令和7年2月14日(金曜日)14時00分~16時00分
オンライン開催
髙橋部会長、日本発達障害ネットワーク・三澤副理事長(市川宏伸委員代理)、大関委員、尾上委員、小林委員、竹田委員、根本委員、毛利委員
(文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)瀬戸課長、松下企画調整官、田中課長補佐
(文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部施設助成課)下岡企画官
(文部科学省初等中等教育局特別支援教育課)酒井企画官
(文部科学省高等教育局私学部私学助成課)島岡専門官
・事務局より開会の挨拶。
・事務局より委員の出欠について説明。
議題1:障害当事者団体からのヒアリング
・尾上委員(日本障害フォーラム政策委員会委員)より資料1に基づき説明。
・日本視覚障害者団体連合・DPI日本会議・全国脊髄損傷者連合会・日本発達障害ネットワークからヒアリング。
・議題1について質疑応答・意見交換。
<日本視覚障害者団体連合・DPI日本会議・全国脊髄損傷者連合会ヒアリング>
【日本視覚障害者団体連合・三宅常務理事】
・インクルーシブ教育の推進の中で、視覚障害のある児童生徒についても、特別支援学校から一般の学校に通う子も多くなってきている。また、その子の家族、特に保護者で視覚障害のある方も学校施設を利用する機会があるということも想定して、学校のバリアフリーを考えていくことが必要。
・さらに、選挙の投票会場になったり、災害時には避難所にもなったりするため、あらゆる方が利用するということも踏まえてバリアフリー化を考えていく必要がある。
・学校施設の中では、視覚障害者を基本として整備されているものがまだ多くないという実感。例えば、注意喚起がされなければならない場所での警告ブロックの敷設が、階段前や建物の入り口付近になかったりすることが多い。このような安全対策として基本的に整備すべきものは学校施設においても必要。
・誘導ブロックの敷設についてもできる限り進めてほしい。ただ、学校の中全てに設置するというわけではなく、学校の受付、職員室など人のいるところまでの誘導を最低限お願いしたい。
・インクルーシブ教育が進む中で、一般学校に通っている視覚障害の児童生徒の大多数、約8割を占めるのが弱視、ロービジョンと呼ばれる人たち。全盲の児童生徒に対する配慮はもとより、見えにくさに困難を抱えている人たちに対するバリアフリーも一般学校においても考える必要がある。一つは、案内表示。トイレや教室などの表示が部屋の上部にあると弱視の方にとっては非常に使いづらい。遠くに掲げられている案内表示については、目線に近いような高さ2m以下のところでも同じ案内表示をつけて、どの教室なのか、どの種類のトイレなのか、内容などがわかるようにしてもらえると、弱視の児童生徒あるいはその家族、一般の人たちに幅広く利用できるものになる。
・併せて必要なのが、色に対する配慮。学校施設で見てきたのは、床と壁が、同系色や、グラデーションのようなデザインになっていて、色のコントラストがない、弱いといった例。見ることに不自由がある人たちにとっては、壁と床の境目が分かりづらく、歩くのに苦労することがある。特に色覚多様性のある人にとっては、同系色の色が混在していると境界線が認知しづらい。このような色の配慮についても是非重視していただきたい。
【DPI日本会議・白井事務局次長】
・2025年度までの整備目標を下げることなく、2026年以降の新しい整備目標を設定してほしい。
・要配慮児童生徒の入学予定情報を早めに把握して、整備に取り掛かることを義務化してほしい。要配慮児童生徒が入学予定の学校や現在在籍している学校は速やかにバリアフリー整備を実施するようにお願いしたい。
・バリアフリートイレについては、設置基準が改正され、2025年6月から各階にバリアフリートイレ(車椅子使用者用トイレ)を設置することになるため、2026年度以降の新たな整備目標では、バリアフリートイレの設置を各階に設けることを基本としてほしい。
・正門だけでなく、裏門などから校舎に入るルートもバリアフリー化し、バリアフリールートの複数化も必要。
・ステージへのアクセスについても、スロープやリフトの設置などの対応を検討してほしい。
・災害時には防災拠点にもなることから、災害時を想定したバリアフリー整備も目標に盛り込んでほしい。体育館にバリアフリートイレを設ける、スペースがない場合は車椅子でも利用できる防災トイレを用意する、ということも必要。
・約2/3の自治体でバリアフリーに関する整備計画が策定されていない状況。速やかに策定させる仕組みが必要。長寿命化計画での記載内容だけで対応しようとする自治体も多くみられる。要配慮児童生徒等が在籍する学校へのエレベーター整備を優先的に進めることを含んだバリアフリー化計画が必要。
・学校施設における統一的なガイドラインが必要。国土交通省の「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」のように、参考となる寸法がわかるようなものが必要。
・最近、グラウンドを芝生化した学校も多いが、人工芝の毛が長いと車椅子での移動が難しい。毛足の短い人工芝であれば移動もしやすいので、車椅子でも移動しやすいグラウンド整備(芝生化)という観点も必要。
【全国脊髄損傷者連合会・小林副代表理事】
・高等学校や大学、専門学校についても特別特定建築物の対象としてほしい。
・車椅子使用者へのバリアフリーだけでなく、他の障害種にも対応したバリアフリー化が必要。
<委員より質疑応答・意見交換>
(○:委員の発言)
〇 色の配慮に関して、どの段階でどのように仕様を決めているのか。設計段階で発注者の教育委員会から色を指定することはあまりなさそうな気がするが、建築業界では色に対する意識というのはあまりないものなのか。
【日本視覚障害者団体連合】色覚多様性は特殊なものでなく、潜在的に色の区別が難しい人たちは一定確率でいる、ということが、カラーユニバーサルデザイン機構という団体から出されている。このように色の区別が難しい方が多くいるとすると、設計段階から配慮しなくてはいけないと思う。壁と床の色が同じクリーム白色系を使っていると、視覚障害者でなくても、高齢者でも見えづらいと思う。建築物でよくあるのが、トイレの中の色のデザイン。便器の周囲の壁と床の色を濃くして、便器の存在を際立たせるような配慮は増えてきている。学校施設において、もう設計段階のところから、基本的なものとして入れておくべきだろう。
〇 設計を請け負うときに色の指定まではされていないことが基本。現場に入ってから、設計事務所からどの色にするか提案していく形になる。明度差、色の濃さ・薄さで提案することが多い。学校でいうと、廊下を濃い色にして、教室の中を明るい色にしたり、教室の入口にアクセントカラーを入れたりしている。階段やスロープについては、階段の床の色と段鼻の色の濃淡、明るさなどに差をつけて、区別しやすいような提案もする。また、誘導ブロックも同様に明度差で提案することが多い。色の対比がわかるような形で提案することが多い。
〇 学校ごとにスクールカラー、シンボルカラーがあったりするので、そのあたりをどこに配色するかなど、設計事務所の意見を聞いて決めていくこともあると思う。
〇 車椅子使用者が入学予定であるにも関わらず、整備が難しいといわれる事例があるということだったが、公立の小中学校が特別特定建築物になった2020年以降でも同じようなことが多いのか。難しいといわれた理由がわかれば教えてほしい。
【DPI日本会議】詳細は把握していないが、働きかけをしたが対応がなされなかったと聞いている。
〇 長寿命化計画の中で、順次バリアフリー化しており、来年度から入学するとしても該当する学校の整備が数年後ということで、在籍期間中には間に合わないということが多いと認識している。公立の小中学校が特別特定建築物になった2020年以降は、市長まで要望が上がったことで市長の決断で学校のバリアフリー化の順番を入れ替えて、配慮のいる児童生徒が入学するのに間に合うように整備してもらったという事例もあると聞いているが、残念ながらこのような例は少数。他には、要配慮児童生徒の中学校への入学に際して小学校の段階から当該生徒を把握したり、小学校に入学する児童の希望を幼稚園や保育所と連携して把握して小学校入学時にできるだけ間に合うように整備を進めたり、といった事例もある。こういった対応がスタンダードになるようにしてもらえるとありがたい。
〇 事務局の方でも好事例を情報収集してほしい。
【日本視覚障害者団体連合】見えにくさを感じる人たちの中には、明るさに関しても順応しにくい方もいる。校庭から校内に入るときに明るさに順応できない、また、その逆もある。照明の付け方により、移動に困難が生じるということも、配慮の一つに入れてほしい。
〇 インクルーシブ教育の中で、光環境をどのようにするかも重要な視点。
【全国脊髄損傷者連合会】点字ブロックについて、車椅子使用者にとってはぼこぼこして体感に良くないようなものもあるが、今はゴム製で、車椅子使用者にも優しいものあるので、そのような配慮も必要。
<日本発達障害ネットワークヒアリング>
【日本発達障害ネットワーク・三澤副理事長(市川宏伸委員代理)】
・発達障害の児童生徒にとって、感覚調整が可能なLEDライトや遮光性の高いカーテン、状況の応じて使い分けのできる設備やスペースがあるといい。間仕切りスペースやスライドドアの設置などで区切られた空間が確保でき、外部刺激を遮断できる。発達障害の特性上、カームダウン、クールダウンといった安心安全な場所を確保できると、安心して学校に通うことができるのではないか。
・情報提供の在り方について、発達障害の児童生徒等にとって、学校の教室の空間は情報過多の傾向にあり、明日の時間割の表示が正面にあったり、当日のスケジュールがなかなか確認できなかったり、情報の整理・選択が困難な状況にある。必要最低限の情報提供ということも配慮の一つ。現在進められているICTの有効活用で、視覚情報、音声情報による情報提供などの対応を進めてもらえるとありがたい。文字情報の理解や、口頭での理解に困難を抱えている児童生徒に対して、ICTを活用して、児童生徒の状況に応じた情報提供をする、という視点ももってほしい。
・個人用のボックス、ロッカーについて、名前や数字だけでなく、一目で、自分のものだとわかるような配慮も必要。他の児童生徒とのトラブルを避けることにつながる。
・教室内での配置についても、障害の特性、認知特性に応じて配慮されるように検討してほしい。
・校内移動の円滑化について、エレベーターの整備が推進されている一方で、構造上の理由などで設置がなかなか進まない場合もある。こういった場合には、状況に応じて、スロープを設置するなどの対応も並行して検討してほしい。災害時の資材運搬にも使えるので、有益ではないか。
・案内表示について、明朗性と予測可能性という観点で検討してもらえるとありがたい。校内全体の配置については、平面図もしくは一部立体図で示すこともあるかと思うが、空間的な認知が難しく、場所の位置関係の把握が難しい児童生徒もいるので、認知特性に応じた対応が必要。例えば、廊下に動線を表示することで、赤の矢印をたどっていけば体育館につながっている、場所が変わったとしても複数の動線でここをたどれば目的の場所に到達できる、といった配慮もあるといい。階ごとに色を変えて、今いる階が何階なのか認知しやすくすることも有効。
・トイレの整備について、洋式トイレの整備が増えてきていると思うが、日常生活と同じ生活環境、仕様に揃えていく視点も必要。例えば、男性用便器については日常生活での利用がないので、学校での利用が困難なケースがあると聞いている。男女共同のトイレも考えてもいいのでは。災害時などにも、女性トイレに列ができるということもあるので、有効なのでは。障害者が使えるトイレが各階にあるというのも重要。多様な利用者への対応として、体育館周辺にトイレを設置しておくと、運動会などで多数の保護者が集まったときにも有効なのではと思う。
<委員より質疑応答・意見交換>
〇 病院などで、床や壁などにサインをつけているようなケースはあるが、学校の床でサインを設置したケースがあれば、教えてほしい。
【日本発達障害ネットワーク】駅など主要な場所やホテルの案内表記などで、写真でこの交差点を右に曲がるといった案内があるが、このような動線の誘導があるとわかりやすい。小学校の場合は、6年間通うので、子どもたちも認識はできるが、様々な要因で、教室がいつもと違う場所に変わった場合などはわかりやすい視覚的な情報があると有効。小学校でも保護者向けのイベントなどの際に対応されている例を見かけることがある。
〇 発達障害の児童生徒で、サイン等を理解するために、学校の中で事前に学習生活を体験するということはどのくらい行われているのか。
【日本発達障害ネットワーク】事前学習が重要であることは十分承知しているが、サインなどへの理解は、幼少期からの連続性の中で認知されてくるもの。国土交通省の会議でも、ピクトグラムの統一化をしていくことが、継続性という意味においても重要、とされている。
議題2:地方公共団体における学校施設のバリアフリー化に関する取組状況について
議題3:視察報告
・根本委員より資料2に基づき説明。
・事務局より資料3に基づき説明。
・議題2に関して、階段昇降機の仕様、要配慮児童生徒の入学の予定の把握、地域の障害者や住民の声を聞く機会を設けることについて、質疑応答があった。
・議題3に関して、床の色と点字ブロックの色調明度差、点字ブロックの仕様について、質疑応答があった。
・そのほかの意見は以下のとおり。
〇 紹介いただいた自治体の取組について、文部科学省の整備目標を意識して計画をつくられて実施されているという点、非常に感心した。学校のバリアフリーの整備をあまり意識されていない教育委員会、学校設置者が多いと感じることがある。長寿命化計画をつくっているからそれで十分だと言わんばかりの残念な対応が多いので、こういった自治体もあるということに大変勇気づけられた。
車椅子使用者にとっては、キャタピラー式の階段昇降機とキャタピラー式でない階段昇降機では、かかる時間やストレスが全然違い、特にキャタピラー式は荷物扱いを受けているという自尊感情を損なわれる感じがぬぐえない。
〇 要配慮児童生徒の入学予定を事前に把握しているような自治体、あるいは地域の障害者や住民の声を聞きながらつくっている自治体の事例があれば紹介いただきたい。
〇 行き先を全部色分けすると大変なことになるが、少なくとも、庁舎等の公共的な施設によくあるように、階ごとに区分けをするだけでも分かりやすさはだいぶ変わってくるのかなと感じる。
〇 紹介いただいた自治体が、学校現場の声をよく聞いて工夫されていると感じた。学校側からすれば、子どもたちのいない夏休み中に何としても工事を終えてもらわないと、子どもたちの動線上の安全、工事によって発生する音が気になる。実際にはバリアフリー化の工事以外にも、LED化や天井構造物といった様々な工事が入っている状態の中で、うまく工夫して進めていき、次年度送りでなく、何とか一年でも早く進めていくというのは非常によいと思う。
大きなストレッチャーでも入れるエレベーターにしてほしいという声が現場から常にあがっている。小学校中学校9年間ストレッチャーで通常の学級で過ごした子もいる。交流及び共同学習で、特別支援学校から来校する実態などにも対応するためには必要である。それがないために、居住地の学校では居住地校交流としての受入れが難しくて、離れている遠くの学校へというケースもある。誰でもトイレなどのバリアフリー設備も、各階にないと、授業の移動時間の制限などもあって困る、といったニーズがいろいろとある中、改築に合わせて整備していくときに一年に一校しか着手しないとすると、とても時間がかかる。待っていられないので、今できることは何かということで、階段昇降機などまずやれることと二段構えで、取り組んでいくのはよいと思った。
〇 自治体で、バリアフリー化全体の計画を立てたとしても、相当の期間がかかるかと思う。間隙を縫ってどのようにしてバリアフリー化の計画を組み立てるかということは非常に重要な課題かと思う。ハードだけではなく、運用もどのようにするかというのも非常に重要なので、特に現場の皆様からいろいろな知見をいただくことが大切かなと感じた。
改修だと夏休みにしか工事ができないというのは、どの種の学校でも同様かと思う。やはり早め早めに先取りをして改修の計画を立てていく、予算の区分けをしていくようなテクニックが重要だと思うので、そういうノウハウも、他の学校や自治体にも伝えていくようなことが今後できるといい。
・事務局より資料4に基づき今後の日程等について連絡。
・髙橋部会長より閉会の挨拶。
―― 了 ――