会におきまして、社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策について、それから社会教育活動の推進方策について、3つ目としまして、国・地方公共団体における社会教育の推進体制等の在り方について、この3つの主な審議事項について審議を行っているところでございます。
次に、日本語教育部会におきましては、我が国における外国人に対する日本語教育の推進に関する専門的な調査審議を行うとともに、令和5年に成立しました日本語教育機関の認定等に関する法律等に基づく審査を行っております。第12期の期間中には22件の日本語教育機関が認定され、34件の登録実践研修機関、及び40件の登録日本語教員養成機関が登録されております。
最後に、来期に審議することが考えられる事項につきまして、簡単に御説明いたします。第12期の議論の整理を踏まえまして、社会教育人材を中核とした地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策、それから令和10年度までの経過措置期間における日本語教育機関の認定等、日本語教育機関認定制度の着実な実施をはじめとする日本語教育の推進、それからリカレント教育、これらを中心に引き続き審議することが考えられます。なお、中央教育審議会の議論を踏まえまして、リカレント教育について、今年度補正予算をはじめとした予算措置のほか、昨年は専門学校における教育の充実を図るための法律の成立をさせていただいております。引き続き、施策の推進に取り組んでまいりたいと存じます。
生涯学習分科会の審議の状況についての報告は以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
では続きまして、初等中等教育分科会につきまして、望月初等中等教育局長から御説明いただきます。
【望月初等中等教育局長】 座ったままで失礼いたします。
初等中等教育分科会でございますけれども、先ほど大臣からもございましたけれども、この第12期は、学校や教師を取り巻く環境整備に関する方策といった大きな答申も含めまして、多角的な観点から専門家の委員の皆様方に多様な取りまとめをしていただきまして、ありがとうございました。12ページになりますけれども、簡単に第12期の初等中等教育分科会の審議の状況について御説明を申し上げます。
初等中等教育分科会では、教育課程部会、教員養成部会、そして個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会、今、先ほど申し上げました、質の高い教師の確保特別部会、そしてデジタル学習基盤特別委員会がございます。それぞれの御審議いただいた内容について簡単に御紹介いたします。
まず、教育課程部会でございます。いわゆる学習指導要領に関わるところでございますけれども、教育課程部会では、現行、令和2年から小学校で始まりました学習指導要領の実施状況の把握、あるいは今後の教育課程等の検討に係る論点等について意見交換を行いましたほか、昨年12月、次期学習指導要領の改訂に向けた諮問を受けまして、部会の下に教育課程企画特別部会を設置しまして、教育課程の基準等の在り方について議論を開始したところでございます。
続きまして、教員養成部会でございます。これは、令和4年の中教審答申を踏まえた具体的な取組について議論を行いました。そして、教育課程と一体として、諮問を昨年12月に致しましたことを受けまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について議論を開始しているところでございます。
続きまして、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会につきましては、義務教育における今後の学校の在り方についての基本的な考え方、あるいは特に学びにおけるオンラインの活用については、具体的な議論をいただきまして、昨年12月に審議のまとめをいただきました。
高等学校教育の在り方ワーキンググループでは、少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方や、全日制・定時制・通信制の望ましい在り方、探究あるいは文理横断、実践的な学びの推進等についての検討をお進めいただきまして、今月、審議のまとめをいただいたところでございます。
そして、質の高い教師の確保特別部会では、何度も申し上げて恐縮ですけれども、令和5年5月の諮問を受けまして、学校や教師を取り巻く環境の変化を踏まえました、さらなる学校における働き方改革の在り方、教師の処遇改善の在り方、学校の指導・運営体制の在り方について御議論いただきまして、8月に答申をいただいたところでございます。
デジタル学習基盤特別委員会におきましては、GIGAスクール構想の取組について幅広く検討を行っていただきまして、昨年11月に「デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理」をお取りまとめいただきました。特別委員会の下には、次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループを設置しまして、昨年7月に令和7年度以降の新たな学校のICT環境整備の方向性を取りまとめていただきました。
さらにでございますけれども、デジタル教科書の在り方と推進方策につきましては、特別委員会の下にデジタル教科書推進ワーキンググループを設置して、中間的な取りまとめを行っていただいたところでございます。
また、初等中等教育分科会では、会議を京都で開催し、実際の委員の皆様に現地の学校現場を御視察いただきまして、子供たちの御意見も聞いた上での議論を行うなど、議論充実の取組も実施したところでございます。継続して、来期におきましては、昨年12月の教育課程と教員養成に係る2件の諮問に基づきまして、引き続き、具体的な審議の継続をお願いしたいと思ってございます。また、デジタル教科書の在り方と推進方策につきましても、中間まとめを踏まえた検討を引き続きお願いできればと思ってございます。
以上、簡単でございますけれども、12期、そして次期に続く審議事項についてご説明しました。ありがとうございました。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
では、最後に大学分科会につきまして、伊藤高等教育局長から御説明いただきます。
【伊藤高等教育局長】 大学分科会の審議の状況について御報告申し上げます。
先ほどは答申をおまとめいただきまして、ありがとうございました。今期第12期における審議実績です。39ページを御覧ください。
まず、大学分科会、高等教育の在り方に関する特別部会に関しましては、正に先ほど御答申をいただきました件につきまして、精力的な御審議をいただきました。本日御答申をいただいたところですが、幅広く御議論をいただき、答申においては、先ほど御説明いたしましたように、高等教育の「質」のさらなる高度化、高等教育全体の「規模」の適正化、高等教育への「アクセス」確保の観点で制度改正等の方向を取りまとめいただいたところです。
続いて大学院部会についてです。大学院部会では、人文科学・社会科学系大学院につきまして、令和5年12月に「人文科学・社会科学系における大学院教育改革の振興方策について(審議まとめ)」を取りまとめていただきました。この審議のまとめを踏まえまして、大学院教育改革を推進し、社会に開かれた質保証を実現するための情報公表の促進について幅広く御審議をいただきましたほか、大学院の在り方や質の高い大学院教育の推進についても御審議をいただいたところです。
次に40ページにお移りいただきまして、法科大学院等特別委員会の御報告を申し上げます。法科大学院制度は、先ほど清原委員からも御紹介いただきましたが、発足して20年を迎えたところです。これまでの成果や残された課題を整理した上で、法科大学院教育のさらなる改善・充実に向けて必要となる方策について、包括的に御審議いただいたほか、令和元年法改正により導入されました諸制度に関する状況などについても把握・分析を行っていただきました。こちらについては、令和7年3月に第12期の審議のまとめとして取りまとめていただく予定です。
次に、認証評価機関の認証に関する審査委員会におきましては、認証評価機関からの申請について審査を行っていただいたほか、認証評価機関が行う自己点検・評価について御確認いただいたところです。
最後に、教育課程等特例制度運営委員会についてです。令和4年9月の大学設置基準等の改正によって創設されました、教育課程等に係る特例制度について、大学からの申請に基づき審査を行っていただいたほか、今後の申請や審査等における課題の検討を行っていただきました。この他、大学等を取り巻く状況の変化に速やかに対応するため、高等教育政策全般について御審議をいただいたところです。
以上が、12期における大学分科会の審議実績でございます。
続いて41ページ、来期に継続して審議する事項について、最後に御報告を申し上げます。来期に継続して審議する事項とし、5点挙げております。特に本日取りまとめていただきました「知の総和」答申を踏まえ、まずは制度改革や財政支援の取組、今後10年程度の工程を示した政策パッケージを、文部科学省として夏頃までに策定し、具体的方策の実行に速やかに着手する予定としております。中でも、質のさらなる高度化に向けて学びの質を高めるための教育内容・方法の改善や、新たな質保証・向上システムの構築について、この大学分科会等で御審議いただきたいと考えております。
また、大学院制度と教育の在り方に関しまして、質の高い大学院教育の推進と、幅広いキャリアパス開拓の推進に向けた具体的な対応方策について、御審議いただきたいと考えております。第13期におきましても、今後の高等教育の発展に向けて、引き続き御審議をいただきたいと思います。
42ページから61ページまでは、ただいまの御説明に関連する資料と委員名簿等を添付しておりますので、適宜御参照いただければと存じます。
簡単でございますが、以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
それでは、今から意見交換の時間としたいと思います。この12期を振り返っての御感想も含めまして、御意見がございましたらお願いしたいと思います。いつも大変失礼な言い方で申し訳ありませんが、できるだけまとめて御発言をいただければと思います。なお、一通り委員の皆様から御意見をいただきました後、各分科会長から御発言をいただきたいと思っております。では、いかがでしょうか。
では渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】 渡辺でございます。初等中等教育分科会のデジタル学習基盤特別委員会のことに関して、1点だけ簡単に述べさせていただきたいと思います。
生成AIとか学校DXなど、今、ICT化が非常に進んでおりますので、やはりこの分野というのは非常に重要な課題であり、委員会としては大変な御苦労をなさっておられると思います。一方、拙速に導入するということに対して、やはりWi-Fi環境の地域差とか、教師の対応力の差というのが指摘されるところもあるように思っております。デジタル化を進めないといけないというのは十分みんな理解しているのですけれど、やはり進めるに当たって、実際それが効果的に行われているか、それから、一部の人が指摘されるような弊害というのは本当に生じないのかということを十分検証しつつ、それを並行して進めていただきたいと思っております。やはり検証して、その結果をフィードバックすることによりまして、より一層、デジタル化の活用が図れるのではないかと思います。前に進むことも大切でございますけれども、少し振り返って、それが効果的にいっているか、問題がないかということを是非考えていただくような体制を組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】 ありがとうございます。前に進める上では、いろいろ考えることがあるということの御指摘でございました。
ほかにはいかがでしょうか。
皆さん、進行に大変御協力をいただいているのですが、よろしいですか。ありがとうございます。
それでは、それぞれの分科会長から御発言をいただきたいと思います。では、まず生涯学習分科会からお願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。生涯学習分科会の分科会長を務めております清原慶子です。よろしくお願いします。
生涯学習、生涯にわたって私たちが学び続けることができる社会を考えていこうということで、学校教育等との連携を含めて取り組んでいるところですが、この資料の9ページにありますように、昨年の6月、文部科学大臣より、「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について」が諮問されました。それにつきましては、生涯学習分科会の中に、「社会教育の在り方特別部会」を設置して検討を重ねております。「社会教育法制定75年」を経て、今、変わりゆく日本社会の地域コミュニティの現状を直視しつつ、どのような社会教育の在り方が必要か、とりわけ少子化や都市化・情報化、その陰の孤独・孤立化を防ぎながら、地域コミュニティの活性化を図り、地方創生を進めていく上で、社会教育人材の有用性が共有されています。それは、行政において活躍していくだけではなくて、企業の人材として、あるいは社会教育・学校教育以外の分野での行政の人材として、社会教育士をはじめとする社会教育人材の有用性が確認されているところです。その中で改めて、学校教育との連携や、企業をはじめとする社会人教育との連携など、初等中等教育・高等教育と社会教育のつながりの強さが再確認されております。本日、高等教育に関する答申も発出されたわけでございますので、今後、「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の在り方」を考えていく上でも、高等教育との連携も重要な課題となってくると認識しています。
結びに、何よりも生涯学習分科会や各特別部会の委員の皆様には、本当に、熱心に発言していただいています。その雰囲気が、改めて社会教育や生涯学習の未来への扉を開くものと確信しています。今期の締めくくりに当たりまして、生涯学習分科会の自由かっ達な議論の雰囲気が来期も継続されることを期待して、生涯学習分科会長として感謝の御挨拶といたします。今年度はありがとうございました。事務局の皆様にも感謝いたします。そして、来期の取組の推進を願っています。どうもありがとうございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
それでは、大学分科会、永田分科会長、よろしくお願いいたします。
【永田副会長】 お時間ありがとうございます。
大学分科会を長らくやって思うのは、結局大学とは何ぞやという問いをいつも自問しながら、いろいろな課題の議論をしているということでありました。
大学というのは、批判的に言えば、白い巨塔のような見方もあるのでしょうが、それは1つの表象では確かにあります。しかし、ボストンにある超有名な大学のことを思うと、そこの建学の理念というのは、この村に、出来の悪い神父と村長は置きたくない、そのために大学を設置するのだということです。つまり、大学は基本的には地域に根差したものであるということだと思うのです。それがようやく再認識されつつあって、今回の答申にもそれはよく出ていると思います。産官学の協力、それから自治体との協力が大変重要だということをうたっているわけであります。
新制大学が戦後にできたのは1947年であります。国立大学は、その後2年たって、国立大学設置法の下に設置されています。国立大学は、学術はもとより、あるいは高度な学術はもとより、まず旧帝大には、産業の振興に力を尽くすこと、それから地域の大学においては、学術と高度な産業と地域振興に力を尽くすことが意図されて設置されているわけで、ようやくそこの大本のところに戻ったと思います。そういうニーズが高まっていると思います。
従いまして、1つだけどうしても、文科省に頼んでも駄目かもしれませんが、これから地方自治体に高等教育の部署を是非ともつくっていただきたいと思っています。これは省庁を超えるのでなかなか難しいのですが、是非とも必要なことであろうと思っています。
最後になりますが、大学分科会というのは、その前身は大学審議会です。この大学審議会というのはなかなか大層なもので、臨教審の結果、立てられて、大臣に勧告する権利があったという、極めて高いレベルの審議体だったのです。それが、精神はそのままに、勧告権はなくなりましたが、大学分科会として中央教育審議会の中にあります。その自負は、委員の方々には常々持っていただいて、そのつもりで御意見、御審議していただきたいと思ってきましたし、そう申し上げてきました。これから、不可知な時代が来るので、またそれに対応していかなくてはいけませんが、大学については、今申し上げたように、大学とは何かということを常々やはり考えながら、その時代時代の施策に結びつけられるように、文部科学省にも強くお願いしたいし、委員の方々もいろいろなところで御支援・御協力をいただければありがたいと思います。大変ありがとうございました。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。とても大事なお話をいただいて、次は初等中等教育分科会ということで、私が分科会長を務めておりますのでお話し申し上げますけれども、今、永田先生がおっしゃったことで、大学は一体何のためにあるのかとか、大学は何をするところかといった問いというのは、私は、初等中等教育においても、学校とは一体何のためにあるのか、ここで学ぶことはどういう意味があるのかというのを常にやはり考えざるを得ないなということを思っております。そういう点では、今期、12期においては、先ほど望月局長から御説明があったように、極めて重要な、子供の学びに関することと同時に、子供の学びを支える伴走者としての教職員についてどういった在り方が望ましいか、さらにはその教職員の確保といったこととか、教職員がやりがいとやる気を持ってやっていくにはどうしたらいいのかということについても議論があったし、答申も出せたと思っています。とりわけ昨年8月の、教職員の確保に関しての環境整備を一体的に進めていこうという答申に関しては、本当に文部科学省の並々ならぬ御努力を目の当たりにいたしまして、関わった委員もそうですけれども、全国の教職員の方の多くが大変感動的に見ていらっしゃると思いますし、期待もしていらっしゃると思います。やはり、文部科学省は学校教育に関して光になっていただかなければいけないということを思っておりまして、そういう意味では、この初等中等教育で見せていただいたことを、大学教育とか生涯学習、社会教育においても見せていただければということを思っています。
1点だけ、12ページですが、最後の行、高等学校教育の在り方というところで、これは初等中等教育分科会の下にあった特別部会の中に設置された、これは義務教育のワーキングも高等学校教育のワーキングも、またデジタル教材に関するワーキングも開かれていたわけでありますけれども、高等学校教育の在り方について、そのワーキングの中で、とりわけ高校教育はこれまでの「共通性」と「多様性」という言葉の順番で考えていくのではなくて、「多様性」と「共通性」という順番で考えていこうという議論をしたところです。みんな違うと。みんな違うのだけれども、みんな違う中で、共通にはどういう力が必要なのだろうか、どういう経験をしておくことが大事なのだろうかといったことを考えようということでやったところでございますので、少し注意を引いていただくような感じの表記になっておりますが、今後出てくるものについては、「多様性」と「共通性」という順番で出てくると思いますので、その点、どうぞよろしくお願いいたします。
先ほど、昨年夏の答申の実施に関して、文部科学省の並々ならぬ御努力ということを申しましたけれども、付け加えまして、2点是非とも共有させていただきたいことがあります。1つは、先ほども御紹介がありましたけれども、初等中等教育分科会では、東京以外で中教審を開催できないかということで、いろいろと現地の教育委員会、学校の皆さんにも御調整をいただいて、御準備いただいてやったわけですけれども、その際、文部科学省の担当の方々が大変な苦労をなさいました。今日、いつもと会場が違って第一講堂ということで、通常、第二講堂で総会が開かれている会議を第一講堂で開くとなると、文部科学省内の会議室の移動であっても、機材の関係とかの設置は非常に大変だと思います。御担当になっていらっしゃる方は非常な緊張感の中でやっていらっしゃって、少しこれを言っていいかどうか分かりませんが、私の机の上に携帯電話とか御自身のメモとかを忘れてしまわれて、なかったですかと開会前に慌てて来られるぐらい緊張していらっしゃいます。それを、私たちは中教審の会議はいろいろなところでやるのがいいと思うし、じかに子供たちの声も聞きたいという願いを持って、それでやりたいということを言って、やっていただいたわけなのですけれども、私たちは行って子供たちと話ができて本当に満足しましたし、とても大事な話を聞けて今後の検討に生かせると思ったのですけれども、その準備をしていらっしゃる文部科学省の方は本当に大変だったと思います。それをいとわずやってくださるところが、これまたすごい。関わった委員はその光を感じているのですけれども、委員だけが感じているのはもったいないと思いまして、あえて申しました。
もう一つ、初等中等教育分科会でも申し上げたのですけれども、初等中等教育分科会でいろいろ出てくる資料の中に、「問題行動・不登校児童生徒」という表現が出てまいります。問題行動と不登校を並べることに関する、懸念というか、不適切であるというか、そのような考え方も当然あるわけでありまして、ただ、統計を、ずっと記録を取ってきていらっしゃるので、今後また考えていただくことになると思うのですけれども、今も名称は変わりません。そういった議論もしたのですが、児童生徒課長が説明の際に、この中点で切っていることには非常に大きな意味があるのだということをおっしゃったということと、不登校児童生徒の人数をおっしゃるときに、数字を丸めないで、1人の数まできちんとおっしゃるという姿勢が、私は教育に携わる省庁である文部科学省の矜持ではないかなと感じたところです。是非今後も大切にしていただいて、中教審の議論をお支えいただければと思います。
大変申し訳ありません。とても長くなってしまいました。以上でございます。ありがとうございました。
それでは、本日出た御意見を、改めて申し上げますけれども、文部科学省で受け止めていただいて、今後に生かしていただきたいと思っております。
繰り返しますが、第12期最後の総会でございます。武部副大臣から御発言をいただきたいと思います。
【武部副大臣】 座ったままで失礼いたします。
委員の皆様におかれましては、令和5年3月、第12期中教審発足以来、2年間にわたりまして精力的な御審議を賜りました。誠にありがとうございました。
この2年間は、不安定な国際情勢や能登半島地震など、危機への対応力が問われる出来事がございました。さらに、深刻な少子高齢化による人口減少、生成AIの急速な発展など、人々の暮らしや社会への大きな変化が生じています。その中で、委員の皆様には、子供たちの教育ニーズの多様化、教師の働き方といった様々な学校現場の課題に向き合っていただきまして、これからの教育の発展のために極めて重要な2つの答申をおまとめいただくなど、我が国の教育の方向性を定める審議をいただいたことに、心より感謝を申し上げます。
教育は国の礎であり、発展の原動力です。社会が直面する諸課題を乗り越え、我が国が新たな時代へと進んでいくためには、いただいた答申をはじめとした皆様からの御提言を踏まえ、教育政策を着実に推進していくことが重要であると考えております。文部科学省としては、中教審での御審議を踏まえ、全ての人の可能性を最大限に引き出すための教育の推進にしっかりと取り組んでまいります。
最後に、重要課題に関する多様な意見の取りまとめに多大なる御尽力をいただきました荒瀬会長をはじめ、委員の皆様の活発な御審議と会議運営への御協力に対し、改めて心より感謝を申し上げ、御礼の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
【荒瀬会長】 武部副大臣、ありがとうございました。
それでは、これで終了させていただいてもよいかと思うのですけれども、今期最後であるということで、私からも少し御挨拶をさせていただいて閉じたいと思っております。
2023年の3月15日でございました。先ほども少し申しましたが、第二講堂で総会が開かれました。12期最初の総会でございました。そこで会長に選出していただきました。まず、本当にお支えくださいました永田副会長と橋本副会長に心からお礼を申し上げますとともに、委員の皆様お一人お一人にも本当にお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
また、清原委員には生涯学習分科会長として、生涯学習に関する、あるいは社会教育に関する議論を引っ張っていただきました。ありがとうございました。中教審を支えていただいた文部科学省の皆さんにも、心からお礼を申し上げます。先ほども申しましたけれども、初等中等教育分科会はもちろんそうなのですが、総会といたしましても非常にお支えいただきました。ありがとうございました。
また、全国の学校関係者の皆さん、学校教育につながっている皆さんにも、様々な形で、いろいろな御意見をいただいた、あるいはパブリックコメントに御記入いただいたということを含めて支えていただきました。ありがとうございました。そしてもちろん、児童、生徒、学生の皆さんにも、いろいろな点で学校教育、我が国の教育はどうなっていくのかということを考えていただいたり、あるいは実際に御意見を頂戴したりしたケースもありました。ありがとうございました。生涯学習や社会教育に携わっている皆さんにも、心から感謝申し上げたいと思います。
中教審での議論というのは、議論に加わる委員はもちろんながら、委員のみならず多くの皆さんの様々な声に支えられ、また叱咤激励され、示唆を受け、多面的に検討することができているのだと思っています。その意味で、上とか下といった話ではなく、関係する多様な方々からの声をしっかりと受け止めるという意味で、渡邉光一郎前会長が日頃おっしゃっておられた、中教審はボトムアップで進めていくものだということを、私自身も改めて実感しているところでございます。
今期の取組につきましては先ほど御説明いただきまして、各分科会長からも申し上げたところでございますので、そちらはもう触れませんが、第12期は、第11期の最後に行われた中教審総会で答申がありました教育振興基本計画に関してのスタートの年と、この2年間が重なってきているわけであります。この教育振興基本計画では、日本社会に根差したウェルビーイングの向上というものが大変大切な軸であるということが示されたところです。個人の幸福が、場の幸福、地域あるいは社会の幸福につながる。そしてそれは、学びを通じて人々のつながりと関わりがつくり出されていくことによって、教育し合える関係づくりが土壌となって、具体化していく。そういった意味のコミュニティが持続していくということが大変重要であると考えております。社会は予測困難な時代であるということで、いろいろな点で、毎日のニュースに接するたびに、本当にどうなっていくのだろうと思うようなことがいっぱいあるわけですけれども、そんな中でも、あるいは逆にそんな中だからこそ、誰一人取り残すことなく、全ての人が、そうした時代を生きていくために必要な力を身につけて、それぞれが幸福に豊かに生きていくことができるように、そのために教育があるのだということを、改めて皆さんと共有したいと思っています。その意味から、これは2年前にも申し上げたのですけれども、当時、全国高等学校長協会長をしていらっしゃいました石崎規生先生が、教育へのリスペクトという御発言をよくなさいます。教師とか学校に対するリスペクトということももちろん含めてでしょうけれども、人が学んで育っていく、その行為全体を指す教育へのリスペクトという言葉です。様々な課題のある中でありますけれども、この国の教育が正にこの教育へのリスペクトに支えられつつ、あるいは教育へのリスペクトをしっかりとつくりつつ、具体的に進んでいくことを心から願っております。
この2年間、本当にありがとうございました。(拍手)
すみません。最後の言葉を忘れていました。
では、これで第12期中央教育審議会総会を終了いたします。本当に皆さん、ありがとうございました。
── 了 ──
政策審議第一係
電話番号:03-6734-3458