中央教育審議会(第140回) 議事録

1.日時

令和6年12月25日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※ハイブリッド会議

3.議題

  1. 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)
  2. 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について(諮問)
  3. 急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する答申(案)について

4.出席者

委員

荒瀬会長、永田副会長、橋本副会長、青海委員、秋田委員、安孫子委員、今村委員、植村委員、内田隆志委員、内田由紀子委員、金田委員、清原委員、後藤委員、貞広委員、戸ヶ﨑委員、奈須委員、日比谷委員、古沢委員、堀田委員、湊委員、村田委員、吉岡委員、吉田委員、渡辺委員

文部科学省

武部文部科学副大臣、金城文部科学大臣政務官、藤原事務次官、矢野文部科学審議官、淵上大臣官房総括審議官、茂里総合教育政策局長、望月初等中等教育局長、伊藤高等教育局長、江﨑大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、日向大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、平野社会教育振興総括官、神山総合教育政策局政策課長、池田国立教育政策研究所長 他

5.議事録

【荒瀬会長】  皆さん、おはようございます。ただいまから第140回中央教育審議会総会を開催いたします。本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 本会議はこのところ、この形が定着しておりますが、ウェブ会議方式と対面を併用して開催させていただきます。本日、大臣は御欠席ではございますが、ビデオメッセージを頂いておりまして、後ほど御覧いただきたいと思っております。
 この会場には、武部副大臣、そして金城政務官に御出席いただいております。武部副大臣、金城政務官におかれましては、御就任後最初の中央教育審議会総会となりますので、御挨拶を頂戴できますでしょうか。
【武部副大臣】  皆様、おはようございます。文部科学副大臣の武部新でございます。委員の先生方には大変お世話になっております。
 今日も長い会議になりますけれども、どうぞよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
【金城政務官】  おはようございます。政務官の金城と申します。
 大事な会議のキックオフ、しっかりと皆さんと一緒に進めてまいりたいと思います。今日は一日よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  武部副大臣、金城政務官、ありがとうございました。
 続きまして、委員の交代がありましたので、事務局、神山課長から御紹介いただきたいと思います。
【神山政策課長】  事務局でございます。
 本年10月30日付で浜佳葉子委員が辞任をされ、同日付で、東京都教育委員会教育長、また全国都道府県教育委員会連合会会長の坂本雅彦委員が就任されております。坂本委員は本日は御欠席でございますが、御紹介まででございます。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。
 それでは続きまして、本日の会議開催方式及び配付資料につきまして、こちらも神山課長に御説明をお願いいたします。
【神山政策課長】  本日もハイブリッド会議での会議開催とさせていただきまして、傍聴につきましてはYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
 各議題の質疑、意見交換の際に御意見がありました場合には、会場で参加の皆様、またウェブ参加の皆様、どちらも挙手ボタンを押してお知らせいただければと思います。御発言は、会長の御指名の後にお願いいたします。会場で参加の委員の皆様は、会長から御指名があった後、事務局がマイクをお持ちしますので、机上の端末にお顔を映しながら御発言をお願いします。
 続きまして、本日の資料でございますが、議事次第にございますとおり、資料1-1から資料3-2でございます。御不明な点等ございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
 また最後に、本日の御出席につきまして、全体29名の委員の皆様のうち、7名がウェブ参加、17名が会場での御参加ということで、合計24名の委員の皆様に御出席いただいておりますことを御報告申し上げます。
 なお、本日、途中退室、また、途中参加予定の委員の方もおられますので、御承知おきいただければと思います。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。
 それでは、本日の議事につきまして御説明いたします。
 議題の1といたしまして、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について、諮問でございます。
 議題の2といたしまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について、こちらも諮問でございます。
 議題の3といたしまして、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する答申(案)について、この3つが本日の議題でございます。
 議題の1と2につきましては、併せて御諮問いただいた後、それぞれ事務局の御説明と意見交換を行いたいと思っております。ただし、本日は議題の3の答申案を中心に意見交換をしたいと思っておりますので、議題の1と2につきましては、時間的には少し短めにするつもりでございます。御了解をよろしくお願いいたします。
 それではここで、先ほど申しましたように、あべ大臣からメッセージを頂戴しております動画を御視聴いただきたいと思います。御準備はよろしいでしょうか。
【あべ大臣】  文部科学大臣のあべ俊子です。
 委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中御参加いただきまして、誠にありがとうございます。本日は公務により出席がかなわず、皆様と直接意見を交わすことができないこと、大変残念に思っています。
 「人づくりこそ国づくり」。いつの時代も教育は、国家、社会の礎であり、発展の原動力です。「誰一人取り残されない社会」を実現するため、あらゆる人が、どのような地域においても最適な教育を受けることができるよう、公教育の再生をはじめとする教育の振興や、教育投資の充実に向け、先頭に立って全力を挙げてまいります。
 本日は、3つの議題につき御審議賜りたいと存じます。
 まず、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について諮問いたします。より質の高い、深い学びを実現すると同時に、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方をどう考えるか。教育課程の実施に伴う負担への指摘にも真摯に向き合いつつ、情報活用能力の抜本的向上をはじめ、必要な資質・能力をどう育成するかなどについて御審議をお願いいたします。
 次に、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について諮問いたします。これは、子供たちの学習環境の進化、教師の役割の転換、より幅広い分野からの教師人材確保の必要性を踏まえ、教員養成段階の見直しと、入職経路の拡幅を推進するための方策などについて御審議をお願いいたします。
 最後に、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について、昨年9月に諮問し、これまで大学分科会等において積極的な御審議を頂いたものと承知しております。本日は、大学分科会において取りまとめいただいた答申案について御審議をお願いいたします。
 いずれも今後の教育の在り方を大きく左右するものでございます。委員の皆様の御知見に基づいて、闊達な御議論をよろしくお願い申し上げます。
【荒瀬会長】  あべ大臣からのメッセージを承りました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、議題の1でありますが、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について、武部副大臣から諮問を頂きたく存じます。よろしくお願いいたします。
【武部副大臣】  それではまず、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について、諮問させていただきます。
 子供たちを取り巻くこれからの社会の状況は、ますます社会の変化が激しく、流動性の高い社会になっていくことが予想されており、また、いわゆる内なるグローバル化やフィルターバブルといった、デジタル化の負の側面等による社会の分断の面芽も指摘されています。一方、社会の変化を引き起こす要因ともなっている生成AI等のデジタル技術の発展は、多様な個人の思いを具現化するチャンスを生み出しているという側面もあります。
 こうしたことを踏まえますと、自らの人生を舵取りしていくこと、多様な他者との対話や協働により、問題を発見・解決できる持続可能な社会の創り手を育てること、そして、テクノロジーを含めたあらゆる資源を総動員して、全ての子供が豊かな可能性を開花できるようにしていくことが、我が国の未来にとって重要です。
 学校現場の状況に目を転じれば、前回の改訂、すなわち現行の学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」を理念として掲げ、全ての教科等を、「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という3つの資質・能力の柱で整理し、何を学ぶかだけではなく、何ができるようになるかを明確化するとともに、どのように学ぶかの重要性も強調し、「主体的・対話的で深い学び」の視点から、授業改善の必要性を示しました。
 コロナ禍による制約に苦しみながら、学校現場は、GIGAスクール構想による1人1台端末も活用し、精力的な授業改善に取り組み、質の高い教師の努力と熱意に支えられ、国際学力調査等の結果にも表れているとおり、大きな成果を上げている状況にあります。
 一方で、様々な課題も顕在化しています。不登校児童生徒など、学ぶ意義を十分に見いだせず、主体的に学びに向かうことができていない子供が増加している状況にあり、特別支援が必要な子供や、外国人の子供、特定分野に特異な才能を有する子供も含めて、多様性を包摂し、可能性を開花させる教育の実現が大きな課題となっております。
 また、知識をただ覚えるのではなく、概念として習得していくことや、深い意味理解をすること、自立的に学ぶ自信がある生徒が少ないこと等に依然として課題があり、学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ばと言えますし、デジタルか紙かといった二項対立に陥らず、デジタルの力でリアルな学びを支えるとの考えに立って、ICTの効果的活用やデジタル人材の育成強化を進めることも喫緊の課題です。
 そして、こうした課題に取り組む上では、教師の努力と熱意に対して過度な依存をすることはできず、教育課程の実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合う必要があります。令和6年8月におまとめいただきました中央教育審議会答申に基づく教員の勤務環境整備と整合させつつ、令和の日本型学校教育を持続可能な形で継承、発展させ、新たな時代にふさわしい教育課程の在り方を構築する必要があります。
 このような認識の下、これまでのよい部分を継承しつつ、課題を乗り越えて、よりよいものとしていくため、次の事項を中心に御審議をお願いいたします。
 第1に、質の高い、深い学びを実現するための、分かりやすい学習指導要領の在り方についてです。
 第2に、多様な子供を包摂する柔軟な教育課程の在り方についてです。
 第3に、情報活用能力の抜本的向上をはじめとする各教科等の目標・内容の在り方についてです。
 第4に、教育課程の実施に伴う負担が生じにくい在り方など、学習指導要領の趣旨の着実な実現方策についてです。
 広範な検討内容となりますので、後ほど担当局長より、審議事項の詳細について補足説明をさせていただきますが、委員の皆様方におかれましては、精力的な御審議をよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 続きまして、議題の2についてでございます。多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について、引き続き、武部副大臣から御諮問いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【武部副大臣】  続きまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について、諮問させていただきます。
 学校教育は、我が国や地域社会の発展を支える重要な社会基盤であり、制度発足以来、社会の期待や要請を踏まえ、教育内容や教育環境は時代とともに変化してきました。
 これまでも、そしてこれからも、教師は公教育の要です。令和の日本型学校教育の実現という目標の下、教師及び教職員集団には、新たな学びを展開できる実践的指導力を発揮することをはじめ、高度化・複雑化する教育課題に的確に対応していくことが期待されています。少子化やAI等の技術革新が進む中での子供一人一人の能力を最大化する教育の重要性や、教師に求められる役割の転換を踏まえれば、教師には、より一層質の高い人材を十分に育成・確保していく必要があります。
 このことは、現在のいわゆる教師不足の背景にある教師の年齢構成に起因する大量退職、大量採用の時期を過ぎれば、おのずと達成される課題ではありません。令和4年答申で示されました改革の方向性にのっとり、課題解決のための戦略的意図を持って、改めて制度の根本に立ち返った検討を行い、教師人材の質の向上と入職経路の拡幅を推進し、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速することが必要と考えます。また、学習指導要領の改訂も見据え、教員養成においても新たな学びの実装への対応が求められます。
 以上のような観点から、具体的には、次の事項を中心に御審議をお願いいたします。
 第1に、社会の変化や学習指導要領の改訂等も見据えた教職課程の在り方についてです。
 教職課程の学修内容や学修方法がどのようにあるべきか、今後の教職課程の在り方や、教員免許制度の在り方について御検討をお願いいたします。また、教員養成系大学・学部等が、地域に求められる教師人材の確保につなげるために必要な取組とともに、必要な教職課程が大学において継続的に開設、実施できるようにするための方策についても御検討をお願いいたします。
 第2に、教師の質を維持・向上させるための採用・研修の在り方についてです。
 教員採用選考に関わる第一次選考の共同実施に向けた検討等の動きも勘案しつつ、優れた教師人材の確保に必要な採用に関わる方策について御検討をお願いいたします。また、教職生涯全体を通じて「学び続ける教師」の実現に向け、研修や学ぶ時間の十分な確保等によって資質・能力等を高められるような環境整備や、教職大学院での指導の質を確保するための方策等についても御検討をお願いいたします。
 第3に、多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方についてです。
 教員資格認定試験の在り方、社会人等が大学院での教職に関する学修について、教員免許の取得が可能な仕組みの構築などの方策について御検討をお願いいたします。加えて、特別免許状等のさらなる活用促進や、民間企業等に在籍しながら教師として勤務する際の任用形態の在り方などの方策についても検討をお願いいたします。
 以上、諮問事項について説明をさせていただきました。詳細はお手元の諮問文に添付されております諮問理由を御参照ください。
 委員の皆様におかれましては、何とぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  武部副大臣、ありがとうございました。
 それでは、諮問文を頂戴したいと思います。
(諮問文手交)
【荒瀬会長】  それでは、先ほど武部副大臣からも御説明ありましたように、それぞれの諮問の内容につきまして、担当の局長の方から御説明を頂きたいと思います。
 まず、議題の1、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について、望月初等中等教育局長に、諮問に関する御説明をよろしくお願いいたします。
【望月初等中等教育局長】  それでは私から、武部副大臣から諮問させていただきました議題1の審議事項について、簡単な補足説明をさせていただきます。座って失礼いたします。
 初等中等教育における教育課程の基準等の在り方につきまして、今日は資料1-3の資料をたくさん用意してございますが、キックオフでございますので、1-3はこの時間で御確認いただくことはできないと思いますので、適宜参照していただきながら、資料1-2の2枚紙で補足説明をさせていただきます。
 1-2の1ページ目、今、画面に出ているものでございますけれども、文部科学省におきましては、各学校が編成する教育課程の基準として、御承知のとおり、学習指導要領を定めてございます。その時々の学校を取り巻く課題、あるいは時代の変化等に応じまして、改訂を行ってきております。今回の諮問につきましては、学習指導要領の改訂や、その円滑な実現方策等の在り方につきまして、検討をお願いするものでございます。
 諮問の背景となります基本的な認識につきましては、先ほど武部副大臣より御説明をさせていただきましたが、我が国の教育のこれまでのよい部分を継承しながら、顕在化している学校教育を取り巻く課題をしっかりと乗り越えることができるように、教育課程の実施に伴う負担にも真摯に向き合い、新しい令和の時代にふさわしい教育課程の在り方について検討いただく必要があると考えてございます。
 1枚めくっていただきまして、4つの審議事項がございます。主な審議事項、1、2、3、4でございますが、1つ目、質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方についてでございます。
 高度な情報化の進展等に伴いまして、学校教育でもそうした新しい学びというものが広がりつつあるところでございます。生成AIなども飛躍的に発展する状況の中で、個別の知識の単なる集積にとどまらない、知識の概念としての習得や深い意味を理解するということ、あるいは、学ぶ意味と社会とのつながりを意識した指導が、今、学校現場で進められておりますけれども、これは一層、今後とも重要になってくると考えてございまして、こうした観点から、授業改善に直結するような学習指導要領となるための方策について御検討をお願いしたいと考えてございます。
 特に、学習指導要領の記載の在り方に関しましては、各教科等を中核的な概念等を中心に一層構造化していくことや、目標・内容の記載への表形式の活用、デジタル技術を活用したユーザビリティ・アクセシビリティの向上などについて、具体的な検討をお願いいたします。
 そのほか、学校における1人1台端末等の、いわゆるGIGAスクール構想の中のデジタル学習基盤の活用を前提とした各教科等の示し方や、学習改善・授業改善につながる、より豊かな評価につなげるための学習評価の在り方なども含めまして、分かりやすい、使いやすい学習指導要領の在り方について御検討をお願いしたいと考えてございます。
 2つ目でございます。多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程についてでございます。
 御承知のとおり、小中学校におきましては、35万人近い不登校児童生徒が調査で出てございます。特別支援教育の対象となる児童生徒、あるいは外国人の児童生徒など、教育的支援を必要とする子供たちが増加してございます。学校で学ぶ子供たちのいろいろな観点でのきめ細かい教育が求められる中、その多様性が顕在化している状況でございます。
 こうした子供たちが誰一人取り残されることなく、安心して学ぶことができ、これからの社会に必要な資質・能力をしっかり身につけていくことができる環境を整えることは、極めて重要と考えております。このため、子供たちが学びを自己調整していく学習環境のデザインの重要性や、デジタル学習基盤を前提とした新たな時代にふさわしい子供たちの学び、教師の指導性の在り方について、御検討をお願いいたします。
 また、こうした多様な学びを支えていく上でも、これまで進めております特例校制度、あるいは授業時数に係る柔軟性も含めて、多様な子供たちの可能性が輝く柔軟な教育課程の在り方、あるいは高等学校については、全日制・定時制・通信制がございますけれども、こうした高等学校の諸制度の改善、そして、学校が編成する一つの教育課程では対応が難しい不登校児童生徒や特異な才能のある児童生徒の教育課程上の特例の在り方についても、更に御検討をお願いしたいと考えてございます。
 3つ目でございます。各教科等やその目標・内容の在り方についてでございます。
 社会や時代の変化に伴いまして、教育内容については進展していくことが必要でございます。これからの時代に育成すべき資質・能力の在り方や、子供の学び、生活の実態等を踏まえながら、各教科等の目標・内容の在り方について御検討をお願いいたします。
 例えば、デジタル技術が飛躍的に発展する中における情報活用能力の抜本的向上を図る方策、あるいは質の高い探究的な学び、自ら考え、自ら課題を解決していくことができる、これまで進めている授業実践、教育課程の充実という観点から、更にそれを進める方策、あるいは主体的に社会参画をするための教育の改善の在り方など、項目として挙げているところでございます。今回、全部3のところはお話しいたしませんけれども、それぞれの項目の具体的な改善内容につきまして、専門的見地から御検討をお願いいたします。
 4つ目でございます。学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策でございます。
 よくカリキュラム・オーバーロードという言葉が最近、マスコミ等で出てございますけれども、教育課程の実施に伴う負担への指摘に向き合っていくということは、学校の働き方改革を進める上でも、そして、子供たちの学びを質の高い豊かなものにしていくという観点からも非常に重要でございます。
 第3のところで各教科の目標や内容の在り方について御検討いただくわけでございますけれども、関連しまして、教育課程全体の実施に負担や負担感が生じている構造を、しっかり議論していくことが大事でございます。学習指導要領やその解説、教科書、入試、教師用指導書などの授業づくりの実態等を、全体として専門家の先生方、皆様方に捉えていただいた上で、教育課程の実施に伴う過度な負担や負担感が生じにくい在り方につきまして、現在以上に増やさないといったことを前提とした標準総授業時数の在り方につきまして、そして、新しい学びにふさわしい教科書の内容、分量など、科学的な観点からの御検討をお願いいたします。
 また、各学校での柔軟な教育課程の編成を支えるためにも、各教育委員会における指導主事等の資質・能力の向上の在り方や、過度な負担を生じさせずにカリキュラム・マネジメント、学校全体でのマネジメントになると思いますが、これを実質化する方策など、学習指導要領の趣旨の着実な実現のための方策についても幅広く御議論をお願いしたいと存じます。
 以上が4つ、中心的に御審議をお願いしたい事項でございますが、これらに関連する事項を含めまして、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方につきまして、幅広く御検討いただくとともに、次に諮問されました多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について、これと一体的な御検討が必要かと思います。これとの十分な連携を含めまして、教育課程の実施に必要となる条件整備にも意を用いていただければ幸いでございます。
 このように広範、多岐にわたることから、審議の状況に応じまして、施策を迅速かつ着実に実施していくため、逐次取りまとめをしていくことも御検討をお願いしたいと思います。十分な御審議を頂いた上、この中教審で本日諮問をさせていただきましたけれども、令和8年度中を一つの目途に、答申をおまとめいただければ幸いでございます。
 簡単でございますが、補足説明でございました。ありがとうございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。大変多岐にわたる、しかも重要な諮問を頂きました。
 では、今の御説明も含めまして、この件につきまして御意見のある方はお願いしたいのですが、先ほども申しましたように、これからいよいよ始まっていくということで、本日この場で御発言を頂くということでお考えいただければと思います。
 ではまず、渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】  日本医師会の常任理事であり、日本学校保健会の副会長の渡辺でございます。学習指導要領における健康教育の在り方に関して記載がございませんので、1点だけ、述べさせていただきたいと思います。
 現在、学校では保健体育を中心に、レベルの高い健康教育に取り組んでいただいていることに、改めて敬意を表します。ただ、学校医からしてみますと、それが国民の生きる力につながっていないのではないかと思うことがございます。例えば、家庭科で教わる食品成分表示の見方が本当に身についているのであれば、若い2型の糖尿病患者はもっと少なくてもよいはずですけれども、残念ながらそうはなっておりません。
 現在の教科や授業時数の枠組みを変えられないのであれば、次の学習指導要領及び学習指導要領解説では、保健体育だけでなく、理科、家庭科、食育、特別活動などのカリキュラム・マネジメントを徹底するなど、人生100年時代における健康リテラシーの向上の観点から、改めて整理いただくことが必要ではないかと思いますので、是非御検討いただきたいということでございます。
 私からは以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。恐らくまた議論になっていくと思うのですけれども、それぞれの教科の枠組みというのを大切にしながら、その専門性を大切にしながら、どうつないでいくのかということを考えないと、生きた学びにはならないという御指摘かと思います。ありがとうございました。
 それでは、戸ヶ﨑委員、貞広委員、植村委員と御発言の御意思を頂いていますので、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  私からは、ごく普通の小中学校に日々伴走しているという立場から、申し上げます。
 まず、この諮問は、近年の様々な諮問と比べても、現状や実態を大変的確に捉えて、真摯に課題と向き合って、かつ審議事項も、趣旨が大変明確になっていると思います。文科省の冷静かつ熱い意志を受け止めさせていただきました。
特にきらびやかな教育のユートピアを見いだしたり、いたずらに危機的な未来像を提示して対応を煽ったりすることなく、学校現場の現実をも踏まえて、よい部分はしっかりと継承して課題はしっかり乗り越えていくという、継往開来の精神が貫かれていて、大変バランスも兼ね備えた諮問であると感じたところであります。
 このバランスという意味では、デジタルについても二項対立に陥ることなく、デジタルの力でリアルな学びを支えるというスタンスには、大変に共感するところでございます。GIGAスクールのデジタル学習基盤をビルトインしていく学習指導要領として、大変重要なスタンスであろうと考えます。
 また、本年8月の答申に基づく教師の勤務環境整備と整合性を持たせて、「令和の日本型学校教育」を持続可能な形で継承・発展させることを前提としていることも、大変重要なバランス感覚かなと思っております。間違っても、ワーク・オーバーロードとカリキュラム・オーバーロードを混同することなく、指導と管理の行政を一体的に捉えるトータルバランスも、旗幟鮮明であり、いたく共感するところであります。
 次に、審議事項ですけれども、第1に、「より質の高い、深い学びを実現し云々、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方」が掲げられています。これこそ、学びの正に「本丸」と言うべき改革であろうと思います。是非、中核的な概念等による構造化、表形式やデジタル技術の活用を推し進めていただきたいと思いますけれども、整理のための整理となることなく、現場の教師にとって真に分かりやすいものとなっているのかを常に意識し、検討していっていただきたいと思っています。
 第2と第3については1点に絞って申し上げますと、「不登校児童生徒や特定の分野に特異な才能のある児童生徒など、各学校が編成する一つの教育課程では対応が難しい子供を包摂するシステム構築に向け、教育課程上の特例を設けること」が示されたことは、特筆に値すると思っております。学習指導要領の中の世界観のみではなくて、教育システム全体に視野を広げて、真の意味での包摂、インクルーシブを意識していることは、極めて重要と考えます。
 第4については、この存在自体にいたく共感します。教育課程の実施に伴う負担や負担感と真摯に向き合う姿勢を表明しつつ、単純に授業時数や教育内容の在り方を取り上げるのではなくて、指導要領や解説、教科書、さらには高校入試、教師用指導書をも含めた授業づくりの実態を全体として捉えるという、正にこのシステムや構造の捉えこそが、出発点として重要であると考えます。
 加えて、私もこだわってきました、指導主事等の資質・能力の向上の在り方について触れられているということも、今回の諮問の視座の広さの一つとして、有り難く感じます。
 終わりに、文科省にも、また社会全体にもお願いをしたいのは、今回の諮問内容のように偏りのない、バランス感を大事にしていただきたいということであります。現在の教育システムは、多くの変数が複雑に絡み合っています。是非現場を直視した、多面的、多角的な議論が必要かなと思っております。本日の諮問により、きめ細かく頑丈な、いわゆる土俵築が示されたのかなと思っています。是非その土俵の上で、2040年代を見通した次期学習指導要領に向けて、精力的な議論をお願いしたいと思っております。
 
【荒瀬会長】  ありがとうございました。バランスという言葉を何度かお使いになりましたけれども、本当に実質的に意味のあるバランスの取れた次期学習指導要領になることを期待しています。そのためにも、真摯な幅広い議論が今後展開していくことと思います。
 それでは、貞広委員、お願いいたします。
【貞広委員】  ありがとうございます。千葉大学の貞広と申します。時間が限られているということですので、議論の進め方と議論の向き合い方について、それぞれ1点ずつ意見を申し上げたいと思います。
 まず、議論の進め方についてでございます。
 資料1-2の中段の顕在化している課題の丸2にありますように、学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ばと書かれています。私も、現行の学習指導要領がすごく悪くて改革しなきゃいけないとか、そのようには全く思っておらず、そのフィロソフィーをいかに浸透させるかということが重要だと思っています。でも、逆に言うと、今、十分浸透していないということで、これは今般のものだけではなく、何となく現場の方々は議論に参加せず、来た球を打ち返すという構造になってきたので、どうしても理解に時間がかかったりとか、誤読、つまみ食い、伝言ゲームの失敗のようなものが起こってきたという経緯があったとも理解をしております。
 今回お示しいただきました非常にバランスの取れた諮問文自体が、現場の先生方に投げられているボールだと思います。是非このボールをキャッチしていただいて、議論の中で現場の先生方と対話を尽くしながら、又はプロセスにも理解をしていただきながら、議論を進めていただきたいと思います。場合によっては、議論のYouTube配信されているものを校内研修で御覧いただいて議論を頂き、それをお返しいただくということもあろうかと思います。是非現場の方々との対話で、プロセスも腹落ちした上で出来上がるということを望みたいと思います。
 2番目でございます。
 先ほど資料1-2の2ページ目の主な審議事項に関わっての2番目の柱で、戸ヶ﨑委員が教育課程上の特例等の在り方に言及をされました。私もこの部分は非常に重要なことだと思います。また、これは教育課程上の特例を設けて、公教育の外側、外縁を渋々ながら広げていくというのではなく、むしろそうした知見を用いて、本体部分とかコア部分の在り方自体を問い直すという姿勢を議論全体で持っていただきたいと思っているところでございます。
 以上2点です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。多分、現場の感覚からすると、打ち返しても打ち返しても球が飛んでくる、そういうことがあったのではないかと思います。そういったことはやめにしてはどうかという御意見かと思って受け止めました。ありがとうございました。本当に現場との対話が重視される形で進められていくことを期待します。
 それでは、植村委員、お願いいたします。
【植村委員】  全連小の植村でございます。お時間いただき、ありがとうございます。
 まずは、今回様々、大事な視点から諮問いただきまして、心より感謝申し上げます。全連小として、今考えていることを少しだけお話させていただきます。
 まず、今一番大切にしていることは、学校を元気にするということでございます。そのためには、子供にとっても教師にとってもモチベーションが高まること、モチベーションを高めることが大事だと考えております。
 したがって、例えば諮問文にある分かりやすく使いやすいということとも関連すると思いますけれども、子供にとって学びたくなるようなということにつながる学習指導要領、そして、献身的な日本の教師のモチベーションを高めるような学習指導要領にしていただけるとありがたいなと考えております。例えば、内容の精選、量より質、裁量の拡大等を考えているところでございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。モチベーションにつながるというのは非常に重要なことだと思ってお聞きしました。ありがとうございました。
 ほかにはよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、この件、先ほど望月局長からも御発言がございましたけれども、次の諮問との関係も大変深いことでございますので、両方併せて進めていくということでよろしくお願いしたいと思います。
 では続きまして、議題の2といたしまして、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策についてということで諮問を頂きました。茂里総合教育政策局長から諮問に関する御説明をお願いしたいと思います。
【茂里総合教育政策局長】  ありがとうございます。総合教育政策局長の茂里でございます。私からは、先ほど副大臣が諮問申し上げました点について、細かいところを事務方としてつなげて御説明をさせていただければと思います。
 他の資料もございますけれども、資料2-2でございます。この1枚紙に沿って御説明を申し上げたいと思います。
 この資料は3部構成になっておりまして、1つはこれまでの経緯であったり、2つ目は課題、そして3つ目はこれからの御検討いただく事項というパーツに分かれてございます。
 1つ目のこれまでの経緯、答申を掲げてございますが、これはもう釈迦に説法ですので、スキップさせていただければと思います。
 その上で、真ん中にございます課題でございます。御覧の諮問の中にもございましたが、繰り返しになりますが、少子化による生産年齢人口の減少、あるいはAI技術等の先端技術が高度に発達する時代を迎えるということ。そういった時代背景の中で、例えば子供一人一人の能力の最大化であったり、子供たちの主体的な学びの支援・伴走への教師の役割の転換、こういったことから、教師に質の高い人材を十分に育成あるいは確保することが必要です。
 また、現在のいわゆる教師不足の背景にあります教師の年齢構成に起因する大量退職とそれに伴う大量採用、この時期が過ぎれば自動的に解決するという問題ではなくて、いろいろな分野で人材の獲得競争が加速化している。こういう時代背景を踏まえてどうしていくかというのが今の課題かと思ってございます。
 令和4年答申で示されました改革の方向性にのっとりまして、課題解決のための戦略的な意図を持ちまして、改めて制度の根本に立ち返った検討を実施。教師人材の質の向上と入職経路、教師になる前、教師になろうという入職経路の拡幅を強力に推進し、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するということが求められるという認識でございます。
 その上で、主な検討事項、これから御審議いただきたい事項を3点整理してございます。
 まず1つ目は、教職課程の在り方、これは養成段階のものでございます。2つ目、中ほどは、採用と研修の在り方、これは実際に先生、教師になってからの話でございます。そして3つ目は、教職へ参入しやすいような制度の在り方、これは社会と教壇の接続という視点でございます。この3つの主な検討事項を御審議賜ればと思ってございます。
 まず1つ目の部分ですが、教職課程の在り方でございます。社会の変化や学習指導要領の改訂なども見据えた教職課程の在り方、具体的には、学修内容であったり、学修方法といったことについて御審議賜ればと思ってございます。
 2つ目の丸でございますが、より多くの学生が教員免許取得を目指したり、教職生涯を通じまして能力向上への意欲を喚起したりするような教員免許制度の在り方についても御審議賜ればと思います。
 教員養成系大学・学部が教育委員会との連携を深めまして、地域に求められる教師人材、この地域のニーズをしっかりと踏まえた上で養成していくということ、こういった仕組みについても御審議いただければと思ってございます。
 4つ目でございます。教師人材を安定的に輩出するため、必要な教職課程が大学において継続的に開設あるいは実施できるようにするための方策について、御審議賜ればと思ってございます。これが1つ目の養成段階でございます。
 ここに「等」と書いてあります。今申し上げた内容に限る話ではございません。関連する話、多様な視点からの御審議を賜ればと思ってございます。
 2つ目、採用・研修の在り方でございます。採用に係る方策で、例えばでございますが、教員採用試験に係る第一次選考の共同実施に向けた検討であったり、2つ目でございますが、研修や学ぶ時間の確保等によって自己の資質・能力を高められるような環境整備をどう図るか。あと、研修履歴を活用した対話に基づく受講奨励の検証であったり、学校管理職のマネジメント能力の強化、あるいは教職大学院での指導の質の確保といったことを、学び続ける教師のための環境整備として御審議賜ればと思ってございます。
 3点目でございます。多様な専門性や背景を有する社会人が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方でございます。
 一つは、教員資格認定試験の在り方について御審議賜ればと思います。そして、大学の学部段階では教職課程を履修しなかった社会人が、大学院で教職に関する学修をすることによって教員免許が取れるような仕組みについて御審議賜ればと思ってございます。また、特別免許状のさらなる活用促進であったり、企業に在籍しながら教師として勤務する際の任用形態といったことについても御審議いただければと思ってございます。
 最後、養成・採用・研修の取組の改善を有機的につなげる観点からの必要な方策といったことについても、御審議いただきたいと思います。
 全て、「等」と書いてございます。関連する事項、その他のことも含めまして、幅広く御審議いただければと思います。
 最後、一番最後に「別途諮問している」と書いてありますが、今、初中局長から御説明申し上げました点と、しっかりとリンクしながら議論していくことが大事かと考えておりまして、事務局としてもその点を考慮しながら、しっかりと必要な資料等を御準備させていただければと思います。
 以上が御審議をお願いした事項でございます。委員の皆様におかれましては、本日の諮問の御審議についてリンクさせながら御審議いただくよう、改めてお願いを申し上げます。
 事務局からの補足の説明は以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 この件、その前の件、2つとも初等中等教育分科会で今後議論していくことになりますが、これまで常設されている教育課程部会と教員養成部会が十分にリンクできていたかというと、そこのところはいろいろと課題もあったかと思います。今回こういう形で両方の諮問を頂戴して、これからそれぞれの部会を中心に議論していくわけでありますけれども、教員養成部会も、それからまた教育課程部会も包括しているといいますか、まとめているといいますか、初等中等教育分科会としての議論としても大いにやっていく必要があるだろうなということを思いながら伺っておりました。ありがとうございます。
 では、この件につきまして、委員の皆様から御意見、御質問がございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 では、まず秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】  ありがとうございます。学習院大学の秋田でございます。私は現在、教員養成部会長をさせていただいております。教員養成部会におきましては、令和4年の答申の提言をされた改革の状況をこれまで確認し、そして、今後のさらなる検討について、既に教員養成部会においても、課題について議論を行ってきたところでございます。これまで2回ほど、これを論点として議論してきました。
 直近の中でも、次期の学習指導要領に向けた議論が始まるに当たり、その議論と連動・連携していくことの大切さということが言われておりました。これまではタイムラグがありまして、学習指導要領は改訂されるけれども、教員に関しては特に改革はないという形でございましたが、今回初めてこれが両輪になって、公教育を担う教育課程と、それから公教育の要である教師の在り方とが両輪になって、新たな時代の教育をつくっていくという方向であろうと、伺いながら感じたところでございます。
 その中で、教師の質と量を確保するために、養成・採用・研修の在り方について、制度的に抜本的に、今、茂里局長からお話がありましたところについて検討すべきではないかと、部会の委員の方々からも多くの意見が出されてきたところでございます。また、教師人材の裾野を一層拡大していくということで、現代の課題に対応していくために、今後の免許制度の在り方も、これまで二種・一種・専修免許状という在り方であり、また、その免許を取るための教員養成課程の単位等も議論してきたわけですが、これからにふさわしい在り方ということを議論してまいりたいと考えております。
 そして、現下の教育課題に対して、現状の教職員集団で十分なのであろうか、社会人等の民間の力を一層活用していくべきではないかという意見も出てございました。令和4年度の答申以降、様々な取組が進んできておりますが、いま一度、制度の根本に立ち返り、抜本的に考える時期に来ていると考えております。くしくも幸いに、昨日、教職員定数の改善ということについても公表がなされたわけでございますけれども、こういう形で今後さらに、量的な改善と同時に質の改善というものを考えてまいりたいと思います。
 今回の諮問事項につきましては、正に諮問と教員養成部会の問題意識とは一致していると受け止めておりまして、部会としてもしっかりこれから議論を進め、そして、教育課程や初中分科会としての議論を一緒に進めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。両輪とおっしゃったのが、大変力強く感じたところでございます。
 それでは、あと戸ヶ﨑委員、堀田委員、渡辺委員、内田隆志委員、そして橋本副会長、この順で御発言をお願いしたいと思います。
 では、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  
 今回の諮問については、教師人材の量的な確保と質的な確保、これらは喫緊の課題なわけですが、これに対する時宜を得た、縦と横の双方の改革と言えるのではないかなと思います。今回、3点に絞って申し上げたいと思います。
 一つは、多様な人材の確保、量の安定的な確保、質の高い教師の育成ということについてです。
 まず、審議事項第3の内容ですけれども、ここに、「多様な専門性や背景を有する社会人等が教職へ参入しやすくなるような制度の在り方」という記載がありますが、人材の質の向上を図って、参入しやすくするというだけではなくて、多様な背景を持つより多くの人材に教師を目指してもらうという、入職ルートの多様化の推進の方策を検討することも、併せて必要だろうと考えています。
 また、二つ目に特別免許状のさらなる活用推進に向けて、学生時代に免許を取得していなくても、社会人になってからでも教員免許を取得しやすくなる仕組みなどを総合的に検討していくべきだろうと考えています。加えて、他の職業と比べて教職が魅力的だと感じられるような環境整備の一層の推進も必要だろうと思います。
 同時に、現行の教職課程や教員免許制度の在り方自体を改めて見直していただいて、教育現場における課題に応じた科目の充実を図ると同時に、1人でも多くの優秀な学生が教壇を目指してもらえるように、教職課程における単位数の見直しなども、併せて検討する必要があると思います。この見直しによって、量の確保にもつながっていくと思います。
 また、三つ目に、養成の段階も含めた教職生活を通じた学びにおいて、理論と実践の往還の真の実現が正に必要であろうと思っています。理論の実践化と実践の理論化の双方向が大事だろうと考えています。目の前にいる子供をしっかりと見つめ、その子供のよさや課題を見抜き、支援策を迅速・的確に講じるということを、経験と勘という2つのKではなくて、科学と根拠という新たな2つのKの視点から実施するための手立てが重要だろうと思っています。言うなれば、理論に裏づけられた実践的な指導力の育成だろうと思います。
 そのスキルアップのためには、教材観、また子供観といった観を磨いて、それを基盤とした教育的なタクトの感度を高めていく必要があるのだろうと思います。これは、ロボット教師にはできない、ヒト教師にこそできるものであって、これこそが教師、つまり高度専門職に求められるスキルなのかなと思っております。
 まずは、令和4年答申の中で示された改革の方針を、一気に加速化させていく必要があるだろうと思います。令和4年の答申の後にも、生成AIをはじめとして、先端技術の発達等もありましたので、教師の役割の転換や大学での教員養成の段階からの教師の学びの転換も必要であろうと思います。
 加えて、先ほどの議題1の諮問にもあったように、貞広委員が先ほど御指摘しましたけれども、「現行学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ば」であります。このことも非常に重要なポイントであって、現在も、また次期学習指導要領も、高度専門職である教師が指導することによって、その理念や趣旨が徹底されるのだろうと思います。
 今回の2つの諮問は、令和3年の答申がエンジン、令和6年8月の答申がボディーとなった、車の両輪であろうと考えています。是非とも先ほどの「教育課程の基準等の在り方について」の議論としっかりと連動して、議論を深め、高めていくことを強くお願いしたいと思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。経験と勘というのと、科学と根拠というのと、この両者が、やはりこれも二項対立的には捉えないで考えるということが大事だなと思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 では、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】  東京学芸大学の堀田でございます。
 諮問1とつなげて少しお話ししたいのですけれども、諮問1の方に、情報活用能力の抜本的向上という話がありました。これは、これからの時代を生きる子供たちにはもちろん必要なことで、そのための授業改善はどうあればいいかというのは、教育課程的にも教育方法的にも検討が必要な事項となりますが、それを受けて、教員養成の段階で、そういう力が学生にしっかりと身につくような教職課程になっているのかどうか、免許制度になっているのかどうか。場合によっては、大学の学習環境がまるで現場のGIGAのように、いつでも端末を活用した学びが行われる環境になっているのかどうかも踏まえた、教員養成の指導環境といいましょうか、学習環境といいましょうか、そこも併せて御検討いただければと思うところでございます。
 また、更に言えば、これは両方とも教育内容や教育課程の話になりますが、実際現場に行ってみると、先生たちが大変忙しくされていて、その忙しさの背景には、事務的なこと、雑務とあえて言いますけれども、本当にその書類は要るのかというような書類があったり、それは本当に紙でやらなきゃいけないのかというものもあります。文部科学省が削減を促すこともたくさんあるかもしれませんが、各自治体とか、管理職とか、この辺りで思い切り削減をしていただくような御努力と同時に進めないと難しいのかなと思います。有能な質の高い人材が学校現場に残り続けていただくような仕組みの改善、働き方の改善というのは急務ではないかと思います。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。重要なキーワードである情報活用能力というのも、忙しさが結果的にはないがしろにしてしまうということにならないようにということかと思います。ありがとうございました。
 渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】  渡辺でございます。主な検討課題1の教職課程の在り方に関して、1件だけ意見を述べさせていただきます。
 教師の精神疾患による休職率が高いということが調査で示されております。様々な要因が絡んでいるとは思いますが、教育現場において、児童生徒の現状の課題を認識・理解されていないことも関連しているのではないかと考えます。
 資料2-3、参考資料の17、18ページに、普通免許状の取得に当たって修得を要する単位が示されております。記載されている児童及び生徒の心身の発達だけでなく、不登校やいじめなど、具体的な現状の課題を履修しておくことが必要と思います。普通の子以外は養護教諭が対応するというのではなく、教諭全体で児童生徒を育むという姿勢が必要ではないかと考えます。教職課程に学校保健の観点を加えて、児童生徒の健康についての基本知識を知っていただくことは、教室の運営をスムーズにするだけでなく、教師の実際のストレスを減らしていく上で、必ず役に立つのではないかと考えますので、是非御検討いただきたいと思います。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。大変重要な御指摘を頂きました。
 それでは、内田隆志委員、お願いいたします。
【内田(隆)委員】  ありがとうございます。
 本日の資料2-2の丸2、丸3に関わる内容でございますけれども、研修に関わっては、教育委員会の実施する行政系の研修や、大学における研修のほかに、教育系の学会あるいは任意の研修団体による学び、そして研修というのが重要な役割を果たしてきたと考えております。教科書編集であるとか、あるいは各種の検定試験などにも、こういったところで大きく関わってまいりました。
 前段の諮問1にも大きく関わるわけですけれども、仕事の余白を生み出すだけではなく、こういった教育系の学会や、あるいは任意研修団体に対する支援も受けながら実施をしていくということが、非常に重要ではないかなと思います。教育委員会の行政による研修、大学における研修と、それをつなぐ現場の生徒を視野に入れた研修団体等の研修にも、視点、議論を進めていただきたいなと思っております。
 先ほど貞広委員の言われた現場との対話、キャッチボールの上でも、植村委員の言われた教員のモチベーションを高めるという意味でも、こういった専門性を高める研修は非常に重要ではないかなと思っております。管理職も含め、教員がモチベーションを高めて学び続ける必要がございますので、こういった視点での御議論をも是非お願いしたいと思います。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。専門性を高める多様な学びの場とか機会があるということ、そこも忘れないようにということで、ありがとうございました。
 では、橋本副会長、お願いいたします。
【橋本副会長】  橋本です。
 今、経済界は、生産年齢人口の減少という大きなマクロの動きに伴って人材不足が極めて深刻化しており、企業として人材の育成・確保はこれまで以上に大変大きな命題になっています。これに対する一つの方策として、仕事と学びの好循環をキーワードに、リカレント教育、リスキリングの環境整備をいろいろな企業が進めているところです。
 これは、従業員の技術力あるいは知識の向上だけではなくて、例えばそれによって生産性が向上し、人材が定着し、企業の活力や競争力が向上して、マーケットからの評価につながっていく、そういう思いをもって取り組んでいるわけですが、このストラクチャー自体は、教育現場も全く同じではないかなと私は思います。質の高い教師の集団というものを形成するためには、先生に余裕のある環境の中で前向きに学んでいただくという必要がございます。そのためには、8月に答申で示された働き方改革の加速化であるとか、指導体制の充実であるとか、あるいは処遇の改善といったものの実現については、引き続きメインストリームとして進めていくことが極めて重要かなと思います。
 その上で、民間の社会人の活用といったものは、こういった教師集団の形成に極めて有効であると思います。ただ、それに当たっては、フィージビリティーの確保が大変重要かと思います。そして、外部人材が教育現場にスムーズに入っていくためには、免許制度のことはもちろんなのですが、現場での運営面の工夫をどうするかということも考えていく必要があります。外部人材をチームの一員として迎えて、協力して授業を進めていける体制をどうやって構築していくかということも検討課題かなと思います。
 企業にも教育分野で貢献したいと思っている人材は一定数存在しています。また、人に教えるという経験は、その方にとっても企業にとっても貴重な経験になって、その後の職務においても、その経験は極めて有効だと思うのですけれども、なかなかそういった大きな流れにはなっていない。具体的にどこから手をつけて、どのようにそれを進めていったらいいかということについて悩んでいる会社も多いと思います。
 現状では、まだ企業と学校のマッチングというのは必ずしもうまくいっていないと思いますので、そういう流れを作るためにも、マッチングを行うような機関やNPO法人とかもあると聞いておりますので、そういったところの活用策についての検討も実際のフィージビリティーの確保のためには大事かなと考えています。
 先日のPIAACの調査で、日本が世界のトップレベルになったということが大きく報道され、去年のPISAと同じく、これは非常に素晴らしいことだと思いますが、正にこれは厳しい環境の中で、懸命に頑張っておられる先生方の献身的な努力の成果であります。
 ただ、この努力のみに頼っていてはどこかで破綻しますので、是非経済界を含む広いセクターの人材を活用して、更に日本の教育の質を高めていくような教師集団の形成といった動きにつなげていければと思います。そういう観点で今後具体的な方策についても是非議論を深めていただきたいと思っています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。企業の世界と学校教育の世界との重なりについて御指摘いただいた上で、今お聞きしましたような持続可能な在り方というのはどういうところなのかというのを追求していかなければならないなと思ったところです。ありがとうございました。
 それでは、あと後藤委員と今村委員が手を挙げてくださっています。このお二人までとさせていただきたいと思います。
 では、後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】  ありがとうございます。
 教師には、専門性、それから人間性、使命感などが必要だと思います。質の高い教職員集団形成を目的として、専門性に着目した本方策につきましては、深い興味を覚えております。
 設問1も含めまして、教師の負担感というのが問題になっておりますが、質の高い教職員集団の形成により、結果的に子供と向き合う時間が確保でき、負担感をなくし、モチベーションを高めることにつながると感じております。また、頑張っている教員を評価し、処遇に反映し、モチベーションを高めることも、質の高い教職員集団を形成することにつながると思います。
 もう一つは、質の高い教職員集団を形成するには、教員の養成・採用、入職後の教員の資質向上のための様々な方策だけではなく、学校のリーダーシップ、ガバナンス、合意形成、何よりも信頼関係に基づく職場環境や人間関係の構築というのが必要だと思います。そのための方策も必要かなと、現場にいて日々感じているような次第です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。信頼関係というのは本当に教職員集団もそうですし、教育委員会と学校、あるいは保護者と学校、また、子供と教師といったところでも非常に重要かと思います。ありがとうございました。
 では、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  NPOをやっています今村と申します。発言させていただきます。
 先ほどの次期学習指導要領に関する検討の諮問と、今回の多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速することというところを両輪で今回御提示いただいたということが、すごく大切な点だなと思いながら参加をさせていただいておりました。
 先ほど貞広先生がおっしゃった点も重なるのですけれども、まず、先ほどの次期学習指導要領の検討の諮問の中の4番にあります教育課程の実施に伴う過度な負担や負担感の生じにくい在り方についてという論点と、不登校の子供たちの存在を今、誰が支えているのかというところに目を向けると、実は、この枠組みとは捉えられていない教育リソースとなる方々が、かなりの時間、プレーヤーとして今、子供たちを支えているという実態があります。
 また、これは不登校の子供を支えるという点だけではなくて、例えば高校生の探究の取組なんかを見ても、学校の授業の中ではなかなか先生方が細かくサポートし切れなかった点を、実は放課後や、また学校の内外で、自分がやるのだと旗を振ってその伴走に取り組まれている民間の方々の存在もあります。
 教員の在り方を、質の高い教職員集団をどう養成していくのかという点で、教員にまずなっていただいてから学校教育に従事していただくという在り方だと、正直な話、教員になりたくないという若い人たちの価値観を変えていくことは、とても追いつかないのじゃないかと。どんなに教職課程の質を変えていっても、一度できてしまった「学校の先生は大変そうだ」という認知を変えていくことはなかなか難しいと思う中で、新しい教育の形に参加していきたいと思う若い人たちや、また民間の方々の息吹みたいなものを、どう取り込んでいけるか。そこのところを真正面から検討していただく必要があるように思います。
 先ほどお伝えしたとおり、公教育の枠組みの中ではないということになっている、不登校の子供を支えている方々の中には、かなり高い志を持って取り組んでいるものの、その方々が、例えば学ぶ機会にリソースを投下できなかったり、子供たちの安心・安全な見守りのところに人を張れなかったりして、結果的に学校の先生方から見ると、その運営や在り方がリスクに感じるような側面が見えてしまったりすることで、その方々と学校がうまく連携が取れていなくて、結果的に不登校の子が、例えばフリースクールのような場所を使っていても、学校は不登校としてカウントしているけれども、実は学びが既に始まっているなんていうことも起きている。
 このアンバランス感というのがもったいない現象を起こしていると思うので、今、フリースクールだけではないんですが、民間や、学校の教員ではないのだけれども、また、特別免許状も持っていないのだけれども、教育に従事したいと思っている方々を、どのように安心・安全な形で、先生方を否定するような形ではない形で、次の時代の教育リソースとしていくのか、しかも公的な形で認めていくのか、ここのところが今回の論点で検討していただけるといいのではないかなと思いました。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。学校が大変そうというのは何とか払拭したいという思いは強く持ちつつも、しかしながら、今おっしゃったように、子供たちの学びがどういう形でサポートされているかということをしっかりと見た上で議論していかないと、ますますそのかい離が進んでいくということになっては駄目だと思います。大変重要な御指摘だったと思います。ありがとうございました。
 それでは、この件の御議論はここまでとさせていただきたいと思います。先ほどから何度も申し上げていますように、この2つの諮問につきましては、今後、初等中等教育分科会の教育課程部会と教員養成部会を軸にやっていくことになります。先ほど御発言の中にもありましたけれども、それを支えていくための重要な条件整備というものも進みつつあるということで、大変心強く感じているところであります。
 教育は国家百年の計であると言われ、一朝一夕に成るものではないということは、我々はみんな承知していることでありますけれども、そこのところを国民の皆さんに改めて十分御理解いただいた上で、教育のよりよい一歩を進めていくべく、今後第13期にまたぐということでありますけれども、初等中等教育分科会、中教審として、議論を重ねていくことが重要だと思っております。ありがとうございました。
 それでは次に、議題の3に移りたいと思います。急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方に関する答申案についてでございます。これもまた大変重要な案件であります。まず、大学分科会長の永田副会長から御説明を頂き、その後、伊藤高等教育局長から御説明を加えていただきたいと思っております。
 では、永田先生、お願いいたします。
【永田副会長】  ありがとうございます。御紹介の案件につきまして、まず概要を説明させていただきます。
 昨年の9月に文部科学大臣から諮問を頂いた内容です。その後、大学分科会、及び大学分科会の下に設置した高等教育の在り方に関する特別部会で議論を経て、本総会には8月に中間まとめとして御報告をしているところです。その後も、大学分科会及び特別部会の合同会議も含めて6回の開催をし、議論を重ねてきました。その過程においては、10の関係団体からのヒアリングも実施しています。
 中間まとめの段階から答申案に至っても、基本的に変わらないのは、「知の総和」の向上を一番大きな目標に掲げて、質・規模・アクセスの3つの観点で高等教育施策を進めていくという考え方を基本としています。
 中間まとめから若干進歩した部分としては、答申案そのものの最初の章のところは、近年のこれまでの高等教育を取り巻く変化や、過去の政策についてまとめておりましたが、これは補論として後ろに回して、直截に、今後の高等教育の目指すべき姿を先頭に掲げたという点であります。また、具体的な高等教育政策の方策については、かなり詳細に記載をいたしました。加えて、機関別・設置者別の役割や連携の在り方、高等教育改革を支える支援方策の在り方の記載を大幅に充実させています。
 以上、概要ですけれども、詳細については事務局から御説明を頂きます。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 では、伊藤局長、お願いいたします。
【伊藤高等教育局長】  高等教育局長の伊藤でございます。
 それでは、答申案につきまして、補足で説明をさせていただきます。資料としては、資料3-1が本文なのですが、大変大部になってございますので、画面にも表示されてございますが、資料3-2の要旨に基づきまして説明をさせていただきます。
 まず、1ページ目でございますが、「1.今後の高等教育の目指すべき姿」のうち、直面する課題といたしまして、社会の変化、高等教育を取り巻く変化を掲げてございます。特に、大学進学者数の推計とし、現在62.7万人いる進学者が、2035年には59万人という、まだ微減ではございますが、その後5年で2040年には46万人に減少すること、このような予測を示させていただくとともに、今後の目指す未来像・人材像を右側に示してございます。
 その上で、高等教育が目指す姿といたしまして、我が国の「知の総和」、今、永田分科会長からお話しいただきましたが、我が国の「知の総和」、学ぶ人の数と一人一人の能力を掛け合わすということでございますが、この「知の総和」を向上することが必須と位置づけてございます。
 そして、そのための高等教育政策の目的として、質・規模・アクセスの3つの関係を示してございます。ここで言う質とは、教育研究の質を図ることで、学生一人一人の能力を最大限高めること。規模とは、社会的に適切かつ必要な高等教育機会を量的に確保していくこと。アクセスとは、地理的・社会経済的な観点から、高等教育の機会均等を実現することを掲げてございます。
 これらと並行いたしまして、今後の高等教育を考えるに当たって重視すべき視点とし、教育研究、学生への支援、高等教育機関の運営、社会における高等教育機関の4項目にわたる観点を示してございます。
 次に、2ページ目を御覧ください。「2.今後の高等教育政策の方向性と具体的方策」でございます。
 1つ目の柱でございます。教育研究の質の更なる高度化について掲げてございます。
 初めに、①学修者本位の教育の更なる推進といたしまして、厳格な成績評価や卒業認定を通じ、出口における質保証を促進すること、認証評価制度を見直し、在学中にどれくらい力を伸ばすことができたのかといった教育の質を評価する新たな評価制度へ移行することを示してございます。
 また、②多様な学生の受入れ促進として、外国人留学生や社会人等の受入れ促進に向けた定員管理などの柔軟化を図っていくこと、通信教育課程の更なる質向上のための制度改善を図っていくことを掲げてございます。
 さらに、③大学院教育の改革といたしましては、特に人文・社会科学系を中心に、学士・修士5年一貫教育の大幅拡充や、幅広いキャリアパスの開拓促進について、また、④研究力の強化といたしましては、質向上に向けた研究環境構築や、業務負担軽減について、さらには、⑤情報公表の推進といたしまして、高等教育機関の情報を横断的に比較できる新たなプラットフォームを構築することなどを記載してございます。
 次に、3ページ目を御覧ください。2つ目の大きな柱といたしまして、高等教育全体の規模の適正化、3つ目の柱といたしまして、高等教育へのアクセス確保を掲げてございます。
 まず、規模の適正化につきましては、①高等教育機関の機能強化として、意欲的な教育、また経営改革を行うための支援、高等教育機関間での連携の推進。さらに、②高等教育全体の規模の適正化の推進とし、厳格な設置認可審査への転換、再編・統合、縮小、撤退について具体的な方策を示してございます。
 また、高等教育へのアクセス確保につきましては、①地理的観点からのアクセス確保として、地域の高等教育機関、地方公共団体、産業界などの関係者が議論を行う協議体「地域研究教育構想推進プラットフォーム」の構築を行い、これを支える地方公共団体や国の体制整備、コーディネーター等の支援について示してございます。さらに、地域にとって真に必要な一定の質が担保された高等教育機関への支援として、協議体の議論を踏まえて国が支援する仕組みや、大学等の連携をより緊密に行うための仕組みとして、「地域研究教育連携推進機構」の導入も掲げてございます。
 加えて、地方創生の観点から、国内留学や学生寮の整備、サテライトキャンパスの取組を進めるとともに、遠隔・オンラインを活用した大学間連携による授業の共有化についても記載をしてございます。
 次に、②社会経済的観点からのアクセス確保についてでございますが、個人への経済支援の充実に加え、社会的観点からのアクセス確保に向けて、高等教育機関入学前から、負担軽減の情報をお伝えしていく方策についても示してございます。
 最後に、4ページ目を御覧ください。上段では、「3.機関別・設置者別の役割や連携の在り方」として、機関別、設置者別、機能や特性に着目した政策の重視の3点を掲げてございます。
 このうち、機関別の役割といたしましては、大学、短大、高専、専門学校等の機関別の役割についてお示しするとともに、設置者別の役割として、国立大学、公立大学、私立大学、それぞれの役割を示した上で、具体的な方策として、定員規模の見直しや再編・統合などについて、機能や特性等に着目した政策の重視といたしまして、教育研究の質の向上につながる取組を、設置者の枠を超えて支援していくことを記載してございます。
 下段では、「4.高等教育改革を支える支援方策の在り方」として、高等教育への投資は未来への先行投資であることを明確に位置づけた上で、より一層、社会からの信頼を得られるよう、教育研究活動の高度化や、情報公表を進めること、必要コストを明確にした上で、その必要性を訴えかけていくこと、公財政支援、社会からの投資、個人・保護者負担のそれぞれについて、持続可能な発展に資するような規模・仕組みを構築していくことを掲げてございます。
 その上で、短期的な取組といたしまして、公財政支援の充実、社会からの支援強化、個人・保護者負担の在り方について掲げるとともに、中長期的な取組といたしまして、教育コストの明確化を踏まえた負担の仕組みの見直しや、新たな財源の確保についても言及をしてございます。
 最後に、一番下の部分でございますが、この答申をまとめていただいた後は、制度改革や財政支援の取組など、今後10年程度の工程を示した政策パッケージを国において策定し、具体的方策の実行に速やかに着手することを提言の中でまとめていただいているところでございます。
 本日御審議いただいた後、パブリックコメント等で広く国民、教育関係者の方々から幅広く御意見を頂戴した上で、その後更に大学分科会等で御審議を深めていただきたいと考えてございます。
 私からの説明は以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 それでは、この件につきまして、御意見を頂きたいと思います。答申案ということで、これまで永田分科会長を中心に議論をしてきていただいているところでございますが、御発言のおありの方、どうぞ挙手をお願いいたします。
 それでは、渡辺委員、お願いいたします。
【渡辺委員】  日本医師会と日本学校保健会の渡辺でございます。
 魅力のある大学であれば、地方でも入学すると思いますし、そうでない大学であれば、都会だとしても入学者は満たないのではないかと、まず思います。答申にも書かれてございますように、各大学は教育と研究の見える化を推進して、入学希望者が選択できる情報を示す必要があるのではないかと思います。
 また、大学では研究と教育が求められております。現在は人員の確保がままならず、教育に時間をかけざるを得ず、研究が進まない状況にあると、答申にもございます。その結果、論文数の低下など、国際的な評価も下がり、よい研究者が集まらないというジレンマに陥っているのではないかと考えます。
 研究と教育には、ある程度のマンパワーが必要です。競争的研究費や寄附が主体では、継続的な雇用を生むのは不可能だと思います。大学における研究と教育は、国家戦略として財源を確保していただく必要があるのではないかと思いますので、是非御検討いただきたいと思います。
 それから、答申の内容は大変すばらしく、これらが実現できれば、望ましい高等教育の場ができると思いますが、現実的にこれら全てを実施することは、なかなか難しいのではないかと思います。答申には、10年程度の工程を示した政策パッケージを策定するということでございますが、できれば優先順位をつけ、3年から5年ごとに実施の状況を検証して、確実に一つずつ実行できるように要望させていただきます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。魅力という点で言うと、研究が進まないというこの大変な状況をどうしていくのかということを考えていく中で、国家戦略としての財政的支援というお話もございました。これは本当に重要なことかと思います。ありがとうございました。
 では、村田委員、お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。私からは2点ございます。
 まず、本当によくまとめていただいて、いい答申ができたなと思っております。永田先生はじめ、文部科学省の方々にお礼申し上げたいと思います。
 1点目ですが、他の会議の際にも申し上げたのですが、先ほど永田先生からもお話がございましたクオリティー、それからアクセス、サイズの3つの観点が重要なのですが、特に私はクオリティーのところが少し気になっております。例えば18ページのところに具体的なことが書いてはあるのですが、その中で、出口における質保証の促進のところ2行目、卒業認定の実施という言葉があるのですが、現在では、124単位という卒業に必要な要件以外に、卒業要件を設けることができるわけですから、各大学のミッションあるいは建学の精神に基づいて、独自の卒業要件を設けるということは当然あり得ます。卒業要件を設けることによって、いわゆる質の保証、各大学が独自性を持った質の保証ができてくるのだと思います。卒業要件の設定という文言を、具体例ではなく、上の一般論のところに少し書き込んでいただければ、この点が大事なのだなということが強調できるのかなと思いますので、お願いしたいなと思います。これまで気づいていなかったところもありますので、よろしくお願いいたします。
 もう1点は、13ページの小見出しについてです。大学院部会のときにも申し上げたのですけれども、そこのイのところ、小見出しで、高等教育機関を核とした地方創生の推進とあります。前も申し上げましたように、高等教育機関が核となって地方創生をできるわけではなくて、地方創生は産業界あるいは地方自治体が中心になって行われ、その人材育成を高等教育機関が核となって行うことになります。従いまして、高等教育機関を核とした人材育成による地方創生の推進とか、イの小見出しの表現に人材育成という言葉を是非入れていただかないといけないのかなと思います。決して地方創生の核は高等教育機関ではなくて、産業界や、あるいは地方自治体だと考えますので、そこのところを是非お願いしたいと思います。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。具体的な文言についての御指摘を頂いております。どうぞよろしくお願いいたします。
 この後でありますが、清原委員、そして秋田委員、古沢委員、内田由紀子委員、吉田委員、安孫子委員、御発言を御希望になっておられますので、よろしくお願いいたします。順次、淡々と進めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 では、清原委員、お願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。杏林大学客員教授、前三鷹市長の清原です。
 最初に、本日御提案を頂きました答申案については、永田副会長を中心に、大学分科会、そして特別部会の皆様が濃密な検討をしていただきました。そして、伊藤高等教育局長をはじめ、事務局の皆様が大変丁寧にお取りまとめいただきましたことに感謝し、答申案について賛同いたします。
 概要をまとめている資料3-2に沿って幾つかコメントをさせていただきますので、この答申の反映について、少しでも参考にしていただければ幸いです。
 目的として、知の総和の向上を目指して、質の向上、規模の適正化、アクセスの確保の3点が、相互に密接に関わっていることを注目したいと思います。そこで、概要にも注意書きがあります。この3つの目的(価値)は、常に調和するわけではなく、トレードオフの関係になることもあり得るため、価値の選択と調整が必要と、留意点が明記されています。
 それでは、価値の選択と調整をどのようなプロセスで行うかが私は極めて重要だと思います。改めて、高等教育の経営者だけではなく、その進め方については、学生や教員の意見を反映した、可能な限り民主主義的なプロセスで進められなければいけないと、このようにお願いをしたいと思います。
 そこで、この3つの点で答申が象徴されていますので、それぞれについて少しずつコメントを申し上げます。まず、教育の質についてです。
 2ページ、大学院教育の改革に加えて、研究力の強化がこのたび明記されました。教育を担当する教員の質の向上の一つの象徴は、研究力であります。それを軽視することはできません。また、学士・修士5年一貫については、ロースクールで一定の成果があり、この取組が示唆されている点は重要であると思います。高等教育についての諮問ではありますが、高等教育の持続可能性の要素の重要な一つとして研究力が明示されたことは、極めて重要だと思っています。そのための具体的な対策は、大学院改革と密接不可分ですし、もちろん研究費とも関係しますので、よろしくお願いします。
 2、高等教育全体の規模の適正化について申し上げます。
 特別部会の皆様、大学分科会の皆様は、きっと撤退・縮小の用語を扱うことについて相当苦慮されたと思いますが、この2つの用語があることの重みを、大学人の一人としてしっかりと受け止めたいと思います。少子化を直視するとき、未来志向の高等教育の創造のために、撤退・縮小という用語は、むしろ前向きに捉えたいと思います。この重さを覚悟して取り組んでいくということ、そしてこれが、しっかり持続可能な未来につながる用語として位置づけられることを願っています。
 3点目、高等教育へのアクセスの確保についてです。
 このたびアクセス確保・人材育成のための協議体構築として、仮称ですが、地域研究教育構想推進プラットフォームと、地域研究教育連携推進機構が提案されています。しかも、その取組のためには、コーディネーターの役割の重要性も明記されています。これは生涯学習分科会の問題認識とも重なるところで、大変心強く思っています。
 そして、地方創生を進めるための高等教育機関への支援も提案されています。この間、国では、少子化に向けて地方創生、デジタル田園都市国家構想、そして、最近の新しい地方経済・生活環境創生本部や、そのための有識者会議などが取組を進めて、多様なチャレンジがなされてきました。その中で、少子化と地方創生は、日本社会において解決すべき重要な、密接に関係し合う課題として位置づけられてきました。しかも、その過程で各プロジェクトには、大学が重要なプラットフォームとなってきた事例があります。
 例えば、三鷹市の市長をしておりましたときに、東京一極集中と言われますが、三鷹市でも急激な人口減少が予期されることから、地元の杏林大学と八王子市、羽村市、三鷹市が一体となって、平成25年度、文部科学省の地(知)の拠点整備事業について採択されて、一緒に取り組んでまいりました。学長の強力なリーダーシップの下、全学必修科目の設置や、大規模な教育カリキュラム・組織の改革など、全学的に地域を志向した教育研究、社会貢献を実施する取組を連携してきた経験があります。
 私は、大学が自治体や企業等と協働して、学生にとって魅力ある就職先の創出をするとともに、地域が求める人材を養成するための必要なカリキュラム改革を断行するこのプロセスが、今後も継続することを願っています。大学自身が直面している少子化がもたらす影響は、国家としての日本に、また、地域社会を含む自治体に大きな影響をもたらしています。各自治体が人口減少について、シュリンクせずに、身の丈に合った住民のウエルビーイングを実現していくために、大学・大学院こそが地域社会の広義のプラットフォームになることが期待されます。地方創生の鍵として、キーとなる一つは高等教育であり、企業であり、そして自治体であると思います。
 そこで、最後のお願いです。4ページに赤字で示されている、高等教育というのは未来への先行投資であるということを実現するためにも、この答申については、第一義的には現在の在学生、将来の大学生を含む高等教育関係者に周知されるということが必要だとは思いますが、加えて、是非全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国都道府県議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会など、自治体の首長、議会の皆様、そして教育委員会の皆様にも是非強く周知をしていただいて、我が事として高等教育を位置づけていただければ。
 担当の部署は自治体の9割に、高等教育について置かれているわけですが、実際には活発な活動がなされていないということも補論に報告されています。そうであるならば、自治体の出番です。是非この答申について、幅広い国民と自治体関係者に流布されることをお願いして、感謝の意見とさせていただきます。よろしくお願いします。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。答申が具体的に実現していくための様々な御意見を頂戴いたしました。
 では、秋田委員、お願いいたします。
【秋田委員】  秋田でございます。大学人としての一人として、発言をさせていただきたいと思います。
 この答申を全て拝読しまして、大変きめ細かく目配りの利いたものであり、知の総和というところで、質・規模・アクセスを明確に位置づけ、先ほど清原委員が言ってくださいましたように、教育力だけではなく、研究力が活力になることを書いてくださったという点で、大変ありがたく思っています。
 その中で、人材の育成というところで、地域や社会への人材を輩出していくということと同時に、高等教育は高等教育を担う人材の育成が、次の高等教育の質を上げていくために極めて重要でございます。それはいわゆる研究力だけではなく、高等教育を担える人材をどのように養成していくのか、今後、民間の企業との関係というのも重要になると思います。
 また、その一方で、私の経験からは、一度高等教育機関の教員に採用されますと、企業や学校と違って異動というのが一切なく、何十年と同じところに勤め続けているというのが高等教育の教員の特徴でございます。そのときに、今後それをブラッシュアップし、今後の高等教育の在り方を見通したときに、どのように高等教育を担う人材を養成し、そして研修をしていくのかという視点も各大学が持っていくということが、高等教育の生き残りのためには極めて重要ではないかと考えておりますので、この1点について発言をさせていただきます。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございます。高等教育が大事であるという以上、高等教育を担う人材をいかに養成するのかという御意見でございました。
 では、古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。
 今回の答申案は、非常に多岐にわたる内容だと思います。その中でとりわけ少子化が加速する中で、国公私立大学の規模の見直しに踏み込んだことは、社会へのインパクトがとても大きいと思っています。今後どのように政策として運用・実施されていくかということが鍵になると思うのですけれども、その影響を大きく受ける学生や受験生の視点を踏まえるのは一層大事になっているということを強調したいと思います。
 もう1点、高大接続を踏まえた大学入学者選抜の改善というのは、要旨にも本文中でも項目として取り上げられていますが、知の総和というものの向上を目指すのであれば、言うまでもなく非常に重要なことであると考えます。
 本文中にも取り上げられている高校段階での早期の文理分断は、依然として大きな課題です。そうした中で、答申案にある各大学の入試改善を推進するということに加えて、いわゆる年内入試が急速に広がって、大学入試の様相が今、大きく変わっている中、より多様な生徒が幅広い教科で基礎的な学力を向上させ、幅広い進路を考えられるようにするために、大学入試の在り方を総合的に検討することが必要であるという問題意識や視点に、もう少し踏み込んでもいいのではないかと思っているところです。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。影響を受ける側をどう考えるのかということで、大学入試についても御指摘を頂きました。
 では、内田由紀子委員、お願いいたします。
【内田(由)委員】  ありがとうございます。私も大学にいる立場から、2点発言させていただきたいと思います。
 1つ目は、知の総和の向上ということで、これはとてもいい言葉だなと思いました。私の解釈としては、総和を目指すということは、要は各大学で人材をどのように確保するかという点において、コンペティションの方の「競争」状態にあったものを、どちらかというと、共に努力するというコ・クリエーションの「共創」の方に変えていくということが、知の総和ということの意義には込められているのかなと解釈をいたしました。
 その観点で言いますと、正に清原委員がおっしゃったとおりのプラットフォーム化というのが重要になろうかと思います。共創をつくっていくためには、何らかの形で互いに参画・参入し合うことになります。例えば大学も総合大学以外の、少数のデパートメントしかないというところが、文理横断とか融合教育をやろうと思うと、自前で全部賄うのはとても大変なこともあろうかと思います。
 これがプラットフォームをつくることによって、お互いに足りないものを提供し合うことになります。これはすでにある程度進んでいる面もあるかもしれませんが、より強化していくことによって、共創が進んでいくことが期待できます。それによって、過度な競争による大学の疲弊を回避するということは重要であろうと思います。
 2点目は、ここに書かれていることを全部実行することは、学生の多様性であるとかリカレント、大学の運営ということにおいて、大学教員はかなりの負担がこれは出てくるなとも感じています。もちろん、今までも十分に、それぞれの大学が意識をしてやってきたことではあるんですけれども、研究、教育、そして大学の運営など、大学の教員は多岐にわたる役割を担っていると実感しています。
 一方で、大学の教員になるには、いわゆる教育養成機関を経ているわけではなく、大学院の修士課程・博士課程の研究トレーニングを経ているケースが多いと思います。一方で、教育であるとか、大学のマネジメントということに関しては、そのトレーニングというものが十分に行き渡っている状況ではないと思います。
 そのような状況で1人の教員がこれを全部こなすというのは、大変ハードルが高いという状況です。大学教職員のウェルビーイングというものを高めていくということの観点に立てば、ある種の分業と協力の体制、それから、いわゆる運営とか支援というものに関連する、大学で働く職員の充実ということが極めて重要になってくるであろうと思います。
 もちろんそのためには、最後に書かれていました支援人材の充実や確保が必要になっていくと考えております。技術職員、支援職員というのを含めて、多角的に展開できるようにということを考えていただければと思います。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。今後の大学の在り方に関して、コ・クリエーションという言葉もお使いになっていましたけれども、分業と協力をどう進めていくのか、それが鍵になるのではないかという御意見であったかと思います。
 では、吉田委員、お願いいたします。
【吉田委員】  すみません。時間がないところでありがとうございます。
 私は逆に、本当にシンプルなお話なのですけれども、今回の議題として、初中教育における教育課程の基準等の在り方と、多様な専門性を有する高い教職員集団、1番と2番については一緒に考えてということですが、私は実際、3番にも本当は絡んでくるのではないかと。つまり、子供を中心に考えたときに、高校生が今課せられている教育課程というのは、幾ら大学で求める人材をつくろうとしても、物化生地から何から細かく全部やって、そして、高2ぐらいで本当に文理を分けない限りは、文系・理系の大学の、特に理系の大学の進学はできません。
 教員の方も、逆にそういう形で、それをいかに指導するかということであって、今日の3番の案件も、高等教育の在り方についてすばらしい内容ですし、非常にいいと思うのですけれども、それに求める学生をどのようにしていくかの前に、どういう生徒を入れられるかということも考えていただかなくてはいけないのではないかなと。
 私もまだ読み込んでいないので本当に申し訳ないのですが、意欲的な生徒たちを入れる云々と言いますか、ただ意志・意欲だけでは、やはり学力が伴わない。そして、高校生から大学生になって、その大学に入って実は間違っていて、ほかの大学に移りたいとかなったときに、日本の大学というのは単位の互換性とか、そういうものが全くありません。海外ですと、いろいろなところに異動したりができます。
 そういう意味で言ったときに、今日の御説明一つ取っても、初中局が生徒の話をし、総合教育政策局が教員の話をし、大学の話を高等教育局がしということは分かるのですけれども、そこが一つになって子供を中心に考えたときに、これからの日本にとってどこまで必要なのか、そして、本当にこれだけの大学教育を受けられる子供がどのぐらい育てられているのかどうか。これは我々の責任もあると思っているのですけれども、是非考えていただきたいなと思って、あえて言わせていただきました。ありがとうございました。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。本来そこのところは、この中教審の総会でしっかりと議論をするべきことかと思います。大変重要な御提言であったと思います。
 ちなみに、物化生地を私は昔やりましたけれども、広くやっているというのは確かに意味があるので、今みたいに入試に特化するというのは果たしていいのかどうかというのは、本当に議論になるところかと思います。
 今日、3つの議題それぞれが実は絡んでいるのではないかという、大変重要な御指摘でありました。
 では、安孫子委員、そして日比谷委員の順でお願いいたします。
 安孫子委員、お願いいたします。
【安孫子委員】  企業からの意見です。学校教育の目的は、世の中の役に立つ仕事に就くための学びの提供であり、生徒にとっては、今学んでいることが将来の自分のなりたい姿にどうつながっているのかを理解して、目標を描いていくことだと考えています。
 ゆえに、学校教育に企業としてどんな貢献ができるかは、本当に大きな可能性を秘めた分野だと感じています。だからこそ、産学連携においては、もっとライトでイージーなアクセスの方法や取り組み方につながっていくことを期待しています。
 以上です。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。連携の重要性についておっしゃっていただけたかと思います。将来の自分のなりたい姿というのは、正に初等中等教育でも大学教育でも大事にしているキャリア教育というところにつながっていくのかなと思いました。
 では、日比谷委員、お願いいたします。
【日比谷委員】  本当に時間がありませんので、2点申し上げたいことがございます。それだけにいたします。
 1つ目は、質のさらなる高度化の5番に挙げてある情報公表の推進についてです。この重要性については、大学分科会で私も発言をしまして、こういう項目をうたったことは大変喜ばしいことだと思います。この横の「たくさんある高等教育機関の情報を比較できる」、これは本当に重要です。吉田委員から先ほど、入ってみたら違ってミスマッチというお話があって、どんなに整備しても、ミスマッチをゼロにすることはできませんけれども、それを限りなく減らしていくという意味でも非常に重要だと思います。
 ところが、33ページにも指摘されているように、現状では国公立版と私学版が違うとか、これはなかなか、そうは言ってもやるのが大変で、このUniv-mapを、(仮称)ですが、構築すると。全てのことについて、具体的な方策をできるだけ速やかに着手するとありますね。ここから質問なのですが、このデータプラットフォームを今後どのぐらいのスケジュール感で進めていくということが分かっていれば、お答えいただければと思います。
 2点目は、規模の適正化のところで、私は長い間、大学の設置審に関わってまいりまして、この部屋の中にも何人か御一緒した方がいらっしゃいますが、大変にジレンマを抱えつつ、仕事をしてきたという気持ちを持っております。今回、厳格な設置認可審査への転換という文言が入ったことは、大変に歓迎したいと思います。
 今の私たちが置かれている現状を考えて、新しい大学の設置認可をする、あるいは学部・学科の新しいのをつくるというときは、ただ減らせばいいというのではなくて、本当に将来性があるものをきちんと認可し、逆に、これはいかがなものかということは、確実に落とすということばかりではありませんけれども、少なくとも再考を促すという意味での厳格化が本当にマストだと思っておりますので、ここも今回の答申の中で大変重要なところと思っております。
 以上でございます。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。中身に対して、ここは重要であるということでお話しいただきましたが、御質問が出ました。伊藤局長、よろしいですか。
【伊藤高等教育局長】  ありがとうございます。日比谷委員、ありがとうございました。
 この情報公表については、従前から大学分科会等でも御指摘を頂いてございまして、累次、学校教育法施行規則等を改正しながら、拡大はしてきたのですけれども、なかなか比較可能な形になっていないという形で、今回答申の中で、一段踏み込んでいただく御答申をおまとめいただく方向になっているところでございますので、この答申が出次第、速やかに、先ほど申しました工程表を政策パッケージでつくってまいります。
 当然、御協力いただかなければいけない大学関係者の御理解というのをいただかなければいけないのですが、速やかにそれに着手をして、支障があるのであれば、その支障をどう乗り越えるかということに早急に取り組んでまいりたいと考えてございます。
【荒瀬会長】  よろしいでしょうか。
【日比谷委員】  なかなか困難だと思いますが、是非よろしくお願いします。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 ほかにはございませんでしょうか。ありがとうございます。
 では、意見交換はここまでとしたいと思います。ただいま委員の皆様から頂きました御意見を踏まえるとともに、先ほども御紹介がありましたが、今後予定されていますパブリックコメントも踏まえて、大学分科会において引き続き御審議いただきたいと思います。永田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、皆さん発言を大変コンパクトにしていただいて、おかげで、まずないことでありますが、時間どおりに終われそうな気がしてまいりましたが、よろしいですか。ありがとうございます。
 では、本日はここまでとしたいと思います。
 最後に、神山課長、次の予定とかはございませんか。
【神山政策課長】  必要に応じて、また日程調整などはさせていただきますので、本日の御連絡は特にございません。
【荒瀬会長】  ありがとうございました。
 では、これで今年の中教審総会、最後でございます。いろいろあった1年でございましたけれども、確かな一歩も見えてきたというところもございました。どうぞ皆様、よいお年をお迎えくださいまして、来年度は学校教育にとって本当によい年になることを心から期待しております。ありがとうございました。
 
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