令和6年6月25日(火曜日)10時00分~12時00分
文部科学省「第二講堂」(旧庁舎6階) ※ハイブリッド会議
荒瀬会長、永田副会長、橋本副会長、青海委員、安孫子委員、今村委員、植村委員、内田隆志委員、内田由紀子委員、金田委員、清原委員、後藤委員、貞廣委員、萩原委員、浜委員、古沢委員、堀田委員、湊委員、村田委員、吉岡委員、吉田委員、渡辺委員
盛山文部科学大臣、あべ文部科学副大臣、安江文部科学大臣政務官、藤原事務次官、藤江文部科学審議官、望月総合教育政策局長、矢野初等中等教育局長、池田高等教育局長、淵上大臣官房審議官(総合教育政策局担当)、平野社会教育振興総括官、滝波総合教育政策局政策課長 他
【荒瀬会長】 皆さん,おはようございます。ただいまから中央教育審議会総会を開催いたします。本日は御多忙の中お集まりいただきまして,ありがとうございます。
本会議は,前回同様,ウェブ会議方式と対面を併用して開催させていただきます。本日は冒頭から,あべ俊子文部科学副大臣,安江伸夫文部科学大臣政務官に御出席いただいております。あべ副大臣におかれましては,御就任後,初めての中教審総会となります。どうぞよろしくお願いいたします。
【あべ副大臣】 どうぞよろしくお願い申し上げます。
【荒瀬会長】 ありがとうございます。
続きまして,委員の交代及び文部科学省の人事異動がありましたので,事務局から御紹介をよろしくお願いいたします。
【滝波政策課長】 それでは,委員の交代がございましたので,御紹介です。
本年5月23日付で齊藤正富委員及び石崎規生委員が辞任をされまして,同日付で東京都大田区立志茂田中学校校長で,全日本中学校長会会長の青海正委員,及び東京都立三田高等学校長で,全国高等学校校長協会会長の内田隆委員がそれぞれ御就任をされておられます。
【青海委員】 青海でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【内田(隆)委員】 内田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【滝波政策課長】 それから,事務局の異動がございましたので,御紹介いたします。
大臣官房審議官総合教育政策局担当の淵上孝でございます。
【淵上大臣官房審議官】 淵上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【滝波政策課長】 それから社会教育振興総括官の平野誠でございます。
【平野社会教育振興総括官】 平野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【滝波政策課長】 以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございます。それでは,新たに加わってくださった皆さん,事務局の皆さん,どうぞよろしくお願いいたします。
では,続きまして,本日の会議の開催方式及び配付資料につきまして,御説明をお願いいたします。
【滝波政策課長】 それでは,本日もハイブリッド会議での会議開催ということにしてございます。傍聴につきましては,ユーチューブにて発信をしてございますので,御承知いただければと思います。
各議題の質疑,意見交換の際ですけれども,御意見ございます際には,会場で御参加の先生方におかれましては,皆様,それからウェブ参加の皆様方におかれましても,それぞれ端末の挙手ボタンを押していただいてお知らせいただくようにお願いします。
それから御発言ですけれども,会長の御指名の後にお願いできればと思います。会場で御参加の委員の皆様方には会長から御指名があった後に,事務局がマイクをお持ちしますので,端末で顔を映しながら御発言いただけたらと思います。
それから,続きまして,本日の資料でございますけれども,議事次第にございますとおり,資料1-1から資料6-2までございます。何かございましたら,事務局にお申しつけいただければと思います。
それから,本日の御出席の状況ですけれども,全体29名の委員の皆様方のうち,9名の方々がウェブ参加,それから14名の方々が会場参加ということで,合計23名の委員の先生方に御出席いただくということで,定足数を満たしているということを御報告したいと思います。
なお,本日途中退席,あるいは途中参加という方もおいでになりますので,御承知いただければと思います。
以上でございます。よろしくお願いします。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
それでは,本日の議事について御説明申し上げます。議題は全部で4つあります。会議次第に書いてあるとおりでございますが,議題の1といたしまして,地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について,これは大臣からの諮問でございます。議題の2といたしまして,令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について,審議のまとめについてであります。議題の3といたしまして,生涯学習分科会における議論の整理について,そして,議題の4はその他ということになっております。
本日の議題1の諮問でございますが,盛山文部科学大臣におかれましては,公務の関係で遅れて御到着の予定と伺っておりますので,先に議題の2以降から始めたいと思っております。よろしくお願いいたします。
では,まず,議題の2といたしまして,令和の日本型学校教育を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について,審議のまとめにつきまして,事務局から御説明をお願いいたします。
【矢野初等中等教育局長】 初等中等教育局長,矢野でございます。どうぞよろしくお願いします。
それでは,資料2-2に基づきまして,審議のまとめ,特別部会の審議のまとめについて御説明申し上げたいと思います。
資料2-2の1ページ目をお開きいただければと思います。我が国の学校教育の現状,知・徳・体にわたる全人的な教育は国際的にも高く評価されている。PISA調査でも世界トップレベルの結果という,学校教育の成果については,しっかりと現れているところでございますが,これらは教師の献身的な努力の成果と指摘されておりまして,一方で課題が複雑化,困難化する中で,学校や教師の負担が非常に増大してきていると。このままでは世界のトップレベルの日本の学校教育のサステーナビリティーはないのではないかと。エビデンスとしても,平成28年度の勤務実態調査,令和4年度の勤務実態調査を比較すると,少し働き方改革が前進してはいるものの,まだまだ教師を取り巻く環境の抜本的な改革は必須であるというような指摘がなされました。
第2章の教師を取り巻く環境整備の基本的な考え方でございますけれども,そこに書かれておりますとおり,教師は絶えず研修と修養が求められると。生き生きと子供たちと接するような環境整備が必要。しかし,実態としては,なかなか厳しい状況になっているということ,そして働き方改革の目的でございますが,教師の健康も守るということはもちろんあるのですけれども,学校教育の質の向上を通した,全ての子供たちへのよりよい教育を実現する,これが働き方改革の最終的な目標であるということが明確にされております。
基本的な方向性として,環境整備の基本的な方向性としては,働き方改革のさらなる加速化,教職員定数の改善など,学校指導運営体制の充実,そして教師の処遇改善,この3つの柱を基に推進していくことが大事だという指摘でございます。
2ページ目をお開きいただきたいと思います。これまでの働き方改革の取組の状況がなされておりますけれども,教師が教師でなければできないことに集中するということで,資料2-3以降にも掲載しております,3分類に基づく業務の適正化の徹底,昨夏,その具体的な事例等をお示ししておりますけれども,調査の精選,標準を大きく上回る授業時数の見直し,そういったようなことが書かれております。
学校における働き方改革の実効性の向上として,例えば業務量等の現状やその改善に向けた取組の進捗状況の公表,定量的な目標設定等が指摘されております。さらに,メンタルヘルス対策等の重要性,若手教師への支援体制の充実も指摘されております。
次のページをお開きいただきたいと思います。3ページ目,教職員定数の改善等でございますが,持ち授業数の軽減として,これは小学校でございますが,小学校の中学年についても,高学年に加えて教科担任制を推進していくと。また,若手教師への支援ということで,新任の若手教師は学級担任でなく教科担任とするというような取組の成果が審議の過程でも紹介されておりましたが,そういった指摘がなされております。
また,不登校の児童生徒をきめ細かく支援するということで,COCOLOプランの実現に向けた中で,不登校生徒への支援ということで,生徒指導担当教師の全中学校への配置などが指摘されております。さらには,若手教師へのサポートのための新たな職の創設等も指摘されました。
あと2ポツ,3ポツでありますが,支援スタッフの充実,あるいは多様な専門性を有する質の高い教師集団の形成ということで,社会人,あるいは特別免許状,特別非常勤講師等,積極的な活用などが指摘されております。
4ページ目をお開きいただきたいと思います。教師の処遇改善ということでございますが,昭和49年に人材確保法が制定されたわけですが,それまでは一般公務員に比べて5.74%ほど給与が低かったわけでありますが,人材確保法が昭和49年に制定されて,昭和55年には大体25%アップ,そして一般公務員に比べて7%分の優遇措置が確保されておりますが,これがだんだん,また漸減してきており,現在では0.35%程度になっているという状況でございます。
ここで,人材確保法による優遇分の水準,7%以上確保する必要があるのではないかということ,そして教師は専門的な知識技能を求める高度の専門職であるということ,専門性を最大限に発揮して子供たちへの教育を行うことができる職務業務遂行の在り方が求められているということ,教職の性質は全人格的なものであり,一人一人がそれぞれ異なるとともに,日々変化する目の前の子供たちの臨機応変な対応が必要だと。教師自身の自発性,裁量性に委ねる部分が非常に大きいということ,そして,教師の自主的,自発的判断に基づく業務と管理職指揮命令に基づく業務が日常的に混然一体となっており,正確なしゅん別は極めて困難である。どこまでが職務なのか精緻に切り分けることは困難ということで,一般行政職等と同等の時間外勤務命令を前提とした勤務時間管理は適さないということで,教職調整額を支給する仕組みは現在においても合理性を有する,こういった指摘がなされたところです。
また,時間外勤務手当を支払うことによって,時間外勤務命令を発しないインセンティブというものが一部で指摘されておりますけれども,これ服務監督者と給与の支払者が違うため,インセンティブが十分には機能しない,そういったようなことも指摘されています。こういったことから教職調整額の率は少なくとも10%以上にすることが必要じゃないかと。そうすることによって,昭和55年の人確法の一番有効だった頃の水準に戻すことができる,こういった指摘でございます。
そのほか,学級担任教師について手当を出す,あるいは,教諭と主幹教諭の間に新たな職の創設をする,こういった指摘がなされました。
これらの審議のまとめについて,様々御意見ございましたが,資料2-1の裏側を御覧いただきますと,主なものを御紹介します。教職調整額を引き上げるだけでは働き方改革は進まないのではないですかというような御指摘,これについては,教職調整額の引上げは,あくまでも専門職にふさわしい教師の処遇を実現するためのものだと。これは処遇改善であるということで,当然のことながら,長時間勤務を減らしていくためには働き方改革と教職員定数改善,そういったものを併せて進めることが必要だ。現に,審議のまとめにはそういう指摘がなされております。
また,給特法を廃止しないと長時間勤務の実態は変わらないのではないですかということですが,これは先ほどお話し申し上げたとおりで,教師の専門職としての自立性を尊重する働き方改革の仕組みだということと,給特法はそもそも超勤4項目に限定して,超過勤務を命じるということができる仕組みになっておりまして,教員の健康を守り,時間外勤務を抑制することを目的とした法制度になっております。この辺のところはもっとしっかりと徹底していかないといけないと考えております。
また,教師の処遇改善よりも定数改善が大事なのですかということなのですが,これは二項対立ではないと思っています。文部科学省,もともと教職員定数の改善,これ省是とも言えるぐらいの我々,力点を置いてきた事項でございますので,当然のことながら教師の処遇改善に加えて,定数改善をしっかり行っていく。これは当然のことだと考えております。
また,さらに言いますと,本文の資料2-3の51ページ目をお開きいただきたいと思います。国立私立で時間外勤務手当の支払がなされているのに,公立学校で何でできないのかという点についての指摘について,審議のまとめにはこのように書かれております。
職務の特殊性は国立学校,私立学校の教師も共通的な性質があるけれども,地方公務員,公立学校の教師は条例で定められているということ,私契約である国立,私立とは違うということが1点。
それと,公立の学校については,在籍する子供たちの抱える問題が非常に多様であると。これはエビデンスとしても明確になっているところでありまして,臨機応変により対応する必要性が高いということ。それと,公立学校については,定期的に学校,また人事異動が存在するということで,正に,どういう準備を行うかというのは,個々の教師の裁量性が非常に大きいということ,こういったようなことが指摘されたところでございます。
最後になりましたけれども,以上のような審議のまとめについて,骨太の方針2024,閣議決定が先週なされておりまして,今日,資料をお配りすればよかったんですが,御紹介いたしますと,「教職の特殊性や人材確保法の趣旨,教師不足解消の必要性等に鑑み,教職調整額の水準を少なくとも10%以上に引き上げることが必要などとした中央教育審議会提言を踏まえるとともに,新たな職及び級の創設,学級担任の職務の重要性と負担等に応じた手当の加算,管理職手当の改善等の各種手当の改善など職務の負荷に応じたメリハリある給与体系への改善も含めた検討を進め,財源確保と併せて2025年通常国会へ給特法改正案を提出するなど,教師の処遇を抜本的に改善する。
小学校教科担任制の拡大や,生徒指導担当教師の中学校への配置拡充等の教職員定数や副校長・教頭マネジメント支援員等の支援スタッフの充実を図るとともに,35人学級等についての小学校における多面的な効果検証を踏まえつつ,中学校を踏まえ,学校の望ましい教育環境や指導体制を構築していく。地域枠の活用や多様な専門性を高める教育養成,管理職のマネジメント力強化を含む研修の充実,大学院段階の奨学金返還支援の実行と,学部段階を含めた更なる検討等に取り組むということで,審議のまとめはほぼ閣議決定により裏書された形となっておりますので,念のために御報告申し上げます。
私からは以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
本日はこの議論に関しまして,まとめていただいた中央教育審議会,質の高い教師の確保特別部会の部会長でいらっしゃる貞廣委員も御出席いただいておりますので,貞廣委員からも御発言を頂戴したいと思います。貞廣先生,お願いいたします。
【貞廣委員】 すみません,本日講義の関係で直接伺えず大変失礼しております。千葉大学の貞廣と申します。
審議まとめではへとへとではない先生方に,高度専門職として存分に専門性を発揮していただき,子供の育ちに伴走していただけるように,特に学校における働き方改革のさらなる加速化,学校の指導運営体制の充実について,現時点で実現可能性と実効性が見込まれる多様な手立てが盛り込まれたところでございます。
また,それらの取組を支えるために,教師の処遇改善についても提言し,これら3本の改革の柱につきまして,何より一体的,総合的な改革が必要である点も強調しております。今回,御議論いただきました事柄,とりわけ処遇改善に関しましては,約50年ぶりに政策論議のそ上に乗ったわけであります。部会ではもろもろの限界性も踏まえまして,吟味を重ね,意見を積み重ねましたけれども,部会や分科会内外に様々な御意見があり,全ての方々の合意と納得性を調達することは困難であったと理解しております。
また,残念ながら,明日から全ての物事を劇的に変えて判定させるような万能薬を入手できるというわけでもございませんでした。であるからこそ,一見遠回りに見えるかもしれませんけれども,これを初中分科会で矢野局長は愚直にとおっしゃっていましたけれども,学校における働き方改革,学校の指導運営体制の充実に全ての関係者,すなわち教育委員会,学校管理職,保護者の方々,地域の方々,さらに学校に関連する諸施策に関わる全ての方々等,全ての関係者が当事者となり取り組むことを今後のさらに先も見据えてお願いしたいと考えております。
この点に関連しまして,是非,まとめ56ページからの「おわりに」を皆様に御参照いただければと存じます。
また,提言の中には,法律改正,予算措置を伴う施策が多く含まれております。審議のまとめに盛り込まれた各施策は,先ほど矢野局長が御紹介くださったように,さきに閣議決定された骨太の方針にも盛り込んでいただきましたけれども,文部科学省におかれましては,それらの確実な実現に向け,引き続き御尽力をいただけますようお願いしたいと思います。
以上,もろもろ整いませんが,私からのコメントとさせていただきます。お時間頂きまして,ありがとうございました。
【荒瀬会長】 貞廣先生,ありがとうございました。
それでは,本件につきまして,委員の皆様から御意見,御質問を頂きたいと思います。なお,本日欠席でありますが,戸ヶ﨑委員からの資料が,資料2-4として,資料とじの最後についておりますので,適宜御参照いただければと思います。
では,会場にいらっしゃる方は恐れ入りますが,御発言の際には名札を立てていただいて,私に見えるようにしていただくということ,オンラインの方は手を挙げるのボタンを押していただくということでよろしくお願いいたします。では,渡辺委員,お願いいたします。
【渡辺委員】 日本医師会の理事をしておりまして,日本学校保健会の副会長をしております,渡辺と申します。
まず,質の高い教師の確保のための環境整備に関しまして,様々な対策を講じておられる文部科学省には敬意を表したいと思います。一方,このたびの審議のまとめでございますけれども,教師の環境の改善の指標は,時間外在校等時間のみが示されております。また,今後はそれを公開することによってさらなる改善を図る方策ということでございますが,時間外在校等時間の短縮は手段の一つでありますけれども,目的ではないと思います。教師の働き方の真の目的は心身のストレスなく,職務に努める環境整備でありまして,時間外在校等時間の短縮のみが目的化され,本来の改善に結びつきにくくなることを懸念するところであります。
教師の働き方改革の進捗を評価するには,時間外在校等時間以外に,休職率とか退職率,並びに精神疾患のり患率の低下など,複数の指標による総合的な評価が望ましいのではないかと思います。
また,このたび,教職調整額の増額が提案されたことは評価するところであります。ただし,このことによりまして,時間外勤務を容認するような方向に進んだり,また,これで教師の処遇改善がもう図れた,時間外の評価はもうこれで終わり,とならないように,さらなる取組を進めていただきたいと思います。
また,教師を取り巻く環境整備は,文部科学省が示されているように,学校における働き方改革のさらなる加速化と,学校の指導運営体制の充実がなされて初めて達成できることと思います。現在の審議のまとめでは検討すべき施策を挙げられておりますけれども,これらに関して,実効性を持たせるべく,冒頭に述べた複数の指標を注視するとともに,具体的な施策の工程表をお示しいただき,進行状況に関して,検証していただくことを強く要望させていただきます。
以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。具体的にいろいろと御指摘いただきました。ありがとうございました。
では,植村委員,安孫子委員の順でお願いいたします。上村委員,どうぞ。
【植村委員】 全国連合小学校校長会の植村でございます。特別部会の委員でありますが,発言の機会を頂きまして,誠にありがとうございます。
全連小としては,この審議のまとめの確実な実現を切にお願いしたいと考えております。全連小として,現在の学校や教職員の取り巻く厳しい状況を鑑みまして,3つの柱の一体的,総合的な推進を核に処遇改善,定数改善を実現するとともに,校長として自らさらなる学校の働き方改革を加速させることが大事であると,全連小の校長会の様々な,大小いろいろな場で繰り返し訴えているところでございます。
繰り返しとなりますが,是非学校を元気するために,審議のまとめの確実な実現を切にお願いしたいと申し上げさせていただきます。以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。では,安孫子委員お願いいたします。
【安孫子委員】 企業のニトリの事例として,愚直に働き方改革を推進するにおいて,企業が正に20年ほど前にあった状況が今の学校教育の残業の実態に近いと思います。それが今,ニトリにおきましては,平均的に全社員の残業時間は月の平均で10時間程度になっております。特に役職者になる前の若手の社員におきましては,週平均1.5時間ぐらいの残業にとどまるように改革改善が進んでまいりました。その背景としては,まず,この活動を進めていく上で,留意すべき視点として,特に目標値が明確になり,徹底強化の段階に入ると,サービス残業というのがはびこってまいります。実態把握が難しくなる中で,正しい就業時間の実測に努めていかなければなりませんでした。
そして,2つ目は目標数値と実績を毎月毎月検証する体制が必須となり,数値効果が現れない個人に対して個別指導に入り,一人一人の様々な問題や原因を潰していくという地道な対策を進めながら,就業時間を正常に戻していく手順と方法を踏んでまいりましたので,是非参考にしていただければと思いました。
以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。それでは,青海委員,永田副会長,堀田委員の順でお願いしたいと思います。青海委員,お願いいたします。
【青海委員】 全日中の青海でございます。特別部会,貞廣先生をはじめ,13回にわたる御議論ありがとうございました。先ほどの御説明でもよく分かりましたけれども,私も審議のまとめを丁寧に読ませていただきまして,まとめでは,学校における働き方改革の更なる加速化,学校の指導・運営体制の充実,教師の処遇改善を一体的に。総合的に推進する,これを合わせて進めると書かれております。
「定額働かせ放題」の枠組みのように一面的に捉え,教育界に定着しているかのように国民に誤解を与えることのないよう,この審議のまとめの内容を広く社会に分かりやすく情報発信する必要があるとともに,提言した具体策の実現に向けて,予算上,法制上の措置を行い,その社会実装に向けて,これからの改革の実行を確実に行うことを強く求めていきたいと思っています。私たち,全日中は8地区の校長研究協議大会も始まっていまして,そこでも丁寧に扱うようにしていきたいと思っています。
また加えて,教員養成系大学に比べて,教員養成系以外の学部の大学生の皆さんに,こういった情報を正確に伝えていくべきではないかなと思っているところです。
以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。では,永田副会長,お願いいたします。
【永田副会長】 ありがとうございます。環境整備については,おおむねまとまっていると思います。
その中に崇高な使命を自覚し,という部分に対応できる内容がどのぐらい盛り込まれているかということが若干気にかかります。概要版でも,教師は崇高な使命を自覚し,その先の黒字が太字になっていまして,研究と修養や学びの高度専門職となっていて,プライオリティーとして崇高な使命を自覚している前提で書かれているように思います。
これはもちろん教員養成機関である大学がもっともっと頑張らなければいけないというのもあるとしても,仕事をしながら自覚を促すような取組が具体的にどう書かれているかというと,実はあまり書かれていません。例えば,発展途上国にサバティカルで行かせるなどの,本当に原点に戻るようなことを経験していただくというようなことについての御議論はそれほどされなかったのかと思います。
いずれにしても,常に崇高な使命ということが復唱できるような環境整備も必要だと思っています。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。サバティカルという言葉は,教師の待遇をどうしていくかというときに,言葉としてはよく出るのですけれども,これなかなかうまく進まないので,大学での取組とかも含めて,是非共有させていただいて,そういった条件整備が学ぶ教師をしっかり支えるということが,できるようになればいいなと思っております。ありがとうございました。
それでは,堀田委員,お願いいたします。そして,その後,古沢委員お願いいたします。
【堀田委員】 堀田でございます。まず,すばらしい取りまとめを頂きましたことを感謝申し上げます。特に貞廣先生,お疲れさまでした。
私,何度も拝読しておりますが,具体的な対策は,3章,4章,5章にいろいろな形で書かれております。これは法改正が必要なものも含めていろいろあるのですが,多分期待が大きかったこともあって,5章のところにマスコミ等の注目が集まっているのかなと思います。3,4章の中に,様々な立場の人たちができることがあるのではないかと思います。私は専門がDXとかICT活用とか,その辺ですので,働き方改革のための校務DXのようなことをどのように進めていくかという立場でお話をしますが,様々なクラウドツールを使って,便利に校務を改善している学校というのはもう幾つもあります。また,そういうのをどんどん進めている自治体もあります。
今までのやり方を変える余裕が個々の先生にはなかなか忙し過ぎてないのだけれども,学校長のリーダーシップとか,あるいは教育委員会のビジョンで,ここは大きく変わり得るということが,もう幾つかの自治体ではっきりしていると思います。ただ,唯一の心配は,現場がICTでいろいろ便利にしようと思っても,校長先生がそういうふうに改善しようと思っても,設置者のICTの整備が制限だらけで,その制限によってそれが実現できないみたいなことも正直幾つかあり,現場が残念な思い,悔しい思いをされています。例えば,成績処理は職員室でしかできないため,ロケーションフリーな働き方ができないとか,メールアドレスすら付与されておらず,保護者との連絡や相談も電話しか駄目だとか,いろいろな不具合が出ていると思います。
昔はそれでよかったのかもしれませんけれど,今日,働き方改革の文脈でいろいろ大きく見直していく必要がある時代ですので,各教育委員会のリーダーシップのある整備に期待するところでございます。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございましたでは,古沢委員お願いいたします。その後,内田委員にお願いいたします。では,古沢委員,お願いいたします。
【古沢委員】 ありがとうございます。古沢でございます。この報告書について,学校現場の状況を踏まえますと,処遇改善の方向であるとか学級担任の手当などを含めて非常に望ましい方向だと思います。どこまでが教員の職務か切り分けるのが困難であるという,それが改革の根拠になる重要な部分であるとは思うのですけれど,例えば49ページの中で,教職の性質は全人格的なものであるとか,あと日常的に混然一体となって行われており,正確にしゅん別することは極めて困難であると,確かにそのような面は大きいと思うのですが,その部分が強調されると,教師の成り手に対してインパクトがちょっと大き過ぎるのではないかなと思いました。
さらに,本当に教職大変だなという印象を大きく資する可能性があるのではないかと。あくまで教育現場の体制をいろいろな面で整備しつつ,その上で教職の本質はこういうことだよというようなニュアンスで発信されるといいなと思いました。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございます。書き方の順番といいますか,まず,何に取り組むかということの大切さを御指摘いただいたかと思います。ありがとうございました。
では,内田隆志委員,お願いいたします。
【内田(隆)委員】 ありがとうございます。先ほどのお話の中にもございましたけれども,審議のまとめの「おわりに」の部分は,非常に私たちに訴えかけるものが大きいものだと思っております。
3本柱,学校における働き方改革の加速,教師の処遇改善,学校の指導運営体制の充実を推進する必要性を提言しているということ,これは学校,我々にとっても,全高長としても非常に重要だと考えております。学び続ける教師,そして学び続ける教師が生徒に楽しく学ぶ重要さを教え続けるという意味でも,時間を確保するために処遇改善を進めていただければと思いますし,予算措置を働きかけていただきたいなと思います。
まず,公立を対象にということではございますけれども,高等学校,小学校,中学校とも,私学,そして国立も担う部分がかなり大きいものと私,認識をしております。公立をスタートにして,私学や国立なども網羅するような財政措置,こういったものを訴え続けていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。「おわりに」はいろいろな方から御指摘がこれまでもあったところでございますけれども,課題がこれで全て解決するということには,すぐにはならないのだけれども,取組を続けていくということが非常に大事であるというメッセージが「おわりに」の部分にも込められているかと思います。
それでは,今村委員,お願いいたします。
【今村委員】 本当にお取りまとめ,ありがとうございました。私も初中分科会でも発言させていただきましたので,短めに重ねますが,今回,先生方の処遇改善を50年ぶりにというところは,本当に確実に実行していただきたいところなのですけれども,子供の数が100万人から70万人に減っていくという中で,学校の教員の方々がどんな仕事をするのかということと同時に,先生方と一緒に協働するスクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,スクールローヤーなどの専門職の方々のスタッフの処遇改善,そしてその定数の確保に重きを置いた改革もここから継続的に議論をしっかりとしていただいて,そこに対するしっかりとした配置についても今後の検討事項として明記いただきたいなと感じています。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。それでは,あとお二人,金田委員と後藤委員から御発言を頂いて,この件,一旦ここで次の議題に移りたいと思っております。では,金田委員,お願いいたします。
【金田委員】 金田です。どうぞよろしくお願いいたします。保護者の立場からして学校の先生たちの教師の処遇改善,そして働き方改革というのは我が子にも関係するということで,非常に関心を持っている方がたくさんいらっしゃいます。
ただ,このように働き方改革,教師の環境が非常に厳しい状態だということを,大きく言えば言うほど,例えばうちの娘は今,高3なのですが,教師を目指しており,今,大学に進もうとしておりますが,親の立場とすると少し尻込みしてしまいます。うちの子供もそうですし,ほかの親からも話を聞くことがあります。
当然,働き方改革,そして教師の処遇改善というのは,進めていくべきだと思うのですが,ほかの会議でも話をさせてもらいましたが,働き方改革,教師の処遇改善と一緒に,教師という職業は,本当にすばらしい職業なのだということをしっかりプラスして,働き方改革と並行して社会に広めていくということをしていかないと,教師の成り手というものは減っていってしまうのではないのかと思っております。是非教師の処遇改善と,教師という職業のすばらしさということを併せてアピールするべきではないかなと考えております。
保護者からの意見として,是非よろしくお願いいたします。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。そこのところ,本当に大事なお話かと思います。みんな分かっていると思っていて,なかなか言わないでいるとよくないわけでありまして,教師というのは本当にすばらしい職業である,しかし,いろいろと課題があって,その課題を乗り越えていくのだ,関係者みんなで乗り越えていくのだということで取組が進んでいくことを心から期待しております。
では,後藤委員,お願いいたします。
【後藤委員】 取りまとめ,ありがとうございました。ただいまの御意見とかなり近いのですが,教師の働き方改革,心身の健康を守るための様々な方策は必要だと思います。ただ,教師がやりがいを感じるかどうかということが極めて重要で,教師のモチベーションというのは子供たちと向き合うことだと思うのです。ですから,その時間が持てるように,業務の平準化も含めて,チーム学校としての協力体制支援体制の構築を更に推進していただきたいというのが1点です。
それから,もう1点は,持ち授業時間などの観点から,小学校中学年で教科担任制の導入が検討されているということで,発達段階に応じて,基礎学力と人間力育成のバランスの取れた指導が必要だと思います。学級担任制と教科担任制のメリットを生かすという意味で,慎重に協議を進めていただきたいということをお願いします。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございます。十分留意して進めていかなければならない大変大事な点を御指摘いただきました。ありがとうございました。
それでは,まだほかにも御意見おありかも分かりませんが,議題全体の関係から,この件はここまでとさせていただきます。冒頭,貞廣部会長からもございましたように,全ての合意によって,このまとめができているとは必ずしも言えないのだけれども,しかし,実効性であるとか,あるいは実現性であるとか,そういったことから,これにまず取り組んでみようということであります。今までの状況をしっかりと見据えながら,本当に学校が豊かな学びの場になるように,子供にとっても,大人にとっても,そういう場になるように取組が進んでいくことを心から期待しております。
文部科学省の皆さんは大変なことはたくさんありますけれども,これはお金を取ってきていただかなければいけないので非常に難しい点あると思いますが,是非,この点,先ほど定員を増やすことは省是であるともおっしゃいましたけれども,本当にしっかりとやっていただくことを心から御期待しております。
なお,この審議まとめにつきましては,今後検討を重ねていって,最終的には,これは大臣からの諮問によって議論を始めているものでございますので,最終的には答申として大臣にお返しするということになる予定でございます。以上でございます。ありがとうございました。
それでは,次の議題,議題の3に移りますが,ここで公務のため,安江政務官が御退室されます。ありがとうございました。
次に,議題の3でございます。生涯学習分科会における議論の整理についてということで,生涯学習分科会長の清原委員から御説明お願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。杏林大学客員教授,前東京都三鷹市長の清原慶子です。どうぞよろしくお願いいたします。
「第12期生涯学習分科会審議の議論」の整理について概要を報告させていただきます。第12期の生涯学習分科会では,各分野の委員の皆様による御報告とともに,放送大学,そして日本語教育機関や専門学校等から事例報告を頂き,このたび,議論の整理を取りまとめました。
それでは,資料3-1の概要版の1ページを御覧ください。第12期の議論の整理に込めたメッセージは,副題に示しましたように,「全世代の一人ひとりが主体的に学び続ける生涯学習とそれを支える社会教育の未来への展開;リカレント教育の推進と社会教育人材の養成・活躍のあり方」に集約されます。
「はじめに」では,議論の前提として,「第4期教育振興基本計画」及び「第11期の分科会の議論の整理」を踏まえております。その上で,今回は特に,「生涯学び続ける社会の実現及び全ての人のウェルビーイングを目指したリカレント教育」と,「全ての人のウェルビーイングにつながる地域コミュニティを支える社会教育人材の在り方」の2つのテーマについて,重点的に取りまとめました。
まず,「生涯学習・社会教育をめぐる状況と今後の方向性」については,「人生100年時代に,誰もが生涯を通じて意欲的に楽しく学び続けられる社会」といたしました。それとともに,「デジタル化の恩恵を享受し,誰一人取り残されない社会の実現」,「社会的包摂への対応」を今後の方向性としております。また,生涯学び続けるためには,学校教育段階での学びの習慣の形成が非常に大切である点について明確にしております。すなわち,初等中等教育段階では,自らの学びを主体的に取り組む力を育み,高等教育段階では課題発見,課題解決の学びを生かして社会を牽引するという人材の育成が期待されると考えます。さらに,社会教育人材には,地域コミュニティの基盤を支える上で,引き続き大きな役割が期待されるということを記載しております。
今期において,重点的に議論した「社会人のリカレント教育」につきましては,「企業の視点」からは,経営に当たって人的成長投資が今まで以上に重要であり,社員の成長の機会を提供しつつ,その学び直しの成果に対して高い評価と処遇で対応することが必要であることを確認しました。「社会人の視点」からは,それぞれが主体的にキャリアを形成,選択することが必要としています。
そこで,「高等教育機関」においては,企業と社会人のニーズを的確に把握した有意義で魅力的な教育プログラムの開発と,「学びと成長のエコシステム」の構築が急務と言えます。また,高等教育機関が持つ「地域社会の知の基盤としての役割」が,その意義を高めていることも確認しました。このように「社会人のリカレント教育」を考察するとき,「企業」,「社会人」,「高等教育機関」のそれぞれの視点に至った意義を確立し,相互の連携が重要であることを強調したいと思います。
次のページには,「放送大学」や「専門学校」,「学習歴のデジタル化」についての検討結果を記載しております。特に「専門学校」においては,今年の通常国会において法改正が行われ,今後の法の施行を目途に,高等教育機関としての位置づけの明確化,学習継続の機会確保,社会的評価向上のための制度整備について対応が進められることになります。また,社会的包摂の視点からも「障害者の生涯学習」,「外国人の日本語の学習」につきまして,議論を行いました。
さらに,「社会教育人材」につきましては,質的にも,量的にも充実していく必要があるため,特別部会を設置して熱心な検討を重ねて,受講者のニーズの増加を踏まえた社会教育主事講習の定員拡大,オンライン化やオンデマンド化等による受講形態の多様化とともに,地方公共団体,自治体における社会教育主事の配置促進や社会教育人材のネットワーク化などに取り組むことが必要であるとしています。
最後に,「今後の展望」として,今期,第12期の分科会での審議を通じて,社会教育を必要とする社会情勢は,社会教育法が制定された75年前の昭和24年(1949年)から大きくさま変わりしているとの認識が強く共有されました。人口減少,少子化の深刻化,地域コミュニティの交流の希薄化,学校が抱える問題の複雑化,困難化といった様々な課題に対処しつつ,人生100年時代の到来,デジタル社会,障害者や外国人等を含む共生社会や「こどもまんなか社会」の実現といった,民主主義国家としての現代的ニーズに対応するためには,社会教育の新たな在り方を展望し,社会教育が果たすべき役割,若者を含めた担い手である人材の養成やその活躍の在り方,国としての推進方策等について,さらなる検討が進むことが期待されます。
そして,社会教育人材のコーディネートにより,社会教育と学校教育をはじめ,首長部局,高等教育機関,民間企業などとの連携による地域コミュニティの維持,活性化を含んだ自治体と国による推進方策の在り方について,さらなる検討を進める必要があります。
本日はこの後,「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策」について諮問があると伺っておりますが,以上,報告をさせていただきました「第12期生涯学習分科会での議論の整理」の内容と密接に関連した,重要な諮問を頂くことになると思います。このことは大変に有意義であると重く受け止めております。
以上,概要の御報告をさせていただきました。皆様,傾聴していただきまして,どうもありがとうございます。報告は以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。清原生涯学習分科会長から御説明を頂きました。今の御説明の中でも,生涯学習が大学教育等の高等教育,それから初等中等教育全体をつなげていく,そういう非常に大事な軸としてその中で考えていくことの大切さについて,改めて認識をいたしたところでございます。ありがとうございました。
この件,質疑に関しましては,次の議題と併せて行わせていただきたいと思います。
次は議題の4でございますが,その他ということではありますが,3件御報告を頂きたいと思っております。まず,1件目,事務局からの御報告でございます。昨年6月に閣議決定されました,第4期となります教育振興基本計画につきまして,フォローアップの観点で,事務局から進捗状況の報告を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【滝波政策課長】 それでは,その他報告案件3件のうちの1件目ということで,教育振興基本計画のフォローアップについて,政策評価との関係を御報告したいと思います。
昨年3月に中教審答申がございまして,それを経て,6月に,第4期となります教育振興基本計画というものが閣議決定をされております。それから,ちょうど1年たったところでございます。このタイミングで,今後の計画のフォローアップの進め方につきまして,御報告したいと考えております。
この計画では,教育政策の持続的改善のための評価,指標の在り方につきまして,記述がされております。その中では指標を活用しまして,計画に掲げられた各目標について,しっかりと進捗状況を検証,評価すること。あるいは計画をフォローアップするということとともに,政策評価との整合性を持つように連携を進めるといったようなことが盛り込まれているところでございます。
このページのだいだい色の部分ですけれども,文科省の政策評価につきましては,省内に政策評価の専門家などからなります有識者会議というのを設けてございます。この会議の助言を受けまして,従来の画一的,網羅的な評価のやり方から,実際の政策立案過程に合わせた評価に改めるということといたしまして,教育振興基本計画を含みます,各政策分野の計画の柱立てに沿った政策体系等というものを2023年度に作成したところでございます。
少し抽象的になりますので,具体例の方で,次のページの方を御覧いただければと思います。緑色の部分,教育振興基本計画における目標,基本施策,指標というところでございますけれども,16の目標を掲げられておりまして,目標ごとに複数の基本施策と達成状況を測定するための指標が設定をされております。
例えば目標1のところ,確かな学力の育成といったところには,基本施策としまして,個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実をはじめとする10の施策が掲げられております。それから,達成状況を測定する指標といたしましては,OECDのPISAにおける世界トップレベル水準の維持などの19の指標が掲げられているところでございます。
それから,このページのだいだい色の部分ですけれども,政策評価の政策体系等でございますが,これは政策目標,施策目標,達成目標,測定指標,達成手段,それから達成手段が目標達成にどのように貢献するかといったように,構造的に整理をされているところでございます。
教育振興基本計画との関係なのですけれども,計画では,政策評価との整合性を持つよう連携を進めるとされたことを踏まえまして,政策体系等における政策目標と施策目標は,それぞれ教育振興基本計画における教育政策の目標と基本施策というものを,そのまま生かして整理をしております。
その下に,政策目標や施策目標と事務事業との間をつなぐものといたしまして,達成目標とか測定指標,あるいは達成手段,達成手段が目標の達成にどのように貢献するかといったものを,それぞれ簡潔に整理をして追記して記載をしているところでございます。このうち,測定指標につきましては,教育振興基本計画で設けられました指標だけではなくて,政策の進捗の把握に参考になるような情報も追加をして設定しているところでございます。
1ページに戻りまして,だいだい色の部分の2つ目のポチでございますけれども,政策体系等といいますのは,有識者会議で助言を得て,毎年度更新することにしてございます。政策の効果がどういう道筋を経て表れてくるのかということを明確化することを通じまして,改善に役立つ評価を行うということが重要でございます。具体的には,測定指標の実績をしっかり見ていくということで,達成目標の達成度を図りまして,施策の具体的な改善につなげられるようにフィードバックしていきたいと考えております。
政策体系等の更新の際には,ここに記載の3つの視点が設定をされております。政策体系の更新作業を通じて政策の階層構造を整理する契機としていくということ。それから階層構造を踏まえて,施策レベルの改善に生かすという観点から,達成目標,測定指標が適切に設定されているかどうかということを再確認するということ。それから,測定指標を更新して,施策レベルの改善の要否を確認していくということ。こういった視点でございます。
それで,一番下の図でございますけれども,こういった考え方を踏まえまして,有識者会議の助言を得ながら,政策体系等を毎年度更新していくということを通じまして,教育振興基本計画のフォローアップの議論に活用していくということによりまして,効率的で実効性のある形で,中教審におけます次なる教育振興基本計画の策定に向けての議論の方にしっかりと反映していくというようにしてまいりたいと考えているところでございます。
計画のフォローアップの進め方について御報告でございます。以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。この件につきましても,質疑,御意見の交換につきましては,残り2つの御報告の後に行いたいと思います。
続いて,2件目でございます。内田由紀子委員からの御報告です。先ほど御報告いただきました,第4期教育振興基本計画におきましては,総括的なコンセプトの一つといたしまして,日本社会に根差したウェルビーイングの向上が掲げられています。それも踏まえ,昨年度の全国学力・学習状況調査の質問紙調査におきまして,ウェルビーイング関連項目が新たに追加されるなど,充実が図られてまいりました。全国学力・学習状況調査の結果に基づきまして,ウェルビーイング関連項目について分析をしてくださいましたので,その結果についての御報告を内田委員からお願いしたいと思います。資料は5-1,5-2がございます。よろしくお願いいたします。
【内田(由)委員】 お時間いただきありがとうございます。京都大学人と社会の未来研究院の内田と申します。第4期の教育振興基本計画の中にウェルビーイングのコンセプトが含まれるようになったことを受けまして,子供たちのウェルビーイングの状態・実態を理解し,今後の教育政策を進めていくことが重要であるという観点から,学力調査におけるウェルビーイング項目の分析を担当させていただきましたので,本日お時間頂きまして,概要を説明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
全国学力・学習状況調査は毎年度,実施されておりまして,国語や算数等の教科に関する調査とともに,生活習慣,あるいは学習環境に関する質問紙調査も行われております。これについては,皆さんよく御存じのとおりかと思うのですけれども,基本的には小学生高学年,それから中学3年生を対象とした悉皆調査となっております。
教育振興基本計画でウェルビーイングというものが重視されるようになったということを受けまして,令和5年度からの全国学力・学習状況調査におきましては,数項目ではありますが,ウェルビーイングに関連するような項目を追加されるということがございました。あるいはこれまでの調査の中でもウェルビーイングに関連する項目として取り扱い分析することも可能になりました。そうしたことで,例えば地域や社会に関わる活動の状況,あるいは学校が楽しいかどうかといった項目からウェルビーイングの状態を検討することが可能です。
今回,御報告させていただくのは,学校や地域でのつながり,共同性,利他性,多様性への理解,サポートを受けられる環境,社会貢献意識,自己肯定感,自己実現,心身の健康など,ウェルビーイングにまつわると考えられる項目に関連したところを,重点的に検討を行わせていただいた結果です。
まず,児童生徒の主観的な幸福感は学校に行くのは楽しいと思いますか。それから,ふだんの生活の中で幸せな気持ちになることはどのくらいありますか。この2項目で測定をしています。
小学生と中学生の平均値を御覧いただきたいと思いますが,1点から4点の回答で数値が高いほど幸福感が高くなるように,補正した状態でお示しをしています。御覧いただければ分かりますとおり,平均値,3点を超えているという状況で,基本的に何かを基準点とした相対評価ではなく絶対評価としてにはなりますが,十分高いと言える数字であるということは言えるかと思います。
ただし,こちらの調査は悉皆調査ではあるものの,全ての児童生徒が回答しているわけではないことには留意が必要であると思います。
また,結果のポイントの2つ目といたしまして,先ほどお示ししました2つの項目で測定される主観的な幸福感に関して,どのような要因が特に支えているのかということを検討させていただきました。これがメインの結果になっています。主観的幸福感を,小学生でも中学生でも強く支えている3つの要素がございました。
1つは友人関係です。友達関係に満足ができているかどうか。2つ目が自己肯定感,3つ目として教師のサポートです。教師のサポートの中には,3つの項目の要素がございまして,先生はあなたのよいところを認めてくれている。先生は分かるまで教えてくれている。先生や学校にいる大人にいつでも相談できるという,この3項目から成るものを教師のサポートとしております。この数値が高いほど,より主観的幸福感への結びつき,寄与度が高いというものになっています。ただ,これは1回の横断調査ですので,いわゆる因果関係を推論したような矢印の向きにはなっていますけれども,実態は相関関係ですので逆の因果も成り立ち得るものです。
この結果をまとめますと,子供たちの主観的な幸福感に寄与しているのは,教師からのサポート,それから友人関係という学校という場の関係性であるということ,そして,自己肯定感というのは,友人関係や教師のサポートとも関わっている項目となっています。
このことから,学校というのは対人関係や社会関係というものによって極めて強く支えられているということが分かりました。先ほどの議論にもありましたように,教師のウェルビーイング,働き方の改善というのは,正に先生方が子供たちのウェルビーイングを支えられるような,そういう時間的余裕と心の余裕,この両方の余裕を持つことというのが子供のウェルビーイングにとっても重要であるということが分かったといえます。教員,教職員へのサポート体制を整えていくことというのが極めて重要であるということも,この結果は示唆していると思います。
参考値としまして,主観的幸福感を従属変数とした重回帰分析を行った結果を掲載しています。左側の列にある要素が主観的な幸福感にどのぐらいの関係性を持っているのかということを並べたものになっています。
先ほどの3つの要素というのは,重回帰分析の中で強い要素となっていたものを取り上げて検討させていただいたものであります。国語や算数の教科の成績,あるいは社会経済的な背景は一見すると主観的効果に強く関わるのではないかと思われそうな要素ですけれども,実際には幸福感との関係は低いものとなっています。一方で,小学生においては教科への態度という,授業への積極性みたいなものが幸福感につながっているということはあるのですけれども,学校という場の状況,社会的な関係性というものの方がより幸福感には影響が強いということが,今回の調査から見てとれました。
資料5-2をお願いしたいと思うのですけれども,まとめのところ,最後の方に書かせていただいていることです。これまで国際的な調査,PISAなどの調査では,日本の子供たちに関するウェルビーイングは高くないというようなことも指摘されることも多かったと思うのですけれども,今回の学力調査の中では,全体としては低い値ではないということが見えてきたと思います。
また,先ほども申し上げたとおり,学校という場においては,学力そのものよりも,友達との関係や教師との関係など,他者とのつながりが幸福感を向上させているということも重要な要素になると思います。
3点目といたしまして,そのためにも教師とウェルビーイングというのが重要であるということを,もう一度強調しておきたいと思います。
以上で,こちらの学力調査についての分析の結果の報告を終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。
【荒瀬会長】 内田由紀子委員,ありがとうございました。改めてこうして見ますと,学校というものがどういう場所であるのかとか,子供たちの状況がどうであるのかというのが非常によく見えてきつつあるなと思いました。また,議題の2の特別部会の審議まとめにも関わるような内容も御指摘いただきました。ありがとうございました。この件につきましても,最後,まとめて御質問と御議論を頂きたいと思います。
続きまして,3件目でございます。3件目は,博士人材の社会における活躍促進についてであります。盛山大臣を座長とした博士人材の社会における活躍促進に向けたタスクフォースにおいて,3月に取りまとめられました「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」について,高等教育局から御報告をお願いいたします。
【池田高等教育局長】 高等教育局長の池田でございます。今,会長から御紹介がありましたとおり,盛山大臣の下,昨年11月からタスクフォースを設けまして,本年3月末に「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」を取りまとめました。
資料6-1が概要でございます。本日は資料6-2,本体に基づいて御説明をさせていただきます。
表紙を御覧いただきますと,今,荒瀬会長からお話がありましたように,博士人材活躍プランというタイトルですけれども,博士をとろうということで,これは博士号を取得しようということと,それから企業などにおいて,博士号取得者を採用しようということでかけておりまして,博士をとろうということになっております。
1ページめくっていただきまして,盛山大臣のメッセージ,博士号を2つお持ちでございますが,先頭に立ってまとめていただきました。ここにエッセンスが尽きていると思いますけれども,下の黒字のところ,学生の皆さん,大学関係者の皆さん,産業界の皆さんにそれぞれ呼びかけるとともに,文部科学省も積極的に取り組んで,社会全体で博士人材が活躍できるような環境をつくっていこうというものでございます。
3ページを御覧いただきたいと思います。意義・目的です。博士人材は1ないし複数の深い専門知識,深い専門性を有するとともに,課題発見などの汎用的能力があると。これに基づいて,社会全体の成長発展を牽引していくことができる人材と位置づけております。
一方で,日本では博士イコール研究者,アカデミアに進むキャリアパスというイメージが強くございますけれども,欧米などグローバルスタンダードでは,広く活躍しており,複雑な課題への解決策を専門性に基づいて俯瞰的に判断して提案できるという,そういう能力証明であると見られておりまして,日本でもそういう姿を目指していきたいと思っております。
1枚めくっていただきまして,目指す姿,先ほど申し上げたことが書いてありますが,博士人材が民間企業や国際機関,あるいはスタートアップなどで起業をしていただいたり,あるいは,公務員などの公的機関で働いたり,そして学校現場の教師,小中高などの教師としても活躍をすると,こういった多様なキャリアパスをつくっていけたらと思っております。
次のページ,5ページを御覧いただくと,いろいろ現状のデータが出ておりますが,左側の折れ線グラフを御覧いただくと,英国やドイツなどでは,人口100万人当たり300人以上の方が博士号を取得しておりますけれども,日本では100人ちょっとという状況でございます。これは最後の方に出てまいりますが,これを世界トップレベルにしていければということで,今回のプランをつくっております。
少し飛びまして,7ページでございますが,取組の方針としては,大きな方針は4つございます。1つは,産業界などと連携して,博士人材のキャリアパスを広く開拓していくということと,それから教育の質保障や国際化を進めることによって,大学院教育自体を充実させるということ。それから,博士課程学生が安心して研究に打ち込めるような環境整備,博士課程学生への支援も含めて環境整備も重要だと思っております。4点目として,初等中等教育から高等教育段階まで,広い意味での高大接続もしっかりやりながら,博士人材輩出まで一貫した取組が必要であると考えております。
8ページ以降,具体的な取組を挙げております。まず,01というところですが,先ほど申し上げました,多様なキャリアパスの構築ということで,ジョブ型研究インターンシップの推進,あるいは経産省との連携による手引作成,それから学生のスタートアップ創出支援などに取り組んでまいりたいと考えております。
次の9ページ,公的機関での活躍の促進,これも後で出てまいりますが,文科省で,まず,隗より始めよということで取組を進めてまいります。それから,大学でも研究者以外のリサーチアドミニストレーターといった多様な専門スタッフの充実が求められておりまして,こういったキャリアパスも可能性として非常にあるだろうということでございます。
次のページ,2番のところですけれども,大学院改革と学生支援でございまして,まずは世界トップ水準の大学院教育を行う拠点形成も必要であろうと。これはリーディング大学院という形で,従来ずっと支援をしてまいりましたが,これを更に発展的にして拠点形成を力強く推進していこうと考えております。
それから,次のページで5番のところにありますように,学生支援,これは学生への支援,それから優秀な博士への研究支援という,いろいろな形で今,支援も充実しつつありますので,これも更に加速していこうというものでございます。
それから3つ目,次のページで,学生本人への動機づけということで,まだ日本では博士人材が必ずしも一般的でない面もありますので,博士の魅力などを発信していく必要もあると思っておりまして,未来の博士フェスというイベントを開催したり,それからスーパーサイエンスハイスクールで,博士号取得者を博士教諭として積極的に採用して活躍していただいたり,こういった取組をしております。
なお,未来の博士フェスは,ちょうど2週間後の7月10日に今年度は行います。オンラインでも御覧いただけますので,参加していただければと思います。
次,13ページ,文部科学省から始めますということで,これは公務員制度の枠組みの中ですので,政府全体でないとできないこともありますが,文部科学省独自にできることもたくさんございます。今,省内の職員の5%程度が博士号取得者でございますが,これについて採用目標を設定したり,昇格スピードを速めたりという取組も積極的にしてまいります。また,博士人材を採用するだけでなく,働きながら職員が修士,博士の学位を取得する,これも積極的に奨励してまいりたいと思っております。
次のページ,細かい指標が書いてありますが,一番下のところ,大目標として掲げておりますのが,人口100万人当たりの博士号取得者数を,世界トップレベルに引き上げるということです。つまり今,123人しかいない状況を300人以上にしたいということで,これを目標として掲げております。
それから最後でございますが,15ページ,産業界へのお願いでございます。これは,文部科学省や各大学が,いろいろな取組をしたり,博士課程の学生が頑張ったりしても,産業界の理解がないと広い活躍が望めませんので,企業,あるいは産業,各経済団体などに対しても,3月以降積極的にお話をさせていただいて,採用拡大や処遇改善,あるいは,今の社員の博士号取得の支援なども呼びかけております。
こうしたことを通じて,博士人材が世の中のいろいろなところで活躍できるような社会を目指していきたいと考えております。
【荒瀬会長】 池田局長,ありがとうございました。
それでは,清原委員から御報告のありました生涯学習分科会における議論の整理について,及び,先ほどの御報告案件3件につきまして,委員の皆様から御意見,御質問等ございましたらお願いしたいと思います。では,渡辺委員,お願いいたします。
【渡辺委員】 日本医師会,かつ学校保健会から来ています,渡辺でございます。
資料3-1,清原委員が作成された,議論の整理に関して述べさせていただきたいと思います。
清原委員がつくられた報告書に書かれた生涯教育の重要性というのは誠にそのとおりだと思います。ただ,報告書を読ませていただきますと,趣旨は何となく分かるけれども,誰に何をどうされたいのか,こういう授業や体制をつくった場合,誰に対してどういうシステムでその情報を周知するのかといったような,基本的なところが明確になされていないように感じるところです。
言い方が悪いかもしれないのですけれど,一方的に教育システムをつくって,これを利用するとすごくよくなるというように受け取られるような印象があるところが残念な感じがいたします。できれば教育を受ける側,受けようとする側の視点をもう少しお示しになられて,それをどう対策するか,具体的にどう結びつけていくかというようなことをお示しいただけるとすごく分かりやすくなるのではないかと思いました。
意見で申し訳ないのですけれども,以上でございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。今後,どのように進めていくかということにも関わるお話で,清原委員の方からお願いいたします。
【清原委員】 渡辺委員,ありがとうございます。生涯学習,社会教育の理念として,今期の第12期の議論の整理の副題にもつけさせていただきましたけれども,「一人ひとりが主体的に学び続ける生涯学習と,それを支える社会教育」とさせていただきましたように,現行の社会教育法の中で,社会教育というのは学校教育以外の教育を指すということになっています。
総体的ではございますが,学校教育というのは,体系的,系統的,組織的な教育ということになります。そういう意味では,渡辺委員が印象を持たれたように,私たちが取り組むべき生涯学習,社会教育については,それぞれ学びの主体に最も近い地域社会,自治体の企画や,あるいは住民自身が企画をして学びをつくり上げていくというようなところを重視しておりますので,むしろ印象に持っていただいたような,上から何か形を決めつけて示していくという部分ではなくて,学習指導要領もないわけでございますので,現場での主体性や創造性や内発性,あるいは連携・協働を尊重した取組こそ,社会教育の真骨頂であるというようなことで,そういう書きぶりになっております。
今後の方向性としましては,そうは言っても,多様な課題がある中,全世代がそれぞれの人生の課題や,あるいは地域課題に沿って学びを深めていくときの支援の在り方について,より具体的に,渡辺委員のような印象が薄まるように検討を深めていきたいと考えております。どうもありがとうございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。補強をしていただいたのではないかと受け止めました。ありがとうございました。
今,大臣が御到着になりました。ありがとうございます。ただ,今,手を挙げていらっしゃる方がいらっしゃいますので,今,手を挙げていらっしゃる方まで御発言を頂くということで,御了承いただきたいと思います。今村委員,橋本副会長,安孫子委員,村田委員の順にお願いいたします。では,今村委員,お願いいたします。
【今村委員】 発言させていただきます。先ほどの内田委員のお話を聞きまして,日本の子供たちのウェルビーイングが全体として低い値でなかったということに非常に安心感を持ったと同時に,ただ,その日,登校していなかった不登校の子や,不登校傾向の子はきっと受けていないのだろうなという意味では,内田さんもおっしゃっていましたけれども,全員ではないということで,これをどのように受け止めるのかということについては,安心していられないということは前提なのですけれども,ただ,必要なのは学校の先生方の余白だということ,サポート体制だということがはっきりしたということは,議論が前に進むすばらしい御発表だったと思いました。
その上で,教育振興基本計画のフォローアップ,政策評価のところなのですけれども,データを,PDCAサイクルを確立して,きちっといい仕事を先生方がしているということが世の中に発信されるということはすごく大切なことなのですけれども,私も現場の先生方と話していると,アンケート調査への回答とかエクセル,かなり複雑なエクセルを一つ一つ入力しなきゃいけなかったりということがまだ現場にはたくさんあって,そういったことの一つ一つの校務分掌が結局先生方の余白を奪っていて,困っているということは今でも聞くところです。
ですので,こういったデータを集めることは大切なのですけれども,同時にGIGA端末が配られて,何か即時にデータが集められるような施策を開発するとかということも含めて下ろすということは文科省の責務だと思いますし,できれば県教委とか市町村の教育委員会が学校に,モデル校ではない普通の学校で,そういったリテラシーがない学校にはアウトリーチしてサポートするとか,そういったこともしないと,先生方が子供たちに余白を持って関われる,その時間を奪っているという意識も持つべきだと思いますので,データは大切なのですけれども,そこの部分もセットで考えていくこと,これについて検討をお願いしたいと思いました。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。では,橋本副会長,お願いいたします。
【橋本副会長】 2つありますが,まず,先ほどの博士人材の活躍につきましては,産業界へも,こういう御要望を頂きまして,経団連でも,昨年,博士人材の活用に関するアンケートを会員企業に行ったところ,各社とも興味は大変あるのですが,今まで博士人材採用の経験がない等の理由から業種によっても大分格差があり,進んでいない業種もかなりありました。
ただ,こういう環境変化の激しい時代にあって,専門性の高い博士人材を採用するということは,人材活用における課題であり,ジョブ型採用がどんどん普及する中で,これからの博士人材採用というのは拡大していくと思っています。
ただ,企業側の最大の課題は,優秀な方をどう処遇していくか,あるいはキャリアパスをどう明示するかということにあると思いまして,そちらの方も少しずつ進んでおりますが,更に加速させていきたいと考えております。
もう1点は,先ほどの生涯学習分科会における議論の整理についてですが,人口が減少する中で労働力をどう確保するかというのは,いろいろな企業にとっての課題ですし,あるいは経済成長にとっても,非常に大きな隘路になりますので,これをどう解決していくか。そして,多様性とか社会的包摂の問題をどう解決していくかという大きなテーマがあるわけですが,外国の方を,日本の経済の中でどう活躍していただくか,それもサステナブルに活躍していただくかという環境整備はすごく大事かなと思います。
そういう意味で,外国の方へ,質の高い日本語教育を行い,人材の中期的な定着,あるいは社会統合の視点からの育成というのは非常に重要であり,この点を,議論の整理の中で着眼していただいたということは大きな意義があると私は思います。外国の方が日本で働く上で最大の難関は日本語の問題だと思います。我々が英語を勉強するときのハードルと,外国の方が日本語を勉強するハードルというのは恐らく大きな格差があり,日本語という壁に阻まれて,日本での活躍がうまくいっていないというケースも多いのでないかと想像しています。
昨年,法的なところの環境は整備を頂きまして,大まかなところの枠組みができたと思いますので,是非今後の議論を通じて,外国の方の日本語教育についての深掘りをして,さらなる環境整備,あるいはそれを通じて地域コミュニティの中で,外国人とのつながりが強まることを期待したいと思います。
今後,諮問の中にも,外国人等を含めた社会教育についての取組を挙げていただいておりますので,議論が深まっていくことを私も期待しております。どうぞよろしくお願いします。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。では,安孫子委員,お願いいたします。
【安孫子委員】 ありがとうございます。私は,資料4で2ページに情報提供いただきました,教育政策の目標と基本施策とその指標についての御情報を頂いたことで,学校教育の働き方改革において,企業とは違う点として,意見を述べさせていただきたいと思っています。
企業は教育の結果が労働生産性に表れる,費用対効果として数値化できるもの,これを目標に掲げて,それに対して努力をする,労働力を費やす構造になっています。そういう意味では,ここで示された指標に向かって,教育に関わる労働力を費やし,そしてこの目標を達成していくような構造になっていくことを望みます。数値になるとその問題が明確に共有されますし,進捗の状況含めてみんなが向かうべき方向を共有して進むことができますので,そうした数値目標の明確化と進捗状況を数値で検証する体制を整えていくことを望みたいと思います。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。では,村田委員,お願いいたします。
【村田委員】 私の方からは質問が2つ,それから意見が2つでございます。
まず,初めに,生涯学習分科会の議論の整理についての御質問なんですけれども,リカレント教育に関しては,14ページの脚注の2で,アップスキリングやリスキリング,あるいは,従来型,OECDがもともと言っていました生涯学習等も含むとリカレント教育の定義がなされているのですが,他のところで,例えば16ページのところ,社会人のリカレント教育,リスキリングからリカレントというふうに,リスキリングとリカレントが少し区別されているような表現があったりします。
そういう意味では,少し14ページの定義と後の方での,中での使い方が少し錯そうしているのかなというような印象を持っておりますので,その辺り,どういうふうに整理されているのかというのが一つ目の質問でございます。
それから,もう1点は資料のところにございますが,社会人のリカレント教育というのは,企業,社会人,高等教育機関とありまして,さらに,4番目に社会教育人材,社会教育主事,あるいは社会教育士のことがあるのですが,恐らく社会教育士,あるいは社会教育主事については,もともと1990年代ぐらいから言われていた生涯学習のところを中心に考えているのだと思うのですが,リスキリングは恐らく企業や高等教育と結びついている。この辺り,先ほどの渡辺委員の意見とも関係するのですが,少し整理が必要ではないのかなと感じてございます。それが一つ目の意見です。
それから,もう一つは,内田先生の整理で非常に分かりやすく,かつ,ウェルビーイング,日本の子供たちのウェルビーイングが高いのだというお話を聞きましたけれども,これもこの会議で,幾つか議論があったように,OECD等の質問の仕方では,日本の子供たちのウェルビーイングはそう高くないのだと。今回の調査ではそうではないという結論が出たのですが,恐らくこれは学力だとか,あるいは教科への態度のところが効いているのだと思います。基本的にどの部分の質問が違っていて,どの部分が効いて,OECD等々でのこれまでのウェルビーイングについて日本の値が低いというのと,どこが一番大きな違いなのかということを,お聞きしていても理解できなかったものですから,教えていただければと思います。これは質問です。
最後に,博士人材のところなのですが,ここにあるように博士人材は重要だと思うのですが,大学院部会での議論の中では,博士に関しては理系,しかし,文系に関しては修士のところが重要だというところで,あえて分けて議論をしているのですが,恐らく博士人材というのは理系を中心に考えているのだと思いますので,この辺り,文系のところもちゃんと,両方しておかないと,と考えます。もう一つ言いますと,修士までは理系なのだけれども,MBAに行って修士を取っているとか,正に大学院で文理横断的な専門を2つ持っていく,そういうことがこれからのイノベーションの実装化には必要なのではないかと思っておりますので,これは意見として述べさせていただきました。どうもありがとうございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。今のことについて,短くお答えいただくことというのは可能ですか。清原委員,お願いします。
【清原委員】 御質問ありがとうございます。短くお答えいたします。
1つ目の議論の整理の14ページの注釈にあります,リカレント教育とリスキリングの関係でございますけれども,定義としては,14ページの注釈を第一義的に受け止めていただければと思います。ただ,文章の中では,一般的にリカレント教育とリスキリングを並列する場合もありますので,その辺の記述の中で分かりにくかったらごめんください。説明の中で留意すべきでした。失礼いたしました。
もう一方で,高等教育との関係については御指摘のとおりでございまして,大学分科会の中で設置されている特別部会でも,5月31日に生涯学習分科会の議論の整理を報告する機会を頂きました。その人材については,資料の後半についております,資料3-2の社会教育人材部会の7ページを御覧いただきたいんですけれども,私たちは社会教育というのは,いわゆる自治体行政や国の行政の中にとどまるものではないと整理をし直しました。
この図を見ていただきますと,真ん中のところに,「団体・民間企業」も位置づけさせていただいております。実際に,社会教育主事講習を受けて,社会教育士の称号を得て,民間企業の中で,地域の高等教育や,あるいは社会教育の現場をコーディネートしながら結びつけて社会貢献をしてくださっている企業の取組もあるぐらいでございますので,今後,企業や高等教育と社会教育が正に連携をしていくということを,実態に沿って示した図でございますので,御参照いただければと思います。以上です。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。まだ御意見とか御質問とかございます方いらっしゃるかと思うのですけれども,大臣のこの後の日程の関係もありまして,今日は諮問を受けたいと思いますので,大変申し訳ありませんが,進行に御協力いただければと思います。大変失礼いたします。
それでは,議題の1に戻りまして,地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策について,諮問を頂きたいと思います。では,大臣諮問理由の御説明をよろしくお願いいたします。
【盛山大臣】 おはようございます。閣議,その他がありまして,遅参をいたしましたことをまず,お許しを頂きたいと思います。
また,平素は荒瀬会長をはじめ,先生方,委員の先生方に大変お世話になっておりますことを本当にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
それでは,今回の地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方と推進方策についての諮問について御説明をさせていただきます。昭和24年6月に社会教育法が制定されました。それから75年が経過しております。この間,地方公共団体や関係機関,団体等によるたゆまぬ努力によりまして,社会教育の振興が図られてまいりました。
一方,社会情勢が大きく変化をいたしました。人口が減少,少子化の深刻化,地域コミュニティ,交流の希薄化,デジタルトランスフォーメーションなど,現在は将来の予測が困難な時代を迎えております。また,学校・社会の複雑化・困難化した課題の解決や,人生100年時代において,共生社会,こどもまんなか社会の実現に向けた対応も求められております。さらに,高校や大学等の進学率の高まりや,様々な学習機会の増加など,社会教育に求められる役割やニーズも変化してきております。
こうした中,令和5年6月に閣議決定をいたしました第4期教育振興基本計画では,2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成と,日本社会に根差したウェルビーイングの向上という総括的な基本方針を掲げております。この実現に向けまして,社会教育による学びを通じて,人々のつながりをつくり出し,協力し合える関係づくりの土壌を耕しておくことで,持続的な地域コミュニティの基盤を形成すること,社会教育の拠点として,社会教育施設の機能強化,社会教育人材の養成及び活躍促進などを通じた社会教育の充実,こういったものを図る必要があります。
また,本日の議題3で報告がありました,第12期生涯学習分科会の議論の整理では,障害者や外国人などの社会的包摂の観点も含めた社会教育の提供が十分に確保されることが不可欠であるとされています。また,社会教育の裾野が拡大する中,地域コミュニティの基盤を支えるために社会教育人材は重要な役割を担っており,その質的向上,量的拡大に向けた要請及び活躍促進の在り方について,今後の施策の方向性が示されております。
これらの方向性を土台として,社会の変化を踏まえつつ,施策のさらなる深化を図るべく,社会教育の新たな在り方を見直し,社会教育が果たすべき役割,担い手である人材,その活動,国・地方公共団体における推進方策等について,次の事項を中心に御審議をお願いしたいと考えております。
まず,第1に,社会教育人材を中核とした社会教育の振興方策についてです。第12期生涯学習分科会の議論の整理等において示された今後の方向性を実効性のあるものとするための具体的方策について,御検討をお願いいたします。
第2に,社会教育活動の推進方策についてです。第1の検討事項踏まえ,社会教育活動の充実方策や社会教育施設の機能強化方策などについて,御検討をお願いします。
第3に,第1及び第2の検討事項を踏まえ,我が国全体で社会教育を推進するための国,地方公共団体における社会教育の推進体制の在り方などについて,御検討をお願いします。
以上,諮問事項について御説明をさせていただきました。
詳細については,お手元の諮問文に添付されております,諮問理由を御参照いただきたいと思います。
委員の先生方におかれましては,何とぞよろしく御審議頂戴できますようお願い申し上げる次第です。以上です。
【荒瀬会長】 盛山大臣,ありがとうございました。
それでは,諮問を頂戴したいと思います。
(諮問文手交)
【荒瀬会長】 ありがとうございました。それでは,この諮問につきまして,御説明をお願いしたいと思います。望月局長,よろしいでしょうか。
【望月総合教育政策局長】 総合教育政策局長でございます。
先ほど大臣から諮問をさせていただきました。また,清原生涯学習分科会長の方からは,第12期の生涯学習分科会の審議のまとめにつきまして御説明いただきまして,その中でも,今回の諮問に至る背景,そして,これまでの議論を更に深掘りする具体策ということの審議の継続について御説明を頂いたところです。どうもありがとうございました。
今回の諮問について,時間が押していますので,少しだけ補足説明をさせていただきたいと思っております。今,大臣から諮問させていただきました,資料1-1の諮問文,そして諮問事項につきまして,改めて見ていただきたいと思いますけれども,諮問理由にございますとおり,今回,社会教育法の制定から,昭和24年から75年が経過する中で,大きな社会の変化として,少子高齢化の進行ということがございます。よく言われる,2040年には14歳までの年少人口が約10%に減少し,一方で,65歳以上のいわゆる老年人口というのが,総人口の3分の1以上になるという予測もございます。
また,地域コミュニティがいろいろな形で,各社会教育関係団体の方も関わっていただいて,地域での教育づくり,教育体制というのがだんだん進んでおりますけれども,一方で,デジタル化の進展の中で,リアルの体験が不足しがちであるとか,あるいは外国人が非常に多くなって,今後も多くなってくるという状況,例えば資料21ページとかにありますように,御承知のとおりかと思いますけれども,在留外国人数,これが多分,ますます増加していって,地域で多くの外国人が生活し,あるいは働いていくという社会の中で,いわゆる共生社会の実現,あるいは包摂社会というものを,具体的に教育振興基本計画にあるとおり実現をしていく必要があるということでございます。そのための社会教育というものについては,非常に大きな役割を果たすのでないかと考えているところでございます。
社会教育の状況を簡単に見ていただきますと,資料の15ページを見てみますと,学校はもちろん児童生徒を基礎的な知識,技能,あるいは生きる力を育んでいく大事な教育機関でございますけれども,これまで公民館や図書館や博物館を含め社会教育全体にかかる費用というのは学校教育の全体の教育費84.3%に対して,社会教育は9%という状況,あるいは平成6年から30年近くたった社会教育費の状況というのは,上の棒グラフで,全国的にはかなり減ってきているという状況もございます。令和3年現在の社会教育費は,約30年前の6割弱,学校教育費の全体の10%ほどになるという状況です。
16ページを見ていただきますと,社会教育関係職員について,例えば社会教育主事は法律上,必置になっておりますけれども,そこが満たされていないということで,例えば水色の折れ線の社会教育主事の数は,平成17年度から令和3年度に比べても,4,000人強から1,500人を割る状態になっており,赤の折れ線の社会教育委員の数も,減ってきております。そうした社会教育を取り巻いている専門性ある方々の数も,減少しているという状況でございます。
そこで,今回,第12期生涯学習分科会における議論の整理について,先ほど清原分科会長より御説明がございましたけれども,社会教育全体の在り方を検討する中において,社会教育人材を強化しながら地域コミュニティ全体としての教育体制をつくっていこうという観点から,さらに今回の諮問に至ったわけでございます。
諮問の1ページ目,1-1の下のところ,下3行に戻っていきますと,今回,審議をお願いしたい事項は具体的に3つでございます。1つは社会教育人材を中核とした社会教育の推進方策についてでございます。社会教育人材を中核とした目指すべき社会教育の在り方,そして,今ほど申し上げました社会教育主事,あるいは,令和2年から広く社会教育士というものを創設してございます。7,000人の方が,企業の方々なんかも資格を取って,活躍が広まりつつある状況を踏まえまして社会教育士の役割,位置づけの明確化,そして養成の在り方について御検討をお願いしたいと思っております。
そして,大きく2つ目でございますけれども,次のページ,第2に社会教育活動の推進方策でございます。近年,各地域で積極的に地域ぐるみで子供を育てる体制などが進んでいますけれども,地域の学校の連携・協働の更なる推進方策,あるいは社会教育法の制定当時から,地域の社会教育施設として,身近で重要な役割を果たしてきました公民館,図書館,博物館などにおける社会教育活動の推進方策について,そして,デジタル化などの進む中で,改めてリアルな体験などの重要性が再認識される中で,青少年教育施設等における青少年体験活動の推進方策,また,PTAや子ども会,NPO法人など,多くの社会教育関係団体,自治体の関係部署などが,いろいろ連携・協働していただいておりますけれども,地域コミュニティに関する首長部局の施策や多様な主体が担う活動との連携・振興方策,そして,先ほど来から出ています,共生社会の実現に向けた外国人や障害者等を含めた社会教育の推進方策,これが大きく2点目でございます。
第3に,それらを包括的に,第1,第2の検討事項を踏まえて,国,地方公共団体における社会教育推進体制の在り方についてということでございまして,社会情勢の変化を踏まえた社会教育に関する現行法令の在り方も含めた御検討をお願いしたいと考えてございます。
このほかにも,地域コミュニティの基盤を支える社会教育の在り方と推進方策に関しまして,必要な事項について御検討をお願いしたいと思ってございます。よろしくお願いいたします。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。
それでは,この件に関しまして,御意見,御質問ございましたらお願いいたします。ございませんか。よろしいですか。今日,諮問を頂いたということで,今後,生涯学習分科会が中心になって議論していただくことになります。既に大学分科会,初等中等教育分科会には大臣からの諮問がありまして,議論を重ねているところで,3つの分科会で議論をしていくということで,正に我が国における学びに関して,非常に広範に大きく中央教育審議会としても検討していくということになるのかなということを思っております。
ではこの件に関しまして,清原生涯学習分科会長からただ今,諮問を受けていただいて,御発言がございましたらお願いいたします。
【清原委員】 ありがとうございます。本日,盛山文部科学大臣から大変重要な諮問を頂きまして,生涯学習分科会長として,これまで分科会のメンバー,そして総合教育政策局の望月局長をはじめ,職員の皆様と議論してきたことが,諮問の形で私たちに改めて問題提起されたことを重く受け止めております。
少子長寿化が進み,デジタル化が進み,国際化が進み,地域社会の中の多様性がますます増しています。その中で懸命に生きようとしている国民,市民にとって,学校教育はもちろん重要ですが,地域に根差した社会教育も生涯学んでいく上で極めて重要です。その在り方について,社会教育法が制定されて75年の今年,諮問を頂きました。それをしっかりと受け止めて,生涯学習分科会のメンバーはもとより,中央教育審議会の委員の皆様のお力を大いに頂いて,よりよい答申に向けて誠心誠意努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。ほかにこの件に関してございませんでしょうか。
それでは,先ほど時間の関係で,挙手いただきました方に御発言を待っていただきました。改めまして,先ほどの議論をしておりました件に少し戻りたいと思うのですけれども,御発言ございましたらお願いいたします。では,吉田委員お願いいたします。
【吉田委員】 本日はありがとうございます。私は,博士人材活躍プランの件で一言,お話というか,お願いしたいのですけれども,実際問題として,昔から博士というものは医歯薬系というか,理工系と文系ですごく大きな壁があった気がします。特に文系の場合ですと,課程ドクターを取れるというのは本当に最近なったことであって,オーバードクターで残っている人がたくさんいて,優秀な人は逆にドクターを取るよりも就職した方が得であるというような形が多かったのではないかと思います。
法学部などでも,博士号を取っても,先の,例えば研究職という道が空いていない。それだったら司法に向かった方が早い。早いし,お金もうけにもなる,そういう状況というのが日本の場合は繰り返されていたと思うのです。
うちも,おかげさまで複数の博士を取っている教員を置いているのですけれども,それは,私としては,その専門性を生かしてあげたい。ただ,それもどちらかというと,理数系の人に関しては,大学に残れなかったのでうちに来て教員になったというのが,高校以下の教員になったという人の実態だと思います。
ただ,その気持ちが,逆に博士というプライドをしっかり持って子供たちに教育できるような環境づくりをしてあげることは何かといったときに,我々ができることは,若干の給与面での待遇を変えること,それから,もう一つは,私はできる限り論文を書けということを言っています。そして,学会等があるなら出てもいいということも言っています。それから,文系の教授に関しては,教授というか教員に関しては,そういう機会が本当に少ない。大学がもう少し,失礼ですけれど,大学の教授方の中でもドクターを持っていない先生が多かったり,それから博士という,ドクターという資格よりもキャリアの方が優先されて,海外でドクターを取ってきた先生だって,すぐに教授にほとんどしてくれない。何年かの准教授なり,何なりのキャリアがあって初めてなる。若しくは,マスコミとか,いろいろなところで,企業で活躍した人のキャリアを持って教授になれてしまうような今の大学の体系になっている以上,博士を生むということに対してよりも,生むとかえって自分たちの立場が脅威になってしまう部分もあるところもあったのではないかと。
これ,大学に対しては本当,御無礼な言い方なのですけれど,もう少し私としては,学生のことを考えても,それから博士というものの重要性,海外に行くと,ミスターアンドミズとともに,ドクターという冠詞があるわけです。それが日本ではあまり重要視されていない。その社会を,盛山先生が法学と商学,両方ドクターをお持ちで,さらに国会議員の先生方からも一部,そういう声が上がったということで,今回,私ここにスポットライトを当てていただいたというのは,これから勉強していく学生たちにとってはすごく励みになることだと思うし,課程ドクターを進めるような環境,そしてその間の生活の保障というものを一転してあげてほしいなと。
それと,この中で文科省が率先してやろうとしていらっしゃる,仕事の中で働きながら修士,博士の学位を取得する文科省職員への支援制度のさらなる活用促進というのがありましたけれど,外国は本当にそうですよね。いろいろなところに勤めて,マスターを取ってキャリアアップし,ドクターを取ってキャリアアップし,日本は生涯勤務という感覚があるものですから,キャリアアップの必要性がないみたいな部分があった。ただ,そこに,文科省で,この忙しい中で働きながら,ドクターを取ったら局長になるのが3年早いよとか言えるようなことがなれたら,もっと張り切ってくれるのかなというような気もしたものですから,あえて発言させていただきました。ありがとうございます。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。大変申し訳ありません。時間になっているのですけれど,先ほど村田委員から御質問のありましたことにつきまして,内田由紀子委員からお答えがあるということですので,そこまでを今日の日程としたいと思います。内田由紀子委員,お願いいたします。
【内田(由)委員】 ありがとうございます。OECDの調査と,今回の学力調査のウェルビーイングの測定の違いについて御質問いただいたかと思います。
OECDのPISAの調査は多岐にわたるものがありますが,基本的なウェルビーイングの指標としては,生活満足度,どのぐらい生活に満足しているかというものであるとか,あるいは自己効力感,人生に意味や目的があると考える程度となっております。これらは実は大人でも日本は他の国と比べると低い結果になります。人生の意義とか生活満足度というものではなくて,日本の子供の状況に即したような聞き方というものがやはり重要だろうということで,今回は学校生活の楽しさであるとか,日々の楽しいという気持ちを感じているかどうかということをこの学力調査では採用されているかと思います。
【荒瀬会長】 ありがとうございました。ひょっとしたら,まだ内田先生にはお尋ねになりたい方もいらっしゃるかもしれません。あるいは,また御意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんので,そういう方は事務局にメールで頂戴するということでよろしくお願いいたします。
少しオーバーしてしまいましたが,本日はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。大臣ありがとうございました。副大臣ありがとうございました。
政策審議第一係
電話番号:内線:3458