令和7年3月26日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省 ※対面・WEB会議の併用(傍聴はYouTube Live上のみ)
(東京都千代田区霞が関3-2-2)
【貞広座長】 では、定刻となりましたので、ただいまより、第2回「令和の日本型学校教育」を推進する学校の適正規模・適正配置の在り方に関する調査研究協力者会議を開催いたします。本日も御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
まず、本日の会議開催方式と資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【渡邉教育制度改革室長】 本会議は、Zoomと対面を組み合わせたハイブリッド形式にて開催をさせていただきます。本日は全員対面で御参加をいただいておりますが、報道関係者と一般の方向けに本会議の模様をYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
会議を円滑に行う観点から、委員の皆様におかれましては、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくようお願いをいたします。カメラにつきましては、御発言時以外も含めて、会議中はオンにしていただきますようにお願いをいたします。
次に、資料の確認をさせていただきます。本日の資料は、議事次第にございますとおり、資料1から3に加えまして、参考資料が1つとなっております。参考資料は、前回申し上げましたとおり、多くの自治体の皆様から学校統廃合に関しての問合せを当課のほうにいただいていることも踏まえまして、従前、文部科学省において作成している手引のうち、統廃合に関する内容について絞った内容をパンフレットとしてまとめたものを作成しております。それを御参考に配付させていただいております。その他、委員のお手元に、猿田委員及び加藤委員から御供与いただきましたパンフレット等の紙媒体の資料を配付させていただいております。
以上でございます。
【貞広座長】 ありがとうございました。それでは、早速でございますが、本日の議題に入ります。本日の議題は1から3までございまして、議題3の御発表まで終了した後に質疑応答の時間を設けることといたします。
では、まず議題1といたしまして、加藤委員から御発表いただきます。加藤委員、よろしくお願いいたします。
【加藤委員】 加藤でございます。よろしくお願いいたします。私のほうからは、「地方における適正規模・適正配置の課題を中心に」という、こういう題名を立てさせていただきました。ただ、地方といっても、かなりバリエーションが多い時代ですので、私の茨城大学のある茨城県ですとか、お隣の千葉県ですとか、そういったところのタイプの地方かなというのが、後からお話しさせていただく中でお分かりいただけるのではないかなと思います。スライドに沿って進めさせていただきます。
「はじめに」ということでちょっと唐突に、これは山形県天童市の施設なんですけれども、旧天童市立田麦野小学校の後の施設ということで、今でも地域で様々な活動をされているというのを載せさせていただきました。なぜこれを載せさせていただいたかというと、私が一番最初に関わった適正配置に関する仕事がこの田麦野小学校の閉校、統合の座長を務めさせていただいたというのが一番最初の仕事で、もうかれこれ20年ぐらいたつものです。そのときに思いましたのは、地域の人たちの思いが学校ってすごく詰まっていて、私なんかは会議をやって、それで終わりみたいな感じなんですけれども、その後、地域を支えて、あるいはこういう活動を続けてということのほうが本当に大変だし、すごいことだなというのを改めて感じた次第です。この適正配置の課題というのは非常に重要だなと思います。
当然、小規模校の課題ということなんですけれども、私がいろいろと研究や後からお話しする検討委員会の関わりの中で思っていること、いろいろなことがたくさんあるんですけれども、小規模校、非常に頑張っていらっしゃるんだけれども、やっぱりトータルの質としてはどうなのかなというところが、頑張っているのだけれども、一方でほかの規模の学校との比較のようなところで、頑張っているがゆえにちょっと厳しい目を当てにくいというのがあるのかなと思います。実際、人事配置計画が非常に難しかったり、実際に配置されるトータルの職員の数も少ないと。1人当たりの先生方の業務も、小さい規模だと少ないようなイメージあるんですけれども、そんなことなくてすごく多くて、先生方の献身と、子供たち自身ももちろん頑張りますし、そういう小規模校を支えるという保護者・住民の方もかなり献身的に支えていくという。ただ、それでいいのかなというところ、なかなか難しい問題でありますが、考えていく必要があるかなと思います。
こちらは茨城県の基準、考え方ということで出させていただいております。読ませていただきますと、茨城県における小中学校の適正規模の基準ということで、小学校においてはクラス替えが可能である各学年2学級以上となる12学級以上が望ましい。中学校においては、クラス替えが可能で全ての教科の担任が配置できる9学級以上が望ましいということで、かなり前からこういう基準を設定しています。いわゆる標準規模の規定とは違うわけですけれども、実質的にこれぐらいの機能が果たされていればいいんじゃないかというようなところの大まかな考え方、こういう形で進めているということだと思いますし、ある市の適正配置の基本方針では、ここに中学校だと部活の選択肢が増えることなんていうのを加えている例もございます。
国の手引のほうを確認させていただきますと、小学校で言うと7学級から8学級のところは全学年ではクラス替えができない規模。これぐらいの規模だと将来的に複式学級が発生する可能性が高ければというようなところで検討していく必要があるというような書かれ方をしております。
それから、9学級から11学級、つまり、12学級を下回るところですね。そうすると、半分以上の学年でクラス替えができる規模というようなことで、七、八学級ほど危機的な、危機感を覚える必要はないけれども、将来的な人口予測でというような書き方です。後にも確認させていただくんですけれども、地方の県の学校を見るとこの規模が非常に多いです。ですので、この規模の学校をどうするかとか、この規模の学校の教育の質を、私としてはもっと可能性がすごくあるので上げていきたいと前々から思っているんですけれども、ただ、ここ数年すごく思うのは、減少のスピードが非常に速くて、七、八学級でしばらく様子を見るとか、9学級、11学級でしばらく見るとかと言っていられないぐらい速いんです。ですので、10年、15年、この辺りで見ましょうなんていうような、そういう話合いはちょっと現実的ではなくて、ただ、国勢調査の実績ですとか、社人研、国立社会保障・人口問題研究所の推計とか、それから、各市町村が大体こういう人口の推移で目標なんて立てているんですけれども、幾つかのグラフを並べて、それでどうなっていくんだって議論するんですけど、どうしてももうちょっと増えるんじゃないかとか、そういう希望的観測、実際には社人研の推計値どおりに減っていくか、あるいはそれを上回るようなスピードを計算していないと、ということなんです。
ですので、私たちが考えなくちゃいけない、地域の方にも私の立場からすると説明せざるを得ないのは、やるならやるで本当にスピード感を持たないと、今学校に通う子供たちの不利益になりかねないということを言わざるを得ないというようなところがありますし、そうでなければ、前回、貞広先生から御発表があったような、小規模を魅力化していくというようなことがやはり課題なんじゃないかなと思います。
前回、事務局のほうから、学級規模別の学校の数の平均的な全国の数値の割合ということで出てきたと思うんですが、これを学校基本調査から各県に当てはめて棒グラフ化していくと、こんな感じになるんです。私の茨城県とか、貞広先生のところの千葉県とかというと、今申し上げたところの12学級以下で6学級、この間の赤いところの部分がこれだけの数あって、ただ、一般的には大体学校ってこれぐらいの規模だよねと認識されているのがオレンジ色の円で囲ったところなんです。ですので、普通、私たちがその県で学校というと、このオレンジ色の辺りをイメージしていて、あまり赤のところの存在を中心に考えていないというか、考えられない感じにやっぱなりがちになってしまうと思います。
今日、御出席されている猿田先生ですとか、牧野先生の秋田県や長野県、それから私、冒頭お話しさせていただいた山形大学にいたということもあるので山形県ということでちょっと出させていただきました。そうすると、この赤いところの秋田、山形なんかだとかなりの数を増やすので、この辺りを中心に小学校の在り方というのを考えていくような施策なり、教員の質向上なんかを考えていけるような県の合意のようなところですね、つくりやすいのかなと思います。長野県さんの場合はもうちょっと多い学校規模があるというようなところになります。
これは東京都や大阪市といった大都市圏で見ますと、いわゆる標準規模というところの12、18のところで多くなっているのが確認できると思います。12、18のところで多くなっていて、更に大都市圏だともっと規模の大きいところの学校が多いというのが課題に見えてくるので、先ほどの地方の認識と学校のイメージというんですかね、大分異なってくるというふうに言えると思います。大阪なんかだとこんな感じになっています。
同じく政令市で人口密度の高いところというようなところで選んでつくってまいりましたが、横浜なんか、あるいは川崎なんかを見ていただくと、標準規模が逆に小さい部類になって、そうじゃない大きな規模というところで、適正配置や学校規模を考える考え方なんかが全く、先ほどお話ししたような茨城県、千葉県、あるいは東北地方といったところと考え方が大分違うので、国全体のもちろん考え方というのもありますけれども、地域によって違うというようなところで、地域ごとのことを考えていこうというメッセージをもっと強く出していく必要があるんじゃないかなと私自身は思っております。
小規模の課題というようなことで書かせていただきました。意外と小規模はやりやすいんじゃないかと思われているんですけれども、小規模は小規模なりに難しいようなところということで前回、貞広先生の御発表にもありました。その辺りのことをちょっと書かせていただきました。
2つ目のところを読ませていただきますと、保護者から見て2学級では担任が比較されやすいが、3学級になると比較する目が弱くなるなんて、そんなこと大したことじゃないじゃないかと思われるかもしれないんですけど、学校ってこういうことの連続なんですよね。ですので、小規模は小規模なりにいろんな大変なことがやっぱりあってというようなことだと思いますし、一番下のところは、学校運営というよりも教育活動のほうが大変になっていて、全体の経営というよりは、各学級の経営とか授業活動みたいなところに重きが置かれていくというような説明になっております。
じゃあ、今どういうようなことになっているのかというと、校長先生方に前に調査させていただいたようなところだと、もちろん標準規模を理想と考えている校長先生もそれなりに多いんですけれども、意外と小さい規模の学校が増えてきたというような影響で、もう十数年たった前の調査ですけれども、小学校で言うと、(学年)2学級規模(つまり12学級規模)ぐらいが理想に思っている先生が意外と多くて、それは校長先生の目から見ると、全児童が見渡しやすいようなところでやりやすいというようなお話をされていたかと記憶しますが、逆に言うと、ミドルのリーダーが育ちにくいような環境というのを持っていまして、私も今、教職大学院というのをさせていただいていますけれども、小さい規模の学校だと、よほどしっかりミドルリーダー育成というのをやっていかないと、大きい規模だとそれなりにミドルリーダーがやらないと動かないようなところもあるのでまた違うんですけれども、そういったようなところの小規模化、小規模のところでも、そこの先生が大規模のところに行くようなこともあるので、そこでじゃあどういうふうに、子供たちの教育もあるんですけれども、先生方の力をつけていくということも課題です。先ほどお話ししたように、人口減少が進む地域ではこの規模が長く継続しないんですね。思った以上に早く減っていくという、その辺の見定めみたいなところも重要かなと思っております。
私自身は、適正規模・適正配置に係る自治体の検討委員会を、茨城県中心ですけれども担当させていただいてきて、今まで六、七地区ぐらい関わらせていただきました。今日はそのどこの地区、どこの地域、どこの自治体というわけではなく、少し一般的にこういうことが言えるんじゃないかというようなところでお話をさせていただきます。
担当者の方、私が引き受けていなくても電話で御連絡なんか、御相談なんかを結構いただくのが、どのように進めていくのかというようなところで、手引には非常に丁寧に書かれているんですけれども、すごく悩まれているお話をお聞きして、何が課題なのかなと聞くと、時間軸とかスケジューリングとか、タイムスパンのようなところがなかなかうまく作るのが難しくって、それが大体イメージできると担当者の方も進んでいけるんですけれども、なかなか統廃合とか適正配置の会議というのが役所内に常にそういう会議があるわけじゃなく、また類似の会議というんですかね、同じように進めればいいみたいな会議もなかったりするので、この辺りがやはり課題なのかなと思っております。
私が感じるのは、これはどこの関わった自治体もそうなんですが、客観的な基準を求める傾向が非常に強いと思います。それがあるから、じゃあそうしようというふうにどんどんどんどん進められるから、あるいは、それに従ってやればいいじゃないかというような考えの方、それは担当者だけじゃなくて、住民の方でもそういうふうな考え方を持っていらっしゃる方も少なくないというようなことで、ただ、手引をすごく読んで一緒に考えていって、設置者、我々あるいは住民で考えていいんだというふうな理解を持っていただくとすごく安心するんですね、住民の方。ところが、それは分かったけど、じゃあどうしようということで、結局、基準をまた探し始めるというようなことを結構繰り返すというようなことなので、この辺りが設置者の判断は判断なんですけれども、難しいところだなと思っております。
今、子供たち、あるいは子育てというのが非常に大きな課題になっていて、いろんなところの議論ですとか進んでいるかと思うんですけれども、この検討委員会で子育て世代の意見を吸い上げるのが難しかったなというのが私の意見です。これはどんなに年配の方や、校長先生や園長先生が「いいんですよ。どうぞ御発言ください」と言っても、なかなか子育てされている若いお母さんとかお父さん方が、最近の言葉で言うと心理的安全性というんですかね、それがなかなか確保が難しいと感じますが、本当に子育て世代にとっては切実で、例えば家を建てようというようなご家庭の計画と学校の適正配置を考えるということが同じタイミングのような課題みたいな感じになっているような世代でもありますので、そういう人たちの意見というのが、なかなかそういうところでお話ししにくいというようなところをうまく吸い上げてあげるというのを課題というふうにこの間思っていますし、もちろん全ての世代の意見を尊重しなくてはいけないとは思うんですが、そういうところを考えていってあげて、これからますます少子化ということなので、そこが重要かな。端的に言えば、若い世代の方がもっと関われるようなものというのが必要なのかなと思っております。
これはある検討会のほうで相談の資料ということで、本当に内々のもののところからちょっと概要を引っこ抜いて作ったものなんですけれども、どのレベルで話していって、あるいは進めていって合意を得たらいいのかというようなことの、もちろん設置者の判断、あるいは教育長さんの考え、住民の皆さんの考えなんですけれども、この辺りがやっぱり難しい。あまり深くいくと混乱したり対立しちゃうんじゃないかとか、あるいは時間がかかり過ぎちゃうんじゃないかというふうな意見にもなってしまいますし、浅過ぎると、ちゃんとみんなの意見聞いてないんじゃないかとか、ちょっと早過ぎるんじゃないか、拙速なんじゃないかというような、この辺りも先ほどのスケジューリングの話とつながるんですけれども、悩みというか、難しい。これでやらなきゃいけないという一つの解があるわけじゃなく、みんなで最適解を探していくというようなところ、前回、丹間先生がお話しされたような学習していくというようなところは、中身としてはこういったものもあるのかなと思います。
今、施設の老朽化というのが学校も非常に課題になっていて、これはある自治体のところからそっくりそのまま持ってきたんですけれども、鉄筋コンクリートの建物でとか、鉄骨の建物でとかといって、もちろん東日本大震災以降、耐震化ということで茨城県でも完了はしているんですけれども、ただ、建物そのものの古さというんですかね、スペースの間取りの作り方とか、あるいは修繕の箇所が増えてしまうというようなことで、じゃあ、完全に建て直そうかとか、そういうような悩みなんかも出てきて、もちろん子供の教育が一番重要ではあるわけですが、こういう施設の維持とか、あるいはリニューアルみたいなことのタイミングみたいなところも関わってくるというのが現実には出てくるので、この辺のところの兼ね合いをどう考えたらいいのか。こうなってくると、住民の方々にどれだけ自治体のほうが情報提供しているかとかというようなところもちょっと絡んでくるので、ますます、一つの判断にはなるんですけれども、判断を難しくするというようなことの要因でもあります。
これはもう適正配置の計画が立って、終わったところの例なんですけれども、これは小美玉市というところで私が途中から引き継ぐ形でした。これは何で出させていただいたかというと、大体どれぐらいの年数やっているのかみたいな感じの例をちょっと出させていただきました。これはもちろん、この後とかこの前とかにもあるわけですが、大体一つの検討会で、この例だと5年ぐらいかかっております。小美玉市というのは、小川町、美野里町、玉里村というようなところで、もとは3つの町村が合併してできた市になります。この市ですと、学校の適正配置というと、もとの合併する前の町村がどうだったかという話とコミュニティーというのが関わってくるので、例えば、そういう合併でできた市町村ですと、そういうようなところで合併前の話というようなところがどうだったのかというのがかなり議論される印象があります。
ちなみに、ちょっと小さくて見にくいかもしれませんけれども、小川南中学校区というところがあるんですけれども、ここは小学校を一つにして、中学校に小学校をつくりました。そして中学校はその下のちょっと小さくて見えにくいんですけれども、旧小川高校ということで、廃校になった高校の建物施設というところが中学校になったというような、そういう施設の利用の仕方をしている、私の関わったところではちょっと珍しい例でございました。
こちらは、私が最初から最後まで計画の策定に関わった日立市の例です。茨城県で3番目かに大きい市で、県の北部では一番大きい市なんですけれども、それまで統廃合、適正配置の計画が進んでいなかったというようなこともあって、かなり大々的に計画をやっていったという事例ですが、ちょうど東日本大震災以降の津波の危険区域みたいなところの話も入って、ですので、先ほどの建物の老朽化ということに加えて、沿岸地域ですと津波の危険とか、そういうことも考えてというような計画ですね。こちらは市町村合併というようなところというよりは、割と昔から大きな規模の市ということで、北部のほうは合併した時期があるんですけれども、計画そのものはエリアごとに分けて、エリアごとに進めていきましょう。エリアごとに進めていく上でこういう方針で行きましょうというところまで私が関わって、あとはエリアごとのある程度の方針の中で今度エリアごとに進めていくというような形の例です。大きい市ですとこういうパターンがあるのかなと。先ほどの小美玉市のパターンとちょっと異なるかなということで、大きい市だとこういうようなエリアごとのというふうに何年かに分けて進めていくということだと思います。
私自身の感想みたいなところになるんですけれども、やはり地方の学校に多い規模の分布と都市の学校に多い分布をそれぞれ見ていただきましたが、本当に特徴的だと思うんです。2つ目のところですけれども、ただ、確認していただいたように、統廃合のタイミングというんですかね、適正配置のタイミングを見計らっているのかなというか、待たれているのかなみたいな感じになっているようなところがやっぱりあって、そうすると人的、物的ないろんなリソースの投資が控えられちゃっているのかなと思わざるを得ないようなところもあって、そういうところはむしろちょっと消極的な感じになりかねない。もちろん当事者の人たちはすごく一生懸命やるんですけれども、そうじゃない学校の規模との比較を考えると、もっとそういう規模のところを充実させていくというようなところがあるんじゃないかなと思いますし、私の専門になりますけれども、そういう規模に応じた戦略というのがますます必要になっていくんじゃないかなと思います。
今日、机上に御用意させていただいた資料は、そういう規模ごとに学校経営の中身は違いますよというのを、前回の貞広先生の御発表では統計的なデータで出ていたと思うんですけれども、これも貞広先生と御一緒させて研究でまとめて、インタビューですね、こんな感じでまとめたというようなところで、少し御参考にしていただければということで出させていただきました。
ちょっと長くなってしまいまして、申し訳ありません。私からは以上でございます。
【貞広座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして御発表2つ目、議題2に移りたいと思います。猿田委員から御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
【猿田委員】 よろしくお願いします。五城目町教育委員会、猿田です。私の発表は、ごめんなさい、その前に私、五城目町教育委員会の職員なんですけれども、いわゆる普通の行政事務の職員でして、教員でもないし、生涯学習課に所属しておりますが、社会教育主事の資格もないです。いわゆる地方公務員の仕事をしております。教育委員会は8年目になりまして、最初の5年は学校教育課というところで主に学校整備を担当しました。生涯学習課に異動となりまして、社会とかをつなぐ部分を仕事にしていて、今年で丸々3年目になります。
秋田県五城目町というところを簡単に説明しますと、人口約8,000人ぐらい。面積が220平方キロメートル。これイメージしづらいんですけど、大体山手線の内側の面積が60平方キロメートルと言われていますので、3つか4つ分ぐらいのまちです。なんだけど、人口は8,000人ぐらいしかいないと。小中学校はそれぞれ1校ずつありまして、児童生徒で言うと約350人。高齢化率は50%ぐらい。過去は、最大で多いときには小学校が8校ありましたが、現在は1校になっています。
こういった説明って数字で書くとこういう感じなんですけれども、少し色をつけた説明をしたいなと思っておりますが、例えば、本日この会議、霞が関で行われておりますけれども、千代田区が姉妹都市です。何といいますか、経緯としては、江戸時代に火災があったらしいんですけど、そのときに五城目産の木材で江戸城の上水を整備するときに五城目産の木を使ったという経緯があって、千代田区と姉妹都市になっております。というと、この地図からは分からないんですけど、何か木があるんだなとか、山があるんだなみたいな話はちょっと想像つきます。
もう少し色をつけたくて、左上の写真が、五城目町から日本海側を望んだ風景になっております。右の奥に雲がかかっている方向が男鹿半島という部分でして、手前に見える緑地帯が大潟村といって、過去、日本で2番目に大きい湖だったところを干拓したところが見えます。こうやって豊かな田園風景と湖や海の幸が何となく取れるところじゃないかなというのがお分かりいただけるかと思います。右の写真は反対の方向、秋田県の内陸のほうを見た写真になっております。深い山々がお分かりいただけるかなと思いますし、雪深いというのもお分かりいただけるかと思います。この山の奥のほうは北秋田市といって、またぎの文化、狩猟の文化だったり、あとは五城目町でもキノコや山菜を取ったりという文化が今でも根づいております。
五城目町は秋田市から青森に向かう最短経路に位置しておりまして、古くから交通の要所として栄えておりまして、下の写真が530年以上続くと言われる朝市の写真です。こうやって人と物が昔から行き交うような場所だったんだなということがお分かりいただけるかと思います。当然、現在では人口減少とか、朝市もこれイベントのときの写真で、こんなににぎわっているか、ふだんからにぎわっているかと言われるとそうではないんですけれども、いわゆる地方の抱えている課題、少子化だったり、人口減少だったり、産業の問題なんかは、ほぼ同じ課題を抱えているのかなと思います。
そんな中、10年ぐらい前に廃校となった馬場目小学校を地域おこし協力隊が利用してくれまして、馬場目小学校という小学校があったんですけれども、BABAME BASEという、インキュベーションセンターと貸しオフィスが入っています。古くから朝市が人を迎え入れてきたと言いましたけれども、現在でもこうやって移住してくる人だったり、研究者の方だったり、起業家の方々だったり、若い方々の入り口としてここが機能していて、今でも外からの者が町に溶け込む最初の入り口のような機能を持っています。ここまでが大体、町の説明です。
今日私がお話しさせていただくことは3つありまして、文科省でこの類いのお話をさせていただくのは3回目となってしまいまして、何か申し訳ないところもありつつ、どれもボリュームが多いというか、いろんな側面を持った事業でして、本日の会議用のお話をさせていただきたいと思います。
1つは、学校改築に関する住民の意見聴取、「スクールトーク」という取組を説明させていただきます。もう一つが、「みんなの学校」という学校開放型の社会教育講座群について説明させていただきます。3つ目、赤い部分が「教育留学」という説明をさせていただきます。前回の会議で丹間先生から「社会教育と学校」というトピックをいただいたんですけれども、少しそれに関連するような話かなと思っております。加藤先生からさっき、スクールトークは改築に関する話合いなんですけれども、住民の意見聴取とか合意形成の話は、課題とか問題はすごく共通したものを感じております。
スクールトークというのは、学校の改築に関する意見聴取でしたが、平成29年頃から4年間改築事業にかかったんですけれども、この意見聴取、スクールトークという業務は、特徴的なのは全町民を参加可能な形にしたということです。合意形成の場として4年間で10回開催しました。よくPTAとか検討委員会みたいな形を取ることが多いと思うんですけれども、限定的な参加ではなくて、合意形成の幅というものを少し広くした取組でした。この辺りは統廃合のときなんかも同じだと思うんですけれども、参加の条件をどう考えるかというのはすごく大きい問題だと思います。それによって目指すコンセンサスの幅が変わってくるというか、学校をめぐる意見交換、改築をめぐる意見交換というのは様々あるんですけれども、いつしか回を重ねていくうちに、住民が改築というよりは学校についてどう思うかというようなことが話題としては大きくなってくるんですね。学校とは何かとか、地域にとって学校とは何かとか、子供にどう育ってほしいかとか、町がこの後どうなってほしいかとかという話も広く話し合われていきました。
こちらがスクールトークから生まれた新しい学校の内部の写真です。「“越える”学校」と書いていますけれども、こちらもスクールトークの中で住民がコンセプトとしてこういったイメージでつくろうということを決めまして、その後、「越える」をテーマにして学校がつくられていきます。
右の写真なんかは、昇降口付近の写真なんですけれども、左に公園っぽい区域があります。これは実はもう学校の敷地じゃなくて、社会教育施設、都市公園区域なんです。境界を行き来しながら学べるように「越える」というのが最初に選ばれた理由です。
教室の中なんかも、左上の写真は1年生の写真ですけれども、教室に限らず広く空間を使いながらいろんな学びをしているのがお分かりいただけるかと思います。真ん中、ちょっと小さい写真ですけど、こちらは職員です。職員同士が自由に話し合いながら仕事をしているという様子が御覧いただけるかと思います。右は、これは6年生の英語の時間ですね。一つの授業の様子です。たまたま行った日にこういう様子だったので写真を撮りましたけれども、左側ではタブレットを使いながら何かやっている。右側では、何かグループワークをやっているし、ホワイトボードの奥では、従来の学校のスタイルというか、対面型の学びが行われているのがお分かりいただけるかと思います。
この面白いというか、スクールトークの結果なんですけれども、学校の用地が、右側が学校なんですけれども、都市公園の区画を用途変更しまして、ほかの公共施設群と隣接している。複合化とは言わないですけれども、共用化できるような場所に学校を建てております。学校の左側に位置しているのが大きい体育館。白い屋根しか見えないんですけど、これは温水プールになっています。町の温水プールになっています。左側にちょっと4階建てぐらいの建物があるんですけど、こちらは中央公民館。町の公民館が一緒になっている。芝生広場なんかもあって、グラウンドも、元からある住民の運動広場をグラウンドとして共用しているような状態です。駐車場なんかも最初からたくさんあって非常に使いやすい。もうちょっと実はこの手前にも公園があって、いろんな学びがこの場所でできるようになっています。
次に紹介しますのは、みんなの学校という事業なんですけれども、一言で言うと、学校開放を利用した社会教育講座です。会場の皆さんには小さいパンフレットを配ってあるんですけれども、公式ホームページもございまして中身を見ることができます。こちらはスクールトークの話合いの中、地域が参加できるような学校がいいなと。それって、確かにコミュニティースクールとかってあるんですけれども、それよりももうちょっと気軽な形でみんな学校に行きたいんですね。でも、それってどういうことなんだろうというところから試験的に始めたような事業ではありますけれども、学校開放した社会教育講座群が始まっております。
いろんな開催パターンがあるんですけれども、特徴的なのが、学校連携講座と言っているんですけれども、学校の授業を社会教育講座として提供している。年間で、みんなの学校自体は30講座あるんですけれども、その3分の1、10講座ぐらいが今、学校の授業を地域の人にも開放していると。前回の会議で丹間委員のほうから社会教育の話題が出ましたけれども、この事業は社会教育を学校の上にぽんと載っけているようなイメージだと思います。学校教育から見ると、きっかけを作るという効果が一番大きいのかなとは思っております。社会教育としては、小さくURLを書いているんですけれども、昨年の文科省の教育委員会月報にこういう取組ですというのを詳しく寄稿してありますので、興味のある方は御覧いただければと思います。
少し写真でみんなの学校を紹介したいと思います。上の段は休日開催の講座なんですけれども、カルチャースクールのようなパターンですね。左上がゴスペル講座か何かです。右側がフラワーアレンジメントの講座なんですけれども、都会だとこの手の講座というのは困らないと思うんですけれども、地方の場合、選択肢というか、きっかけが少ないということもありまして、そういったものを解消するという役割もあります。
下の2枚が学校連携のパターンです。左は4年生の授業を地域の人と一緒に学んだんですけれども、防災マップづくりの授業なんですけれども、地域の防災ボランティアが一緒に参加してくれて、地域の人と一緒になって地域の防災を考えるという講座です。
右側は朝市の講座なんですけれども、さっき冒頭で五城目町は朝市が有名だという話をしましたが、その朝市の歴史だったり、出店方法だったりを講座化して教えてくれている。これも大人が一緒に入っていまして、上のほうに大人がいるんですけれども、子供が見る朝市と大人が感じている朝市というのはまたちょっと違うので、そういったものが同じ空間で学びが起きているというのが特徴です。これは担任の先生に負担をあまりかけたくないので、生涯学習課と校長先生で講座化していくというか、教科書、指導要領のこういうところだったら、これだったら授業できるんじゃないみたいな話を少し詰めながら準備しています。
次の写真ですが、左上なんかは結構特徴的なシーンなんですけれども、最高齢92歳ぐらいの参加者と女子大生が意見交換をしていたりします。右側は学校でできないキャリア教育みたいなのをやりたいなということで、最初は小学生がなりたいものランキングでも最近上位に入っているユーチューバーになろうとか、さすがに学校ではやりづらいので、生涯学習課でもやりづらいので、映像作家の方を連れてきて、映像を作るとはとか、最近では携帯で簡単に動画が撮れるので、きれいな動画の作り方みたいな意味もあるし、趣味の講座の意味もあるし、そういったキャリア教育を少しフォローするような、これは夜に開催した講座ですね。保護者と子供が参加したりしてくれています。
左下の写真は、GIGAスクールって何だろうと保護者は気になるだろうなと思って、いわゆる学校教育をそのまま社会教育にして提供した講座です。学校教育を紹介するのを社会教育講座にしたというかな。思ったよりも、保護者以外に地域の高齢者の方の参加が多くて、GIGAスクールって大人も気になっているんですね。
右下の方は、こちらAIUの、秋田にあります国際教養大学の工藤尚吾さんという先生なんですけれども、サステイナビリティ学の先生で、持続可能性、いわゆる社会教育で言うと、現代的課題の講座、現代的課題へのアプローチみたいなところを、学校を会場にして夜に社会教育としてやっている。こうすることによって、いろんな学びが学校の周りにはあるんだよということを教員も感じられるのかなと思っています。学校開放を利用した社会教育講座と言いましたけれども、イメージとすると、気軽な参観日のように子供の学びと大人の学びが並行して実施されている。その時々で学校教育と社会教育を行き来しているような事業になっています。
続いて紹介するのは、教育留学という制度なんですけれども、すごく簡単に言うと、住民票が五城目町にない子供でも五城目町の小中学校に通えるという制度です。厳密には、秋田県の事業を委託している形で実施しています。秋田県の事業としては、首都圏との夏休みの開始時期の差を利用した夏休みの山村体験とか、そういうのがメインだったんですけれども、この五城目町の場合は、ふだんの学校生活をそのまま提供しているという事業です。区域外就学制度を活用した二地域居住促進と言っていますけれども、ちょっと前までは関係人口創出事業と言っていたんですけれども、国交省とかで二地域居住と言い始めたので、流れに乗って二地域居住促進と言っています。1週間から1か月の間で短期で五城目町に滞在してもらいながら学んでもらっているんですけれども、教育留学というと、どうしても利用する留学生のための事業のように思われがちなんですけれども、そうではなくて、いる子供にとっても違う地域のことを学ぶ機会になっていて、違う学校のルールだったり、勉強の仕方を感じる機会になっています。
次のスライドでは、写真では、何となく学校だけじゃなくて町全体を知ってもらう、体験しながら過ごしてもらえるというのが分かると思います。左の下に小さい写真が2枚あるんですけれども、この教育留学っていいよねということで、町の中にホテルではない宿泊する場所が民間で需要があるんじゃないかということでつくってくれて、1棟貸しのような宿が2軒できたりして、この事業は今年で3年目になるんですけど、いろんな変化が町の中にも生まれてきています。移住政策の一環と思われるんですけれども、それだけではなくて、いる子供やいる大人にとってもいい刺激になっているんじゃないかなと思います。
こちらは今年の1月に長野県のイベントでスクールトークをはじめ、五城目町の取組を紹介したときに、グラフィックレコードというんですかね、イラストでまとめてくれたんですけれども、すごく分かりやすくて、使ってもいいですかと言ったら、使ってもいいですと言われたので遠慮なく使わせてもらっていますけれども、信州学び円卓会議という会議があるということで事例発表させていただいたんですけれども、こういった集まりなんかもすごく、教育委員会の立場だととても効果的だなと感じました。私たち小規模自治体の職員だと、どうしても教育に専門的な知識のない状態から始まることが多いんですけれども、先進事例や課題を共有する場があるというのはすごく貴重なんじゃないかなと思って会議全体を聞いておりました。
このほか、五城目町の取組として簡単に項目だけ説明したいと思います。変わったところでいきますと、「五城目で世界一周」という事業が、これは小学校で展開しているんですけれども、国際教養大学、AIUの学生さんに来てもらいながら、各地出身の国と町を比べていく事業なんです。1年間の事業なんですけれども、そうすることによって町のよさを子供たちがもう一回感じるようになるというか、そういった機会になっています。
あと、変わったところでは、「JICA連携」と書いていますけれども、こういった五城目町の教育環境をJICAさんが今すごく評価してくれていて、海外協力隊の派遣前のプログラムの、派遣前の研修地というんですかね、研修地になっていて、3か月ぐらい滞在してからそれぞれ協力隊として派遣されるというプログラムも昨年からJICAさんと一緒にやっています。
あとは、「グローバル人材育成事業」、さっき教育留学の説明をしましたけれども、逆に五城目町の子供たちが海外に行くときに少し補助金を出していたりします。
あとは、直接五城目町で実施しているものではないんですけれども、JICAさんとちょっと似ているんですけど、「さとのば大学」という、ミネルバ大学の日本版みたいなところが五城目町を一つのキャンパスにしてくれて、滞在してくれています。学びの場としてすごく評価されているのかなと感じています。
こういったいろんな取組が評価されておりまして、今年度だと、私たち教育委員会で対応した視察が300人ぐらい対応しています。昨年も同じぐらい対応していますが、学校ができたときはまだコロナ禍であまり外にPRできなかったんですけど、今になって複合的にいろんな人に見に来てもらえているのかなと思います。300人と言いましたけど、教育関係者とか教育機関関係者は100人ぐらい。残りの100人ぐらいがBABAME BASEとさっき言った企業系の人たち。あとの100人はどうでしょうね、民間企業の人たちも来たりしますね。大手の企業さんなんかが見に来てくれたりします。多分、それぞれ見るところが違うのかもしれないです。
「令和の日本型教育」を推進する学校の規模・配置の在り方ということで本日の会議、開催されておりますけれども、前回から聞いた話の中で私が現段階で思うこととしては、前回、私、感想としては、主語の多い会議ですねという言い方をしたんですけど、立ち位置とか見方とか、そういったものがすごく多くて、どう考えればいいのかなというのがすごく難しい会議だなと思っております。「要素が正しく反映されているのか」と書いていますけれども、社会の要素が学校に正しく反映されているのかというのを考えなきゃいけないなと思っていて、図で書いてありますけれども、何となく、もし本当に学校が社会の縮図だとするならば、きれいに補足されてなきゃいけないんじゃないかなと思います。
前回、貞広先生のお話の中でも、人生100年時代では個人がどうあるべきか、どう成長するかという課題の中で学校の在り方のようなものを考える必要があるのかなと思います。スクールトークというのは、地域と個人の間、地域の学校というものを話し合いながらその学校の在り方みたいなものを決めていったし、みんなの学校というのは、学校に公教育の外にあるものも一旦学校に載っけることによって、社会と学校の在り方を適正にしているという効果がありますし、教育留学というのは、自分たちの知らない学校があるんだよということをみんなが感じる機会になっている。いろいろ焦点が動く中でも、時々ばちっとフレームが合って、それが学校の役割だったり、教員の役割というよりは職員室の役割だったり、個別最適化された学びの実現とともに、地域や社会との距離の最適化を目指すような関係をつくっていく必要があるんじゃないかなと思います。
実際、現場で見聞きしたことで例えますと、これ言っていいのか悪いか分からないですけど、こういう先生いそうじゃないですか。最近はプログラミング学習が加わった。従来の学力のほうが大事だと。いると言うとまずいんでしょうけど、いるんですよ、一定数。そういう人って、学校にプログラミングが加わったって、正しい社会の認識の仕方として何か間違っているんじゃないかなと思っていて、Society5.0の社会というのは、フィジカルとサイバーが融合した社会なわけです。学校の中にサイバー空間がちゃんと溶け込んでいる状態なはずなんですよね。そういった意味で、学校にプログラミングが加わったというような認識はちょっと何か違うんじゃないかなという気がします。
あと、五城目小学校で言いますと、学校で田んぼで稲を植えているんです。学校菜園と田んぼがあるんですけれども、最近ニュースなんかだと米価が高いというのを見るじゃないですか。これ、学校でどう教えているんだろうなと思って、実は米価が高いというのは、秋田県だったりすると農家の所得が増えているので、ニュースで報道されているよりも実はちょっといいこともあるはずなんですね。地域の中ではそうだし、世界的には、世界の中で考えると、これからは食料需要というのは圧迫されるだろうなというふうなところもありますし、そういった情報をどう個人が取り込むか、そのために学校がどうあるべきかというのはすごく気になります。
これは私、8年間やっていて何回かこのシーンに遭遇しているんですけれども、学校で地方の人口減少をどのように解決するかみたいな話が何となく起こり得ますよね。私も何回か見たことあります。一昔前だと、例えば企業誘致しようとか、観光振興しようとか、今であれば移住・定住政策頑張りましょうみたいなところに結論を持っていくんですけれども、日本全体が人口減少にある中で、五城目町だけが、ある地方だけが人口が増えるというのはあまり現実的ではなくて、言わば答えのない課題に我々がどう向き合うかというような問題なのかなと思っています。
さっき冒頭で白地図の説明と写真の説明をしましたけれども、こういうのって、それぞれの地域がどうありたいか、どうあるべきかという話だと思うんですね。それから、人口減少を解決するというよりは、人口減少とどのように付き合っていくか、人口減少の中でどのように持続的な自治体であるべきかということを考える必要があって、そうであるなら、それに付随して学校の在り方、適正規模・適正配置の在り方というのがそれぞれの自治体が考えるべき問題でもあると思います。
現段階では私はこのぐらいで、五城目町の事例から適正規模・適正配置を考えたときにこういったことを考えました。発表は以上です。
【貞広座長】 ありがとうございました。
それでは、続きまして、議題3の御報告に移りたいと思います。牧野委員からよろしくお願いいたします。
【牧野委員】 よろしくお願いします。私のほうからは、「『右肩下がり時代の地域経営』の立ち位置から学校の適正規模・適正配置の在り方を考える」という題名で発表させていただきます。
私のプロフィールですが、最初に政府系の金融機関で地域内外のプロジェクトに20年近く携わってまいりまして、その後、縁あってふるさとに帰って、自分のふるさとである飯田市の市長を4期16年務めてまいりました。その間、全国市長会の副会長や経済財政諮問会議の専門委員、あるいは中央教育審議会の臨時委員等を務めてきております。今は大学関係ということで、大阪の追手門学院大学地域創造学部の教授をしております。先ほど二地域生活というお話を猿田委員がされましたけれど、私、二地域生活なんです。飯田と大阪を行き来しながら、なおかつ、海洋レーダー関係の大学発のベンチャー会社の社長もやっていまして、二刀流・二地域生活と自分で命名をしております。
飯田市の、面積は660平方キロメートルぐらいあります。南アルプスのてっぺんから天竜川の川下まで、それこそ2,000メートル以上の標高差がある市域で、人口は平成の大合併の直後ですと大体11万ぐらいだったんですけど、今は10万を切って9万そこそこという、御多分に漏れず人口減少・少子化・高齢化が進む地方の中小都市の位置づけです。ただ、右肩下がりの人口減少・少子化・高齢化の時代にありながら、リニア中央新幹線の駅ができるまちということで、将来的に非常に大きな変化があるだろうということも予想されるところです。今ですと、バスで東京まで約4時間ぐらいはかかるんですが、これが恐らく45分になります。もう東京の通勤圏になってしまう。そういった位置づけになりますので、リニアが通った後、どういうふうに地域が変わっていくかということにも注目がされているところです。
飯田市域の変遷についてはどこの中小都市でも恐らくそういった傾向があったと思うんですが、町なかの人口がある程度密集していた地域からだんだん郊外に合併を繰り返して広がっていくと。飯田市の場合ですと、西側に旧飯田地区があって、そこから東の南アルプスに向かって昭和の大合併、平成の大合併を経て広がっていったと。私が市長になった直後にこの平成の大合併にぶち当たりまして、ここに書かれています上村、南信濃、2つの村との合併をどうするかという課題に直面をしたところでありました。今日は、正にこの中山間地、真ん中にあります千代地区と、それから上村・南信濃の両地区合わせて、遠山郷と言われていますこの中山間地の地区を中心に事例の発表をしたいと思っています。
今日、私がどんな話をするかというのを4つの視点でまとめました。1つは、地域のビジョンとの整合性の視点。先ほど猿田委員からも、全体から見てどうなのかという話もありましたし、前回、丹間委員からもお話があったように、そもそも学校の適正規模・適正配置の在り方を学校の中だけで、学校の地区の中だけで考えていくのは難しいだろうと。私もそう思います。正にそのとおりだと思っていまして、地域のビジョンとの整合性、これをどう図っていくかということが大変重要と思っています。
それから、猿田委員から非常に魅力的な五城目町のお話をいただきましたが、やはり重要なのはコミュニティーの質ですね。私、QOCと呼んでいます。QOLの議論はよくあると思うんです。生活の質の向上という観点から議論することは。しかし、今日はコミュニティーの質の向上、これが図られるのかどうか、ここにつながるのかどうかという視点を提示したいと思います。ここにつながらない学校の適正規模・適正配置の在り方を幾ら地区に説明しても、地区の理解を得るのは私は非常に難しいと思っています。
それから、EBPM。先ほど加藤委員からもマクロ的なEBPMを示していただきましたが、客観的な、かなりミクロ的、マイクロ的な現地調査に基づいた政策立案が果たしてなされたEBPMになっているかということは、やはり視点として持つべきではないかということです。これも後で事例をもって説明させていただきます。
そして最後、人材育成を客観的に評価する視点。これは地域経営の立ち位置というよりも、前回、文科省の政策的位置づけの話をさせていただいたところに通じるお話です。人材育成を客観的に評価していく必要があると私は考えていますので、その視点からの説明をさせていただきます。以上4点です。
それでは最初に、地域のビジョンとの整合性の視点から参ります。ちょっと細かい図で恐縮なんですけど、この図は地域のビジョンの一例として、飯田型キャリア教育の全体像を示したものであります。このイメージを説明するだけで持ち時間が全部過ぎてしまうぐらいの話なので、本当に必要な要素しか言いません。「地育力で私と地域の未来をひらく」と書いてあるこの「地育力」というのは何かといいますと、下に細かい字で書いてあるんですが、「飯田の資源を活かして飯田の価値と独自性に自信と誇りをもつ人を育む力」という、そういう意味になっています。つまり、自分たちの地域の子供は自分たちの地域で育てていくんだという、その力を地育力と呼称しています。実はこれ、私が市長に就任したときに提言した言葉で、私が発案した造語なんですけれど、そのまま飯田の教育理念として定着しております。この「地育力による未来をひらくこころ豊かな人づくり」、こういった考え方で、飯田型のキャリア教育の全体像を形成していまして、その一番の特徴は、一番下を見てもらえば分かるんですが、キャリア教育というのは、別に小学校とか中学校だけでやるものじゃない。幼稚園、保育園、こども園、小・中・高等学校、大学等の高等教育機関など、地域の中にある様々な教育機関でこの考え方を共有して、それぞれの役割を果たす形でこれを実施していくものです。
例えば右上にある事例の5と書いてある飯田コアカレッジ、これは飯田にある私立の専門学校です。あるいは、その下にある事例4の飯田女子高等学校。これは私学です。公立であろうと私立であろうと、この地域にある教育機関がみんな一体的になって地域の未来をひらく教育をどういうふうに実現させていくか考えていこう、共有していこうという図であります。
右のほうに赤い文字で書いていますが、地域経営の立ち位置から見た場合、小中学校の適正規模・適正配置の在り方というのは、こうした地域の全体ビジョンの中でどのように位置づけられるかということが重要です。ビジョンに照らしてちゃんと検討していく必要がある。なぜならばということで、その下に書いてあるんですけど、少子化の課題は小中学校から発生するわけではないんですね。地域経営から見た場合、実は幼保こども園の段階でこうした少子化の課題は顕在化するんです。その事例は後から出てきます。それをどうするか。まず幼保の少子化への課題に対応し、その次に小学校、そして中学校というふうになっていくんです。さらに、子育て世代が地域に戻ってここで子供を育てたいと、考える人づくりをしていくためには、高校を卒業して地域から離れる前の、正に高校生活の3年間がとてもとても重要です。ここに地域がどうコミットするかということも併せて検討する必要があります。つまり、この適正規模・適正配置の在り方の議論は、地域経営の観点から見れば、幼保小中高をトータルで見てどうあるべきか見ていかなきゃいけないと思うのです。
最初に高校の話をさせていただきます。これはどこの地方都市でも同じだと思いますが、若い皆さん方が地域を離れていくタイミングはどこかというと、ちょうど今なんですね。3月の終わり。今ちょうど全国の地方都市の高校を卒業した皆さん方が地域から離れていっています。飯田市の場合ですと、大体7割方が離れていきます。そこから戻ってくるのは一体どれぐらいか、定着するのはどれぐらいかというと、出ていかなかった人も含めて大体4割ぐらい。卒業生の大体4割ぐらいが回帰・定着する。この差がまさに社会減になってくるわけです。つまり、高校を卒業したときにこの地域を離れていってしまう。若い人たちが子育て世代になる頃に、やっぱり自分が生まれ育ったふるさとで子供を育てたいねと思えるかどうかなんですね。ここに地域の将来がかかっていると言っても過言ではない。
それを示したのが次の図です。もし、地域とは全くつながりを持たず、とにかく勉強を頑張るぞと。そういうふうに頑張っちゃった子供がその後どうなるか、4コマ漫画にしてみました。この頑張った若者は、念願かなって大都市の大学に入学できて、そして、そのまま多分いい会社に入れて、でも、その後待っていた生活は、満員電車にぎゅうぎゅう詰め込まれて、そして辞令一本で全国どこにでも異動させられる。皆さん方を見て言っているわけじゃないですよ。そういう生活を定年まで送るかもしれない。定年になってふるさとへ戻ったときに、自分だけじゃなくふるさとまでしょぼくれちゃっていたと。こういう未来が待っていたらあまり寂しいじゃないですか。
じゃあ、それをどうやったら変えられるんだろう。恐らく一番最初の一コマが間違っていたんじゃないか、出発点が違っていたんじゃないかと思うわけですね。出発点でもっと地域に関わって、地域のことをいろいろと学んで、ああ自分が生まれ育った地域はこういう地域なんだとしっかり自分の中に入れることができた若い人たちは、恐らく一旦は地域を離れても、例えばお祭りや地域の行事なんかで帰ってきたりするかもしれない。あるいは、子育て世代になる頃には、やっぱり自分の子供は自分の生まれ育った地域で育てたいと思うかもしれない。そういうふうに思えれば地域へ帰ってくる若い皆さんが増えていくと思うわけです。
それは、先ほどから出ている人口減少・少子化・高齢化の右肩下がり時代であっても、地域の持続可能性を指し示すものになるわけです。規模的には縮小していく地域の中にあっても、多世代がちゃんと安定して住むことができる。若い人が出て行って年寄りしかいないような地域ではない。子育て世代もその地域でちゃんと役割を果たして住み続けることができる。そういった地域にしていくことこそが、今、私たちが目指さなきゃいけない姿なのではないか。それを私は、人材サイクルの構築と言っています。これは定住自立圏の政策を総務省で検討していた頃から私が提唱している考え方で、人材サイクルの構築という言葉は、定住自立圏の報告書にも出てまいります。
その人材サイクルを構築するためには、高校卒業までの3年間、高校生活がとてもとても重要です。ここで地域人教育の考え方が出てきます。地域を愛し、理解して、地域に貢献する人材をいかにつくっていくか、育てていくか。この地域人教育を飯田で始めたのは平成24年度、県立の飯田長姫高校、それが統合して飯田OIDE長姫高校に変わるんですが、そこと松本大学と飯田市で三者協定を結んでスタートます。
この地域人教育のポイントは2つありまして、1つは、高校の教育現場と地域を結ぶ、右上の図に書いてありますが、そのつなぎ役になっているのが、先ほどから社会教育の話が出ていますが、飯田市の公民館ということになります。ここがまず1つ。
それともう1つは、赤い文字で右に書いてあるんですが、実はこの地域人教育を進めていこうとしているときに、併せて高校統合の議論しています。県教委は最初、飯田長姫高校を分割してほかの農業高校、工業高校にひっつけるという案を出してきました。地域としてはこの案はのめないのではないかということで、両校の同窓会をはじめ関係者の皆さん方と私ども行政、南信州広域連合ですね、高校の場合ですと通学圏が飯田市のみならず周辺の町村も含めてになりますから、周辺の町村を合わせた広域連合の場でこの非常に重要な課題が検討されたんです。が、結論としては、県教委の提案はのめないという話になって、対案を出すことになり、飯田長姫高校と飯田工業高校を統合させるという案を逆提案し、それを県委がのんだのです。
これは私がいろんな学校統合に関わった中でも一番しんどい話でした。県教委の案は違う、提案をこちらからするのも大変でしたが、市の教育委員会で長姫高校と地域人教育をどうやるか話している最中に、市長部局ではこの高校統合を何とか実現させようとしていた。正に地域人教育の環境をどう作るかということに結果的につながっていくわけなんです。この話をしているとちょっと長くなっちゃいますが、工業高校と長姫高校を統合するとき、どっちをどっちにひっつけるかという話になるんです。私自身はそれは県教委に決めてもらえばいいと思っていたんですが、広域連合議会が頑張りまして、そこも我々で考えようという話になり、工業高校を長姫高校にひっつける案を提言することになったんです。したがって、工業高校のあった地区に説明に行くのが県教委じゃなくて我々広域連合になりました。というか、連合長の私になったんです。私と広域連合議会の議長、飯田市議会の議長ですが、2人で行って3日間、針のむしろ、つるし上げに遭って本当に苦労したんです。県教委にはすごく感謝されたんですよ。私たちの代わりによくやってくれましたと。全然うれしくなかったですけれどね。
そういうこともあって大変しんどい思いをしたんだけれど、とにかく高校統合を地域の中でちゃんと議論して、そして自分たちとしてはこういう高校にしたいんだということを県教委に提案して、これを成し遂げた。そして、正に統合する高校の魅力化として一番象徴的なものが地域人教育だったんです。つまり、高校の統合を単に数合わせ的にやるのではなくて、地域としてはこういう思いを持ってこういう高校をつくりたいんだという、そういった考え方をしっかりと打ち出して、それを実現させたことがこの地域人教育の考え方の背景にあったのでとす。
地域人教育のつなぎをした公民館ですが、ここは先ほど出た地育力を向上させる実践的な場として機能する、正に社会教育としての公民館をここで発揮することになります。飯田の公民館、その中心になってこの事業をやってくれているのは主事ですが、飯田は20地区あるんですけど、その20地区のそれぞれに公民館を置いて主事を置いている。その主事も、いわゆる定年前の職員を配置して館の管理をするようなものではなくて、30代前後のばりばりの主事を送り込んでいます。それは飯田市にとってはキャリアパスの一つなんです。私の先々代の市長から始まった飯田市のキャリアパスで、公民館の主事を経験することで地域のことを主事自身が学ぶ。その学んだことを持ち帰って、政策立案部署に帰ったら、地に足が着いた形で政策立案を行えるようになる。そういう役割を担っている部分もあるわけです。地域人教育においては、こういった高校と地域をつなぐ役割公民館がここで果たすことができたのです。ここに「みつける」「つながる」「育てる」「実現する」と書いてある。まさに「つながる」という部分を実際に地域人教育でやってきているわけです。
実際に成果発表会では、地域人教育の成果として様々な生徒の声も出ております。いわゆる今どきのギャルという感じで捉えられている女子高生の皆さん方も、最初は何か面倒くさい事業だと捉えていた。これ私がやった授業です。地域人境域では、事業なので、大体私が一番最初に話したんですけど、面倒くさい授業だと思われたようです。けれども、地域の人にお世話になると、自分たちにもできることはないかと考えるようになった。まさに自分事として地域を捉えるようになったと。地域のことを自分事として考える、そういう考え方が芽生えてきているということですね。
あるいは、その隣のコメントですけれど、飯田は私たちのやりたいことを地域の人が応援してくれる、そういうところなんだと。自分のやりたいことが実現できる場所なんだと感じたと。こうなってくれば、この子たちは一旦は地域を離れても、恐らく帰ってくるんじゃないかなと期待できるようになるわけです。こういう子をなるべく増やしていきたい、地域人教育の場で育てていきたいと思うのです。
そういった学校現場に関わる地域の質、これをどう向上させていくかということも非常に重要になってまいります。といいますのは、よくお話しさせていただいているんですけれど、コンピューターの世界で見るか車と道路の関係で見るかは、その世代によってかもしれませんが、取りあえず車と道路の関係で話をします。例えば、文科省で新たな政策や事業を立ち上げると。それを地域に下ろしたときに、地域でちゃんとそれがうまくいくかどうかは、受ける側の地域の質に関わっているというのが私の持論であります。ここに描書かれていますように、どんなにいい車をつくっても、文科省さんのほうで、すばらしい政策、すばらしい事業と思ってつくっても、それを地域で走らせようとしたら、ガタガタでひっくり返ってしまうというようなことにもなりかねない。それがまさにコミュニティーがしっかりしていないと起こり得ることです。逆に言いますと、コミュニティーがしっかりしていれば、ある程度ぼろ車でも、こう言っちゃ何ですけど、政策が多少ぽんこつでも何とかなるというのが実際のところであります。課長が苦笑いされていますけど、まさにそう思っていただいたほうがいいです。つまり、何を言いたいかというと、遠回りに見えるかもしれませんが、コミュニティーの質を上げていったほうが政策事業はやりやすくなるはずなんです。そういった観点からどうやったらコミュニティーの質を上げていくことができるかということを考える必要がある。
私自身が考えるコミュニティーの質の要素は3つありまして、右下のほうに挙げていますけれど、主体的参画、自治性、それから価値観の共有です。こういったものをどれだけ地域のコミュニティーが備えているかということが、コミュニティーの質の向上に関わっていると思います。その中の一つ、主体的参画の事例を挙げさせていただきます。
これは先程申し上げた中山間地域の千代地区の事例なんですが、保育園の統合の話と関わりがあります。千代地区は、飯田市と合併する前は、千代村と千栄村という2つの村だったんです。つまり、千代地区といいながら、2つのコミュニティーが今でも残っている地区です。だから1つの地区に2つの小学校、そして2つの保育園がある。御多分に漏れず、少子化が非常に進んでしまって、さっき申し上げたように、小学校の前にまず保育園をどうするかという話になるわけです。
まず最初に、保育園をどうするかという話が大きな課題になった。そのとき、市から2案の提示、これは私から提案しましたが、2つの選択肢を提案しますから選んでいただけませんかと。1つは統合です。2つの保育園を統合する。もう一つは、もし両園をどうしても残したいのなら、皆さんでやってくれますかと。最初はめちゃくちゃ抵抗――抵抗というか袋だたきでした。「何を言っているんだ市長!」でしたけれど、それでも地域がしっかりしているので、どうするか考えてくれました。私たち市側は、多分保育園の統合を選ぶんじゃないかなと思っていたんですが、何と千代田区は民営化を選んだのです。これはすごい話だと思います。なぜなら、普通、保育園の民営化というのは街場で行うものなのですね。民間の引受け先があって、その保育園を引き受けましょうと。これはどこの市町村でもある話だと思うんですけれど、そうじゃないんです。中山間地域ですから、引受け手になる民間があるわけじゃない。にもかかわらず、②を選んだと。これはどういうことかというと、自分たちでやろうと。まさに主体的参画です。千代田区は自ら社会福祉法人を立ち上げました。全世帯から1万円ずつ集めて、社会福祉法人の立ち上げを行った。世帯によって保育園児がいるところがいないところと当然あるんですが、いないところにも一緒にやってくれという話をしに行ったわけです。その理由は、この下に出てきますが、しゃくなげの郷という老人福祉施設、ここの運営も一緒にやるから、皆さん方、もしそこにお世話になったときに園児が来てくれたらうれしいでしょう。そう言って口説いて回ったと聞いています。全世帯から1万円ずつお金を集めて社会福祉法人を立ち上げて、民営化をやったんです。中山間地でこんなことをやったは、多分ここぐらいじゃないかと思うんですけれど、そうしたら何が起こったかというと、園児が増えたんですよ。なおかつ、一般的には保育園の先生方は割と回転が速くどんどん代わっていくようなことがありがちなんですが千代ではほとんど代わらないでずっと勤めてくれているそういう園になったんです。このように、QOCの高い地区において、相当質の高い保育園の事業が展開されることになったという事例であります。
そういった地方の事例もあるんですけれど、平成の大合併を機に、各地区において今までの自治会から新たな地域自治組織に衣替えしようという、そういった動きになりました。新たなまちづくり組織をつくっていく。今までの上意下達的な自治会の仕組みから、自分たちの地域は自分たちでまずやることを考える。そして、それでできないことは行政に補完してもらう。こういったトップダウンからボトムアップへのまちづくり、組織の変更が行われました。これが平成の大合併を機に行われた飯田市における地域自治組織の大改革です。このときに一番問題になったのは実は公民館です。公民館の役割としては、先ほどの社会教育としての公民館の立場と、ここに社会関係資本という言葉が出てきますけれど、地域自治としての公民館の立場がある2つの側面を持つ公民館の役割が、ここで明らかになります。地区のQOC向上のための社会関係資本としての公民館の役割、こういったものがここで発揮されるということになるわけです。
もう一つ、地域の価値観の共有。これについても色々な話があるんですけれど、飯田市は20地区全部が地区の基本構想を持っています。つまり、自分たちの地域のビジョンというものを自分たちの地域で持っているということです。自分たちで話し合って自分たちの地区を将来どうしていきたいか。そのビジョンを持っている。これを行政が尊重するという形で地区の基本構想が位置づけられている。これも大きな特徴です。
行政としても地区のQOCの向上を図るうえで、様々な対応が必要になって参ります。それは当然ながら、エビデンスに基づいた政策立案でなければならない。その視点について上村プロジェクトを事例に話をします。上村は平成の大合併で飯田市に編入された、元は上村という村でした御多分に漏れず少子化・高齢化が相当進んだ南アルプスの麓の村で、今は上村地区になっております。高齢化率50%以上ですから、非常に少子化・高齢化が進んでいます。さっき申し上げたように、少子化の課題は保育園から始まります。ここは平成25年度初頭に、全園で園児が1人になるという危機的な状況を迎えます。平成24年度のいつでしたか、秋口ぐらいだったと思うんですけれど、担当の職員が私のところに来まして、いよいよ上村の保育園の園児が1人になる、という報告があります。私のところに何で言ってきたのかは明らかです。閉園の決断をしてくれ、と言うことでした。ですが、ここに書いてあるように、私、市長からのミッションは「何としても残せ」でした。職員にしてみればたまったもんじゃないですよね。「市長、御決断を」と言ったら、「何としても残せ」と返ってくるわけですよ。ひどい市長ですよね。それで職員が「そんなことできません」と言わなかったのは、先程の地に足をつけた政策立案をしなきゃ、と考える職員だったと私は思います。だから「分かりました」と言ったんです。「じゃあまず調べてみます」と。「今どんな状況か調べてみます」。それで、何で1人になったかを調べたんです。それは合併した後に子育て世代が街なかにかなり出ていってしまったからだったんです。その出ていった皆さん方に、どうして上村地区から街なかに出ていってしまったのか、ヒアリングして回ったんですよね。そうしたら、10人のうち1人か2人ぐらいから、「いや、実はこういうことがちゃんとしていれば、別に上村で子育てしてもよかったんだけどね」という話が出てきた。それを聞いて、「じゃあ、それをやったら上村で子育てしてもらえるんですか」という話をしたら、「してもいいよ」と。これ大きいんですね。だって、3人が1人になっちゃうから閉園だと言っていたのにもう一回上村へ戻ってもいいよという世帯が1世帯、2世帯、3世帯と出てきたら、閉園しなくて済むんですよ。
じゃあ、その対策にはどのぐらいお金がかかるのかという話です300万円でした。年間300万で地域のコミュニティーが存続できるなら安いものですよ。上村地区は800年の伝統を持つ無形文化財、霜月祭りがあるの地域ですからね。地域の伝統文化芸能は飯田市の宝でもある。アイデンティティーの一部でもある。それが失われてしまうようなことは避けなきゃいけない。そう考えれば300万円は安いものだということで、その支援をすることにしたら、その後何が起こったかというと、園児数が増えたんです。戻ってきたんです。
この300万という数字は、客観的調査をしなければ分からなかったものです。分からないと政策として予算はつけられません。予算をつけられないとそのままになってしまう。つまり、マクロ的な傾向からみれば、閉園の危機に陥ったらもう閉めるしかありませんみたいな先入観を持ってしまうんですが、よく調べてみたらそうじゃない。実はこのぐらいの予算で十分この地域の存続は図られるよということが分かった。もし保育園を閉めていたら、次は小学校が閉校になりますから。それはもう見えてますからね。だから、どうしても保育園は残す。そうしないと地区が消滅してしまうことになりかねなかったんです。
なお、出口策と書いてあるのは、これはそのときの構想で、この300万を何とかコミュニティービジネスで回せないかということまで考えていました。ここでエコシステムをつくれないかと、小水力発電の話まで構想が進んだんですけれど、まだ実現には至っていません。でも、そのぐらいの考え方を、上村プロジェクトではしていたということです。
そういった経緯で保育園が残った地区ですが、ここに遠山郷二園三校グランドデザインと書いてありますが、上村・南信濃という遠山郷全体を対象にして二園三校のグランドデザインを描いています。これは先程の市全体のグランドデザインと対をなすような形で、地区ごとにこういうグランドデザインを考えているわけです。
「遠山郷を愛し、誇りを持ち、未来を共に創る人づくり」、こういった地区全体のビジョンをしっかり持つ中で、整合性を図って適正規模も考えていく必要があると思います。
実際に上村保育園は維持できました。上村小学校も小規模特認校を導入しています。特任校対象の生徒は、4月から中学校に行きますので、遠山中学校も特認校になります。このように地区の皆さんと構想を共有する中で上村中学校は遠山中学校に統合しています。それから市内の高校に通学できるよう、バス路線の確保もしています。そのために市としてはそれこそ億単位の予算をつけてゾーン制の料金導入をやっています。つまり、ある一定以上はバス料金の負担をしなくてもいいよう、ゾーン制を使うことによって、下宿せずにちゃんと遠山郷のような中山間地からでも街なかの高校に通えるようにしているのです。こういうことをトータルにやることによって、中山間地域の子供たちの人材育成が担保されている状況です。
さて、これまで3つの視点からお話をさせていただきました。最後の4つ目の視点は、文科省の皆さん方に是非お願いしたい視点です。このマイスター・ハイスクール事業ですが、先ほどの絵で見てもらって、3コマ目の絵です。子育て世代が帰ってこられるようにするためには、実は雇用の受皿が大事になります。子育て世代が帰って、そこで安心して働けるようにするための産業基盤をどうやって確保するか。これは卵が先か鶏が先かの議論になるんですが、マイスター・ハイスクール事業では、やはり人が先だと考え、地域の将来を担う産業人材の育成をしていこうという政策を打ち出してくれております。
私、この制度の立ち上げ時期からずっと関わってきていますが、地域の将来を担う産業人材を地元の行政、産業界、そして高校が連携して育成していうくためには、文科省としてのそれまでのやり方、指定校を定めそこに予算をつけて、はい、じゃあ頑張ってやって報告書をちゃんと出してねというようなやり方では、とてもやれないと考えました。こうした連携を必要とするような事業を進めるためには、文科省がプロセスにもっとコミットする必要があると。それが伴走支援ですね。
それともう一つ、今日ここで申し上げたいのは、全国に通ずる客観的評価の必要性です。昨年1月30日のマイスター・ハイスクール事業の成果発表会で、その客観的評価が出てきました。私これだ、と目からうろこが落ちたんですが、「学びみらいPASS」の定量的評価ですね。これは非常に一考の余地があるなと思いました。
このリテラシーの評価が新潟県立海洋高校から示されたんですが、要はマイスター・ハイスクール事業を入れることによって、どういう力が伸びるかを見ているわけです。情報収集力や情報分析力等々のリテラシー能力も、マイスター・ハイスクール事業を入れることによって伸びているという見方ができるんですが、さっき申し上げた全国に通じる客観的評価とは、正に全国の3年生の平均値、普通科も入れた平均値と比較してこういう状況であると示されました。伸びているがまだ全国平均には到達していないという状況が示されたわけですが、私はリテラシー教育に偏った人材育成は、自己完結型人材を育成するだけだと思っていまして、それが今の地域課題を解決できない一つの理由になっていると考えております。この漫画で示させていただいたように、自己完結型人材は、自分でできそうにないものに対しては、それ以上のアプローチをしない。こうした自己完結型人材は、リテラシー教育に偏った人材育成ではありがちなことだと思っています。
経済財政諮問会議の専門委員をしていたときの、タスクフォースからの報告にもありましたが、そもそもリテラシー教育に偏った人材育成では、将来AIに代替される人材を作るだけだという警鐘も鳴らされておりました。文科省は学習指導要領を改訂して、主体的・対話的で深い学びを小中学校から高校まで広げ、高校では2022年度から探究の授業も開始しています。2025年度に大学に入学する高校の卒業生はみな探究の授業の経験者になっているのは、私はそういう意味でいい方向が出てきていると思っています。
ここで重要になるのは、コンピテンシーです。定量的評価でコンピテンシーの力をどれだけ客観的に把握できるかがとても大事だと思っています。今次の
適正規模・適正配置のにおいても、じゃ一体どんな人材育成ができて、どんな力が伸びていくのか、それをどうやって客観的に評価していくのか、が鍵だと思うんです。
これまで申し上げたように、地域の将来を担う人材は、正に地域課題を解決できる人材であってほしいわけです。それはどんな人材かというと、自分ができることしか考えないという自己完結的な人材ではなくて、むしろ逆なんですよね。自分は何ができないかということをちゃんと分かっている。そのできないことを補うパートナーを探せる。そのパートナーと連携して課題解決が図れる。こういう。連携力重視型人材です。このような人材が地域の課題を解決できる。エアポケットを埋めていけるわけです。そういった人材をどう育成するかだと私は考えています。
そういった意味では、地域人教育も連携力重視型の人材育成をやっているんですね。少人数グループをつくって地域に入っていってどのように課題を解決するか考える。そういうことを高校生の段階から探究としているわけです。マイスター・ハイスクールでも指定校がそういうことをやっています。少人数グループをつくって、その地域の産業人材になるために、自分たちでどういったことができる探究していま。
新潟県立海洋高校の資料に戻るんですけれど、じゃあ、コンピテンシーはどうだったかというと、見事に親和力や協働力、あるいは自信創出力、計画立案力は全国平均を超えて伸びているんですね。こういう客観的評価が欲しいんです。客観的評価をすることで、適正規模・適正配置をすることによって育成される人材の姿なんだと。地域課題を解決できる人材が育っていくことを地域の皆さん方に納得してもらえる。そういった検討をこれからしていってもらえればということを申し上げて、私からの発表とさせていただきます。ありがとうございました。
【貞広座長】 ありがとうございました。以上、お三方から御発表いただきした。実は当初の予定では、お一方20分の御報告ということで……。
【牧野委員】 申し訳ありません。
【貞広座長】 いえいえ。50分ほど質疑の時間を設けるつもりだったんですが、皆さんの熱意がすごくて、黙って聞こうと思ってこういう段取りに、事務局にお問合せせず、勝手ながらこういう形にさせていただきました。申し訳ありません。あと10分ほどしかないので、ちょっと議論という形にはなれないかと思いますので、次回以降、そういう時間なり、また今日の御報告について継続的に議論できればと思うんですけれども、御質問とかもおありだと思いますので、もし短時間でもお答えいただけるようなものがありましたらお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。御意見、御提案などでも結構ですが、いかがですか。
【加藤委員】 今日、発表を聞かせていただきまして、ありがとうございました。牧野先生、猿田先生のお話に大変感銘を受けたというか、私自身の経験で言うと、統廃合の検討委員会が始まっちゃうと、その枠内の中で進めるみたいな感じだけになっちゃって、先ほど猿田先生、牧野先生のお話のような広がりがないところの話みたいなところになって、その前の話として非常に重要だなというふうに拝聴しておりました。お話にあったように、子育て世代というか、これから家庭というか生活をどうしていこうという世代とか、あと学校からすると、やっぱり高校ですね。先ほどの牧野先生のお話で、県教育委員会とというようなところで、どうしても設置者の違いが大きくて、私なんかも小中学校の周りの高校のことと一緒に考えたほうがいいよというようなことを部局のほうにお話は、検討会以外のところでは割と結構頑張って言っても、なかなかそこは市町村としては難しいようなところもあってというところで、その辺りのところの広がりの議論がこの会議でどこまでできるのかというところを今日は興味を持って聞かせていただきました。ありがとうございます。
以上です。
【貞広座長】 ありがとうございます。高校が重要な視点だという課題意識は私も共有いたします。前回の提案資料でも、あまり言及はできませんでしたけど、あえて設置者の違う高等学校ということを入れさせていただいたのも、そういうところもありました。
もしよろしければ、丹間先生、何かありますか。
【丹間委員】 御発表ありがとうございました。私自身、いろいろな地域の動きということでとても勉強させていただきました。お三方の発表全体を通して私が今回強く感じたのは、自分事というようなキーワードになると思うんですけれども、いかにして学校の在り方、あるいはさらに地域の在り方を自分事として考えていけるかという大きなテーマがあるなと思いました。加藤委員の御発表で、検討委員会に御参画された御経験に基づいて、どうしても委員の方たちがどこかに基準を求めてしまうと。つまり、これは本当に学校的だなと、学校らしいなとも思うんですけれども、どこかに正解があるんじゃないかというふうにして、自分たちの責任で決めることを避けようとしてしまうというようなことがあるのではないかと感じました。説明会をその後地区でやっていく際も、単に説明を受けるだけではなくて、住民や保護者が自分たちで答えを出していくというような、そういう合意形成の在り方を考えていかなくてはならないと思ったところです。
それから、猿田委員の御発表で、五城目町の「越える学校」、本当にすばらしいコンセプトと実践だと感じました。そして、これをつくっていく際にスクールトークという場があって、何と、全町民が参加できるということで驚きました。ただ一方で、いろいろな他の自治体の地域を見ていますと、どうしても声の大きな方が発言されて、ほかの方々が発言しづらくなるというケースもあります。このスクールトークの話合いを重ねていく上では、非常に細やかな配慮というか、様々な工夫もされていたのではないかなと想像したところです。学校とは何か、子供にどう育ってほしいか、町はどうなってほしいかという形で話合いを進めていけるようになっていくというのは、本当にすばらしい住民の方たちの学びだと思いました。
それから、牧野委員から飯田市のお話がありまして、飯田市ではそれぞれの地区や地域で住民の方たちが日頃から公民館を中心に学んでもいますし、職員の方たちも政策形成力を地域で学びながら身につけているというのはすごいなと感じたんですけれども、先ほど加藤委員からもあったように、そのなかで高校をどうするか、高校生にどう関わっていくかということが実はすごく大事なんだなと。4こま漫画も本当に分かりやすく感じたんですけれども、今、例えば北海道をはじめ、高校のない市町村も広がってきている中で、小・中学校の適正規模・適正配置を考えるときに、やはり高校の在り方も視野に入れて議論していくということが、それぞれの基礎自治体にとっても大事なのではないかと感じたところです。
以上です。
【貞広座長】 ありがとうございます。
では、順番に猿田委員、牧野委員からそれぞれコメントをいただいて、終了としたいと思います。猿田委員、お願いいたします。
【猿田委員】 私、今日のお話を聞いていていろいろ思うのは、地域の主体性ということもあるんですけれども、やはりこの会議としては何か指標とかそういうことも重要になってくるだろうなというのは薄々感じております。従来の適正規模・適正配置の手引にもそれになるものがあるんでしょうけれども、何かしら時代と対応したものが必要にはなってくるだろうなということで、現在、文科省で使われているウェルビーイングというのが指標としてふさわしいかどうかとか、あと、牧野先生のお話の中では、ソーシャルキャピタルという話も出ているので、そういったものを指標化していけるかどうかとか、それが全国共通に判断できるかどうかというのは、この後すごく考えなきゃいけないなというのは感じました。
以上です。
【貞広座長】 ありがとうございます。では、牧野先生、どうぞ。
【牧野委員】 ありがとうございます。丹間委員に私の4コマ漫画を褒めて頂いて本当にうれしいんですけれど、あれは私が描いたものではないんです。私は漫画を描けませんので。私は漫画を描けないことを知っていますから、描けるデザイナーさんに頼んでいます。こういうイメージのものを描いてくれないか、と。それを共有してもらって、「こんな形でいい?」みたいな感じで描いてくれます。つまり、1人で何でもやらなきゃいけないとは全然思っていなくて、自分ができないことは誰かできる人を探す。そして、そういった資料を仕上げていくということでも、連携力を発揮していくことが重要ではないか。自分の経験としてもそう思っているところがあります。
自分ができないところをできるようにすることは、もちろん間違っているとは言いません。ただ、他の選択肢として、できる人を探して、その人と一緒にやろうとする連携力を伸ばすことを真剣に考える必要があるのではないか。
マイスター・ハイスクール事業の経験からも、高校生によって全然違うとを感じています。追手門学院大学のを見学に来て模擬授業を受けてくれたある関西の普通科高校の皆さんに、「私の授業ではグループワークをやるけれど、グループワークをやったことある人?」と聞いたら、誰も手挙げなかったんです。つまり、その普通科高校ではグループワークを全然やっていないということが分かったんです。
一方、マイスター・ハイスクール事業に取り組んでいる実業科高校の生徒さんとこの間、去年の秋ですけれど、栃木の産業教育フェアで議論したときに、「みんな、自分たちのできないようなことがあったらどうする?」と聞いたら、すぐに「連携するに決まっているでしょう」と工業科の生徒が答えてくれました。工業科の生徒だから、「加工において自分が得意としている工程はもちろんあるけれど、不得意なところもあるよ」と。そのときどうするかと言えば、「その工程が得意な子を連れてきて、一緒にやってよと言うに決まっているじゃないですか。そんなの連携するの当たり前でしょう」という言い方をしていた。この違いは大きいと思うんですよ。
グループワークを全くやったことがなく私の模擬授業で初めて経験したという普通科の高校生と、「そんなの当たり前じゃないか」と言う実業科の高校生。地域の課題を解決できるのはどちらの人材でしょう、ということだと思うんです。そのぐらい、実際の高校現場で大きな違いが出ている。その違いをしっかりと共有し、それをどのように埋めていくか、真剣に考えていかなきゃいけないと思っています。
以上です。
【貞広座長】 ありがとうございます。ちょっと私の仕切りが悪くて、十分な時間が取れなくて申し訳ありませんでした。質疑の時間は、残念ながら、もっと延長線という感じの気持ちもあるんですけど、時間になってしまいましたので、ここまでとさせていただきます。
最後に、次回の予定について事務局よりお願いいたします。
【渡邉教育制度改革室長】 ありがとうございました。次回の協力者会議の日程につきましては、事務局よりお知らせしておりますとおり、4月21日を予定してございます。詳細はまた事務局より御連絡をさせていただきます。
【貞広座長】 ありがとうございます。
それでは、本日はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。
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