原子力損害賠償紛争審査会(第68回) 議事録

1.日時

令和7年1月27日(月曜日)13時33分~15時20分

2.場所

文部科学省内会議室及びオンライン

3.議題

  1. 東京電力ホールディングス株式会社による賠償の現状及び今後の対応について
  2. 損害賠償請求の集団訴訟の状況について
  3. 住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の取扱いについて
  4. 原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況について
  5. 賠償の請求を促す広報等の取組状況について
  6. 地方公共団体等からの主な要望事項について
  7. その他

4.出席者

委員

内田会長、樫見会長代理、明石委員、江口委員、大村委員、織委員、鹿野委員、古笛委員、富田委員、中田委員

文部科学省

赤松文部科学大臣政務官、堀内研究開発局長、清浦原子力損害賠償対策室長、上田原子力損害賠償対策室室長代理、本橋原子力損害賠償対策室次長

オブザーバー

【説明者】秋本東京電力ホールディングス株式会社福島復興本社代表兼福島原子力補償相談室長、弓岡東京電力ホールディングス株式会社福島復興本社副代表、田中原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)室長、堀原子力損害賠償紛争和解仲介室(原子力損害賠償紛争解決センター)次長

5.議事録

【内田会長】  それでは、時間になりましたので、第68回原子力損害賠償紛争審査会を開催いたします。本日は、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日は全委員が会場参加ということで、コロナ以降初めてではないかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、本日は赤松文部科学大臣政務官に御出席いただいております。まず最初に御挨拶をいただければと思います。赤松政務官、よろしくお願いいたします。
 
【赤松文部科学大臣政務官】  昨年11月13日に文部科学大臣政務官兼復興大臣政務官を拝命いたしました赤松健でございます。本日は御多忙の中、第68回原子力損害賠償紛争審査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。審査会の開会に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
 東京電力の福島原発事故から間もなく14年が経過しようとしております。この間、復興庁を中心として、本件事故からの復興に向けた取組が着実に進められていると認識しております。原子力損害賠償についても、文部科学省としては引き続き、迅速、公平かつ適正に賠償が実施されるということが重要であると考えております。
 具体的には、令和4年12月に策定された中間指針の第五次追補を踏まえた東京電力による追加賠償に加えて、令和5年8月末から実施されているALPS処理水の海洋放出に係る風評対策は政府一丸となって取り組んでいるというところでございますが、それでもなおも生じる風評被害については賠償等の取組が行われていると承知しております。
 本日の審査会では、これらの問題に関する最近の状況も含めて、東京電力による賠償の現状及び今後の対応についての御説明、損害賠償請求の集団訴訟の状況に関する審議などが行われると伺っております。内田会長をはじめ、委員の先生方におかれましては、今後とも被害者の方々に寄り添い、引き続き、迅速、公平かつ適正な賠償が適切に進むよう有意義な御議論をよろしくお願い申し上げます。
 以上です。
 
【内田会長】  どうもありがとうございました。
 赤松政務官におかれましては、公務のためここで退席されます。どうもありがとうございました。
 それでは次に、事務局から資料等の確認をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第に記載のとおりでございます。資料に不備等がございましたら、議事の途中でも結構でございますので、事務局までお声がけいただければと思います。
 また、本日は会場での対面とオンラインを組み合わせましたハイブリッド形式での開催となっております。御発言の際の注意事項につきましては、机上配付資料または事前にお送りしている資料を御確認いただければと思います。
 なお、本日は、過半数以上の委員の皆様に御出席いただいており、会議開催の要件を満たしておりますことをあらかじめ御報告させていただきます。
 また、原子力損害賠償紛争解決センターの総括委員会委員長及び委員につきまして、富田善範委員長、橋本副孝委員の任期満了による御退任に伴い、本年1月8日付で足立哲委員長、佐谷道浩委員が内田会長より指名されましたので、この場を借りて御報告いたします。
 以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。まず、議題1の東京電力ホールディングス株式会社による賠償の現状及び今後の対応についてのうち、まずは原子力損害賠償のお支払い状況等と第五次追補を踏まえた追加賠償に係るお支払い状況、そしてALPS処理水放出に関する賠償の取組状況について、東京電力から御説明をお願いいたします。
 
【秋本代表】  東京電力ホールディングス株式会社福島復興本社の代表で、現在、福島原子力補償相談室長も兼務しております秋本と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 福島第一原子力発電所事故から間もなく14年を迎えようとしておりますが、今もなお福島県及び広く社会の皆様に多大なる御心配と御負担をおかけしておることにつきまして心より深くお詫びを申し上げます。
 また、内田会長をはじめといたしまして、原子力損害賠償紛争審査会の委員の皆様におかれましては、中間指針第五次追補を決定いただくなど多大なる御尽力をいただいております。この場を借りまして、心よりお礼を申し上げます。
 当社はこれまで、事故により被害を受けられた方々が一刻も早く生活再建や事業再開を果たし新たな生活を始めることができるよう、紛争審査会での審議内容や閣議決定等を踏まえまして、全社を挙げて賠償の貫徹に取り組んでまいったところでございます。また、中間指針の第五次追補等を踏まえた追加賠償に関しましては、これまでに対象となる約148万人の方々のうち約9割の方々への支払いが完了いたしました。当社にとりまして、福島の責任を貫徹すること、これは私ども東京電力の最大の使命でございます。
 引き続きまして、3つの誓いに掲げております、最後の一人まで賠償貫徹、迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、和解仲介案の尊重、この3つに基づきまして、個別の御事情を丁寧にお伺いして適切に賠償を進めてまいります。
 本日は3点について御説明をこれからさせていただきますが、資料の詳細につきましては、この後、福島復興本社の副代表を務めております弓岡のほうから御説明をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
 
【弓岡副代表】  それでは、東京電力ホールディングス福島復興本社副代表を務めております、弓岡でございます。賠償金の支払い実績等につきまして、私から御説明いたします。
 まず、お手元の資料1-1「原子力損害賠償のお支払い状況等」を御覧ください。賠償の御請求・お支払い等実績は、個人、個人の自主的避難等に係る損害、また、法人・個人事業主などに分かれております。個人及び個人の自主的避難等に係る損害の項目には、中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償以外にも、以前からお支払いしております個人の方への精神的損害や自主的避難等に係る賠償を含めた件数及び金額を記載しております。
 中ほどのお支払い総額のところを御覧いただきますと、昨年12月末時点で約11兆4,618億円をお支払いさせていただいております。前回第67回審査会にて御報告させていただいた昨年8月末時点のお支払い総額と比べ約924億円増加しております。下のグラフが賠償のお支払い額の推移でございます。グラフの一番右側ですが、下から2番目のグレーの部分が個人の方へのお支払いで約3.53兆円、その上の法人・個人事業主の方へのお支払いが約7.33兆円、そして一番上の個人の自主的避難等に係る損害へのお支払いが約0.45兆円となっております。
 また、グラフの下となりますが、消滅時効に関する当社の考え方を記載しております。当社といたしましては、時効の完成をもって一律に賠償請求をお断りすることは考えておらず、御請求者様の個別の御事情を踏まえ、消滅時効に関して柔軟な対応を行わせていただくことを表明しておりますが、実質的には時効を援用し御請求をお断りすることは考えていないという趣旨でございます。
 続きまして、弊社資料で申しますと2ページ目以降でございますが、参考資料としまして、個人の方に対する賠償の合意状況、3ページ目が賠償項目別の合意金額の状況、4ページ目に原子力損害賠償請求訴訟等の状況、そして原子力損害賠償に向けた組織体制、未請求の方々の状況を記載しております。
 なお、福島原子力補償相談室全体では、1月1日時点で約2,890人の体制となっております。第67回審査会にて御報告した昨年9月1日時点の約3,670人から約780人減少しておりますが、追加賠償や処理水賠償のお問合せ、御請求の状況などを踏まえて見直しをさせていただいた結果でございます。引き続き適切に賠償を行えるよう、体制を見直してまいりたいと考えております。
 また、未請求の方々の状況についてでございますが、12月末時点で605名の方が未請求となっております。中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償の御請求の御案内の機会などを捉えまして、損害の状況を丁寧にお伺いしながら、御請求いただいていない損害項目についても御請求いただくよう御案内しており、第67回審査会において御報告した昨年8月末時点と比べますと、新たに5名の方に御請求をいただいた状況でございます。引き続き、対象の方から御請求いただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 それでは続きまして、中間指針第五次追補等を踏まえた追加賠償の対応状況について御説明を申し上げたいと思います。お手元の資料1-2を御覧ください。1月20日現在、追加賠償の対象の約148万人のうち約140万人の方の御請求書の発送受付やウェブ請求を受け付けしており、前回の審査会から約1万人増加しております。追加賠償の御請求・お支払い実績につきましては、対象の約9割に相当する約134万人の方から御請求いただいております。このうち約132万人の方にお支払いをさせていただいております。こちらは前回から御請求受付で約3万人、お支払い完了で約3万人、それぞれ増加しております。
 前回の審査会以降の取組につきましてですが、御請求をいただいていない方への対応を資料の下段、③に記載しております。福島県内を中心に新聞やテレビで追加賠償の広告を出稿しており、また、自治体様の御協力をいただきながら、広報誌への折り込みチラシなどを通じ、御請求の御案内に取り組んでまいりました。
 また、臨時ご相談窓口をこれまで23か所で開設しておりますが、前回の審査会以降8か所を開設いたしました。窓口では御請求書作成のお手伝いなどをさせていただきましたが、御利用いただく方の大半が御高齢の方の中、近くに相談できる場所があって助かった、請求を進められず困っていたので今回作成支援していただいて助かったなどのお声を頂戴しております。また、これまでも電話や訪問により御請求書作成のお手伝いをさせていただいておりますが、御請求受付開始から約2年間で約1,800件、そのうち、御高齢の方へ約890件、訪問による御請求書作成のお手伝いをさせていただいております。亡くなった母の請求が気になっていたので自宅に訪問して対応してもらえるのは大変ありがたいなどのお声も頂戴しております。引き続き、御高齢の方も含め、電話や訪問などによる丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております。
 以上のとおり、対象の方から御請求いただけるよう取り組んでまいりましたが、現在、当社に御請求いただける方がさらに少なくなってきている状況ではございます。まだ御請求いただいていない方の状況の分析を現在進めておりますが、現時点での概算を少し御報告させていただければと思います。
 いまだ住所を把握できていない方、これが148万人のうち約8万人ほどおられますが、そのうち転居された方が約6割、御逝去された方が約4割と想定しております。引き続き、自治体様の広報誌等への御案内の掲載及び臨時ご相談窓口の開設などに取り組んでまいります。そして御逝去された方については、当社が保有するデータを基に確認できる一部の相続人の方にダイレクトメールなどによる御案内を予定しております。
 また、当社から御請求書を発送した方のうち御請求書を御返送いただいていない方の中で御返送いただいていない理由をお伺いした方の中で、約5割、約半数が、今は忙しいので自分のタイミングで請求するなどの理由によって現時点での御請求を希望されないというケース、また、約1割の方ですが、これ以上追加の賠償は不要などの理由によって請求意思が現時点ではないという方もおられます。弊社としましては、御請求に期限は設けておりませんので、引き続き対象となる方の個別の御事情を丁寧にお伺いし、適切に対応してまいりたいと考えております。まだまだ至りませんが、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 続きまして、ALPS処理水賠償の支払い状況等に関する資料の御説明をさせていただきます。これはお手元の資料1-3を御覧ください。ALPS処理水放出が決定されました2023年8月22日以降、2025年1月22日時点で約430件(※正しくは約440件。以降に修正の発言あり。)、約520億円の賠償金をお支払いしてきております。御請求の大半は、外国政府からの輸入停止措置等に関する被害となっておりまして、輸入停止措置等により国内の事業者様に発生した被害に対して適切に賠償させていただいてきております。
 今後もしっかり取り組んでまいりたいと考えておりますが、賠償に関するお問合せは引き続きご相談専用ダイヤルで伺うとともに、弊社ホームページ等で分かりやすい情報発信に努めてまいりたいと考えております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 私からの御説明は以上でございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの東京電力からの御説明について、まとめて御意見、御質問等をいただきたいと思います。どこからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。鹿野委員、どうぞ。
 
【鹿野委員】  御説明ありがとうございました。私からは2点質問させてください。
 1点目は、資料の1-1の4ページ目のところでございます。この4ページ目の一番下に参考ということで、未請求の方々の状況ということで数字が紹介されているところです。そこで、未請求の方々の中でも請求の御意向がある方々についてですが、その方々がどういう状況にあるのかというのを、先ほど全般的な状況については御説明があったところですが、そこについてさらに確認させていただければと思います。
 具体的には2024年8月末から比べると12月末までに2名減ということになっているのですが、これは意向がある方々のうち、この期間内に2名請求されたと、そういうことで未請求からは外されているという理解でよろしいのでしょうか。その点についても、もし分かれば教えていただきたいと思います。
 それからもう1点ですが、資料1-3の、全体のページ数でいうと7ページのところでございます。ここで、ALPS処理水放出に関する賠償の取組状況ということで御報告をいただきました。この黒丸の2番目のところで御案内いただいたように、請求の大半は、外国政府からの輸入停止措置等に関する被害ということで御報告があったのですが、輸入停止措置以外のものでもやはり賠償の対象となっているというものがあるのか、その割合がどれぐらいなのかということが分かれば教えていただければと思います。よろしくお願いします。
 
【内田会長】  それでは、よろしくお願いいたします。
 
【弓岡副代表】  それでは、弓岡のほうから御説明申し上げたいと思います。
 まず、1点目の未請求の方々の状況でございます。御指摘のとおり、御請求の御意向がある方の2名という方、これは今般、以前から未請求の方々の対応をさせていただいておりますが、第五次追補等の追加賠償がありました関係で、前回の原子力損害賠償紛争審査会で、随分減ったというお話をさせていただきました。
 今回もこの5名の方が減ったのですが、第五次追補の関係で接触を持たせていただいた際、減っておりますが、これもいずれも個別具体的な話になりますので少し控えながらお話はさせていただきます。5名の方の内2名は御請求の意思があったのですが、減った5名の方は全て実はお亡くなりになって、御相続の関係の方から今後請求をまた改めてしようということで5名減ったということになります。したがいまして、内数のこの2名の方も、御指摘のとおり、御意向はありましたが、御逝去の後、相続をされる方が改めて請求をしたいということで、2名お受けいただいたということが内訳でございます。こういったこともありますので、どうしても、お亡くなりになられた方々にも丁寧に今後対応をしっかりさせていただきたいというところが、1点目でございます。
 2点目、処理水の関係の賠償の関係でございますが、これは正直申しまして、ほとんど中国や香港の禁輸で大きく全国的に損害が出ております。これは漁業者様、また、その関係で水産加工や水産流通という事業者様はじめ、様々な方面で被害が出ております。何割ということはこの場では控えさせていただきますが、ほとんど禁輸関係でございます。風評関係というような視点もあろうかと思っておりますが、現時点では、これは一般論でございますけれども、もちろん風評の関係というのはもう油断もできませんし全く分からないと思っておりますが、現時点で申し上げられるのは、禁輸で全国的な被害が出た、それに対する賠償ということでお答えをさせていただきたいと考えております。
 まず、副代表の私からでございますが、続きまして代表のほうから。
 
【秋本代表】  秋本でございます。今、弓岡が御回答申し上げたとおりでございますけれども、後段の処理水に関していいますと、これは始まる当初というのは、やはり大規模な国内での買い控えといったような形の被害が出るのではないかということをある意味非常に我々も心配をしていたところでございました。しかしながら、少なくとも今の段階において、懸念していたようないわゆる大規模な買い控えというものは顕在化していないと認識してございます。したがいまして、今この処理水賠償で御請求いただいているのも、ほぼほぼ大半は禁輸に伴ういわゆる実害といいますか、そういったところになっているということでございます。
 ただ、当然、新たな例えば輸入禁止措置が出るかもしれないとか、今後どういった状況になるか分からないというところもございますので、引き続きそこは昨今の状況、今、中国のほうも、新たな処理水のモニタリングのプログラム参画といった形で動きがあります。そういったところも引き続き注視しながら、適切に対応してまいりたいと、考えているところでございます。
【弓岡副代表】  すみません、弓岡でございます。1点だけ訂正させていただきます。資料1-3の支払いは、440件となっております。私、先ほど口頭で430件と申しましたが、資料に記載のある440件が正しいので、訂正させていただきます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ただいまの回答で鹿野委員よろしいでしょうか。
 
【鹿野委員】  ありがとうございました。御説明よく分かりました。御説明は分かったのですが、特に第1点についての御回答を伺うと、やはり賠償請求のご意向があった御本人が亡くなられるというケースもあるようでして、一層、早く賠償が進むということが望まれると思いました。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかに御意見、御質問ありますでしょうか。どうぞ、江口委員、お願いします。
 
【江口委員】  江口でございます。私としては、資料1-1の4枚目に出てまいります原子力損害賠償に向けた組織体制のことで1点お伺いしたいんですが、この中で補償相談ユニットに補償相談コールセンターというのが出てまいります。この補償相談コールセンターですけれども、例えば直近の12月とか一月間にどのくらいの電話が入っているというような把握はされているでしょうか。その電話の中でも、主にはもともとの慰謝料請求が多いのか、あるいは第五次追補関係が多いのかというような内容について何か把握されているでしょうか。
 と申しますのは、前回9月のときに頂いた資料だと、8月末のコールセンターの人数は300人と出ていたんですけれども、今回1月1日時点で170人とかなり大幅な人員減をされたということは、8月までと電話の少なくとも件数等で何か大きな変化があったということなのかなと思ってお聞きした次第です。
 
【内田会長】  それでは、東京電力のほうからよろしくお願いいたします。
 
【弓岡副代表】  東京電力、弓岡でございます。まずもって、コールセンターの件につきましては、一昨年、また開始当初なかなかつながらない点がございまして、本当に申し訳ございませんでした。急激に人も増やしまして、また、その後しっかり対応させていただきまして、最近ではまず応答率という観点では、昨年はほぼ100%というような状態で、お待たせするようなことのないような対応をさせていただいております。
 あと、御指摘の点、数字については集約をしておりますけれども、まず、コールセンターに入る入電の数というのは、これもおかげさまで第五次追補及び処理水賠償の関係いずれも相当数が減っております。処理水賠償ですと、簡単に御説明申し上げますと、本当に1日数件あるかないかというような状況で、コールセンターは処理水以外全般の問合せのほうがやはり全体的には多いという状況になっております。具体的な入電状況の数を今リスト的に申しますと、以前の数というのはものすごく多かったのですが、五次追補の関係で多いときで1日200件を少し超える、1月22日などは321件というのもございますし、あと、五次追補以外ですと72件というような状況でありまして、この中に処理水が1日数件あるかないかというのが大体の生の数でございます。
 ただ、これ、以前はこういった300とかいうレベルではありませんでしたので、今、この人数でもかなり余裕がある形で受けていると考えているところではございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 
【江口委員】  はい。ありがとうございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。それでは、ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。織委員、どうぞ。
 
【織委員】  ありがとうございます。今のコールセンターの絡みですけれども、当初視察に行ったところ、コールセンターのつながりが悪いとか、なかなか待たされてしまう、電話が回ってしまうので、かけても無駄だというような御意見があったということを東電の方にお話ししたところ、いや、今その状況は大分改善されているというお話だったと思います。
 今、応答率100%というのは、まさにそういうふうに改善されている状況だと思うんですが、この状況が改善されたということが、住民の方にどれぐらい周知されているんでしょうか。結局今まであんまり、電話をたらい回しにされてしまうとか、かけてもなかなか通じないというイメージがあって、かけ控えをしていらっしゃる方ももしかしたらいらっしゃるかもしれないんですけれども、そういった方たちに対して、今、状況が改善していて100%の応答率になっているということがどれくらい回っているのかなというところがちょっと気になりました。
 以上です。
 
【内田会長】  それでは、よろしくお願いいたします。
 
【弓岡副代表】  弓岡でございます。本当にまず、先ほどもお詫び申し上げました、一昨年、請求開始当初は本当に御迷惑をおかけしまして、申し訳ございませんでした。今、織委員のほうから御指摘いただいた点、これは前回も御指摘いただいておりまして、しっかり対応をさせていただいております。すなわち、改善はしたけれども、そもそもかけても無駄だとか、あるいは東電はどうせやってくれないというような思いを抱いておられる方々も一定おられると認識しております。したがいまして、当社のほうからPRをさせていただくという必要性を感じております。
 したがいまして、当社ホームページでは、現在コールセンターがかなりつながりやすい状況であるということを広報させていただいたり、また、ご相談窓口の御案内チラシ、臨時ご相談窓口を最近でも8か所を開いておりますが、こういったところで御案内のチラシでしっかりとコールセンターの状況についてお知らせをして、お問合せいただきたいということを重ねて御案内を申し上げておるところでございます。弊社のほうでも初期の至らぬ点のため、やはりしっかりPRしなければ、まだまだお声がけいただけないようなこともあり得ると考えておりますので、こういった努力をしておりますが、引き続き重ねて対応してまいりたいと考えております。ありがとうございます。
 
【内田会長】  よろしいでしょうか。
 
【織委員】  ありがとうございます。
 
【秋本代表】  1点追加で補足いたしますと、補償相談室として今申し上げましたようなホームページや窓口等での御案内をしておりますが、東京電力は実は地元等の方においては自治体様と賠償以外の領域、例えば地元の復興、地域の復興に関するお手伝いとか、そういったところでいろいろなコンタクトのポイントを持ってございます。そうした接点の場でも時々、賠償のコールセンターが前はつながりにくかったというような話が出ることがございます。
 そのようなときには、当時は確かにそういった形で非常に御迷惑をおかけしたということでありますが、最近ではほぼ100%つながるような状況になっているということでありまして、住民の方からお問合せ等がもし自治体様にあった場合には、東電のコールセンターにつながるからかけてもらえばいいんじゃないですかというようなことをお伝えいただいていると、こういった取組をしてございますので、私どもと地元の方とのあらゆる接点の中で、こうした今の最新の情勢等についてもしっかりとお伝えをしてまいりたいということでございます。
 以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。どうも御回答ありがとうございました。
 
【織委員】  よろしいですか。
 
【内田会長】  織委員、どうぞ。
 
【織委員】  ありがとうございます。追加でおっしゃられていた地元との接点でというのは、すごく重要なところだと思います。幾つかのリスクコミュニケーションの社会心理学の調査でも、一番行動変容を起こしやすいというのは、自分の身近な人たちが実際に行動を起こしているという情報が人の行動変容を起こしやすいというデータも出ておりますということなので、井戸端会議とかちょっとした話で、きちっとコールセンター行くとこういうことができるんだねとかという話が出てくると行動につながりやすいので、そういった地元のネットワークみたいなところに入り込まれてやってきていらっしゃるというのは、多分ホームページとかそういったものよりも届きやすいと思いますので、ぜひ続けていただければなと思います。ありがとうございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。それでは、ほかに。では、明石委員、どうぞ。
 
【明石委員】  どうも、明石でございます。ALPSの処理水の件なんですが、これは今後いろいろな外国の事情等で実際の停止措置が仮に緩和されてきた場合でも、消滅時効に関する当社の考え方と同じようにずっと同じように続くと考えてよろしいんでしょうか。
 
【内田会長】  では、御回答いただけますでしょうか。
 
【弓岡副代表】  大変申し訳ございません。ちょっと音が割れてしまいまして、「これが続くというのでよろしいでしょうか」だけ聞こえたんですけれども、すみません、もう一度その前の御質問をお願いしてもよろしいでしょうか。
 
【明石委員】  ALPS処理水に関してで、これは外国の情勢等で実際の停止措置が仮に緩和されてくるとした場合でも、これは同じように消滅時効に関する当社の考え方にのっとって、そのまま同じように続くと考えてよろしいんでしょうか。
 
【弓岡副代表】  すみません、申し訳ございません。処理水賠償が今後もし禁輸が解除になった場合に続くかどうかという御質問と理解いたしましたが、よろしいでしょうか。
 これはまず、今様々報道されておりますとおり、中国でもいろいろな動きが、日本も外交上の問題がいろいろあると認識しております。弊社といたしましては、まずこういった動きの中でも継続的に処理水の賠償を続けていくということが前提になります。また、完全に禁輸が解除されたような場合ですけれども、この場合でも、まず今、禁輸措置に係る賠償が中心だというお話をさせていただきましたが、急に中国の国内の水産事業者が全て立ち直るということもないと考えておりますので、中国や海外の輸出の実態を見ながら、賠償を続けてまいる必要があると考えております。
 また、現在こういった賠償が中心だというお話をさせていただきましたが、その後、風評の関係等も、今後そういった解除があった後、万が一解除がうまくいった場合でも風評の問題というのは残ると考えておりますので、しっかりこの賠償体制は継続していくものという前提で今、体制も考え方も考えておるところでございます。
 
【内田会長】  ありがとうございました。ただいまの回答でよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 ほかには御意見、御質問ありますでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 本日は東京電力による賠償の現状及び今後の対応について東京電力に御説明をいただきました。これまでもお伝えしていることではありますけれども、中間指針というのは、類型化が可能で一律に賠償すべき損害の範囲や項目の目安を示したものであり、第五次追補の中では、指針が示す賠償額の目安が賠償の上限ではないということ、指針において示されなかったもの、示されなかった損害や対象区域として明示されなかった地域が直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められるものは全て賠償の対象となると明記されています。これらの点は審査会における議論の中でこれまでも指摘がされてきた点であり、重要な点ですので、改めて今回も申し上げておきたいと思います。先ほどの風評被害についても同じ理屈が妥当するということかと思います。
 第五次追補に係る支払いの手続につきましては、前回審査会以降も進捗は見られるものの、まだ道半ばでありまして、東京電力には引き続きしっかりと対応していただくことが重要であると考えております。また、消滅時効を援用しないという考え方につきましても東京電力から御説明をいただきましたけれども、この点の対応についても重要であると考えております。東京電力におかれましては、第四次総合特別事業計画において示された3つの誓いの遵守を引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。損害賠償請求の集団訴訟の状況について、事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  損害賠償請求の集団訴訟の状況につきまして、事務局より御説明いたします。
 資料2-1を御覧ください。今回御報告する訴訟の一覧です。東電福島原発事故に伴う損害賠償請求の集団訴訟について、令和6年9月から本日までに、高裁で1件、地裁で1件の判決言渡しがございました。これら2件については、国及び東京電力ホールディングス株式会社が被告となっている案件であり、原告らから上訴がなされていると承知しております。
 また、令和6年3月13日の福島地裁いわき支部判決については、東京電力ホールディングス株式会社が単独で被告となっている案件であり、判決が確定しております。本判決文の公表が昨年9月上旬であり、第67回審査会では御報告できなかったため、今回御報告させていただきます。
 まずは、確定した判決についてです。資料2-2を御覧ください。令和6年3月13日の福島地裁いわき支部判決で、こちらについては具体的な地区名が伏されて公表されています。本件は、福島県のいわゆる被災12市町村、具体的には帰還困難区域及び居住制限区域に居住していた原告らが、本件事故によって避難生活を余儀なくされ、また、地域社会が剥奪されたことによって精神的損害を被ったとし、慰謝料等を請求した事案です。なお、本件については、原告158名のうち、148名については令和6年2月28日に訴訟上の和解が成立しており、残る10名について判決が言い渡されたものです。
 判決の概要についてです。本判決では慰謝料を、①避難を余儀なくされた慰謝料、②避難継続慰謝料、③故郷喪失・変容慰謝料に分類し、まず、①避難を余儀なくされた慰謝料については、1人当たり150万円を認定しております。次に、②避難継続慰謝料については、審査会が定めた中間指針等、特に第五次追補を踏まえ、被告が1人当たり850万円を支払うこととしており、被告の責任を考慮するとこの額は相当なものであるとしております。また、③故郷喪失・変容慰謝料については、本件事故当時に生活基盤を置いていた生活の本拠たる地に設定された避難指示ごとに区分を定めることが合理的とし、帰還困難区域については故郷喪失慰謝料として1人当たり600万円、居住制限区域については故郷変容慰謝料として1人当たり130万円を認定しています。
 3ページ目には、認定された慰謝料額と、第五次追補を踏まえた東電の基準、中間指針ないし第五次追補、過去の確定7判決の認定額を比較した表を掲載しております。この表にお示ししたとおり、本判決における認定慰謝料額等については、中間指針ないし中間指針第五次追補と大きな相違はなく、また、新しい観点は特段含まれていないものと認識しており、第五次追補策定の際の議論で考慮した令和4年3月の7つの確定判決の認定慰謝料額の範囲に収まっているという状況です。以上の内容が当事務局にて簡易的に分析を実施した結果となります。
 続きまして、確定していない判決について御説明いたします。こちらについては2件ございますが、いずれも上訴がなされております。判決文の全体版につきましては、机上配付資料として卓上のiPadに格納しておりますので、そちらを御覧いただければと思います。判決文につきましては、機微な情報を含みますので、委員の方々のみ御覧いただけるようにしております。なお、説明の中で申し上げるページ数は、iPadに格納している各判決のページ番号と対応しております。各判決では、国の責任の有無やその理由などの責任論についても述べられていますが、本日御説明するのは、損害論の部分、その中でも特に精神的損害に関する部分です。
 それでは、1件目の広島地裁の判決です。机上配付資料1を御覧ください。令和6年10月16日に判決が言い渡され、最終的な原告数は37名です。原告らは精神的損害への賠償を請求しています。
 23ページでは、平穏生活の利益の毀損による精神的損害が、被告東電において賠償する責任を負う原子力損害であると認められるためには、本件事故と平穏生活の利益の毀損との間に相当因果関係が認められなければならないとしており、避難前に原告らが居住していた区域ごとに相当因果関係を判断しています。
 25ページから26ページでは、慰謝料額の算定に当たっては、避難前に居住していた区域ごとに類型的かつ一律に算定するのが相当であり、相当の避難期間に限って法律上保護されているものとして認めるのが相当であるとしています。
 具体的には、避難指示が解除された後に、避難の継続または帰還を選択するのに相当な期間の終期までとして、避難指示解除準備区域にあっては平成30年3月末日まで、緊急時避難準備区域にあっては平成24年8月末日までを慰謝料額を算定する期間とするのが相当としています。また、自主的避難等対象区域については、一般の大人は平成23年12月末日までとし、放射線への感受性が高いと一般的に言われている年少者については、恐怖や不安の高さに鑑み、平成24年8月末日までを慰謝料を算定する期間とするのが相当としています。
 なお、中間指針については、29ページにおいて、中間指針が示す損害額はあくまでも裁判外における自主的な解決のための指針にすぎないとしています。
 次に、2件目の大阪高裁の判決です。机上配付資料2を御覧ください。令和6年12月18日に判決が言い渡され、最終的な原告数は166名です。原告らは財産的損害及び精神的損害への賠償を請求しております。
 44ページでは、被告東電が損害を賠償する責任を負う原子力損害賠償について、一審原告らの居住場所や空間放射線量等に照らし、本件事故による放射線のため健康に影響を受けるとの恐怖心や不安を抱いて避難するに至り、平穏な生活という法的利益が害されたと言い得る場合は、これらにより生じた損害は本件事故と相当因果関係がある原子力損害に該当するとしています。
 66ページから67ページでは、避難の相当性について、本件事故当時、中間指針が定める避難指示等対象区域に居住していた者が避難した場合や、自主的避難等対象区域に居住しており、平成23年12月31日までに避難した場合、自主的避難等対象区域外に居住していたが、個別具体的事情により自主的避難等対象区域の場合と同等の場合、またはこれに準じる場合等について、避難の相当性が認められるとしています。
 その上で、115ページでは、本件事故により避難を実行した一審原告らのうち、避難の相当性、避難継続の必要性が認められる者については、居住地における平穏な生活を侵害されたと言えるから、一審被告東電に対し、その精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料の支払いを求めることができ、その金額は中間指針や一審被告東電の賠償基準等を踏まえた上で算定するのが相当としています。
 また、116ページでは、同一世帯の家族は避難したものの、様々な理由から避難をせず、居住地にとどまった者については、居住地に滞在を続けることにより、放射線による身体侵襲への不安や恐怖感が継続することとなるから、これらの者にも精神的損害が生じたものと考え、避難者と同等の慰謝料を認めるのが相当としています。
 なお、中間指針については、106ページから107ページにおいて、裁判所の判断を拘束するものではないことは言うまでもないが、関連する地方自治体の首長や有識者等の意見を聴取して、法学者及び放射線の専門家等の委員によって基準が策定された上、これまでの裁判例を踏まえて修正を加えられたものであることを考慮すると、指針には一定の合理性があると言えるとしています。
 大変長くなり恐縮でございますが、事務局からの説明は以上でございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明にありました判決について、御意見、御質問等をいただきたいと思います。特に御意見をいただきたいと思いますのは、判決が確定した令和6年3月13日の福島地裁いわき支部の判決についてであります。これについては、事務局の説明では、第五次追補までの中間指針で考慮されていないような新たな観点はないと考えられるということでした。この点について、審査会としてどう考えるかについては、ぜひ御意見をいただきたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。江口委員、どうぞ。
 
【江口委員】  ただいまの事務局の説明にもありましたように、判決の内容、それから、最終的な金額というところ、それと中間指針について触れられていないとはいえ、間接的には原賠審の中間指針を踏まえて被告が払っている金額については相当なものだというような説示もありますし、そういう意味ではこの判決は従前の中間指針及び確定した7判決と同一の内容で、今何か新たな検討を要する内容は含んでいないと考えます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。富田委員、どうぞ。
 
【富田委員】  内容についても説明があったとおりで、判決の内容は、中間指針ないし第五次追補の内容について再検討を要するような内容はないと考えております。
 
【内田会長】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、この判決の内容については、これまでの中間指針の策定に係る議論の中で既に考慮されているものであると考えられますので、現時点では直ちに中間指針の見直しの要否に向けた検討に着手しなければならないという論点はないと理解をいたしました。引き続き状況を注視してまいりたいと思います。
 それでは、議題2を終わりまして、次に議題3の住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の取扱いについてに入ります。これは当審査会の審議事項でございます。事務局及び東京電力からの説明を聞いた後、審議をさせていただきたいと思います。まずは、事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  事務局から、資料3-1に基づきまして御説明させていただきます。資料3-1「住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価の取扱いについて」でございます。
 1.原子力損害賠償紛争審査会におけるこれまでの検討結果につきまして、指針宅地単価の見直しの検討の考え方については、第41回原子力損害賠償紛争審査会において、次のとおり方針が取りまとめられたところでございます。
 毎年、地価の動向等を確認した上で、これまでの日本全国等の地価の変動幅を勘案しつつ、必要に応じて指針宅地単価を見直すこととする。地価の確認方法は、国土交通省土地鑑定委員会による地価公示及び都道府県による地価調査を基に専門機関が行った調査結果を確認するということでございます。また、見直し検討の際の基準は、指針宅地単価の基となった専門機関による調査結果、指針宅地単価が改定された場合は改定後の調査結果を基準値とするということでございます。次に、見直し後の指針宅地単価の適用時期については、見直し決定日から適用することが基本としております。ただし、指針宅地単価を減額する場合には、被害者が手続途中で賠償上限金額が減額されること等がないように、東京電力は改定後の指針宅地単価の適用時期に配慮することが望まれるということでございます。
 2.福島県都市部の平均宅地単価の状況につきまして、中間指針第四次追補策定時と同様の方法により専門機関に調査を委託したところ、令和6年の福島県都市部の平均宅地単価は資料の表のとおりでございます。令和6年におきましては、49,268円/㎡でございました。
 3.検討事項につきまして、今回の調査結果に基づき、福島県都市部の平均宅地単価を改定した昨年令和5年と令和6年で比較すると、金額が1,075円/㎡、変動率が2.2%上昇しており、中間指針第四次追補に示されております指針宅地単価を見直す必要があるか、また、見直す場合の指針宅地単価を幾らとするべきか、という点について御議論いただければと思います。
 次のページに参考1といたしまして、これまでの調査結果と指針宅地単価の状況を示しております。また、参考2につきましては、中間指針第四次追補の住居確保損害に係る部分の抜粋でございます。参考3につきましては、先ほど申し上げた第41回原子力損害賠償紛争審査会資料の抜粋でございますので、御参照ください。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。それでは引き続き、東京電力から御説明をお願いいたします。
 
【弓岡副代表】  それでは続きまして、東京電力のほうから御説明申し上げます。弊社のほうからは、持家に係る住居確保損害の賠償の概要につきまして、資料の3-2「住居確保損害に係る算定方法について」に沿って御説明させていただきます。
 まず、住居確保損害に係る賠償につきましては、従来の財物に対する賠償だけでは、御避難先から御帰還される際に必要な建て替えや修繕の資金が不足する、あるいは移住しようとしても新たに宅地や住宅を購入する資金が賄えないといった状況に対する改善の御要望にお応えするため、中間指針第四次追補を踏まえまして2014年7月に御案内を開始し、お支払いをさせていただいているものでございます。なお、賠償の対象につきましては、当社事故発生時点において避難指示区域内の持家に居住をされていた方とさせていただいております。
 資料を御覧いただきますと、まず、資料上段に記載のとおり、対象となる費用は、住宅の再取得・修繕費用、そして宅地・借地権の再取得費用及び諸税や登記費用等の諸費用となっております。資料の中段にございますイメージ図のとおり、住居確保損害に係る賠償は、既に宅地・建物・借地権の賠償としてお支払いさせていただいている賠償金額を超過して住居確保に要した費用につきまして、賠償上限金額の範囲内でお支払いするものとさせていただいております。資料下段にその賠償上限金額の算定方法をお示ししておりますが、宅地・建物・借地権の賠償金額と算定式により計算した対象資産ごとの賠償可能金額の合計額を賠償上限金額として設定させていただいております。
 資料の次ページに参ります。昨年2月5日の第66回審査会におきまして、移住先標準宅地単価が平米45,000円から48,000円に見直されたことを踏まえた、当社の対応の概要を記載しております。単価改定日以降に初めて住居確保損害の賠償を御請求いただく方、また、既に御請求はいただいているものの、改定日時点で確定された賠償金額が見直し前の賠償上限金額に達していない場合には、見直し後の単価を用いた賠償上限金額とさせていただいております。
 東京電力からの御説明は以上でございます。
 
【内田会長】  どうも御説明ありがとうございました。事務局の説明のとおり、資料3-1に検討事項が示されているところでございます。中間指針第四次追補において示されている住居確保損害に係る福島県都市部の平均宅地単価について、これまでも、おおむね変動率5%という線で、それを超えたら見直す、それまでは見直さなくてよいのではないかという議論をしてきたところです。これに基づいて、昨年はこのような方針の下で単価の見直しをしたわけです。
 そこで、まず、今回の調査結果を踏まえまして、今回上げる必要があるのかどうか、この点について御議論をいただき、上げるのが適当であるということになった場合には、その金額を幾らにするかについて議論するという2段階で議論を進めたいと思います。
 それでは、まず、見直す必要があるのかどうかについて、委員の皆様の御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。樫見委員、お願いします。
 
【樫見会長代理】  樫見でございます。
 今回、文科省のほうから御説明いただきましたように、福島県都市部の平均宅地単価の状況は、昨年の見直しのときから2.2%の上昇となっております。お話がありましたように、これまでの変動率5%以内にとどまっていれば見直す必要はないのではないかという立場を取りますと、今回は見直す必要はないのではないかというふうに考えます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかに御意見はありますでしょうか。古笛委員、お願いします。
 
【古笛委員】  古笛です。
 私も今回は見直す必要はないのではないかと思います。この点は住居確保損害を填補するための基準となりますので、必ずしも、5%なら必ず見直して、4.9%なら見直さないという硬直的なものではないとは思うんですけれども、今回は2.2%にとどまっていることと、全国の状況を見ても、地方圏のところは変わっていないということもございますので、昨年見直しがなされたので、今後の動向は慎重に確認していく必要があるかと思うんですけれども、今回は見直さなくてもよろしいのではないかと考えます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。富田委員、どうぞ。
 
【富田委員】  私も従前の協議にも加わっておりましたので、今回については見直す必要がないという結論には賛成ですけれども、ただ、福島県都市部の平均単価、これは鑑定されたものですので、どうこう言うあれはないですが、今年は全国3大都市圏が3%ですが、令和5年以前ですと、3大都市圏並みか、あるいは3大都市圏の上昇率を上回る上昇をしている。基本的に上昇しているんですよね。これがなぜそうなのかというのが必ずしもよく分からないところがありまして。
 これは事務局のほうでも鑑定結果だから何とも言えないのかもしれませんが、もし分かればということで、3大都市圏並みに福島県都市部が上昇している理由は何か、考えられることがあれば御参考までにお伺いしたいと思いますが。
 
【内田会長】  事務局、何か分かることがありましたらお願いします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  今回の委託調査の中に、今御指摘のような3大都市圏等と比べて福島県の土地単価が上がっている上昇の理由については、そこまで調査はしてございませんので、大変申し訳ございませんが、お答えのほうはしかねるという状況でございます。申し訳ございません。
 
【内田会長】  よく分からないということですが。いろいろな要素があるのかとは思うのですが。
 
【富田委員】  結構です。
 
【内田会長】  結果としては大体同じように上がっているということのようです。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 それでは、なぜ上がっているのかという点についてはちょっと御意見もありましたけれども、一応、これまでと同じような考え方に立ちますと、今回は改定をした昨年から変動率2.2%ということで、これまでの議論でのおおむねの目安である5%に達していないということですので、今回は見直しをしないというのが大方の御意見であると理解をいたしました。
 それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、そのように取り扱わせていただきます。引き続き、毎年、地価の動向等を確認した上で、必要に応じて審査会において検討させていただきます。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。次は議題の4ですが、議題の4から議題6までは続けて説明をしていただきまして、その後、まとめて御意見、御質問等をいただきたいと思います。
 まず、議題4は、原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況についてでございます。ADRセンターの田中室長から御説明をお願いいたします。
 
【田中室長】  御指名ありがとうございます。原子力損害賠償紛争解決センターの室長の田中でございます。ADRセンターの令和6年における活動状況について御報告をさせていただきます。
 配付資料では資料4でございます。通しページ、表紙が18ページとなっております。
 なお、本日御説明申し上げる数字は、全て速報値となっております。
 まず、表紙をめくっていただき、1ページ目、通し番号では19ページ目でございます。そちらを御覧ください。当センターの人員体制でございます。令和6年末時点の人員は、仲介委員187名、調査官70名、和解仲介室職員101名でございます。令和5年末と比較すると、調査官については3名の増、仲介委員については8名の減となっております。
 なお、調査官の人数については、第五次追補策定等に伴う申立件数の動向を考慮し、若干名増加をさせております。
 今後のセンターの人員規模につきましては、中間指針第五次追補策定等を踏まえ、今後の申立件数の推移などを見ながら、引き続き検討してまいりたいと考えております。
 なお、総括委員の3名につきましては、令和7年1月7日で任期満了を迎えました。3名のうち沖野眞已委員につきましては、引き続き総括委員に御就任をいただいております。
 富田善範委員長、それから橋本副孝委員につきましては御退任をされましたので、新たに足立哲委員長、佐谷道浩委員に、原子力損害賠償紛争審査会会長により御指名をいただきまして、令和7年1月8日付で総括委員として御着任をいただきました。
 引き続き、資料4の2ページ目でございます。通し番号では20ページ目となっております。申立件数、申立人数の推移でございます。令和6年の申立件数は926件でありまして、同年末までの累計申立件数は31,111件、累計申立人数は125,481人となっております。
 平成26年以降、申立件数は減少傾向となりまして、その後、平成30年からの数年はほぼ横ばいというふうになっておりましたけれども、令和5年については令和4年より約300件の増加となりました。
 増加の主たる原因といたしましては、第五次追補策定を踏まえた追加賠償が実施されたこと、令和4年に引き続き、地方公共団体と連携した説明会等の広報・周知活動を活発に実施しているということが考えられます。
 これに対しまして、令和6年の申立件数は、令和5年に比べて減少しております。これにつきましては、令和5年は追加賠償が開始されて間もない時期であったことによる申立ての増というのが一定程度あったのに対しまして、令和6年は、直接請求による追加賠償の支払いが相当程度完了していること等が申立件数に影響しているものと考えております。
 それでは、次、3ページ目、通し番号では21ページ目でございます。こちらでは、平成23年からの申立件数の推移の内訳等を御参考までにお示しいたしております。説明は省略をさせていただきます。
 引き続いて、4ページ目、通し番号では22ページ目でございます。ここでは、当センターへの初めての申立てを「初回申立て」、2回目以降の申立てを「複数回申立て」と分類をしておりますけれども、令和6年における申立てのうち、初回申立ての割合は49.2%でございました。
 このような状況を見ますと、賠償される可能性があるもののADRセンターへの申立てをされていない方がまだ一定数いらっしゃると思われます。当センターといたしましては、引き続き、地方公共団体等と連携した説明会の開催、広報紙への記事の掲載をはじめとした広報・周知活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 次、5ページ目でございます。通し番号では23ページ目となります。和解仲介の状況でございますけれども、令和6年の末までに、累計で31,111件の申立件数に対し、30,333件の和解仲介手続が終了をしております。そのうち約8割に当たる24,054件が和解成立で終了をしております。なお、令和6年の末時点における現在進行中の未済件数は778件となっております。
 次に、6ページ目、通し番号では24ページ目でございます。和解仲介の状況に関しての各年の詳細でございます。令和6年において手続が終了した件数は1,227件でございます。うち930件、割合で申し上げますと75.8%が和解成立で終了をしております。
 一方、和解の打切りとなったのは112件、取下げで終了した案件は185件でございます。打切りの理由別では、申立人の請求権が認定できないことを理由として和解打切りとなったものが多く、打切り件数全体の5割以上を占めております。
 また、被申立人である東京電力が和解案を拒否したために和解打切りとなったものは、令和5年に引き続き令和6年もなく、令和3年以降は0件となっております。
 東京電力におかれましては、中間指針第五次追補の趣旨を踏まえ、引き続き、和解仲介案の尊重も含む3つの誓いに従い、センターの実施する和解仲介手続に真摯かつ柔軟に御対応いただきたいと考えております。
 7ページ目、通し番号では25ページ目でございます。平成23年からの和解仲介の状況の推移の詳細を御参考までにお示ししております。御説明は省略をさせていただきます。
 8ページ目、通し番号では26ページ目でございます。令和6年における中間指針の第五次追補に関連した内容を含む申立てについて整理をしたものでございます。第五次追補に関連した申立ての件数は、令和6年に申し立てられたものが564件、令和4年12月の第五次追補策定以降の合計は1,351件となっております。
 なお、この期間別申立件数欄のうちの第五次追補を含むものに関する部分は、申立て時の内容を基に整理をした概数でございますので、最終的な和解案、和解の提示時点における実態とは乖離をしております。
 また、和解が成立したもののうち第五次追補に関する論点を含む事案につきましては、令和6年では692件、第五次追補策定以降の合計は1,156件でございます。
 その一方、最終的に和解打切り・取下げに至った件数は表に記載されているとおりでございますけれども、そのうち早期一部支払い、これは東京電力が答弁書で争わない部分については前倒しで和解を成立させると、それで、その後に争いのある部分について審議をするという形で審議をしているというものでございますけれども、この早期一部支払いによる一部和解の成立後に終局手続で取下げや打切りとなったものがそれぞれ、「うち一部和解成立後」の欄に記載したとおり、第五次追補の策定以降、打切りについては合計28件、取下げについては合計48件でございます。
 これらについては、ほかの打切り・取下げの事案とは性質が異なっておりまして、実態としては、和解により紛争が解決されたというものに分類できるのではないかと考えております。
 それでは、9ページ目、通し番号では27ページ目でございます。令和4年12月以降、主に令和5年における中間指針第五次追補に係る申立ての取扱い状況の詳細を御参考までにお示ししております。8ページ目の令和6年についての表との対比という趣旨でございますけれども、説明は省略をさせていただきます。
 10ページ目、通し番号では28ページ目でございます。センターの広報活動に関するものの1ページ目でございますけれども、2月からの確定申告、それから6月からの健康診断に合わせて、ADRセンターの調査官等を現地に派遣し、申立方法などについての説明を行う説明会を浪江町、南相馬市、大熊町、富岡町、双葉町と連携して実施しております。
 令和6年の確定申告に合わせた説明会での申立ての受理件数は、5市町及び福島県主催のものを含めまして、合計196件に上りまして、健康診断に合わせた説明会での申立ての受理件数は、4市町の説明会で合計267件となっております。
 なお、令和6年の申立件数926件のうち401件、全体に占める割合では43.3%が説明会経由でございまして、このことからも、説明会の開催は広報活動として大変効果的であったと考えております。令和7年2月以降も引き続き、確定申告に合わせた説明会を順次実施する予定となっております。
 また、説明会などの際には、地域の特性に応じた和解事例を掲載したチラシを配布するなどして、センターの活動について周知を図っております。そのほか、令和5年同様に、NPO法人と連携をした広報活動でありますとか、富岡町の役場等での月1回の説明会にも取り組んでおります。
 それから、令和6年の11月には、原子力損害賠償事例集の令和6年版を公表するなど、説明会開催のほかにも広報活動を行っているところでございます。
 なお、原子力損害賠償事例集について補足して御説明申し上げますと、同事例集は2部構成となっておりまして、第1部は、損害項目を体系的に整理して、補足説明を加えるとともに、各損害項目ごとに関連する公共事例を公表番号とともに事案の要点を記載する形で引用して、一覧できるようにした索引と言うべきものでございます。第2部は、各公表事例の内容を分析して個票として取りまとめ、それらを公表番号順に並べた事例集という形になっております。
 令和2年のものが一番最初でございますけれども、令和3年版から令和5年版までの事例集は、第1部を含めて、令和2年版の追補という形を取っておりました。これに対しまして、令和6年版事例集につきましては、第2部につきましては、これまでと同様に令和2年版の追補という形となっておりますけれども、第1部につきましては、中間指針第五次追補が策定されたことを踏まえて構成を変更した上、令和5年版までの各事例集の記載内容も再掲したものとなっておりまして、令和6年版の第1部を参照すれば、これまでに公表した各事例集に掲載された和解事例の全てについて、何年版の事例集に掲載されているかを検索することができるようになっております。
 次、11ページ目、通し番号では29ページ目でございます。昨年の試行的な取組として、福島事務所の夜間臨時開所を実施いたしました。それについての御説明でございます。
 令和6年の3月に福島県と連携をして実施した郡山市役所における説明会では、原発事故時に自主的避難等対象区域に住所があった申立人が相当数を占めていたことから、自主的避難等対象区域に住所があった方については、原子力損害賠償ADRに係る説明に接する機会や相談する機会等に必ずしも恵まれていなかった可能性があるのではないかというふうに考えまして、実施をすることとしたものでございます。
 また、平日の昼間には時間を取れなかった方にも利用しやすいよう、臨時的に福島事務所の開所時間を延長し、かつ、お住まいの地域に限らず幅広く御利用いただけるよう、電話やオンライン参加を選択肢に入れまして、従前の広報が行き届かなかったのではないかと思われる方々を含めて、幅広い利用者を募ったというところでございます。
 夜間臨時開所では、説明会と同様に、ADRセンターの調査官等を福島事務所に派遣し、申込書に対して個別に対応をいたしました。期間は令和6年8月から令和7年1月まででございまして、毎月1回の計6日間実施をいたしました。
 通常とは異なって、事前予約制という形にしたのですけれども、実績としましては、予約枠の約半分が埋まりまして、申立件数は8件となっております。
 県外の参加者の方から、平日の昼間は仕事があって来訪できないけれども、今回のような遅い時間帯であれば、仕事終わりにそのまま来訪できるのでありがたいという旨の御発言をいただくなど、試行期間を通じて、通常の説明会とは異なる需要が一定程度あったと考えられるところでございます。
 臨時開所に係る今後の方針といたしましては、このような状況等も踏まえ、実施形式も含め更なる検討を行い、来年度の取組に活かしたいというふうに考えているところでございます。
 最後、12ページ目、通し番号では30ページ目でございます。令和6年に開催をした説明会の開催実績を御参考までにお示ししております。御説明は省略をさせていただきます。
 原子力損害賠償紛争解決センターの活動状況の御報告は以上でございます。
 
【内田会長】  大変丁寧な御説明をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、次に、議題の5の賠償の請求を促す広報等の取組状況について、事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  資料5の東電福島原発事故に関する損害賠償の請求を促すための広報・相談等の取組について、御説明申し上げます。
 損害賠償請求を促すため、国と関係機関が連携して、地方自治体等に御協力いただきながら広報・相談活動を更に実施し、必要な情報の周知に努めております。前回第67回審査会以降の広報の取組について御報告させていただきます。
 まず、今年度につきましては、ADRセンターやNDFといった賠償に係る関係機関の周知を目的としたチラシを新たに作成いたしまして、今後、本年3月をめどといたしまして、1ページ目1の(1)に記載のある関係機関に順次配付させていただく予定でございます。
 続きまして、(2)福島県内の取組といたしましては、昨年度より更に長期間にわたってテレビCMの放映を実施する予定となっております。期間は、既に実施済みである本年1月上旬と本年2月から3月までを予定してございます。
 (3)の全国に向けた取組といたしましては、同じく3月に首都圏や北関東の駅構内への広告の掲示等を実施する予定でございます。
 今後とも、追加賠償請求を促すことを含め、継続して実施するとともに、地方自治体等からの御意見等を踏まえた広報・相談活動を進めていきたいと考えております。
 なお、最後の概要資料、通しページで言いますと33ページ目でございますけれども、今申し上げた、御説明したものと繰り返しになりますので、省略させていただきます。
 説明は以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、引き続き、議題の6の地方自治体等からの主な要望事項について、事務局から説明をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  資料6の地方公共団体等からの主な要望事項について、御説明いたします。
 前回第67回審査会以降、現時点までに文部科学省に寄せられた要望のうち、主な項目の概要をまとめたものでございます。各項目の後ろの括弧書きにつきましては、どの団体から寄せられた御要望かを表しております。
 今回、全体で5つのカテゴリーに分類をさせていただきました。1つ目は、被害者への賠償に係る対応、2つ目は、地方公共団体に係る賠償、3つ目は、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解の仲介、4つ目は、ALPS処理水処分に係る風評対策、5つ目は、法制度に係る対応でございます。
 1つ1つの説明は省略させていただきますが、詳細につきましては資料6を御確認いただければと思います。なお、要望書の本体につきましては、各委員には既に共有させていただいております。
 説明は以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。
 それでは、議題の4から6までにつきまして、まとめて御意見、御質問等いただければと思います。お願いいたします。
 
【樫見会長代理】  よろしいでしょうか。
 
【内田会長】  樫見委員、どうぞ。
 
【樫見会長代理】  損害賠償センターのほうへお伺いをしたいのですけれども、事例集のほう、まだ拝見しておりませんで申し訳ございません。この和解事例においては、中間指針がある程度基準になるということは承知しておりますけれども、何かこの審査会において参考となるべき和解事例における傾向ですとか特徴点といいますか、あるいは、中間指針よりもこういう場合にはかなり高額にしたとか、何かそんな事例がございましたらお聞かせいただけますでしょうか。
 
【田中室長】  御質問ありがとうございます。
 事例集はまさに和解事例を整理したものでございます。先ほど申し上げた2部の個票というもので、実際の和解契約書の内容、契約書を匿名にしたものと、あとは、公表した補足説明のようなものを上げさせていただいていますので、例えば、先ほど御説明にありましたように、中間指針は目安で、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害は全て対象になるという観点から、例えば、日常生活阻害慰謝料でこういう事情を考慮して幾ら増額したであるとか、そんなようなことが分かるように整理をしたり、あとは、費目として必ずしも中間指針にはっきりと書いていないものであっても、こんなような事情を拾って賠償をしたとか、そんなようなことも分かるように書かせていただいている。
 事案によっては中間指針どおりの内容のものというのもございますけれども、そういうものを体系的に整理させていただいているというところでございます。
 
【樫見会長代理】  ありがとうございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。和解事例で中間指針に必ずしも取り込まれていなかった部分については、第五次追補でかなり明文化いたしましたので、そういう意味でも指針に反映してきているのかなと思います。
 富田委員、お願いします。
 
【富田委員】  それに関連して、中間指針第五次追補では、精神的損害の増額事由について、①から⑤までは一応定額を定めていますが、⑥から⑩までの事由については、具体的な額を定めていない。そういうことでADRセンターが提案する額が重要になると思いますが、それの運用状況、特に東電側の対応状況とかについて、この場で説明できる内容がありましたらお願いします。
 
【田中室長】  御質問ありがとうございます。
 日常生活阻害慰謝料の増額事由につきましては、御案内のとおり、総括基準を第五次追補に取り入れていただいたというところで、目安額が特に定められていないものをどうするかということについては、今、空で全部言えるほど記憶はしていないですが、やはり個別具体的な事情を丁寧に伺って、事案ごとに増額幅等を決めているというところでございます。
 東京電力のほうも、当センターのほうでいろいろと事情聴取をして、当該事案に沿った和解案を御提示申し上げるということをやったときには、いろいろな御意見が出てくることはございますけれども、最終的には尊重していただいているのかなと思います。
 今の日常生活阻害慰謝料もそうですし、あとは生活基盤関係の慰謝料もそうですけれども、直接請求ですと、ものすごい大量の請求をできるだけ迅速に御対応しないといけないというところなんかもあるので、なかなか個別事情を丁寧に取り上げて増額幅を事案ごとに考えていくというのは困難な面もあるのかなと思っておりますので、そういうところはまさにADRセンターの仕事かなと思っております。
 生活基盤関係の増額事由もいろいろと中間指針で例示をいただいておりますので、そういうところなんかも踏まえて各事案ごとに検討させていただいて、かなりこれまで増額事例というのが積み重なってきております。公表事例になったものも幾つかございますので、運用開始当初は、なかなか東京電力の動きが鈍かった部分なんかもあるのですけれども、ある程度事例が積み重なってきたというところもございまして、最近は、そういう増額の和解案を御提示したときも、比較的スムーズに審議が進むようになってきているかなというふうに思っております。
 以上でございます。
 
【富田委員】  要するに、東電のほうで拒否するような事案はなくて、順調に和解が進んでいるというふうに伺ってよろしいわけですね。
 
【田中室長】  おっしゃるとおりでございます。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかいかがでしょうか。江口委員、お願いします。
 
【江口委員】  ADRセンターのほうにお一つお聞きしたいんですけれども。先ほど、申立件数のことについて、令和5年と令和6年の差について一番最初に説明していただいたと思うんですが、平成23年からの申立件数というのを見てみますと、令和6年というのは、言わば、最近では令和2年に続いて少ない。ある意味少なくなっている。少なくなったのは悪いことではないとは思うんですけれども、今回減ったのは、令和5年と比べてだけではなくて、この流れの中で減っていることについてどういうふうな見方をされているのか。
 それと、もう一つは、申立件数の中の初回申立てと複数回申立ての割合というのを見ると、令和6年だと半分が初回申立てなんですよね。初回申立てが増えているというか、初回申立てが一定数あるというのは、説明会を随分熱心にされていることの効果ではないかなというふうに思いまして、説明会に対しては大変感謝申し上げたいと思うんですけれども。
 そういうふうな全体の件数はこの5年で見ても減った。でも、初回申立ては、割合だけれども、やっぱり一定程度ある。そういうようなことについてどのような分析をされて、今後のセンターの活動に対しても、こういうふうにというところがあれば、お聞きしたいと思いました。
 
【田中室長】  御質問ありがとうございます。
 確かに、令和6年は令和2年の水準だというのはおっしゃるとおりでございまして、それで、前年から大きく減ったというのは、先ほど申し上げましたとおり、令和5年というのは、東京電力のほうの御説明にもありましたように、当初、例えば、コールセンターがつながらないでありますとか、あとは、請求書が送られてくるまでにタイムラグがあったりというので、そういう状況下で説明会などに御相談にお見えになった方に対して、直接請求を飛ばしてADRセンターへの申立てをしていただくというふうにやったケースというのは非常に多くございまして、ある意味、そういうところが申立件数を押し上げているというところがあったんだろうと思います。あとは、第五次追補直後というところもございますので。
 令和3年、4年というのが、ちょうど自治体と組んだ説明会というのを増やしていっている時期でございまして、令和2年ぐらいから始めて、3年、4年と回数を増やしていってというところがありますので、そこで少し説明会の効果が出て令和2年よりは増えて、それで、令和5年で第五次追補の関係で増えたというところがあって。その後、ある程度、先ほど申し上げたように、直接請求を含めたほうの賠償の手続というのが進んでいっているというところで申立てが減ったというところなのかなと思います。
 ただ、初回申立てがまだ5割だというところがありまして、それは昨年、一昨年とほぼ同様の傾向にありますので、その辺り、いわゆる掘り起こしというのをどうやってやっていくのかというのは、まだまだ継続的な課題だろうと思っておりまして、説明会を継続するというのもありますし、先ほど御説明申し上げた夜間臨時開所というのをどう発展させていくかというようなところもございますし、広報媒体をどうするか、できることが限られた中で、できるだけ効率的な広報をどう打つかというところもあるというところで、その辺り、まだADRへのアクセスをされていない方にどう働きかけるのかというのは、いろいろと考えていかないといけないところかなというふうに認識をしているところでございます。
 以上でございます。
【江口委員】  ありがとうございます。
 
【内田会長】  どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。鹿野委員、どうぞ。
 
【鹿野委員】  御説明ありがとうございます。質問というより意見ないし感想を3点ほど申し上げたいと思います。
 1つは、先ほど議論になりました28ページの一番下の事例集についてでございます。令和6年版の事例集を公表されたということで、これ自体、中間指針の第五次追補を踏まえて構成を変更して、それから、検索も非常にやりやすくなったというようなことで御紹介がありました。
 それから、追加で御説明していただいたところを伺っても、第五次追補で必ずしも類型性の点で明確な形では書き切れていない部分もあったわけなのですが、そのような事案についても、どういう事実関係の下でどういうふうな和解が成立したというような形で示していただくことによって、言わば第五次追補を補完するような役割も、この事例集は果たしているのではないかと思います。今からさらに事例が積み上がっていくと思いますけれども、事例集がそういう役割を果たしていくものと理解しまして、このような形での事例集を作っていただいたということに感謝申し上げたいと思います。
 それから、2点目ですが、この28ページにも書いてあるところと、それから30ページの記載を見ますと、健康診断に合わせた説明会あるいは確定申告に合わせた説明会等をしていただいていて、その結果、30ページのところを見ると、申立件数のうち説明会経由のものが43.3%ということですので、説明会がかなり大きな功を奏しているのではないかと感じているところでございます。いろいろと御苦労も多いところだと思いますけれども、引き続きそのような取組についてはよろしくお願いいたします。
 それから、3点目ですが、29ページで夜間の受付について御説明がありました。割合としては予約枠の約半分で、申立件数が8件ということですから、多いという表現は当たらないのかもしれないのですが、それでも、具体的な事例で紹介していただきましたように、夜間でないとなかなか相談ができないというような潜在的な需要もあるのではないかと思います。
 今後の対応については、また状況を見て検討していくというようなお話がありましたけれども、私の希望としては、少なくとももう少しは続けていただいて、こういうニーズについて更なる対応をしていただければと思う次第です。
 以上です。
 
【内田会長】  ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。織委員、どうぞ。
 
【織委員】  ありがとうございます。
 非常にADRセンター頑張っていただいて、数で着実にできているのはすばらしいですし、また、この審査会でのいろいろな議論の結果も踏まえてだと思いますが、健康診断ですとか確定申告の場所で説明会をやっていただいて、それがすごく効果が出ているというのはすばらしいことだと思います。
 多分、これから更にということを目指していくとなると、何がネックなのか、どこが届いていないのかというアンケート調査みたいなものをしていただくしかないのかなという気がしているんです。
 例えば、説明会に来ていただいた方に、そもそも知らなかったのか、知っていたのか、知っていたけれども来られなかった理由としては、行きにくいとか、こういったような説明会みたいなものがなかった、あるいは敷居が高かったですとか、そういった理由があるかと思うんです。あるいは、自分の周りの人でも知らない人がいるのか、あるいは、自分の周りでも行きたいけれども行く場所がない、時間的な制約かというようなこと、その辺の傾向を知らないと、じゃあ夜間を増やすのか、説明会を増やすのか、あるいはネットワークを使った周知を増やすのかという、今後の更に増やしていく方策というのはなかなか取りにくいのかなと思います。
 全体的なアンケートというのはなかなか大変だと思うんですけれども、説明会に来てくださった方に少し聞いていって方策を立てるというようなことがあり得るのかなと思います。
【内田会長】  どうぞ。何かありますか。そのことも御検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 ほかにはいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。
 ただいま詳細に御説明をいただきましたが、先ほど江口委員からの御発言にもありましたように、令和6年のADRの申立てが減っているということで、これはもちろん賠償が進んでいるということでもあると思いますけれども、初めのほうの東京電力からの御説明にもありましたように、事故から14年経過して、被害者がかなり高齢化しておられて、亡くなっておられる方も多いという現実もあろうかと思います。最後の1人までの賠償を貫徹するということを急ぐ必要があるという状況に来ているのではないかと思います。
 そういう意味でも広報活動というのは非常に重要で、今日は、ADRセンターの広報活動を非常に精力的にやっていただいているという状況の御説明をいただきましたけれども、ADRセンターの利用の促進とか、あるいは、中間指針の第五次追補を受けた賠償を進めていくという上でも、こういった広報活動は非常に重要であると思います。事務局からも広報活動についての御報告をいただきましたが、今後とも広報活動に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 また、ADRセンターにおかれましては、和解仲介の申立ての状況やその傾向を引き続きよく把握し、分析をしていただければと思います。
 それから、地方自治体等からの要望事項についても御説明がありましたが、要望が引き続き出されておりますので、本審査会としても、これに対してきちんとフォローしていくと同時に、東京電力の賠償状況を引き続き注視してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
 以上で議題6までが終わりでございまして、続いて、議第7のその他とありますけれども、本日はその他については特に議題が設定されていないと聞いておりますので、本日の議事は以上となります。
 最後に、本日の審査会を通して、委員の皆様から何か御発言はありますでしょうか。特に御発言はありませんでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、これで本日の議事を終了したいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【本橋原子力損害賠償対策室次長】  事務局から御連絡させていただきます。
 まず、前回審査会の際に内田会長より、双葉町からの御意見に対して、中間指針第五次追補の日常生活阻害慰謝料に対する考え方を分かりやすくまとめるよう御指示いただいたところでございます。こちらにつきましては、双葉町に更に御意見をお伺いしつつ、対応させていただいておりますところ、改めて審査会にて御報告させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、次回、第69回審査会の開催につきましては、改めて御連絡させていただきます。
 本日の議事録については、事務局でたたき台を作成いたしまして、委員の皆様に御確認をしていただいた上、次回開催までにホームページへ掲載させていただきます。
 事務局からは以上でございます。
 
【内田会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日はこれにて閉会をいたします。熱心な御議論をいただきまして、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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